過食症(神経性過食症・神経性大食症、過食性障害)とは?

摂食障害

はじめに
 食行動の異常が過度になり、慢性的な状況になったものを摂食障害と言いますが、その一つに、過食症があります。過食症は、体重の過度な増減などを伴わない場合もあり、見た目だけから判別できると考えるのは危険であり、正しい理解が必要な疾患と言えます。ここではそのような過食症について、その症状や原因、治療方法などを中心にまとめています。

1. 過食症とは?
(1) 過食症とは

「図-過食症とは」

 過食症とは摂食障害の一つです。

過食症のうち、「神経性過食症・神経性大食症」とは、明らかに普通よりも多い量を一定時間内に食べてしまうという「むちゃ食い」をくり返しながら、その一方で体重増加を防ぐために絶食や食事制限をしたり、自ら嘔吐したり、下剤を乱用したりといった代償行為を伴うもので、かつ、痩せることには至っていないものを言います。つまり、極端に太っているから過食症というわけではないという点で注意が必要です。

 なお過食症には他にも「過食性障害」というものがありますが、こちらは体重増加を防ぐことを目的とした代償行為を伴わないもので、肥満などの標準体重を過度に上回る体重が見られる場合が多いことがわかっています。
 
(2) 過食症の原因

「図-過食症の原因」

過食症を含む摂食障害の原因は、明らかにはなっていません。ただ、複数の要因が複雑に関与していると考えられています。

① 脳・遺伝などを含む生物学的な要因

はじめに考えられるのは、脳や遺伝などを含む生物学的な要因です。

たとえば同一の家族内に摂食障害への感受性が高い遺伝子を持った方がいらっしゃる場合、その遺伝子により摂食障害を引き起こす可能性があると考えられています。ただし、その遺伝子を持つ方がみな摂食障害になるわけではないことも明らかになっている点は注意が必要です。

なお、遺伝的要因についての研究からは、過食症と拒食症とはそれぞれの独立した異なる遺伝子が影響していると考えられているものの、まったく異なった病気ではないとも考えられています。

つまり、拒食症遺伝子により過食症を引き起こす(またはその逆)可能性があるということが示唆されているということです。

生物学的な要因としては遺伝的なもののほかにも、食欲や抑うつ、不安や衝動性に関係があるセロトニン系と呼ばれる脳の機能異常など、脳機能の要因もあるのではないかと考えられています。

いずれにしても、脳・遺伝などの生物学的な要因は過食症の一つの要因にしかならないという点は正しく理解しておくことが重要でしょう。

② 心理的要因

過食症を患う方は、一般的に高い目標の持ち主であることが多いとされています。このような事実から、これまでは、否定的あるいは低い自己評価と、抑うつや不安などが過食症の要因として考えられてきていました。

一方で、過食症を含む摂食障害を発症した結果として、そのような傾向が見られるようになることを示唆する研究報告もあります。つまり、どちらが鶏で卵なのか、因果関係が明確ではない面があることもわかりつつあるということです。

 とはいえ、過食症に見られる異常行動があらわれるには、背景に「太りたくない、痩せたい」という体重・体型への極端なこだわりや、「自分は太っている、だから自分には価値がない」というような思い込みといった心理的な背景が影響していることは間違いないと考えられています。
 
③ 社会・文化要因

心理的要因で示したような体重・体型への極端なこだわりの背景には、痩せていることを褒め、肥満を蔑視するような風潮の影響も考えられます。ダイエットに関わるような広告は巷にあふれていますし、モデルとなっている方々もやせ型の方が多いという事実は否定できません。

このようなものが過食症を誘発している部分があると考えられているということです。

④ 家族関係の要因

保護者の方の不和、接触頻度低さ、高い期待などのほか、家族の方のダイエット、家族を含む周囲の方からの食事や体重・体型に関する否定的な言葉も、過食症の発症に影響を与えている可能性があると考えられています。

これらが、心理的要因で示したような「自分は太っているから価値がない」という思い込みと結びついてしまっている可能性があるのです。

(3) 患者数

1998年に実施された医療施設を対象にした調査によれば、過食症の患者数は6,500人と推定されています。1990年代の後半5年間だけで5倍近くに急増していること、医療機関で受診されていない方がいらっしゃることなどを含めて考えると、さらに多くの方が過食症である可能性を否定できません。

 この調査からは、年齢層別では20代の方が多いことがわかっています。ただし欧米の研究では、女性で1.5~2%、男性で0.5%であることもわかっていること、また、若いころに発症し治らないまま中高年になってしまう場合も少なくないと考えられるため、決して女性だけに見られるものでもなく、若い世代だけにあらわれるものでもないと言えるでしょう。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルスホームページ
摂食障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_eat.html
摂食障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_eat.html

京都府精神保健福祉総合センター 心の健康のためのサービスガイド
〈摂食障害〉 摂食障害とはどんな病気?
http://www.pref.kyoto.jp/health/health/health05_b.html

慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
摂食障害
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000583.html

脳科学辞典
摂食障害
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/摂食障害

2. こんな症状が見られたら
(1) 過食症の主な症状

過食症に見られる中核症状は、短時間に大量の物を食べるという「むちゃ食い」と、食事を摂るということに対してコントロールができない状態であることの2点が上げられています。

また、反復される「むちゃ食い」後の体重増加への不安感、「むちゃ食い」に対する罪悪感、また、「神経性過食症・神経性大食症」の場合は食事制限をするにも関わらず痩せることを達成できないために生じる自己不全感といった、心理・感情面での特徴が見られるとされています。

その他も含め、主な症状は、次のように整理することができます。

(2) 過食症のサイン

 上記で見たような症状が見られることから、過食症を含む摂食障害は、さまざまな兆候、つまりサインが見られます。特に典型的なサインには次の4つの視点があり、周囲から観察できるものも多くあります。

① 体重

1) 痩せたり太ったりをくり返す
2) 体重が増えることに対する過度なこだわりがある
3) 体型を隠すために、サイズの合わない大きな服を着る
4) 1日のうちに体重を何度も測る など

② 食事

1) 食べ始めると止まらない
2) 大量の食べ物を隠し持つ、それらを隠れて食べる
3) 食べ物を万引きする など

③ 排出行動

1) 食事の直後にトイレに行く、トイレに行く頻度が多い
2) 手に、口の奥に突っ込んで嘔吐することをくり返したような形跡である「タコ」がある
3) 下剤などを頻繁に利用している、買い込んでいる など

④ 活動面

1) 悪天候や体調不良などでも厳密な運動メニューを組み、それに取り組むといった極端な過活動
2) 普段の友達づき合いが極端に減る など

 そのほかにも、いつもイライラしているような様子、気分の浮き沈みの激しさ、集中していないような状況が続く、生理不順や生理が止まるなどが観察できる場合があります。

(3) 診断基準

 次の症状が認められるとき、過食症と診断されます。

① 繰り返される過食

ある特定の2時間以内に、一般的な量よりも明らかに多い量の食べ物を食べる。
そのとき、食べることをやめられない、食べるものの種類や量をコントロールできないといった感覚がある

② 代償行為(神経性過食症・神経性大食症の場合)

 体重の増加を防ぐために、自ら嘔吐することや、下剤・利尿薬などを乱用する、絶食や過度な運動などを行う
  
③ ①②のくり返し(神経性過食症・神経性大食症の場合)

 過食と代償行為が3か月間に渡って平均すると週1回以上起こっている

④ 自己評価に対する体重・体型の影響

 自己評価が体重や体型の影響を過度に受けていて、たとえば、「体重を減らせない自分は価値がない」といったような言動が見られる

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルスホームページ
摂食障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_eat.html
摂食障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_eat.html

慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
摂食障害
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000583.html

精神保健等国庫補助金「摂食障害治療支援センター設置運営事業」
摂食障害情報ポータルサイト
http://www.edportal.jp/

3. 過食症と診断されたら
(1) 過食症の治療で目指すこと

「図-過食症の治療で目指すこと」

過食症の治療で目指すのは、正常な食行動ができるようになることです。

このとき、まずはむちゃ食いを止めようとするのではなく、「食事制限」をいかに減らすかがポイントになります。ただし、憂鬱感や不安感から逃れるために「むちゃ食い」をしているケースが少なくないことから、むちゃ食いに走る原因となっている「ストレス」に目を向ける必要があると考えられています。

ストレスの原因の一つに対人関係のつまずきがあることも多いこともわかっていますし、「むちゃ食い」が唯一のストレス発散方法であるという方も少なくありません。

このように、食行動だけに焦点を当てた治療では完治が難しいこともわかっています。異常な食行動の背景に入り込むことになるため、ご本人やご家族の方と医療スタッフとの間で「一緒に治していく、一緒に治していこう」という信頼関係づくりが非常に重要になると言えます。

(2) 過食症の治療方法

① 過食症を生み出す悪循環 ~ 過食症における認知行動モデル

「図-過食症を生み出す悪循環の回路」

 過食症が起こるメカニズムである認知行動モデルは、次のように考えられています。つまり、「認知の歪み」というものが、過食症の悪循環を生み出していると考えられるということです。

1) 過食を引き起こす認知の歪みがある
 たとえば、完璧主義や低い自己評価、感情などへの耐性の不足があり、そのことが体重や体型に過剰なこだわりを生む

2) 症状を強化してしまう①
 食事制限を行うものの、「食べたい」という欲求を抑制できず、その反動として「むちゃ食い」をする

3) 症状を強化してしまう②
 その後「肥満の恐怖」から、排出行動を起こす

4) 症状を強化してしまう③
 欲求を制御できず、また、恐怖感や不安感も制御できないことに対し、罪悪感といった低い自己評価を助長する

② 治療方法 ~ 外来治療が基本、薬物療法と精神療法の併用が一般的

過食症を生み出す認知行動モデルに基づき、過食症の治療は、基本的には外来治療ですすめられます。

この治療においては、SSRIと呼ばれる抗うつ薬を中心とした薬物療法が行われる場合があります。過食やその後の体重増加を防ぐための嘔吐や下剤の乱用といった代償行為の抑制に有効性が認められているからです。その一方で、薬物療法のみで完治することは少なく、再発も少なくないとされています。

 そこで薬物療法と併せて、過食を引き起こす特定の考え方や行動に対する認知行動療法、人間関係の問題に焦点を当てた対人療法といった精神療法を行う方法が国際的にも確立されています。

そのほかにも、精神療法のポイントを自習しながら治療に臨む「読書療法」の効果も認められており、たとえば、次のような書籍が出版されています。

モーズレイ摂食障害支援マニュアル
(ジャネット・トレジャー/ウルリケ・シュミット/パム・マクドナルド 著、金剛出版)

モーズレイ・モデルによる家族のための摂食障害こころのケア
(ジャネット トレジャー/アナ クレイン/グレイン スミス 著、新水社)

摂食障害から回復するための8つの秘訣
(キャロリン・コスティン /グエン・シューベルト・グラブ 著、星和書店)

(3) 経過(予後・治りやすさ)

 過食症の予後に関しては、報告事例がないようです。これは、同じ摂食障害の一つである拒食症とは異なり、相応の体重が維持されることから、生命の危険が生じるほどの重篤なものにはならないことや、拒食症と比較すると発症率が低いという事情があるようです。

 とはいえ、報告事例がないことがそのまま問題がないということではありません。併発する可能性のある症状として抑うつ、不安、感情の起伏の激しさや衝動性などが考えられるため、自傷行為や自殺をはかるといった行動があらわれる場合があったり、アルコール依存や薬物乱用などが見られたりといったことも多いとの報告があります。

 もしかしたら、ということがあるようなら、できるだけ早く、専門医の診察を受けることが重要と言えるでしょう。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルスホームページ
摂食障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_eat.html
摂食障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_eat.html

慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
摂食障害
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000583.html

最後に

過食症は、摂食障害の一つです。拒食症と異なり、体重の過度な減少などが起こらないことから、過食症そのものによって命の危険にまで及ぶことは少ないと考えられてはいます。

一方で、抑うつ、不安、感情の起伏の激しさや衝動性などが考えられるため、自傷行為や自殺をはかるといった行動があらわれる可能性も否定できず、非常に危険な疾患であることは間違いありません。

「もしかしたら」と疑われるようなことがあれば、なるべく早く専門医の診察を受けることが重要と言えます。

過食症を含む摂食障害は、食に関する行動異常であると同時に、その背後に「体重・体型に対する大きな心理的不安」を引き起こす何らかの要因が潜んでいると考えられます。

それらは、食事・身体に関する直接的なものだけでなく、考え方や気持ち・感情に関すること、対人関係など、幅広い要因が考えられます。

治療により最終的に目指すのは正しい食行動ではありますが、このような背後に潜む要因にも着目しながら、過食症を患う方の支援を行うことが重要になると言えるでしょう。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルスホームページ
摂食障害
www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_eat.html
摂食障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_eat.html

京都府精神保健福祉総合センター 心の健康のためのサービスガイド
〈摂食障害〉 摂食障害とはどんな病気?
http://www.pref.kyoto.jp/health/health/health05_b.html

慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
摂食障害
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000583.html

脳科学辞典
摂食障害
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/摂食障害

精神保健等国庫補助金「摂食障害治療支援センター設置運営事業」
摂食障害情報ポータルサイト
www.edportal.jp/

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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