整理整頓 ADHDの方への対処法「共通の基準づくり」から学ぶ

発達障害

はじめに
整理整頓ができるようになるため、ADHDの方への対処法となる「共通の基準づくり」から、「望ましい整理整頓ができている状態」を考えます。整理整頓ができない、忘れ物が多いというと、すぐ何らかの障害の可能性に結びつけて考えてしまっている人が多く見受けられます。実際、ネットで「整理整頓 できない」と検索をすると、検索結果として発達障害に関する記事が多くあがってきます。しかし、そもそも「整理整頓」とは、一体どういうことなのでしょうか? 

ここでは、整理整頓について、学校での指導の目的や内容、進め方を見つつ、家庭での整理整頓の問題への対処の第一歩となる考え方としての「基準づくり」、整理整頓の支援の基本的な方法などについてまとめています。

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1. 学校教育における「整理整頓」

「図-学校教育における「整理整頓」の指導ステップ」

(1) 小学校の学習指導要領における「整理整頓」を分解する

① 学習指導要領で設定されている「目標」

小学校学習指導要領では「第2章 各教科 第8節」の中で、第5学年及び第6学年について、次の3つの目標が設定されています。

「(1)衣食住や家族の生活などに関する実践的・体験的な活動を通して、自分の成長を自覚するとともに、家庭生活への関心を高め、その大切さに気付くようにする。

(2)日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け、身近な生活に活用できるようにする。

(3)自分と家族などとのかかわりを考えて実践する喜びを味わい、家庭生活をよりよくしようとする実践的な態度を育てる。」

さらにその内容に関して、「C 快適な衣服と住まい」では、次のように表現されています。
「(1) 衣服の着用と手入れについて、次の事項を指導する。
ア 衣服の働きが分かり、衣服に関心をもって日常着の快適な着方を工夫できること。
イ 日常着の手入れが必要であることが分かり、ボタン付けや洗濯ができること。

(2) 快適な住まい方について、次の事項を指導する。
ア 住まい方に関心をもって、整理・整頓(せいとん)や清掃の仕方が分かり工夫できること。
イ 季節の変化に合わせた生活の大切さが分かり、快適な住まい方を工夫できること。

(3) 生活に役立つ物の製作について、次の事項を指導する。
ア 布を用いて製作する物を考え、形などを工夫し、製作計画を立てること。
イ 手縫いや、ミシンを用いた直線縫いにより目的に応じた縫い方を考えて製作し、活用できること。
ウ 製作に必要な用具の安全な取扱いができること。」

② 指導要領を目的・方法に整理する

 上記を整理すると、次のようにその目的と指導内容を整理することができるでしょう。

1) 目的
児童が「日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け、身近な生活に活用できるように」なること。

2) 方法
教師が「住まい方に関心をもって、整理・整頓(せいとん)や清掃の仕方が分かり工夫できること」、「季節の変化に合わせた生活の大切さが分かり、快適な住まい方を工夫できること」を目標に児童を指導していく。

(2) 小学校での整理整頓の指導の進め方
 小学校での整理整頓の目的や目標、その指導内容について、実際にはどのように指導が進められるのでしょうか?

① 具体的な指導の場面

筆者自身の小学生時代には、整理整頓係がいて、毎日ロッカーの中にランドセルが綺麗に収納されているか、給食着を綺麗にたたんで教室の後ろのあるべき場所にかけられているかといったことをチェックしていました。

さらに、掃除時間には、1年生から6年生まで全員が縦割り班に分かれて、高学年の班長と副班長の指示のもと、廊下や特別教室、校庭など、より多くの人が使う場の清掃をしていました。このような実際の指導場面は、みなさんの小学生時代を振り返られても同様だったのではないでしょうか? 

そして、当時の担任の先生からよく「整理整頓をしましょう」と声をかけられていたのではないでしょうか?

② 順序を踏んで、学び合いの中で学ぶ

ここで大切なのが、整理整頓や清掃の際、いきなり「整理整頓をしなさい」あるいは「掃除時間だから掃除をしなさい」と言われたという方は恐らくいらっしゃらないのではないかということです。

 たとえば、
「ランドセルは、ロッカーの中にランドセルの腕が出ないように入れましょう。そうでなければ、ランドセルの腕に引っかかって、けがをしてしまう人がいるかもしれないからです。」
「給食着はシワを伸ばして、両腕を折り、小さくたたんで給食袋にしまいましょう。そうすれば、いつでも綺麗に着ることができます。」
など、先生方と一緒に「その目的と合わせて整理整頓とは何か?」を考え、実際にその作業をしながら教わったのではないでしょうか。

さらに、箒の持ち方、ちりとりの使い方、雑巾の絞り方、トイレ掃除の仕方などは、先生や高学年の人から学んだ方が多いのではないかと考えられます。

このように、小学校での整理整頓は、整理整頓の目的を明確にしながら、その具体的な方法を段階を踏んで学びつつ、また、高学年にもなればその方法を教えることを通じて、その理解を深めるという学び方をするのです。

(3) 中学校・高校での整理整頓は自分で

しかし、これは小学校での話です。中学校・高校に入ると、「自分なりの整理整頓方法を身につけ、発揮していく段階」になっていきます。

特に中学校に進学するタイミングでは、何をどう整理整頓していくのかについては、クラスあるいは個人の判断に委ねられていく場合が多くなります。少なくとも筆者の場合、小学校の時のように机の引き出しの中をチェックするといったことはありませんでした。

つまり、中学・高校に上がるにつれて、「自分が良いと思う整理整頓の方法」に、少しずつ、時には少し大きな段階を踏んで移行していくのです。

参考:
文科省
小学校学習指導要領「生きる力」第2章各教科第8節家庭
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/katei.htm

2. 何をもって整理整頓ができていると定義するのか? という問題

筆者は友人の部屋を訪ねるとき、いつもワクワクします。それは、それぞれの個性がその部屋の中に詰まっているからです。部屋の居心地の良さは千差万別であり、系統は似ているとしても、誰一人として全く同じということはおそらくないでしょう。筆者にとっての「整理整頓」とは、このような居心地の良さに近いものがあるのですが、それがみなさんが思う整理整頓なのでしょうか?

(1) そもそも整理整頓とは?

整理整頓は、一つの用語のように用いられることもありますが、基本的には、別の単語を組合せたものです。それぞれの単語は、たとえば次のように辞書上定義されています。

① 整理とは?

1) 乱れた状態にあるものを整えて、きちんと整理すること。
2) 無駄なもの、不要なものを処分すること。

② 整頓とは?

きちんとかたづけること。また、きちんとかたづくこと。整うこと。

(2) 整理整頓ができている状態とは? ~実は非常にあいまいな「整理整頓」

 整理整頓ができている、とは、当然ながら整理ができ、整頓ができているということです。

では、辞書の定義について見たとき、何をもって「乱れている」と判断するのでしょうか? 何をもって「きちんと整理」をすることになるのでしょうか? 何をもって「無駄、不要なもの」と判断するのでしょうか?
これらの答えを出すことは、非常に難しいものでしょう。

結果、一人ひとりの主観に依存する部分が多くなるのです。筆者は「○型なのに、なんでこんなにも部屋が汚いの〜?」と言われることがあるのですが、筆者自身は、一度も部屋が汚いとは思ったことがありません。

「他人の視点からすると、私の部屋は散らかっている」のに、「自分ではそうは思わない」ということは、「整理整頓できている」ということが非常にあいまいであることを表しているということでしょう。実際、他人から「散らかっているから、かたづけた方がいいよ」と言われても、筆者にはどこが散らかっているのか、何をかたづけたらよいのか全くわからないのです。

(3) 自分の基準と他者の基準

自分の視点から見える世界と、自分以外の他者の視点で見える世界とは、同じ世界であるのにそれぞれ異なります。つまり、整理整頓ということを一つとってみても見え方が異なるということ。ということは、その視点から見る「整理整頓ができている状態」を「どう判断するのか」も、一人ひとり異なることになるということになります。

3. 整理整頓ができるようになるには? ~最初の一歩

「図-整理整頓ができるようになるための最初の一歩」

 では、既に見てきたような特徴がある「整理整頓」というものについて、「望ましい程度できるようになる」には、どうすればよいのでしょうか? そもそも「望ましい程度」とは、どのような状態なのでしょうか?

(1) まずは、「AD/HDだから・・・」という先入観は捨てる

発達障害のうち、AD/HD(注意欠陥多動性障害)は、その特徴として次のようなことが見られるとされています。

① 不注意:集中することが難しい、気になったものに注意がむきやすい、忘れ物が多い
② 多動性:活動的で常に動いておきたい。
③ 衝動性:考えるよりも前に行動を起こす。

ただ、このような特徴は、重複している人もいれば、そうでない人もおり、その症状は一人ひとり違います。

自分の「整理整頓ができている」状態を基準にして、
「あの人はAD/HDがあるから、整理整頓ができない」
「あの人は整理整頓ができないからAD/HDの可能性があるかもしれない」
というように考えてしまうことは、支援の幅を狭めてしまうことにもつながります。その前にまず、その対象となる方が整理整頓をどのようにとらえているのかを理解することが大切なのではないでしょうか。

(2) 「整理整頓とは何か?」を、目的ベースで考える ~共通の基準づくり、という考え方

小学校での整理整頓の指導を振り返ると、「これをしましょう。それにはこういう目的・理由があるからです」という指導がされていました。

たとえば、「ランドセルは、ロッカーの中にランドセルの腕が出ないように入れましょう。そうでなければ、ランドセルの腕に引っかかって、けがをしてしまう人がいるかもしれないからです」といったような指導は、「整理整頓というやることと、その目的」を明確にした指導例です。

これは、「目的・理由を共通の基準としよう」というアイデアを、一つの具体的な形として示したものととらえることができます。つまり、みんなが理解できるような共通の基準をつくることが、「整理整頓ができるようになる」ための一つの方法だということになるのです。

他にも「使い終わったら元の場所に戻す」というようなルールも、「その目的は、次に使う時に、探さないようにするためです」といったように、目的・理由を明確にすることもできるでしょう。また、これらをルールという形にまで発展させられれば、「週に一度は埃ふき取って、掃除機をかける」というような「みんなで守る共通の基準」をつくっていける可能性も出てきます。

ただ、どのような目的も、「結局は自分のためのものなのだ」という点は押さえておく必要があります。実際、「整理整頓ができない」としたら、最終的に困るのは誰か他の人ではなく、自分自身なのです。

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参考:
厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1100100923.pdf
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4. 整理整頓の基本的な支援方法

「図-整理整頓の支援における基本的なアプローチ」

 整理整頓の基本的な支援の方法としては、次のようなものがあげられます。しかし、既に見てきたような「支援の土台」があった上での方法であるということは、忘れてはならないでしょう。

(1) 整理整頓に有効とされている手法 ~ 物理的構造化

物理的構造化とは、家具などの一般的な環境を整える方法で、環境に意味や文脈を加える手法です。たとえば「この色の場所は●●をするための場所」というような形で決める方法であるため、整理整頓に有効とされています。

が、それ以上に、「構造化されていること=期待されていること、活動することが明確になっているということ」であるため、AD/HDのある方にとって、何をすればよいのかがわかりやすく魅力的という点が非常に重要と言えます。

(2) ご本人の現状を知り、受け止める

 支援にあたっては、「ご本人が前向きにやれること」が大切。また、どんなに有効な手法も、いきなり、では戸惑うばかり。やはり順序を追っていく必要があります。そこで大切になるのは、「ご本人が、整理整頓された状態をどのように考えているか」を知ることになります。

その基準が望ましい基準と異なるのであれば、理由と合わせて、少しずつでもすり合わせをすることが必要になるということです。
 
 また、ご本人の得意なことは何なのか、好きなことは何なのか、最近夢中になっていることは何なのか、何が苦手なのかなどの情報を、ご本人と共有しておくことも大切です。特に中学生や高校生になると、一番身近である保護者の方とのコミュニケーション不足になりがちで、保護者の方はご本人の最近の趣味や不安に思っていることなどを正確に把握できない場合が多いのです。

よって、特にご本人が中学生や高校生の場合で、整理整頓の支援をしていくときには、まずはご本人の現状を知り、受け止めるようにすることが大切になるのです。支援の過程の中に「彼らの現状・考え」をうまく組み込むことで、整理整頓がご本人にとって魅力的なものにもなっていきます。

(3) 継続できる整理整頓に向けて

整理整頓は、一度できれば良いというものでは当然ありません。継続することが大切だということです。では、どうすれば、整理整頓をし続けられるようになるのでしょうか?

最も重要なのは、ご本人にとっての整理整頓が魅力的なことになるように導くことでしょう。

先にも述べたように、筆者の部屋は他者の視点で見れば「整理整頓できていない」状態のようです。そのため筆者の部屋を「整理整頓ができていないと感じた他者」が、「他者にとっての整理整頓」をすることがありました。ただそれは、筆者にとっては整理整頓ではなく、単に物が動いただけ、一ヵ所にまとまっただけでしかありませんでした。

つまり、その時の筆者とその他者の間では、「<整理整頓>について共通の認識ができておらず」、また、「<他者の視点から見た整理整頓>は、筆者にとっては魅力的なものでなかった」わけです。

 このように見てくると、整理整頓によってできた空間、あるいは整理整頓をする過程が、ご本人にとって達成感と魅力溢れるものになれば、整理整頓を意識することなくその行動を継続することができるのではないかと考えられるわけです。

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参考:
厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1100100923.pdf

Accessing the Curriculum for Pupils with Autistic Spectrum Disorders: Using the TEACCH Programme to Help Inclusion Paperback by Gary Mesibov、 Marie Howley、 Signe Naftel

最後に

整理整頓を、「それができている状態」という点から考えると、非常にあいまいなものであることがわかります。つまり、明確な基準というものがなく、人それぞれ、バラバラに「整理整頓できている状態」をイメージしていると考えられるということです。にもかかわらず、「整理整頓ができない」というひと言に集約されてしまっている面がある。

このことが、「整理整頓しなさい」と言っても、何をどうしたらよいのかわからないということにつながっている可能性もあるのです。

「望ましい整理整頓ができている状態」はあるでしょう。ただ、そこに到達するには段階を踏む必要があります。先ずはその人にとっての整理整頓を整理し、整理整頓を期待する側と共通の基準づくりをしていくこと、つまり整理整頓によって何を目指すのか、すり合わせておくことは欠かせないでしょう。

その上で、継続的な整理整頓へ向かって一緒に考え、段階を踏みながら行動に移すことが大切と言えるということです。ここでは、AD/HDと整理整頓の基本的なところを見てきましたが、また別の機会で、実際の事例を用いた整理整頓についてまとめていきます。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
文科省
小学校学習指導要領「生きる力」第2章各教科第8節家庭
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/katei.htm

厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1100100923.pdf

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向井美沙希

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岡山大学教育学部卒,特別支援教育専攻

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金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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