精神疾患・精神障害の治療に用いられる認知行動療法とは?

精神障害

はじめに
 認知行動療法は、一人ひとり異なる物事のとらえ方である「認知」に着目して行われる、主に精神疾患・精神障害の治療に用いられる精神療法です。認知行動療法の基本的な考え方である「認知」にアプローチするという方法は、昨今、一般の方にも流行した「アンガー・マネジメント」や「アドラー心理学」とも共通するものです。
 ここではそのような認知行動療法の基本的な考え方にある、「認知」とはどういうことなのかにも触れながら、その治療方法、治療の流れなどをまとめています。

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1. 認知行動療法とは?
(1) 人の物事のとらえ方と否定的な認知の3つの特徴

「図-人の物事のとらえ方 ~ 認知とは?」

① 人の物事のとらえ方

 「人はそれぞれのメガネを通じて物事を見ている」という考え方をご存知でしょうか? 

たとえば、1つのコインがあったとき、表を見る人もいれば、裏を見る人もいるでしょう。コインを立てて見る人もいるかもしれません。また、色に注目する人も、大きさに注目する人も、模様に注目する人もいるでしょう。

同じ物、同じ出来事であっても、その見方やとらえ方、それを通じて感じることは人それぞれ。どれも同じ物や出来事を見ているわけです。そこには正解も不正解もありませんが、異なる見方をしている、異なる見方ができるということは誰もが理解できることでしょう。

② 否定的な認知

 物事の見方やとらえ方を「認知」と言います。認知の仕方には、肯定的な認知と否定的な認知という「認知の基準・軸」があることも、同じように理解できるでしょう。この「認知の基準・軸」は、コインの見方と同様、認知の仕方そのものに正解や不正解があるわけではないのです。

実際、否定的な認知は、リスクを的確にとらえられるといった側面があると考えられる一方で、それが極端なものになると、精神疾患や精神障害を誘発しやすいとも考えられています。このような否定的な認知のデメリットは、次のような3つの特徴として整理することができます。

1) 自分に対して悲観的
 「できない自分はダメな人間だ」とするようなとらえ方です。自分自身を否定するような考え方をしてしまいがちだと言えるでしょう。

2) 周囲に対して悲観的
 「ダメな自分と関わりたい人はいない」とするようなとらえ方です。この結果、人間関係がうまくいっていないと考えるようになるだけでなく、人と接すること自体を避けていくようになりがちだと言えます。

3) 将来に対して悲観的
 「今の状況は変わらない。だから、辛い気持ちも変わらない」とするようなとらえ方です。将来に渡って何も変わらないと考えるようになると、何かをしようとする気力も失いやすく、その結果、楽しいと感じられるようなことも失ってしまいがちだということです。

(2) 認知行動療法とは?

「図-認知行動療法とは?」

 認知行動療法とは、これまで見てきたような極端に否定的な認知の仕方に働きかけて、肯定的な認知の仕方も含めた他の認知の方法、思考方法とのバランスを改善することで、目の前の問題を解決し、さらに、その問題の解決を通じて心の状態を変化させようとする精神療法です。

「認知」というものが厄介でありつつも素晴らしいのは、「瞬間的に行われる」という点で、これを「自動思考」と呼びます。物事を認知すると、瞬間的に、ある特定の考えやイメージが浮かぶ、つまり、「自動思考」が働くのです。
たとえば、「ある友だちが他の友だちと帰宅した」という事実に対し、自動思考として「自分は嫌われている」という考えが浮かび、悲しい気持ちになったというような認知の仕方です。

このように精神疾患・精神障害があると、この自動思考が否定的に働き、それを事実としてとらえてしまう上、否定的な感情が生まれていってしまうのです。このような認知の仕方をバランスの良いものに改善するための治療が認知行動療法だということになります。

(3) 認知行動療法で大切にすること

「図-認知行動療法で大切にすること」

 認知療法で大切にすることは、行動を通じた体験、であり、その実感です。「肌感覚」と言った方がわかりやすいかもしれません。

 人は頭で考えることができますが、頭の中だけでいくら考えても、実感を伴うものとは言えません。たとえば、42.195Kmを走るマラソンを、自分が走ることを頭の中でいくら考えても、「大変なことだろう」と想像することはできても、それが「実際、どれぐらい大変なことなのか」は、わからないでしょう。

一方で、実際に走ってみたら、どの程度大変なのか、言葉で表せる以上のことが実感レベルでわかるだけではなく、たとえば、達成感や、汗を出し切ったときの爽快感のようなものが感じられることに気づく場合もあるでしょう。認知行動療法で大切にされるのは、このような体験の積み重ねから得られる実感の積み重ねであり、過去、この精神療法が認知療法と呼ばれていたのに対し、現在では認知行動療法と呼ばれるようになってきた要因の一つとも言えるのです。

参考:
厚労省ホームページ
心の健康
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html

認知行動療法センター ホームページ
認知行動療法とは
http://cbt.ncnp.go.jp/guidance/about

日本認知療法・認知行動療法学会 ホームページ
http://jact.umin.jp/manual.shtml

2. 認知行動療法が有効と考えられている対象

 認知行動療法は、多くの精神疾患・精神障害などの治療で用いられる方法です。特に以下のような対象について、その効果が高いと考えられています。極端に否定的な認知の仕方を「認知の歪み」と言いますが、認知行動療法とは、この「認知の歪み」に働きかける精神療法だと言い換えることもできるでしょう。

(1) 認知行動療法が有効と考えられる精神疾患・精神障害

認知行動療法が有効と考えられる精神疾患・精神障害には、うつ病、不安障害(パニック障害・社交不安障害・心的外傷後ストレス障害強迫性障害など)、不眠症、摂食障害、統合失調症などがあります。

(2) 認知行動療法が有効と考えられる方の特徴

 上記のような精神疾患・精神障害のある方には、次の5つの特徴が見られやすいと言われています。

① 私はダメな人間だと考えるような、自分に対して悲観的な方
② 周囲の人との関係がうまくいっていないと感じるような、周囲に対して悲観的な方
③ 将来に対して希望を見出せず、将来に対して悲観的な方
④ マイナス思考が強く、薬物療法のみでは効果が見られない方
⑤ 薬の副作用が強く、薬の量を調整できない方、薬を飲みたくないという方

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参考:
厚労省ホームページ
心の健康
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html

認知行動療法センター ホームページ
認知行動療法とは
http://cbt.ncnp.go.jp/guidance/about

日本認知療法・認知行動療法学会 ホームページ
http://jact.umin.jp/manual.shtml

3. 認知行動療法の基本的な方法と具体例

 認知行動療法の基本的な進め方は、「長い期間に渡る治療の開始から終了まで」と「各回の治療の最初から最後まで」とに分けて見ていくとわかりやすいでしょう。

(1) 治療の全体の流れ ~ 治療の開始から再発予防に向けた治療の終了まで

「図-認知行動療法による治療全体の流れ」

 治療の全体の流れは、大まかには次のようなものになります。

① 第1期 ~ 疾患理解・治療法理解

 治療の対象となっている精神疾患・精神障害を理解し、認知行動療法による治療方法に対する動機づけを行います。

② 第2期 ~ 行動活性化

 治療の目標を定め、治療計画をつくり、実際の治療を徐々に開始します。この段階では、どんな行動をしたかを記録しながら、楽しめることを見つけ、行動量を増やしたり、行動範囲を広げたりといったことをすすめていきます。「行動活性化」と呼ばれる時期で、活動記録表などを用いるのが一般的です。
 
③ 第3期 ~ 自動思考の切り替え方法の学習

 行動を通して認知を修正しながら、徐々に認知そのものに働きかけていく時期です。ここでは、「コラム法」と呼ばれる方法などを利用します。コラム法では、次のような手順で思考のバランスを取る方法を学習します。

まず、どのような出来事があった時に、どんな感情が芽生え、それはどのようなことを考えたから(自動思考したから)なのかを明確にします。その上で、その自動思考の根拠となる事実のみを洗い出し、またその根拠となったこと以外の事実を洗い出します(反証)。

大きく2つの事実を元に、その出来事が起きた理由をこの大きく2つの視点から見直し、はじめに芽生えた感情がどのように変化したかを確認します。
 
④ 第4期 ~ 自動思考の切り替え方法の有効性の実感

 第3期で学習した自動思考の切り替え方法が、幅広く利用できることを実感する時期です。対人関係や問題解決など幅広く利用できるか、実際に行動することを通じて、その価値を実感に変えていく時期と言えます。

⑤ 第5期 ~ 自分の「心の法則」に気づく

 どのような事実に対して、どのような自動思考が働くのかを、自分が元気なときと、苦痛を感じているときとに分けて洗い出し、理解する時期です。

たとえば、「連絡がない」という事実に対して、「嫌われている」という自動思考が働くとした場合、「連絡がないこと」と「嫌われた」と考えることの間には、何らかの変換がされていることがわかります。この変換のことを、「心の法則」あるいは、「スキーマ」というような呼び方をします。

この「心の法則」を、「自分について・対人関係について・世界観や社会環境について」の3つの視点などで、かつ、「元気なとき・そうでないとき」とに分けて整理することを通じて、元気なときの自分に気づけるようにすること、あるいは、元気でないときにその解決方法を自分で手に入れられるようにすることなどが目標になります。

⑥ 第6期 ~ 治療の終結と再発予防

 治療を終わらせる時期です。治療全体を振り返り、どのような学びがあったのかを確認したり、治療後に直面する可能性のある事などを話し合うことで、再発予防に役立てます。

(2) 各回の治療の流れ

 各回の治療は、その時間の長さに関わらず、基本的には「導入・認知行動療法を用いた対話・まとめ」の3つのパートで構成されます。つまり、「導入・認知行動療法を用いた対話・まとめ」の活動が幾重にも重なり、治療全体を構成するということです。

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参考:
厚労省ホームページ
うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf

公益社団法人 日本精神神経学会 精神神経学雑誌 ONLINE JOURNAL日本精神神経学会
うつ病の認知療法・認知行動療法
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1150050539.pdf

4. 認知行動療法のさまざまな形 ~ 簡易型の認知行動療法

 認知行動療法では、ここまでで見てきたような形で治療が進められることになります。ただ、限られた時間の中で行われる認知行動療法は、対応可能な範囲が限られる面が否定できません。そこで取り入れられているものに、簡易型の認知行動療法があります。

(1) 簡易型の認知行動療法

⑥ 自助型

 治療を必要とする方々同士のつながりや支え合いを目的とした自助グループに対して、認知行動療法を提供するというものです。専門家の関わりを必要とするものの、1:1ではなく1:多にできる、あるいは、当事者間での相互支援が期待できるという点で、1:1で行われる認知行動療法を補完できると考えられています。

⑦ セルフ型

 セルフヘルプ用の書籍などを利用し、自ら問題に対処する力を伸ばせるよう支援する、というものです。厚労省が行っている研究事業で、資料が提供されていたりもします。行動活性化法やコラム法などは、そのひな型もありますので、利用してみても良いのではないでしょうか。

厚労省ホームページ
うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf

⑧ コンピュータ支援型

 WEBなどを利用した方法です。上手に利用すれば、対人で行う認知行動療法に匹敵する効果が期待できると考えられているだけでなく、行動の記録化などを含め、一定の作業をコンピュータで行うこともできるため、効率よく認知行動療法を行えるという利点があると考えられてもいます。

(2) 認知行動療法を試してみたいという場合

本格的な認知行動療法を受ける前に、認知行動療法とはどのようなものか、具体的に体験してみたいという場合、以下のWEBサイトで認知行動療法の技法を体験できます。ただし、ここで行われているのはあくまで「技法の練習」であり、治療ではないという点は十分留意ください。

こころのスキルアップトレーニング ホームページ
http://www.cbtjp.net/

参考:
厚労省ホームページ
うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf

公益社団法人 日本精神神経学会 精神神経学雑誌 ONLINE JOURNAL日本精神神経学会 ホームページ
うつ病の認知療法・認知行動療法
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1150050539.pdf

こころのスキルアップトレーニング ホームページ
http://www.cbtjp.net/

最後に

認知行動療法は、人の認知に着目した、精神疾患・精神障害の治療に一般的に用いられる精神療法です。認知の仕方は一人ひとり異なりますが、それが否定的な見方に偏っていると、物事の良い面をとらえられないばかりか、事実とは言えないようなことまで否定的な事実として受け取っていくようになります。そのような認知の積み重ねは、否定的な見方をより強化していってしまうという面もあります。

認知行動療法で重要視されるのは、実際の行動と、それに伴う感情の「実感」と言えます。頭であれこれ考えるのではなく、行動とそれに伴う思考や感情を見直すことで、認知のバランスを整えていこうというアプローチで治療していくということです。認知行動療法の基本は、1:1での対話ですが、最近では書籍やWEBなどを利用した簡易型の認知行動療法もあります。

昨今、一般の方にも流行した「アンガー・マネジメント」や「アドラー心理学」なども、土台となる考え方は認知行動療法と同じもの。それだけ普遍的で、効果が見込まれる治療法であるとも言えるのではないでしょうか。
なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
心の健康
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html
うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf

認知行動療法センター ホームページ
認知行動療法とは
http://cbt.ncnp.go.jp/guidance/about
臨床試験のご紹介
http://cbt.ncnp.go.jp/cbt/trial_top

公益社団法人 日本精神神経学会 精神神経学雑誌 ONLINE JOURNAL日本精神神経学会 ホームページ
うつ病の認知療法・認知行動療法
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1150050539.pdf

日本認知療法・認知行動療法学会 ホームページ
http://jact.umin.jp/manual.shtml

こころのスキルアップトレーニング ホームページ
http://www.cbtjp.net

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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