精神障害のあるの方の就労 ~社会での自立と活躍への道

精神障害

はじめに
精神障害を含む障害のある方に対し、国としての対策をまとめ障害者総合支援法。社会を構成する公的機関や企業、社会で活躍できるよう能力や技能の開発を支援する学校や機関にも、必要な対応を示し、その実行を求めています。

一方で、精神障害を含む障害のある方に対し、社会で活躍できるよう努力することが求められているということでもあります。ここでは、精神障害を含む障害のある方の社会での自立と活躍の道、就労についてまとめました。

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1. 社会での自立と活躍への道

「図-精神障害のある方が社会で働く・活躍するためのルート」

精神障害のある方が、各学校の卒業後、社会で働く・活躍するためのルートには、大きく図のようなものがあります。精神障害のあると言っても、その程度は人それぞれでもあるため、「このルートが最適」というものは残念ながらありません。ただこれは、「最適なルートがどれかとは言えないこと」は、障害のある方もない方も同じこと。その意味では、精神障害があるから何らかの支援がされて当然、あるいは、特別なルートがあって当然というような考えは捨てるべきと言えるでしょう。

参考:
文科省ホームページ 特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/013.htm

2. 最も大切なこと ~生活面・就労面の両面から、「できること」「できないこと」を明確にする

「図-就職するときに考えること」

上記のように、社会で働く・活躍するためのルートは複数あります。では、ルートを選択するにあたって何が大切になるのでしょう? いわゆる一般の方が就職する場合でも必要になるポイントと、障害があるから考える必要があるポイントと、を分けて考えていくとわかりやすいのではないでしょうか?

(1) 就職するときに考えること

一般の方が就職先候補を選ぶとき、まずは自分の興味や関心、将来やりたいことなどを考えるのではないでしょうか? そして、待遇面や勤務地や勤務時間などの条件などを下に候補を絞りこんでいく。これ精神障害のある方であっても同じなのではないでしょうか? 履歴書の一般的な様式も思い浮かべてみてください。経歴などに加え、賞罰や特技を記入する欄があったのでは? このように考えると、やはりまず大切なことは、自分のやりたいことが何か? ということであり、それが希望する企業側のニーズと合致するのかどうか? ということでしょう。

(2) できること、と、できないことは何か?

次に考えるのは、障害があるからこそ、重点的に考える必要のあるポイントです。具体的には、物理的に、あるいは客観的にみて、何ができて、何ができないか、ということでしょう。いくら就職したとしても、またその職に関しては能力を発揮できたとしても、それが続けられる条件や環境を整え、維持できないと、長い期間のうちに無理がたたったりするなど、問題が発生する可能性が高まるから、です。できること、できないこと、を洗い出すとき、「できないこと」は、不可能・やるには支援が必要・できるようになっても大幅に時間などの労力がかかること・努力でできること、の4段階程度に分けて考えるとよいのではないでしょうか。

① 生活面

仮に「朝、起きることがどうしても不可能」というケースを考えてみましょう。他の面は全く問題なく、むしろ優秀、なんでもできる、としても、「朝起きられないこと」は、就業面で多くの問題を生じさせてしまう可能性が高まります。例えば、重要な打ち合わせに度々遅れる、など。いくら素晴らしいアウトプットをできても、その後活躍すること自体が厳しいものとなってしまいます。このような場合、就業時間に大きなルールがないような企業を選択すべきでしょう。生活面でできないことがあるなら、それを条件に、就労先を考えることはとても重要なことです。

② 就労面

仮に「大きな音がするような環境で大きなストレスがかかる」というような場合、常に機械の音がするような工場などでの就労は難しいと言えるでしょう。一方で、静かなオフィススペースでするような仕事が中心ならば、能力を発揮することは十分可能と考えられます。障害のある方にとって就労環境は就労先の選択に非常に重要な要素と言えるでしょう。個別のワーク用ブースを用意している企業等もありますので、「実際の就労環境」を確かめること、も、就労先の選択には欠かせないチェックポイントと言えます。

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3. 社会で活躍する道1 ~一般企業への就職

一般企業への就職には、一般枠での就職と障害者枠での就職との大きく2つの方法があります。

(1) 一般枠での就職

採用~就業~その後の社会人生活に至るまで、一般の方と同一の条件で歩む道です。精神障害のある方のうち、特に高機能自閉症や学習障害などの発達障害のある方の相当数が、気づかぬまま、あるいは気づいていても、このルートを選んでいらっしゃいます。

① メリット

何らかの問題が発生しない限り、企業側に精神障害のあるであることを告知する必要がありません。障害があることを知られたくないというような場合、この道を選ぶことは可能です。

② デメリット

まず採用において、いわゆる一般の方と同じ土俵で競争することになります。また、採用後も、本来なら必要な支援が得られにくい状況になると言えるでしょう。

(2) 障害者枠での就職

障害者雇用促進法という法律をご存じでしょうか? 障害のある方が社会で活躍できることを促す法律で、差別の禁止や、文章のみではなく必要に応じて図式化して説明するなどの合理的な配慮の提供義務を企業に課す法律です。また、企業はこれまでも、障害者雇用率制度の下、身体障害のある方・知的障害のある方の雇用が義務づけられていましたが、2018年3月からは、知的障害以外の精神障害のある方もこの対象に加えられ、また、義務が発生する企業もこれまでの従業員数50人以上の企業から45.5人以上の企業へと、対象が拡大されることになっています(実際には5年間の猶予期間が設定されています)。

① メリット

障害者枠という特別な枠組みの中で就職が可能です。人気の企業などは、一般枠での競争倍率が数千倍になるようなケースもあります。このような企業への就職を希望する場合でも、障害者枠での就職であれば、競争する相手は障害のある方々に限られますし、その結果、競争倍率が一般枠と比較すれば低い、というようなケースも考えられます。
また、企業側も障害者枠で採用することで、国からの助成金などを含めた様々な支援が得られるというメリットもあります。

② デメリット

障害があることを、就職希望先企業に通知する必要があります。

参考:
厚労省ホームページ 障害者雇用促進法の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html

4. 社会で活躍する道2 ~職業訓練校に通い就職を目指す

職業訓練校とは、社会で活躍するために必要な技能を身につけるための専門機関です。公的機関が運営する職業訓練校の他、国などから委託された民間企業などによる職業訓練コースなどがあります

(1) 公的な職業訓練校

障害のある方を対象とした職業訓練の専門校である障害者職業能力開発校が、全国に19校、設置されています。うち、国立機構営校が2校、国立県営校が11校、県立県営校が6校あります。

① 国立機構経営校 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構について

高齢・障害・求職者雇用支援機構は、高齢者の雇用の確保、障害者の職業的自立の推進、求職者その他労働者の職業能力の開発及び向上のために、高齢者、障害者、求職者、事業主等の方々に対して総合的な支援を行っている独立行政法人です。職業訓練校のうち国立機構営校2校を運営しています。

1) 中央障害者職業能力開発校・吉備高原障害者職業能力開発校
同校では、精神障害のうち知的障害のある方向けのコース、高次脳機能障害・発達障害・精神障害のある方向けのコースを設置しています。(※ただし、2校の間で設置されているコースは異なります)
・知的障害のある方を対象としたコース:販売・物流ワーク、ホテル・アメニティワーク、オフィスワーク、事務・販売・物流ワーク、厨房・生活支援サービスワーク
・高次脳機能障害・発達障害・精神障害のある方向けのコース:オフィスワーク、物流・組立ワーク

また、その他にも、以下のような障害の有無に関わらない職業訓練を実施しています。
・メカトロ:機械CAD・電子技術・組立技術など
・建築:建築CAD
・ビジネス情報:IT系スキル、会計等

上記2校の運営の他にも、精神障害を含む障害のある方に、以下のような支援を行っています。

2) 地域障害者職業センター
就職を希望する精神障害を含む障害のある方に、
・本人の希望等を踏まえながら職業適性を評価、必要な支援内容などを含む個別の「職業リハビリテーション計画」を策定する
・その職業を行う上での課題把握やその改善、職業に関する知識の習得、社会生活技能等の向上を支援する
・就職後の職場適応に関するアドバイスの実施する
などの支援を行っています。自分の地域障害者職業センターは、全国各地に設置されています。この施設は障害手帳の有無に関わらず利用できるとのこと。自分のできること、できないことを客観的に把握したい場合など、利用を検討してみるのもよいでしょう。

② 国立県営校・県立県営校

国立県営校・県立県営校は、それぞれ特色のある職業訓練校を目指しながら、障害のある方の支援を行っています。なお、設置されているのは以下のとおりです。

1) 国立県営校:北海道、宮城県、東京都、神奈川県、石川県、愛知県、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県、鹿児島県
2) 県立県営校: 青森県、千葉県、静岡県、愛知県、京都府、兵庫県

(2) 民間での職業訓練

企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関などが、精神障害を含む障害のある方の職業訓練を受託し、実施しています。
職業訓練の内容はとして、以下のコースがあります。
① 知識・技能習得訓練コース(知識・技能の習得)
② 実践能力習得訓練コース(企業等の現場を活用した実践的な職業能力の開発・向上)
③ e-ラーニングコース(IT技能等の習得)
④ 特別支援学校早期訓練コース(特別支援学校在学中から実践的な職業能力の開発・向上)
⑤ 在職者訓練コース(雇用継続に資する知識・技能の習得)

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参考:
厚労省ホームページ 障害者の態様に応じた多様な委託訓練の概要
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000066670.pdf
高齢・障害・求職者雇用支援機構ホームページ 障害者の雇用支援
http://www.jeed.or.jp/disability/index.html

5. 社会福祉施設で生活しながら今後を考える

社会福祉施設とは、高齢者、児童、障害のある方、生活困窮の方などに、社会生活を営む上で必要な日常生活の支援・技術の指導などを行うことを通じて、その方々が自立してその能力を発揮できるようになるよう支援することを目的としている施設です。

1) 施設数と定員

精神障害のある方の支援施設には、障害者支援施設、旧知的障害者福祉法による知的障害者援護施設、旧精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による精神障害者社会復帰施設の大きく3つの施設があります。それぞれの施設数と定員は以下の通りです。

(2) 社会福祉施設からの就業移行

精神障害があると言っても、その状況は人それぞれです。また、その人たちなりの成長をし、できることがはっきりとしたり、新たな興味関心が見つかったりするはず。そう考えると、一旦は社会福祉施設を利用しても、その後一般企業へ就職することは当然考えるべきことでしょう。社会福祉施設のうち、特に障害者施設は、生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援や、施設入所支援、共同生活介護及び共同生活援助を行う施設であり、就労移行を支援する施設でもあります。一方で、社会福祉施設等の障害福祉サービスから一般企業への就職は、3%程度というのが現状。この事実から考えるべきは、社会福祉施設が必ずしも就職支援を得意とはしていなかったり、積極的ではなかったり、という現実がある、ということです。社会福祉施設を選択する際には、実際に一般企業に就職した方がどの程度いるのか、就労に向けてどんな支援が得られるのか、なども確認することが重要と言えるでしょう。

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参考:
厚労省ホームページ 
社会福祉施設
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/10-2/kousei-data/PDF/22010804.pdf

障害者の就労支援対策の状況
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/shurou.html

最後に

いかがでしたか? 精神障害を含む障害のある方の国としての対策をまとめたものとして、障害者総合支援法という法律があります。この法律は、障害者自立支援法などを発展させ、統合された法律。障害のある方にとっても、法に基づく日常生活・社会生活の支援が得られ、社会参加の機会があり、地域社会において生活していけること、そのために社会的障壁をなくしていくことを総合的かつ計画的に行うよう、その理念を示した法律です。

つまり、精神障害を含む障害のある方に対して、社会全体のこれまでの支援内容が不十分だったこと、そしてその状態を解消しなければならないと国が認めているということでもあります。そして、不十分だった支援内容を改め、社会を構成する公的機関にも、企業にも、社会で活躍できるよう能力や技能の開発を支援する学校や機関にも、必要な対応を示し、その実行を求めています。

一方別の見方をすれば、精神障害のある方であっても、社会で活躍できるよう努力することが求められているということでもあります。障害の有無に関わらず、それぞれが自分のできることで、かつ、自分がやりたいことで能力を発揮する社会を目指す時代、ということもできるでしょう。またそんな時代だからこそ、誰かに言われたから、周りがこうだからではなく、自分の意志で自分の将来を選択していくことが大切になるのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

文科省ホームページ 特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/013.htm

厚労省ホームページ 
障害者雇用促進法の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html
障害者の態様に応じた多様な委託訓練の概要
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000066670.pdf
社会福祉施設
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/10-2/kousei-data/PDF/22010804.pdf
障害者の就労支援対策の状況
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/shurou.html

高齢・障害・求職者雇用支援機構ホームページ 障害者の雇用支援
http://www.jeed.or.jp/disability/index.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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