日中一時支援事業とは? ~ 放課後支援事業や短期入所との違いも含めて

日中一時支援の場所
発達障害

はじめに
障害者福祉サービスは、基本的には障害のある方の支援を中心に設計されています。しかし、その日常の支援は、保護者の方を中心としたご家族の方が担われていると言えます。

そのご家族の方が必要な休息を得られない場合、さまざまな問題が起こりやすくなると考えられます。

ここでは、そのようなご家族の方の支援を目的としたサービスである「日中一時支援事業」について、そのサービスの内容や提供されている背景、その他のサービスとの違いなどを中心にまとめています。



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1. 日中一時支援事業とは?
(1) 日中一時支援事業とは? ~その目的は、「ご家族の方の一時的な休息を図る」こと

「図-日中一次支援事業とは?」
日中一次支援事業とは?

日中一時支援事業は、障害者総合支援法の下の地域生活支援事業に位置づくサービスで、厚労省の通達によれば、次のような目的で行う事業とされています。

障害者等の日中における活動の場を確保し、障害者等の家族の就労支援及び障害者等を日常的に介護している家族の一時的な休息を目的とする。
(出典:地域生活支援事業の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/chiiki/gaiyo.html)

ポイントとなるのは、「家族の一時的な休息を図る」という点であり、そのために「日中」「一時的に」障害のある方の活動の場の確保するサービスだということです。

(2) 「家族の一時的な休息」の重要性

「図-休息が重要となる理由」
休息が重要となる理由

障害のある方を、日常的に支援されている保護者の方を中心としたご家族の方が、十分とは言えないまでも、最低限の休息をとることは非常に重要なことです。障害のある方の支援は、その状況による部分はあるものの、非常に負担の大きいものだと言えるからです。

無理が重なったとき、結果的にさまざまな問題を引き起こしてしまう可能性があります。

① 障害のある方を支えるご家族の方への負担

障害のある方のいらっしゃるご家庭では、しくみや制度の不十分さもあり、実際のところ相当の努力を求められていることでしょう。そのようなご家族の方にとっての負担は、次のように整理できると考えられています。

1) 身体的負担
身体的負担としては、「障害やその症状が重くなり、支えきれない」、「コミュニケーションが難しいため、疲れ、つらくなる」、「加齢による体力的な限界」、「支援されている方の体調が悪化すると、十分な支援ができない」、「介護で背中や腰等を痛めてしまい、加齢によってさらに辛い」などが考えられます。

2) 精神的負担
精神的負担としては、「支援をする方自身のための時間やゆとりが持てない」、「常に支援が必要なため、負担やストレスになる」、「疲れがとれない、リフレッシュできない」、「障害のある方に何かあった時が心配」、「支援をする方が支援できなくなった時の生活を考えると不安でたまらない」などが考えられます。

3) 経済的負担
経済的負担としては、「介護のため、働けない」、「支援されている方が働けないため、障害のある方の年金が生活費の支えになっている」、「年金収入等が少ないため、生活が苦しい」、「年金収入等では、支援をする方が支援できなくなった時の生活が不安」、「障害や症状が重くなり、医療費の負担増が不安」などが考えられます。

② 虐待という問題

上記のような負担の中で、残念ながら起こってしまうことに「虐待」があります。

厚労省が発表したデータによると、2016年度に虐待を受けた障害のある方の数は3,198人で、そのうち保護者の方・ご家族の方を中心とした養護者によるものが1,554人となっています。

なお、養護者による虐待の疑いとして通報のあった件数は4,606件。虐待の内容については、身体的な虐待が6割、心理的虐待が3~4割、経済的虐待、放置・放棄がそれに続いています。

【関連記事】
障害のある方への虐待という問題
https://jlsa-net.jp/ti/sgi-gyakutai/

高齢者虐待防止法 認知症、高齢者への虐待問題を考える
https://jlsa-net.jp/kn/gyakutai/

③ 保護者の方を中心としたご家族が障害のある方を支援できなくなるという問題

すでに見たように、支援の中心となっている保護者の方やご家族の方にとって、障害のある方の支援ができなくなってしまうことへの不安は非常に大きなものと考えられます。そして、それは決して亡くなられた場合だけの問題ではないと考えられます。

たとえば、支援されている方への負担が限界に達し、精神障害を患ってしまう、障害のある方の成長に伴い身体的な負担が大きくなり、結果、支援される方ご自身が身体に何らかの不具合を抱えるようになってしまうといったような場合でも、同じように障害のある方を直接支援することが難しくなるケースが想定されます。

④ 老障介護という問題

加齢に伴う衰えは、誰しもが避けて通ることができません。その一つとして考えておく必要があることに認知症があります。認知症の多くは、その症状が徐々に、不可逆的に進行していくとされています。つまり、認知症は、現在の医療技術では基本的に治らない病気ということです。

しかし、認知症は脳の血管の障害、たとえば脳梗塞や脳出血などでも場合によっては生じることが知られています。つまり、脳の状態を良好に保つことは、認知症の予防につながるということです。

脳の状態を良好に保つには、食生活、適度な運動、余暇活動、知的活動、呼吸、そして、休養が有効と考えられています。このような認知症を予防する習慣を生活に取り入れることは非常に重要なことなのです。

一方で、障害のある方の支援に手一杯で、良いと考えられる習慣を取り入れる時間すら持てないとしたら、その分認知症の発症リスクが高まることになってしまいます。

支援の中心となるご家族の方が認知症を患うことなく、できるだけ長い期間に渡って障害のある方を支援するためにも休養は非常に重要だと言えるのです。

(3) 障害者総合支援法とその支援内容

障害者総合支援法は、障害のある方の基本的人権を尊重し、その尊厳を保つという目的の下定められた法律で、障害者自立支援法を発展させた法律です。この法律で定められていることは、障害のある方ご自身への支援が中心となっています。

一方でこの法律には、障害のある方々が十分な支援を受けられるようにするには、日常的な支援を担われている保護者を中心としたご家族の方の支援も必要だという考え方も含まれています。

① 理念

障害者総合支援法では、障害の有無にかかわらず、以下のような社会を実現できること、が理念として明確に定められました。

・誰もが等しく基本的人権を生まれながらに持っていること
・かけがえのない個人として尊重されるもの
・相互に人格と個性を尊重し合いながら、共生する社会を実現すること
・可能な限りお住まいの地域で必要な支援を受けられること
・社会参加の機会が確保されること
・どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと
・社会的障壁の除去

② 支援の対象となる方

これまで支援が行き届かなった難病等の疾患のある人についても、支援対象者として新たに加わることとなりました。これにより、身体障害のある方、知的障害や発達障害なども含む広義の精神障害のある方を含め、サービスを受けられる方の範囲が広がりました。

また、身体障害を除き、障害者手帳がなくても、医師の診断書があれば使うことができるようになりました。

③ 障害者総合支援法に基づくサービス

障害者総合支援法に基づくサービスは、以下のように体系化されています。

1) 自立支援給付
・障害福祉サービス
<介護給付>
居住介護、重度訪問介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、施設入所介護
<訓練給付>
自立訓練支援(生活訓練)、宿泊型自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型)、
就労継続支援(B型)、共同生活援助

・自立支援医療
・相談支援事業
<計画相談支援給付>
<地域相談支援給付>
・補装具

2) 地域生活支援事業
・市町村事業
相談支援、コミュニケーション支援、日常生活用具、移動支援、
地域活動支援センター設置、福祉ホーム設置等
・都道府県事業
広域支援、人材育成等

日中一時支援事業は、このうちの、地域生活支援事業に位置づくサービスです。

【関連記事】
精神障害のある方を支える法律 ~障害者総合支援法と支援区分
https://jlsa-net.jp/sei/syougaisyasougoushienhou/

(4) 地域生活支援事業とは?

地域支援事業は、お住まいの都道府県や市町村が主体となって行う事業で、地域で生活する障害のある方のニーズを踏まえ、地域の事情に応じて、各地域自治体の創意工夫で事業の詳細を決定するよう求められています。

このため、お住まいの地域によって、実施されているサービスやその内容に違いがあります。

地域生活支援事業が設けられている背景として、人の数、年齢層、地理的環境、その他の福祉サービスの環境など、多くの違いがあり、一律でのサービスには限界があるという点があります。

なお、地域支援事業の目的は、以下のように定義づけられています。

「障害者及び障害児が、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、地域の特性や利用者の状況に応じ、柔軟な形態により 事業を効果的・効率的に実施。もって、 障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無に関わらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与する。」
(出典:厚労省ホームページ 地域生活支援事業について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/chiiki/gaiyo.html

参考:
電子政府の総合窓口 e-Gov
障害者総合支援法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000123&openerCode=1
厚労省ホームページ
障害福祉サービスの利用について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000059663.pdf
地域生活支援事業について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/chiiki/gaiyo.html
地域生活支援事業の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/chiiki/gaiyo.html
平成28年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)
http://mobile.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000189859.html
認知症対策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html

2. 日中一時支援事業の具体例

日中一次支援事業の具体例としては、次のようなものがあります。

(1) 日中一次支援事業の具体例 ~ 印西市の場合

① 地域の状況

印西市では、次のような点が課題となっていました。
1) 学童保育、放課後等デイサービス、クラブ活動や塾など、児童生徒が学校以外で活動する場が少ない
2) その状況を解消すべく、ボランティアなど中心に個人宅で障害のある方を受け入れていた
3) ただし、その受け入れ能力には限界があった

② 提供しているサービス

このような状況の中で、廃校となった学校跡地を利用し、以下のような場を提供する日中一次支援事業が生まれました。

1)出会いの場:放課後の有意義な過ごし方ができる場
2)交流の場:障害児と保護者と地域の人等との交流の場
3)相談の場:困っていること、迷っていることを一緒に考えていく場

(2) 日中一時支援事業の特徴

日中一次支援事業の特徴は、後ほど見る放課後等デイサービスと比較するとわかりやすいでしょう。その大きな違いの一つは提供しているサービスです。

放課後等デイサービスは、その役割機能を特定されているのですが、日中一次支援事業は、放課後等デイサービスのような役割機能の制限がつけられていないという特徴があります。

また、地域との連携が綿密に取られているという点もその大きな特徴の一つです。

具体例で見ている印西市の例をとっても、放課後等デイサービスで指定されるようなサービスでなくても障害のある児童生徒が活動する場は必要という状況があったことがわかります。

つまり、地域のニーズと事業者が提供可能なサービスの折り合いをうまくつけたサービスとなっているということがわかります。

参考:
厚労省ホームページ
9.日中一時支援事業の取組み(千葉県印西市)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/chiiki/dl/jirei09.pdf

3. 日中一時支援事業と短期入所(ショートステイ)、放課後支援事業、との違いは?

「図-日中一時支援事業と短期入所(ショートステイ)、放課後支援事業の主な違い」
日中一時支援事業と短期入所(ショートステイ)、放課後支援事業の主な違い

(1) 短期入所(ショートステイ)とは?

短期入所(ショートステイ)とは、障害者福祉施設などの施設に夜間も含めて短期間入所してもらい、食事、入浴、その他の必要な日常生活上の支援や機能訓練などを行うサービスです。

ご家族の方が冠婚葬祭や出張などで一時的に障害のある方を在宅で支援できない場合などのほか、ご家族の方が休息の時間を取るための利用も可能です。

(2) 放課後等デイサービスとは?

放課後等デイサービスは、発達障害を含む障害のある小学生~高校生までの児童が、学校での授業の終了後や、夏休みなど長期休暇のときに利用できる施設・サービスです。2012年、児童福祉法改正により設置されました。

① 放課後等デイサービスの役割(設置ガイドライン)

放課後等デイサービスは、基本的には以下のような視点でサービスを提供するよう、ガイドライン、つまり、役割が設定されています。

1) 自立支援と日常生活の充実のための活動
2) 創作的活動・作業活動
3) 地域交流の機会の提供
4) 余暇の提供

② 放課後等デイサービスのサービスのタイプ

上記のような役割の中で、提供するサービスや各施設の特徴という視点から分類すると、大きくは次の3つのタイプがあると考えられます。どのようなタイプのサービスを提供するか、は、サービスを提供する事業者によって異なるということです。

1) 学童保育にあたるようなサービスを提供するタイプ
2) 専門的な療育サービスを提供するタイプ
3) 習いごとのような感覚で利用できるタイプ

【関連記事】
東京都 「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」の拡充策
https://jlsa-net.jp/s-sol/sgs-schoolelse/

発達障害のある方の就学期の発達を支援する放課後等デイサービスという施設・サービス
https://jlsa-net.jp/hattatsu/hattatsu-dayservice/

厚労省ホームページ
障害福祉サービスの利用について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000059663.pdf
放課後等デイサービスガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf

独立行政法人 福祉医療機構 WAMNETホームページ
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/handbook/service/c078-p02-02-Kaigo-12.html

最後に

日中一時支援事業は、障害のある方の日常的な支援を担われている保護者の方を中心としたご家族の方が、必要な休息が得られることを目的に、障害のある方の日中の活動の場を一時的に提供するサービスです。

この背景として、必要な休息が得られない場合、過負担によるさまざまな問題が発生する可能性がある点が上げられます。

そのサービスの内容は一律に定められているわけではなく、地域ごとの実態やニーズに合わせて設計されることになります。利用される場合にはその点も踏まえて、どのようなサービスが提供されているのかなど、きちんと確認することが重要になると言えるでしょう。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考:
電子政府の総合窓口 e-Gov
障害者総合支援法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000123&openerCode=1

厚労省ホームページ
障害福祉サービスの利用について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000059663.pdf
地域生活支援事業について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/chiiki/gaiyo.html
地域生活支援事業の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/chiiki/gaiyo.html
平成28年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)
http://mobile.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000189859.html
認知症対策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
9.日中一時支援事業の取組み(千葉県印西市)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/chiiki/dl/jirei09.pdf
放課後等デイサービスガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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