発達障害のある方の就学期の発達を支援する放課後等デイサービス

発達障害

はじめに
発達障害を含む障害のある方の就学期の発達を支援する施設・サービスは複数あります。その代表的なものに小学生~高校生までの学校以外での活動の場を提供する放課後等デイサービスがあります。ここでは放課後等デイサービスについて、その位置づけや提供されるサービス、利用までの流れなどをまとめています。



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1. 小学生~高校生までの放課後生活の場 ~放課後等デイサービスとは?

「図-放課後等デイサービスの位置づけ

放課後等デイサービスは、発達障害を含む障害のある小学生~高校生までの児童が、学校での授業の終了後や夏休みなど長期休暇のときに利用できる施設・サービスです。2012年、児童福祉法改正により設置されました。
それまでは、障害の種類別に施設・サービスが分かれていましたが、この改正で障害のある子どもが通える施設は、年齢や目的別に以下に再編成されました。

(1) 児童発達支援
(2) 医療型児童発達支援
(3) 放課後等デイサービス
(4) 保育所等訪問支援

また、この改正のタイミングで、お住まいの地域で乳幼児の頃から高校を卒業するまで一貫したサービスを受けられるよう、これまで不足していた上記のような施設を増やすことを目的に、大幅に規制が緩和されました。この結果、多くの放課後等デイサービスが誕生、目的に合わせて複数の施設を選択したり、施設同士を比べたりしながら選択できるようになりました。

参考
厚労省ホームページ
障害児支援の体系
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000117930.pdf

2. 放課後等デイサービスの役割① ~障害のある方ご自身にサービスを提供する、という視点

「図-放課後等デイサービスが提供するサービス」
放課後等デイサービスが提供するサービス

放課後等デイサービスの大きな役割は、発達障害を含む障害のある方ご自身に、社会での生活を豊かにするためのサービスを提供するということです。施設ごとに提供されるサービスが異なりますが、基本的には以下のような視点でサービスを提供するよう、ガイドラインが定められています。

(1) 自立支援と日常生活の充実のための活動

自立支援と日常生活の充実のための活動とは、障害のある方の発達状況に応じて、必要となる基本的な日常生活動作や自立した生活をおくれるようにすることを目的とした活動です。障害のある方が意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験を積み重ね、自己肯定感を育めるようにするとされています。

将来の自立や地域生活を見据えた活動を行う場合には、学校で行われている教育活動を踏まえ、方針や役割等を学校とも連携を図りながら支援することが求められています。

(2) 創作的活動・作業活動

創作活動では、表現する喜びを体験できるようにすることが求められています。日頃からできるだけ自然に触れる機会を設け、季節の変化に興味を持てるようにする等、豊かな感性を培うことが目的とされています。

(3) 地域交流の機会の提供

地域交流の機会の提供とは、障害があるがゆえに、社会生活や経験の範囲が制限されてしまわないように社会経験の幅を広げていく機会を提供するサービスです。他の社会福祉事業や地域で行われている多様な学習・体験・交流活動等との連携、ボランティアの受入れ等により、積極的に地域との交流を図っていくとされています。

(4) 余暇の提供

余暇の提供では、障害のある方が希望する遊びやご本人がリラックスできるような練習などの活動を自ら選択して取り組む経験を積んでいくことを目的に、多彩な活動プログラムを用意、ゆったりとした雰囲気の中で行えるように工夫することが求められています。

なお、ここで言う活動プログラムとは、事業所の日々の支援の中で一定の目的を持って行われる個々の活動のことをさし、障害の特性や一人ひとりの課題、平日・休日・長期休暇などの時期的なものに応じて柔軟に組み合わせ、実施することが求められています。

参考
厚労省ホームページ
障害児支援の体系
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000117930.pdf
放課後等デイサービスガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf

3. 放課後等デイサービスのタイプ

これまで見てきたようなガイドラインに沿ったサービスが提供されているのが放課後等デイサービスです。特に分類基準などがあるわけではありませんが、提供するサービスや各施設の特徴という視点から分類すると大きくは次の3つのタイプがあると考えられます。

(1) 学童保育にあたるようなサービスを提供するタイプ

自由に過ごす時間が比較的多い施設です。特定のプログラムに特化するのではなく、自立した日常生活を営むために必要な訓練を行う時間と学校の宿題をする時間、遊ぶ時間などを時間割のようにして、サービスを提供するタイプの施設・サービスです。

(2) 専門的な療育サービスを提供するタイプ

行動面、学習面、対人コミュニケーション面など、さまざまな視点から、障害のある方一人ひとりに合わせた療育プログラムを提供するタイプの施設・サービスです。ソーシャルスキルトレーニングや独自の療育プログラムが組まれている場合もあります。このため、作業療法士などの専門資格を持つ方がサービスを提供している施設もあります。

3) 習いごとのような感覚で利用できるタイプ

 運動や楽器の演奏、書道や絵画などの、特定のプログラムによるサービス提供を行うタイプの施設・サービスです。一般的な習いごとのような感覚で利用できる施設だと言えるでしょう。

参考
厚労省ホームページ
障害児支援の体系
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000117930.pdf
放課後等デイサービスガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf

4. 放課課後デイサービスの役割② ~ご家族がリフレッシュできる機会をつくる、という視点

発達障害を含む障害のある方の世話をする家族にもリフレッシュや休息は必要です。介護や世話を放課後等デイサービスに一時的に代行してもらうことで、その時間を利用して普段できないことをしたり、障害のある方以外の子どもとコミュニケーションをとったり、仕事や家事をしたりといった、自分のための時間つくることができるということでもあります。

また、休息の時間を得ることで、障害のある方への接し方を見直したり、あらためて前向きになったりといった機会にすることもできると考えられます。

参考
厚労省ホームページ
放課後等デイサービスガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf

5. 放課後等デイサービスを利用するには?
(1) 放課後等デイサービスの対象

放課後等デイサービスが利用できる方は、「身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童(発達障害児を含む)」とされています。

「障害がある」とされると、療育手帳などの手帳を持っていないと利用できないと思われている方もいらっしゃるようです。しかし実際には、専門家などの意見書などを提出、放課後等デイサービスの利用が認められ、「受給者証」が発行されれば放課後等デイサービスを利用することができます。

なお、ここで言う「児童」とは、小学校・中学校・高校に通っている子どもで6歳~18歳までの方です。ただし、18歳を過ぎ、引き続きサービスを受けることが必要と判断されれば、満20歳に達するまで利用することができます。

(2) 放課後等デイサービス利用までの流れ

「図-放課後等デイサービス、利用までの流れ」
放課後等デイサービス、利用までの流れ

放課後等デイサービスを利用するまでの流れは次のとおりです。

① 利用相談をする

市区町村の福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などに、サービスを利用したい旨を相談します。放課後等デイサービス以外のサービスもあるため、どんなサービスを利用したいかなどの聞き取りが行われることもあります。どんな目的で、いつ、どのようにサービスを利用したいか検討しておくとよいでしょう。

また、窓口では、各地域で実際のサービスを提供している事業所などの情報を提供してもらえる場合もあります。また、この相談のタイミングでは、サービスの利用申請に必要なものや申請の流れを確認しておくとよいでしょう。

② 施設見学・相談

実際に利用したい事業所を見学しましょう。体験ができる施設もあります。その際に利用プランなどについても具体的に相談するとよいでしょう。また、 事業所の意見書など地域によって申請に必要な書類がある場合は作成を依頼します。

③ 障害児支援利用計画案の作成

利用したいサービスが決まったら、障害児支援利用計画案を作成します。市区町村にある相談支援事業所に行くなどして聞き取り調査をしてもらい、受給申請に必要な障害児支援利用計画案を作成してもらう方法とセルフプランとして保護者の方などご家族の方や支援者の方が作成する方法と大きくは2つの方法があります。 

④ 申請書等の提出

 障害児支援利用計画案ができたら、その計画案と障害児通所給付費支給申請書を市区町村の福祉担当窓口に提出します。このとき、保護者の方の所得等を証明する書類、保有しているようであれば療育手帳などを提示します。手帳を保有されていない場合、児童相談所・市町村保健センター・医療機関などの意見書などの提出が必要になる場合があります。

必要な書類は市区町村によって異なりますので、必要となるものは事前に確認しておくことが大切と言えます。

⑤ 調査

放課後等デイサービスの利用対象となるか、その条件を満たしているか、また、その子どもに必要だと考えられる適切なサービスの量(日数)について、市区町村の支給担当窓口によって検討されます。面接調査や訪問調査では、ご本人の障害や生活面での状況の聞き取りの他、サービス利用意向の聞き取りなどが行われる場合もあります。

⑥ 審査

調査結果を踏まえて、受給者証の交付対象かどうかの審査が行われます。この審査には1~2カ月程度かかる場合もあります。
 
⑦ 受給者証の交付

放課後等デイサービスなどを利用できる対象であると判断されると、受給者証が交付されます。郵送される、直接受け取りに行くなど、受給者証の受け取り方法は市区町村によって異なるようです。

⑧ 障害児支援利用計画の作成

受給者証が交付されたら、障害児支援利用計画を作成します。障害児支援利用計画案と同様、相談支援事業所で作成してもらう方法とセルフプランとして保護者の方などご家族の方や支援者の方が作成する方法とがあります。

なお、相談支援事業所では、受給者証の給付決定内容、つまり、どの程度サービスを利用できるかという判定内容と利用を希望するサービス内容とを調整、また、サービスを提供する事業所と連絡を取り合った上で計画をつくってもらえます。

⑨ 事業者との契約・利用開始

受給者証と障害児支援利用計画を持って、実際に放課後等デイサービスを提供する事業所に行き、サービス利用に関する契約手続きをします。契約手続きが終わると実際のサービス利用が始まることになります。

参考:
厚労省ホームページ
児童福祉法の一部改正の概要について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsushien/dl/setdumeikai_0113_04.pdf
東京都福祉保健局 ホームページ
障害児施設
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shogai/shisetsu.html

6. 放課後等デイサービスを利用できる頻度、利用にかかる費用
(1) 利用できる頻度

放課後等デイサービスを利用できる頻度は、全員一律ではありません。受給者証によって一人ひとり受けられるサービスの量が決められているのです。受けられるサービス量は、障害のある方や保護者の方の状況・環境、利用意向などをふまえて審査され、ひと月に利用できるサービス量、つまり、放課後等デイサービス利用できる日数の上限が受給者証の発行時に決定されるのです。

このサービス量の上限範囲内で、必要なサービスを組み合わせて利用計画を立てることになります。

(2) サービスの選択 ~ 障害児支援利用計画づくりのポイント

実際にサービスを選択し、計画をつくる際には、障害のある方自身の興味や発達の状況に合わせ、様々な施設でのサービスを組み合わせていくことが多いようです。これは、施設ごとに提供されるサービスに違いがあることが主な理由ですが、相性の良い施設を探すという面もあるようです。

よって、一度決めたらずっと同じサービスを利用するのではなく、様子を見ながら計画を修正していくことが大切と言えるかもしれません。

(3) 費用

放課後等デイサービスは、受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付されることになります。つまり、利用した日数に応じてかかった費用のうち、自己負担は1割ということです。
なお、前年度の所得によりひと月に保護者が負担する額の上限が決められています。

つまり、利用する日数が多くなったとしても、下記の金額以上の負担は発生しないことになります。また、地域によっては独自の助成金がある場合もありますので、問い合わせてみるとよいでしょう。

① 負担上限月額

放課後等デイサービスのような通所施設を利用する場合、所得に応じて次の4区分の負担上限月額が設定されており、ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。

放課後等デイサービスのような通所施設を利用する場合、所得に応じた4区分の負担上限月額

※一般1は、年間の世帯所得がおおむね890万円以下が目安です。

② そのほかの費用

施設や提供するサービス内容によって、おやつ代や制作物の材料代などがかかる場合があります。

③ 食費の減免

放課後等デイサービスのような通所施設を利用する場合、食費の減免があります。

放課後等デイサービスのような通所施設を利用する場合の食費の減免

※一般1は、年間の世帯所得がおおむね890万円以下が目安です。

参考:
厚労省ホームページ
障害児の利用者負担
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/hutan2.html

最後に

 放課後等デイサービスは、児童福祉法で位置づけられているサービスで、放課後や休日に障害のある方が通える施設でもあります。提供されるサービスは、自立支援と日常生活の充実のための活動、創作的活動・作業活動、地域交流の機会の提供、余暇の提供の4種類があります。ただ、すべてのサービスを一つの施設で提供しているわけではないため、複数の施設を目的に応じて併用するのが一般的です。

また、放課後等デイサービスは、ご家族にとっては障害のある方を一時的に見守っていただけるタイミングでもあり、リフレッシュするタイミングと言うこともできます。利用の手続きは面倒な面もありますが、障害のある方の能力を引き出すとともに、ご家族の生活の充実のためにも積極的に利用するとよいのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考
厚労省ホームページ
障害児支援の体系
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000117930.pdf
放課後等デイサービスガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf
障害児の利用者負担
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/hutan2.html
児童福祉法の一部改正の概要について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsushien/dl/setdumeikai_0113_04.pdf

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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