緊急事態宣言下で福祉施設を利用する場合の注意点 ~利用すべきか、しないべきか?

発達障害

はじめに
 新型コロナウイルスの感染拡大で、全国に緊急事態宣言が発出されました。この状況下で、高齢の方、障害のある方、そして、そのご家族の方には、「日頃、利用している福祉施設を利用してよいのか」と判断に迷われている方も多いのではないかと思います。

ここでは、緊急事態宣言下で福祉施設を利用する場合の注意点と、今この状況下で福祉施設の利用をすべきか、しないべきか、を考えていくにあたって、必要と考えられる情報を整理しつつ、判断していく際の視点を検討していきます。


1. 福祉施設は、生活上必要な場所

「図-緊急事態宣言下の福祉施設の位置づけ」

高齢の方、また、障害のある方にとって、日頃からさまざまなサービスを提供する各福祉施設・事業所は、生きていく上でもっとも重要な場所の一つと考えられます。そのため新型コロナウイルスの感染拡大で、さまざまな業種・業態への休業要請がされていますが、福祉施設はその対象とはなっていません。

東京都が「東京都緊急事態措置に関する情報」としてまとめている「対象施設一覧(令和2年4月17日19時00分)」においても、「必要な保育等を確保した上で適切な感染防止対策の協力を要請」または、「適切な感染防止対策の協力を要請」とする対象として、障害児通所支援事業所、障害福祉サービス等事業所、老人福祉法・介護保険法関係の施設が列挙されています。

つまり、日頃利用されているだろうサービスは、居宅サービス、ショートステイサービス、デイケアサービス、就労支援サービス、移動支援サービス、訪問サービス等、いずれのサービスも、継続して利用できる状態にあるということです。

福祉サービスは、不要不急ではないサービス、つまり本当に必要なサービスという位置づけなのです。

参考
厚労省
緊急事態宣言後の障害福祉サービス等事業所の対応について 令和2年4月7日
https://www.mhlw.go.jp/content/000619934.pdf

東京都防災ホームページ
東京都緊急事態措置に関する情報 対象施設一覧(令和2年4月17日19時00分)
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1007617/1007679.html

2. 緊急事態宣言下での福祉施設側の対応
(1) 必死に努力する福祉施設とその職員

この状況下でもサービスを継続して提供していくにあたり、各施設・事業所は大変な努力をされています。それは、高齢の利用者の方々、あるいは障害のある利用者の方々を、新型コロナウイルスの感染から守りつつ、必要な生活支援を継続して行うためです。

職員の方々は、毎朝の検温、マスクの着用などを徹底され、施設や送り迎えに利用する車等々の日々の消毒やこまめな換気、訪問系サービスの方は、サービス提供都度の消毒の他、利用者の方にも検温や体調に関わる質問をするなど、通常でも行われていた感染症予防対策をより深める形で、さまざまな感染対策をされています。

実際に、職員の方にお話もうかがいましたが、「自分自身が感染すること、利用者の方に感染させてしまうこと、の2つの恐怖と闘いながら、日々の生活をおくり、また、利用者の方々に接している」と言われていました。それだけのストレスが日々かかり続けているということでもあります。

また、新型コロナウイルスの感染拡大で、利用者の方、あるいは、利用者のご家族の方から、さまざまな問い合わせ等も増えているとのこと。業務量という点でも、通常以上に負担がかかっているとも言える状況なのです。

(2) 感染症の現実

 それだけの努力をされていても、残念ながらいくつかの施設・事業所で、新型コロナウイルスの集団感染が発生しています。

集団感染のきっかけを施設・事業所に持ち込んだのは、職員の方かもしれませんし、利用者の方かもしれません。これだけ世の中で感染者が出ていたら、それすらわからないわけですし、まして、誰のせいだと言うこともできません。

ただいずれであったとしてもひとつ言えるのは、福祉施設や事業所は、ひとりの感染者がいると集団感染が発生しやすい「3密=密閉、密集、密接」の要素がすべてそろっている環境にあるという点です。

もちろん先に上げたような工夫や徹底をしてはいるけれど、という環境ではあるわけです。

(3) 施設に新型コロナウイルスの感染者が確認された場合の影響

新型コロナウイルスへの感染者が、職員、利用者の方を問わず、その施設内・事業所内で確認された場合、通所系サービス、短期入所系サービスについては、その状況次第では、都道府県などが施設・事業所側に対し休業を要請する可能性が出てきます。

実はこのことは2つのことを意味します。

ひとつは、入所施設・居住系サービスは提供され続けるというものです。ご自宅と言えるその施設がサービスを停止してしまったら、利用されている方が寝食する場がなくなってしまうのですから、当然と言えば当然です。

ただ、感染が拡大しないよう、相応の生活活動上の制限が行われるのは避けられないだろうと考えられます。もちろん、PCR検査の対象になることもあると考えられますし、その結果、感染が判明する可能性がないとも言えません。

もうひとつは、日頃利用していた福祉サービスが利用できなくなる場合があるというものです。実際に休業などの対応が必要となった場合、休業する施設・事業所には代替のサービスの提供や他の施設によるサービスへの切り替えなど、利用者の方に最大限の配慮をすることが求められてはいます。

しかし、休業が必要となるような状況となったとしたら、職員の方の多くは外出禁止などの対応を求められることが避けられないはずですから、代替サービスなどを手配できるような状況ではなくなっている可能性もあるわけです。

また、仮に対応を進められる職員がいたとしても、この状況下ではどの施設・事業所も新たな利用者を受け入れる余力がない可能性が非常に高くなっていますし、仮に受け入れ可能な施設・事業所が見つかったとしても、利用されるご本人との相性が非常に悪いケースも想定されます。

厚労省
介護サービス事業所に休業を要請する際の留意点について 令和2年3月6日
https://www.mhlw.go.jp/content/000605459.pdf
社会福祉施設等の利用者等に新型コロナウイルス感染症が発生した場合等の対応について 令和2年2月 18 日
https://www.mhlw.go.jp/content/000601680.pdf

「社会福祉施設等の利用者等に新型コロナウイルス感染症が発生した場合等の対応について(令和2年2月 18 日付事務連絡)」に関するQ&Aについて 令和2年2月 21 日
https://www.mhlw.go.jp/content/000601679.pdf

3. 今、福祉施設は利用すべきか、しないべきか?
(1) 判断の基本は比較

 これまで見てきたことは、次のようにまとめることができます。

「施設・事業所は、必死に努力はしているが、福祉サービスの提供環境は3密の要素がそろう環境にあるから、その場に新型コロナウイルスが持ち込まれると、瞬く間に集団感染する可能性がある。その一方で、施設・事業所が提供する福祉サービスは、利用される方にとって、生活していく上で必要不可欠なものである。」

つまり、「あちらを立てればこちらが立たない」という関係にあるわけです。

だとすれば、比較し選択する以外に方法がないわけです。今回の場合であれば、福祉サービスを利用しないことによるデメリットと、利用した場合のデメリットとを「天秤にかけること」が必要だということです。

(2) 実際にデメリットを単純比較すると見えてくること

実際にデメリットを単純比較すると、次のように整理できるのではないかと考えられます。

まず、福祉サービスの利用を中止するという場合、新型コロナウイルスへの感染リスクは低減するのかもしれない。

ただ当然ながら、これまで受けられた福祉サービス、たとえば、バランスの取れた食事、適度な運動、清潔な身なりを維持することや、さまざまな刺激による機能低下の抑制、職能開発訓練などが受けられず、かえって生命を脅かすリスクが高まる可能性がある。

それを回避しようと、たとえば遠方にいらしたご家族の方が対応するとなれば、その方のご負担が生じることにはなり、またその方が、新型コロナウイルスの感染源になってしまう可能性がないとも言えない。

次に福祉サービスの利用を継続する場合、サービスを利用しない場合と比較すれば、新型コロナウイルスに感染するリスクが高まることは避けられそうにない。

このように整理し、比較しても、なかなか判断はできないかもしれません。ただそうではあっても、それぞれの良い点、悪い点が見えてくることで、「もしこれを優先するならばこちら」というように考えやすくはなるのではないでしょうか。

また、それをさらに一歩進めれば、ご本人やご家族の意思を反映させやすくはなるのではないかと考えられます。

(3) 「長くなる」ことを前提に

判断にあたってもうひとつ材料があるとすれば、「残念ながら、新型コロナウイルスとの闘いはしばらく続くだろう」という点があります。

日本では、感染者が1万人を超えていることが確認されていますが、これは検査を受けた結果判明した数です。無症状の方が症状のある方の数倍から数十倍いるとの報告もあることから、実際の感染者数は、数万~数十万人いらっしゃる可能性もあるわけです。

これが長期戦になるだろうと予想される一つの理由です。

仮に一度収束したとしても、人が動き出すことでいわゆる「第2波」が起こる可能性もあります。収束と言っても、日本国内で感染している方がゼロだと証明されるわけではありません。無症状の方がいるからです。無症状の方が動くことで、感染が拡大する可能性があるわけです。

また仮に日本国内が完全収束したとしても、海外がそうとは言えません。2019年の日本からの海外へ旅行された方は2000万人以上。他国に行って感染し、帰国後にうつしてしまう、そして、うつされた方がさらにうつしてしまうといったことも起こりかねないわけです。

以上が長くなると予想される理由なのですが、仮に「長くなること」を前提にしたとき、「判断した方法が、ご本人にとってもご家族にとっても、長く続けられる方法なのか?」という点は、福祉サービスを利用すべきか否かのひとつの材料にできるのではないかと考えられます。

「1カ月ならがんばれるけれど、それ以上は無理だ」というような方法だとしたら、あまり良い方法ではないのではないかと考えられるわけです。

(4) まずは利用頻度の検討をしてみては?

また判断しようとすると、「行くべきか、行かないべきか」の二者択一、「1かゼロか」で考えがちですが、答えは必ずしも「1かゼロか」である必要はありません。

たとえば、「これまで毎日利用していたところを週3回に減らす」というような、「利用頻度をコントロールすることで、新型コロナウイルスの感染リスクの低減をはかる」といった選択もできるはずです。

仮に利用者の方全員が同じように考え、利用頻度を1回ずつ減らすと仮定したら、施設・事業所の密集度も結果的に低減することになるかもしれません。

「図-今、福祉施設は利用すべきか、しないべきか?」

参考
内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第 11 回)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/senmonka_sidai_r020422.pdf
厚労省
介護サービス事業所に休業を要請する際の留意点について 令和2年3月6日
https://www.mhlw.go.jp/content/000605459.pdf
緊急事態宣言後の障害福祉サービス等事業所の対応について 令和2年4月7日
https://www.mhlw.go.jp/content/000619934.pdf
社会福祉施設等の利用者等に新型コロナウイルス感染症が発生した場合等の対応について 令和2年2月 18 日
https://www.mhlw.go.jp/content/000601680.pdf
「社会福祉施設等の利用者等に新型コロナウイルス感染症が発生した場合等の対応について(令和2年2月 18 日付事務連絡)」に関するQ&Aについて 令和2年2月 21 日
https://www.mhlw.go.jp/content/000601679.pdf

東京都防災ホームページ
東京都緊急事態措置に関する情報 対象施設一覧(令和2年4月17日19時00分)
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1007617/1007679.html

4. 緊急事態宣言下で福祉施設を利用する場合の注意点

「図-緊急事態宣言下で福祉施設を利用する場合の注意点」

(1) うつされない、だけではなく、うつさない配慮が重要

 仮に施設・事業所を利用することを決めた場合、利用する際にしっかりと押さえておきたいことがあります。それは、「うつされないだけではなく、うつさない配慮もする」ということ。

自覚症状がない場合などは特に、誰もが「自分は感染していない」と思うはずですが、新型コロナウイルスの場合は、感染していても自覚症状がないケースがあるのですから、ご自身が感染者であっても不思議ではありません。

よって、うつされないための行動として、うがい、手洗い、消毒などをしっかりと行うことはもちろん、うつさない行動としてマスクの着用なども重要なのです。

施設・事業所の利用前の検温の実施の他、微熱などちょっとしたものでも体調不良がある場合は施設の利用をお休みするといった配慮を、利用者全員が協力し合って行うことが、またご家族の方はそれをしっかり支援することが、結果的にうつされないことにもつながります。

(2) 「施設側は必死」を前提に

くり返しになりますが、福祉サービスを提供する施設・事業所側は「必死」です。自分たちが感染者を出してはならないと考え、実際に行動されています。

近頃、現場が逼迫、崩壊の危機が叫ばれる医療について、それに関わられているスタッフの方に感謝の気持ちを伝えようとする活動が流行しているようですが、感染リスクを承知で、利用される方と密に接してサービスを提供しているという意味においては、福祉の現場の方々も同様のはずです。

やはり感謝の念を持って接することが、福祉施設・事業所を利用する上でも必要でしょうし、ご家族の方であれば、実際にそのお気持ちを伝えることも大切になるのではないでしょうか。

参考
NHK
新型コロナ 厳しい勤務続く医療関係者に感謝の鐘 東京 銀座
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200420/k10012397281000.html
FNN PRIM online
「#医療従事者は私たちのヒーロー」スポーツ界が感謝のメッセージを送る
https://www.fnn.jp/articles/-/33780

最後に

新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、福祉施設を利用すべきか否か、思案されている利用者ご本人、ご家族の方がたくさんいらっしゃると思います。

実際問題として、福祉施設は、そのサービスの性質上、いわゆる3密の環境になりやすく、ひとり感染者が出ると集団感染も発生しやすいのは事実であり、利用すれば感染リスクがあることもまた事実です。

ただ、福祉施設を利用するのは、新型コロナウイルスに感染しないことが目的ではなかったはず。元々の利用目的があったはずなのです。よって、利用する、しない、それぞれのメリットデメリットをしっかり考え、利用される方にとっての最適を考えていただきたいのです。

その判断材料のひとつとして今回取り上げたのは、「新型コロナウイルスとの闘いは長くなるだろう」ということと、「利用するかしないかの二者択一ではなく、利用頻度の検討など、間をとるという考え方もできる」という2点です。

また、実際施設・事業所を利用される際の注意点にも触れさせていただきました。実は「相手を思いやる行動が、実は自分のための行動になる」というのは、成功の法則としては当然のように取り上げられることのひとつです。

そして、それが事実であることを証明しているのが新型コロナウイルスとの闘いでもあるのかもしれません。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考
内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第 11 回)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/senmonka_sidai_r020422.pdf

厚労省
介護サービス事業所に休業を要請する際の留意点について 令和2年3月6日
https://www.mhlw.go.jp/content/000605459.pdf
緊急事態宣言後の障害福祉サービス等事業所の対応について 令和2年4月7日
https://www.mhlw.go.jp/content/000619934.pdf
社会福祉施設等の利用者等に新型コロナウイルス感染症が発生した場合等の対応について 令和2年2月 18 日
https://www.mhlw.go.jp/content/000601680.pdf
「社会福祉施設等の利用者等に新型コロナウイルス感染症が発生した場合等の対応について(令和2年2月 18 日付事務連絡)」に関するQ&Aについて 令和2年2月 21 日
https://www.mhlw.go.jp/content/000601679.pdf

東京都防災ホームページ
東京都緊急事態措置に関する情報 対象施設一覧(令和2年4月17日19時00分)
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1007617/1007679.html

NHK
新型コロナ 厳しい勤務続く医療関係者に感謝の鐘 東京 銀座
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200420/k10012397281000.html

FNN PRIM online
「#医療従事者は私たちのヒーロー」スポーツ界が感謝のメッセージを送る
https://www.fnn.jp/articles/-/33780

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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