就労継続支援A型事業所による大量解雇問題から考えるサービス事業所選び

発達障害

はじめに
 2017年以降、障害のある方の就労の場でもある就労継続支援A型事業所による、事業不振を理由とした障害のある方の大量解雇が相次いでいます。ナゼこのような事態が起きているのでしょうか? そして障害のある方にとってはどのような対策が考えられるのでしょうか?

 ここではこの大量解雇問題の背景を押さえつつ、就労継続支援A型事業所を選ぶ際のポイントなどを中心にまとめています。

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1. 相次ぐ就労継続支援A型事業所による障害のある方の大量解雇

 2017年以降、就労継続支援A型事業所が経営悪化を理由に、障害のある方を大量に解雇するケースが相次いでいます。2017年以降に発生した主なものは次のとおりです。

・一般社団法人あじさいの輪が、事業不振で2017年7月末に事業所を閉鎖、9月に民事再生法の適用を申請。障害のある方約220人を解雇。

・一般社団法人しあわせの庭が、事業不振で破産を申請。障害のある方112名を解雇。

・(株)障がい者支援機構が、事業拡大に資金繰りが伴わず事業所を閉鎖して破産を申請。障害のある方154人を解雇。

・フィルが、事業不振で倉敷市以外の事業所を2月末、3月に入り倉敷市の3事業所を閉鎖して破産を申請。障害のある方約170人を解雇。

一部報道によれば、2017年度に企業の事業縮小などに伴って解雇された障害者は2,272人で、前年度の1,335人から1.7倍に急増したとされています。

参考:
(株)東京商工リサーチ
2017年「障害者就労継続支援事業等」の倒産状況
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180510_07.html

佐賀新聞LIVE
岡山の障害者事業所が破綻
http://www.saga-s.co.jp/articles/-/193253

徳島新聞
17年度の障害者解雇、1.7倍に急増
http://www.topics.or.jp/articles/-/51918

2. 大量解雇に至った背景
(1) 就労継続支援A型事業所の急速な増加とその背景にあるもの

「図-就労継続支援A型事業所の事業所数推移とその背景」

就労継続支援A型事業所は、制度が創設された翌年の2007年度には全国で148か所でした。それが2016年度には3,158カ所になっています。10年足らずの間に20倍以上に急増しているのです。これにはいくつかの背景があると考えられます。

① 共生社会の実現という国の方針、ノーマライゼーションの考え方

1つは国の共生社会を目指すという方針、あるいはノーマライゼーションの考え方の推進です。

共生社会は、健常者と障害のある方が共に生きる社会の実現、あるいは、高齢者とそうでない人とが共に生きる社会の実現などの文脈で使われることが多い言葉であり、考え方です。

共生社会の実現にあたって必要となる考え方にノーマライゼーションがあります。ノーマライゼーションとは社会福祉の基本的な考え方とも言えるもので、障害のある方にとって、障害があることで困難や課題があるのだとすれば、それは社会のしくみや基盤、制度などを変える必要があるということだとする考え方で、いわゆる健常者にとって「当たり前」にできることは、障害のある方にとっても「当たり前にできる環境を整備しよう」とするものです。

この考え方は、障害のある方の一般企業での雇用の拡大、就労の場の拡大という意味での就労継続支援A型事業所の事業所数の拡大に影響している面があります。

② 就労継続支援A型事業所に対する国や自治体からの給付金・助成金

 就労継続支援A型事業所は、少なくともその時点では一般就労が難しい障害のある方が雇用契約を結び、最低賃金が保証される中で、職員のサポートを受けながら働くことのできる障害者福祉サービスです。このため就労継続支援A型事業所には、職員の人件費や運営経費を賄うための給付金が国や自治体から支給されることになっています。

 事業の立ち上げや運営における負荷の高さ、難しさなどを考えれば、この制度の利用自体に何ら問題はないでしょう。しかしそれを悪用して事業を展開しようとする事業者がいるだけでなく、コンサルタントと称する会社が、「十分な収益を上げられない事業でも、障害のある方を集めれば安定経営ができる」といったような誘い文句で、確たる意志や心構えもない事業者に就労継続支援A型事業所の開設を勧めているケースがあるのです。

(2) 厚労省の施策

 このような状況を踏まえ、厚労省は就労支援A型事業所の指定の基準を2017年に改正しました。主な改正内容は次のとおりです。

① 就労継続支援A型事業の運営に当たり、利用者の知識及び能力の向上に努め、利用者の希望を踏まえた事業内容とすること。
② 事業収入から必要経費を控除した額に相当する金額が、利用者に支払う賃金総額以上とすること。
③ 利用者への賃金及び工賃を訓練等給付費から支払うことは原則禁止。
④ 事業者の運営規程に事業内容(生産活動に係るものに限る。)、利用者の労働時間、賃金及び工賃を規定する。
(出典:大阪府ホームページ 就労継続支援A型事業などについて
http://www.pref.osaka.lg.jp/jigyoshido/jiritu_top/syusyusyua.html
※ここで言う「利用者」とは、雇用関係にある障害のある方のこと

 このような改正を受けて、経営計画、経営改善計画、障害のある方一人ひとりの個別支援計画などの各計画書の整備・提出や、収支予算書・作業予定量の積算根拠資料、事業所で行う事業内容について請負や委託の場合はその契約書ひな型など、さまざまなものの提出が義務化されるようになりました。逆に言えば、「このようなものがなくても運営できたのが就労継続支援A型事業所だった」ということです。

(3) 国の思惑、事業者の態度、そして、しわ寄せが利用者である障害のある方へ

 事業者の手軽な事業との思い込み、準備の不足とそれに伴うサービスの質の低い事業所の乱立と急増、それを課題視し引き締めを図った国。その結果が、2017年に起きた就労継続支援A型事業所の経営破たん、そして、障害のある方の大量解雇の問題と言えます。つまりすべてのしわ寄せは、そこで雇用されていた障害のある方に来ることになってしまったということです。

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参考:
内閣府ホームページ 
障害者差別解消法リーフレット
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet.html

厚労省ホームページ
資料6 放課後等デイサービス、就労継続支援A型の見直しについて
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168860.docx
「地域共生社会」の実現に向けて
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000184346.html

大阪府ホームページ
就労継続支援A型事業などについて
http://www.pref.osaka.lg.jp/jigyoshido/jiritu_top/syusyusyua.html

東北福祉大学 通信教育部 With ホームページ 
【社会福祉キーワード】 ノーマライゼーション

3. 大量解雇問題から考えるサービス事業所選びの視点

「図-サービス事業所選びの視点」

(1) 淘汰は避けられない、という現実

① 一般的な市場の原理

障害のある方の就労の場が拡大すること自体は、目指す社会を考えても望まれることです。一方、民間企業が淘汰されるのと同様、就労継続支援A型事業所が、その事業の質の問題から淘汰される可能性があることは否定できない事実でしょう。これは不採算な事業は継続できないという視点から考えれば当然のことでもあります。

② 就労継続支援A型事業所の現実

厚労省が省令改正により、全国の就労継続支援A型事業所に対して「事業所の生産活動収支が障害のある方の賃金を下回る場合、経営改善計画書を提出すること」としましたが、その結果7割が、経営改善計画書を提出する必要がある事業所であることが判明しています。つまり多くの事業所は国や自治体からの給付金や助成金に依存した経営体質になっている可能性が否定できないということです。

このような事実は、就労継続支援A型事業所を選択するときには相応の目でサービス事業所を選択することが重要であることを示しています。

(2) 就労継続支援A型事業所による解雇のリスクを下げるための視点

① そうは言ってもまずは業務内容や職場の雰囲気、人間関係が大切

 就労移行支援A型事業所は、全国に3,000ヶ所以上設置されています。また事業所ごとに、提供する業務や作業、実施されているプログラムなどの支援内容や施設の雰囲気などが異なります。

よって、ご本人自身が働き続けられる能力を磨き、さらに次へのステップを検討できるようになることがまずは大切。解雇リスクなどを検討する以前に、まずは次のような視点で「候補を上げること」が大切になると言えるでしょう。

1) 求める業務やプログラム内容と、提供される業務・プログラム内容とが合っているか
 ご本人がやりたい業務や伸ばしていきたいスキルや知識などと、事業所が提供している業務・作業や実施しているプログラムの内容が合っているかという点は、事業所選びのもっとも重要な視点の一つです。このことが、将来の一般就労へ向けたステップになる面があるからです。

2) 事業所の環境や雰囲気
 就労継続支援A型事業所は、就労すると多くの時間を過ごす生活の場にもなります。業務をする上で、あるいは就労に向けた訓練を受けるという意味で集中できる環境にあるか、人間関係が良好に築けるかなどを中心に、事業所の環境や雰囲気といったものがご本人に合っているかという視点も非常に大切です。

② 解雇リスクを下げるための基本的な視点

とはいえ、昨今の大量解雇問題などを考えた場合、単に求める業務やプログラムが提供されているから、事業所の環境や雰囲気がよかったからだけでは、その事業所を選択するわけにもいかないのではないでしょうか? つまり、自衛の視点が必要だということです。

自衛のための基本的な視点は、ずばり財務状況の確認と一般就労に移行する方がどの程度いるかの2点が考えられます。

1) 財務状況の確認
省令の改正により、各事業所ごとの財務状況が確認しやすくなってきており、各市区町村などがその情報をWEBサイトなどで公開するようになっています。ただ、統一の書式などがなく、事業所ごとにバラバラな状況。このためどこを見たらよいのかわからないという方も多いでしょう。

もちろん、確認しておきたいポイントはたくさんあるのですが、最低限、以下は押さえておく必要があるでしょう。

・最低限確認したいのは、損益計算書または活動計算書
財務状況を把握するとき、最低限確認いただきたいのは、損益計算書または活動計算書です。損益計算書は株式会社などが、活動計算書はNPO法人などがそれぞれ使用するもので、1年間の収支の状況をまとめたものです。

・中でも確認したいのは、売上高と原価における労務費
その中でも絶対に確認したいのは、「売上(髙)」と、「原価における<労務費・賃金・人件費>」という2つの項目です。この2つを比較し、「売上>労務費・賃金・人件費」となっているかどうかが、まずは重要な視点です。ここから、その事業所が事業そのもので適正な売上を出せているのか、また、その売上の中で、雇用されている障害のある方の賃金を支払えているのかがわかるのです。

上記で問題がある場合はもちろん、それがきちんと確認できないという場合は、リスクが高い傾向があると言えるでしょう。

2) 一般就労への移行の数の確認
・そもそもの就労継続支援A型事業所とは?
そもそも就労継続支援A型事業所は、「通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う」(出典:厚労省ホームページ 障害者の就労支援について http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000091254.pdf)こととされています。

 つまり、就労継続支援A型事業所は、利用者となった障害のある方の一般就労を最終的な目標とし、知識やスキル、能力を高めていくことを目的にしているということです。

・一般就労に移行する方がいない・少ないということは?
一般就労に移行する方がいない、または、少ないということは、就労継続支援A型事業所としての役割を十分果たせていない可能性があるということです。とはいえ、平成27年のデータによれば、就労継続支援A型からの一般就労への移行率は4.3%。また、A型事業所の7割で、1年間に1人も一般企業への就職者が出ていない状況であることは、現実の問題として確認しておく必要があるでしょう。

(3) ご本人の意識と相談

① 就労継続支援でどんな力をつけるのか? 何を目指すのか?

 ここで一つ考える必要があるのは、就労継続支援でご本人がどのような力をつけるのかという点です。

就労継続支援A型事業所で就労できることは良いことです。一方で、その場がご本人にとって居心地の良い場であればあるほど、その場に居続けたい、そこで働き続けたいと思うのは、ある意味人間の性でしょう。そうではあっても、就労継続支援A型事業所の目的を考えれば、「その場に居続けてはならない、いつかは卒業しなければならない場」なのです。

だからこそ、就労継続支援A型事業所での活動を通じて、どのような力を磨くのか、その力を磨いた後何を目指すのかということは、十分考える必要があると言えるのです。そして、一般就労へ向け力を磨き続けることはどうしても必要になりますし、実際の就職先をご本人の意思で探すことも重要だと言えるのです。

② 必要な力が磨けないのだとしたら相談も必要

 今現在、就労継続支援A型事業所で就労されている方にとっては、「その事業所で必要な力が磨けているのか?」を検討することが大切と言えます。万が一、磨きたいと考えている力が磨けないというようなことであるなら、事業所、あるいは市区町村窓口などに相談することも大切でしょう。相談するという態度自体が、解雇リスクを引き下げることにもつながるという面もあるのと言えます。

参考:
厚労省ホームページ
就労継続支援A型事業所の経営改善計画書の提出状況等を公表します
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000196766.html
資料6 放課後等デイサービス、就労継続支援A型の見直しについて
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168860.docx
障害者の就労支援について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000091254.pdf

4. 利用している就労継続支援A型事業所による解雇という万が一の備えを検討も

「図-万が一の発生リスクとその備えの重要性」

 残念ながら、就労継続支援A型事業所による解雇のような事態は今後も増加する可能性があります。既に見てきた通り、就労継続支援A型事業所の7割が、事業そのものに課題を抱えている状況だということが明らかになっているからです。よって、万が一への備えも検討する必要があるでしょう。

 解雇問題などは、労働問題として法的トラブル化する可能性があります。このとき、弁護士費用が工面できないといった状況であるがために、泣き寝入りしなければならなくなるとしたら、それはやるせないものでしょう。このようなときでも、法的トラブルへの補償のついた民間の損害保険への加入などによる対策をしておけば、相応の支援が受けられることになります。

 社会で生活するということは、何らかのトラブルに巻き込まれる可能性があるということ。「万が一の備え」は、生きていく上で必要になると言えるのではないでしょうか。

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最後に

 就労継続支援A型事業所による障害のある方の大量解雇が問題になっています。共生社会の実現が目標となっている中、制度の課題もあり、その急拡大がこのような問題を引き起こしている面があります。国が対策を取り始めていることもあり、必然的に劣悪なサービスしか提供できていない就労継続支援A型事業所が淘汰されることも予想されることから、今後も同様のケースが発生しないとは言えない状況になっています。

今後利用される、あるいは現在利用されている障害のある方にとっては、こうした事態への備えが必要。もっとも大切なのは、ご本人の磨きたい力を磨けるような事業所を選ぶこと。そして、その事業所の経営状況を確認することでしょう。それでも万が一は起こり得ますので、民間の損害保険への加入などを検討することも大切と言えるのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
資料6 放課後等デイサービス、就労継続支援A型の見直しについて
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168860.docx
就労継続支援A型事業所の経営改善計画書の提出状況等を公表します
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000196766.html
障害者の就労支援について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000091254.pdf

千葉県ホームページ
指定就労継続支援A型における適正な運営に向けた指定基準の見直し等に関する取扱い及び様式例について
https://www.pref.chiba.lg.jp/shoji/jigyoushamuke/info/syuroua.html

内閣府ホームページ 
障害者差別解消法リーフレット
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet.html

厚労省ホームページ
「地域共生社会」の実現に向けて
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000184346.html

東北福祉大学 通信教育部 With ホームページ 
【社会福祉キーワード】 ノーマライゼーション

(株)東京商工リサーチ
2017年「障害者就労継続支援事業等」の倒産状況
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180510_07.html

佐賀新聞LIVE
岡山の障害者事業所が破綻
http://www.saga-s.co.jp/articles/-/193253

徳島新聞
17年度の障害者解雇、1.7倍に急増
http://www.topics.or.jp/articles/-/51918

 

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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