精神障害や認知症の方のお薬事情最前線 飲み薬から貼り薬へ

精神障害

はじめに
精神障害や認知症の方のお薬事情最前線をお伝えします。昨今、薬開発の流れが「飲み薬から貼り薬」になっています。

認知症の方や精神疾患・精神障害のある方にとって、薬と上手につき合うことは、症状の改善や抑制、症状の進行の抑制に対しても非常に重要です。しかし、実際には、誤った方法で利用がされているケースが多いとも言われています。

その事実は「薬の在り方」にも影響を与えています。そのひとつが、「飲み薬から貼り薬への流れ」です。実は、統合失調症の貼り薬が2019年夏に初めて、大日本住友製薬より日本国内で発売されます。その他にも、アステラス製薬は心房細動の貼り薬を、協和キリンや久光製薬はパーキンソン病の貼り薬の開発を進めています。

ここでは、場合によってはリスクもある薬というものの性質やその利用について、薬開発に関する最新の事情の他、そもそもの正しい薬の摂取方法や薬のタイプといった基本的な情報などと合わせてまとめています。

1. 製薬各社がさまざまな「貼り薬」を開発 ~ 製薬各社の動き

「図-貼り薬のメリット」

「薬が好き」という方はなかなかいらっしゃらないでしょう。特に、飲み薬については、ニガテどころか大嫌いという方も多いと言われ、また、特に飲み薬は、「本当に飲んだのか」が管理しにくいという点が欠点とも言われています。

そのような中で、注目されているのが「貼り薬」です。「貼られている」ことが実際に見えることを含め、次のようなメリットがあると考えられることから、製薬各社がさまざまな疾患に対する「貼り薬」の開発を進めています。

(1) 飲まずに済むことから、薬の使用のハードルが下がる
(2) 一度に多量に摂取することを避けやすい
(3) ご家族の方など、支援されている周囲の方から、「薬が使われていること」が目で見てわかる

たとえば、大日本住友製薬は、2019年夏、精神疾患のうち統合失調症の貼り薬を世界で初めて日本国内で発売します。その他にも、アステラス製薬は心房細動の貼り薬を、協和キリンや久光製薬はパーキンソン病の貼り薬の開発を進めています。

薬はその効果だけでなく、「安全性・管理のしやすさ」といった利便性に注目が集まっているということです。

参考:
日経新聞
製薬、心臓・精神疾患に貼り薬 高齢者が使いやすく
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47326020S9A710C1EA5000/

2. 薬が薬としての効果を発揮するために

「図-薬が薬としての効果を発揮するためには」

 薬は、認知症や精神疾患・精神障害の症状の改善や抑制、症状の進行の抑制などにも利用されています。つまり、その効果が期待されているわけです。しかしそれは、あくまで「正しく利用した場合に」という条件がつきます。

(1) 薬にはリスクがある

大前提として、薬というものはリスクがあるものなのだという理解が重要です。

たとえば薬を一度にたくさん飲んでしまうなど、その使い方を一歩間違えると「副作用」などの「毒性」を生じます。「大量の睡眠薬を飲んで、意識を失った」というような話を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、これは薬には「リスクがある」ということの表れなのです。

正しく投薬しないと、効果が現れないどころか、かえって害のあるものになってしまうのが薬というものなのだということは、しっかりと頭に入れておく必要があります。

(2) 「薬が効かない」、最大の理由 ~ 誤った投薬という問題

薬が体にどのように吸収され、効果があらわれ、そして、体外に排泄されるかは、個々の薬の種類のほか、薬の形などによっても異なります。ただ多くの場合、「同じ投薬の仕方をすれば、効果に大きな違いが出ることはない」と考えられています。

一方で、投薬する方の体質や年齢、疾患などの症状の程度などによって、その効果などが変わってくる面もあり、特に新しく開発された薬などは、用法を正しく守らないとまったく効果が出ないものや、副作用が強く出るものなどが増えているとも言われています。

いずれにしても、薬が「薬として評価」されるには、投薬により望ましい効果があらわれることが重要なのであり、そのためには、薬ごとに決められている「用法・用量」を、処方する医師と利用する側のいずれもが正しく守って利用することが大切になるわけです。

(3) 認知症の方や障害のある方の誤った投薬の可能性

「誤った投薬」は、薬が効かないどころか、体に害を及ぼす可能性があるわけですが、実際には非常に多く起きていると推測されています。

その一つの理由は、薬の飲み忘れや飲み残しなどの「残薬」による医療費の無駄です。この無駄は、国内で年間数百億円とも数千億円とも言われているのですが、逆に言えば、「誤った投薬をしているから、これだけの無駄が出てしまっている」と考えることもできるわけです。

このような投薬に関する課題は、認知症の方や障害のある方に多く見られるのではないかとも言われています。というのも、症状との関係などから、投薬したのかしていないのかが、周囲からみると判然としない、ご本人も忘れてしまうといったことが起こりやすいと考えられるからです。

特に飲み薬の場合、周囲の方が常に見ているというような環境でもない限り、「正しい服薬」管理ができるとは言い切れない面があると考えられています。

たとえば服薬することがニガテであることから「服薬した」とウソをついてしまったり、一度に大量に服薬することで帳尻を合わせようとしたり、まったく服薬しなかったとしても捨ててしまったりといったことも、あくまで可能性としてではありますが、起きやすくなるわけです。

その一方で、貼り薬であれば、周囲の方から「貼っていること」が目で見てわかります。「薬を使っていることが、後からでもわかる」という点で、また、大量に投薬しないという点で、非常に管理がしやすいと言えるわけです。

このような貼り薬のメリットを考えると、今後もさまざまな貼り薬が開発されていくのではないかと考えられますし、むしろより多くの疾患に対応する貼り薬の開発も期待したいところでしょう。

【関連記事】
認知症を患う方の服薬・薬の飲み方を支援する
https://jlsa-net.jp/kn/kn-kusuri/

参考:
厚労省
医療保険財政への残薬の影響とその解消方策に関する研究(中間報告)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000103268.pdf

政府広報オンライン
知っておきたいクスリのリスクと、正しい使い方
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201310/2.html

慶応大学病院
お薬について
http://www.hosp.keio.ac.jp/annai/raiin/kusuri/

3. 誰もが知っておきたい薬の基礎

 薬を効果のあるものとして利用するために、誰もが「薬に関する基礎」を知っておくことは非常に重要です。これは、認知症の方にとっても、障害のある方にとっても同じこと。以下で、そのような「薬に関する基本」を確認していきます。

(1) 薬の種類

「図-薬の種類」

薬は大きく、「医療用医薬品」、「要指導医薬品」、「一般用医薬品」の3つのタイプに分類することができます。

① 医療用医薬品

「医療用医薬品」とは、薬の作用が強いため、医師の処方箋がなければ使用できない薬です。よって、患者さんそれぞれの状況に応じて処方されることになります。

② 一般用医薬品

「一般用医薬品」は、一般薬、大衆薬とも言われ、街の薬局・薬店で購入することができ、比較的安全性が高く、多くの方の共通した症状に対応することができるものです。なお、「一般用医薬品」は、さらに第一類から第三類までの3種類に分けられます。

③ 要指導医薬品

「要指導医薬品」は、「医療用医薬品」と「一般用医薬品」の中間に位置づけられる薬です。販売・購入の際に、医師による処方箋は必要ではないものの、薬剤師が対面で、その薬に関する情報を利用者に提供すること、また、投薬にあたっての指導をすることなどが義務づけられています。

(2) 薬の形状

薬には様々な色や形のものあります。薬によって使い方がそれぞれ異なります。

いずれにしても、「医療用医薬品」や「要指導医薬品」の場合は医師や薬剤師の指示に従って、また、「一般用医薬品」の場合は、使用前に説明文書に書かれている用法・用量や効能・効果のほか、使用上の注意や副作用に関することよく読んで、正しく使うことが大切です。「薬はリスクがあることを忘れないこと」が何より重要だ、ということです。

① 散剤(粉薬)

飲み薬の基本的なタイプの1つで、粉末状の薬です。湿気に弱いので、保管に注意が必要です。

② 顆粒剤

散剤より粒が大きいタイプの飲み薬で、においや苦味を抑えたり、溶けやすくしたりといった加工がされたものを言います。

③ 錠剤

飲み薬のひとつのタイプです。苦味を抑えたり、1日1回で効くように工夫したりしたものもあります。むやみにつぶして飲まないなどの注意が必要です。

④ カプセル剤

飲み薬のひとつタイプで、粉末状や顆粒状の薬などをカプセルの中に入れたものです。

⑤ 液剤

飲み薬の一種で、シロップ剤のように液体状になった薬で、1回分をその都度量って飲むことが必要なタイプです。

⑥ 坐剤・膣剤

肛門や膣などに入れて利用するタイプの薬です。薬を少し手のひらで温めてから薬を取り出し利用します。

⑦ 貼り薬

文字通り、体の一部に貼って利用するタイプの薬です。

⑧ 塗り薬

皮膚などに塗って使うタイプの薬です。薬が混ぜ込まれている材質である基剤の違いにより、軟膏・クリームなど、複数のタイプのものがあります。

⑨ 点眼薬

いわゆる目薬です。。

⑩ 吸入剤

主に咳を鎮めたり痰を切ったりするときに用いられる薬です。多く吸入すると副作用を起こしやすくなりますので、指示された回数・量を必ず守ることが重要なタイプの薬です。

⑪ 噴霧剤・エアゾール剤

霧吹きのように、皮膚などに振りかけるタイプの薬です。

⑫ 注射剤

直接血中や体内に投入するタイプの薬です。口から飲む薬に比べて効き目が速やかなのが特徴です。入院中や在宅医療などでは、栄養補給を目的に、点滴として使用する場合もあります。

⑬ その他

点鼻剤、点耳剤などさまざまなかたちのものがあります。

(3) 薬を飲むタイミング

薬を飲むタイミングは、当然用法に従うことが大切なのですが、特に「食間」については、正しく理解されていない方も多いようです。薬を飲むタイミングは次のように整理されますので、しっかりと理解しておくことが大切です。

① 食前:食事の1時間~30分前
② 食後:食事後30分以内
③ 食間:食事と食事の間、の意味。食事の2時間後が目安

(4) 薬の保管

 薬を正しく保管することも大切です。

① 誤用・多用を避ける工夫を

 用法・用量を守るためにも、誤用や多用を避ける工夫が重要です。毎食後など、定期的に投薬するものであれば、1回ごとに投薬する薬を事前に小袋に仕分けしておくなど、誤用や多用を避ける工夫が重要になります。

② 湿気、日光、高温を避ける

薬は、湿気・光・熱によって影響を受けやすいため、直射日光の当たらない、高温にならない場所で保管することが大切です。また、冷蔵保存するよう指示された薬は、凍らせないこと重要になります。

③ 薬以外のものとしっかりと区別する

誤用を避けるため、食品・農薬・殺虫剤・防虫剤などと一緒に保管するのは絶対やめましょう。

④ 他の容器に入れ替えない

薬の種類や使い方がわからなくなり、誤使用によって事故を招くおそれがあります。

⑤ 古い薬は廃棄する

使用期限の過ぎた薬は、成分の変質などによって本来の効果が得られなくなる可能性が高まります。古い薬は破棄し、必ず新しい薬を利用することが大切です。

(5) 薬の組み合わせという問題 ~ お薬手帳の利用

 複数の薬を使用している場合、その組み合わせが悪いと十分な効果が得られなかったり、逆に効きすぎたりと体に悪影響を及ぼす可能性があります。

「お薬手帳」を利用すれば、医師や薬剤師に正しい情報を伝えられ、投薬量などの調整を行うことが可能。また、一緒に食べたり飲んだりしない方が良い食材や飲み物などに関するアドバイスももらいやすくなります。体への悪影響を避けるためにも、積極的に利用することをおススメします。

【関連記事】
心・精神の不調時 病院・クリニック選びのポイント
https://jlsa-net.jp/sei/sei-medical_selection/

精神障害のある方を支える医療制度
https://jlsa-net.jp/sei/seihin-iryou/

参考:
政府広報オンライン
知っておきたいクスリのリスクと、正しい使い方
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201310/2.html

公益社団法人 大分県薬剤師会
薬の種類
http://www.oitakenyaku.or.jp/medicine/sort.html

慶応大学病院
お薬について
http://www.hosp.keio.ac.jp/annai/raiin/kusuri/

4. 新しいタイプの薬と購入法
(1) ジェネリック医薬品とは?

 ジェネリック医薬品とは、先発医薬品の特許が切れた後に、それと同じ有効成分で製造・販売される医薬品のことを言います。薬の開発には多額の費用がかかることから、先発医薬品は価格が割高になりやすい面がある一方、ジェネリック医薬品は、開発費用が少なく済むことから、同じ効能でも安いというメリットがあります。

 薬で多くの費用がかかっている場合など、同様の効果のあるジェネリック医薬品がないか、相談してみるのもよいのではないでしょうか。

(2) インターネットでの薬の販売

 最近では、一般医薬品にあたる薬については、インターネットでも購入することが可能となっています。ただし、販売許可を得ていない違法な販売サイトや、薬機法による安全性が確認されていない海外医薬品や偽造医薬品を販売しているサイトなどもあります。

インターネットを利用して薬を購入する場合には、以下のホームページで、各自治体に報告された販売サイトであるか確認した上で、購入すると良いでしょう。

厚労省 一般用医薬品の販売サイト一覧
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/hanbailist/

参考:
厚労省
一般用医薬品の販売サイト一覧
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/hanbailist/

政府広報オンライン
安心してご利用くださいジェネリック医薬品
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/4.html

独立行政法人医薬品医療機器総合機構
全国のくすり相談窓口
https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/0001.html
患者向医薬品ガイド・ワクチン接種を受ける人へのガイド・くすりのしおり®(検索ページ)
http://www.info.pmda.go.jp/ksearch/html/menu_tenpu_base.html

最後に

 薬は、正しく投薬するからこそ、はじめて効果を発揮するものです。しかし、実際には、誤った投薬をされているケースが多いことがわかっています。

そのような中で、各製薬会社が力を入れているのが「貼り薬」です。貼り薬には、薬の使用のハードルが下がる、一度に多量に摂取することを避けやすい、周囲の方から「薬が使われていること」が目で見てわかるといったメリットがあるからです。

統合失調症の貼り薬が2019年夏に初めて日本国内で発売されるほか、心房細動の貼り薬、パーキンソン病の貼り薬などの開発がそれぞれ進められており、その他の疾患・障害に関わるものも、今後開発が進められることが予想されます。

認知症の方、あるいは、障害のある方が投薬治療されるケースは多いでしょう。適切な投薬のためにも、この動きがさらに拡大することが望まれます。

なお、この記事に関連するサイト及び資料は下記の通りです。ご参考までにご確認ください。

参考:
厚労省
医療保険財政への残薬の影響とその解消方策に関する研究(中間報告)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000103268.pdf
一般用医薬品の販売サイト一覧
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/hanbailist/

政府広報オンライン
知っておきたいクスリのリスクと、正しい使い方
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201310/2.html
安心してご利用くださいジェネリック医薬品
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/4.html

公益社団法人 大分県薬剤師会
薬の種類
http://www.oitakenyaku.or.jp/medicine/sort.html

慶応大学病院
お薬について
http://www.hosp.keio.ac.jp/annai/raiin/kusuri/

日経新聞
製薬、心臓・精神疾患に貼り薬 高齢者が使いやすく
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47326020S9A710C1EA5000/

独立行政法人医薬品医療機器総合機構
全国のくすり相談窓口
https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/0001.html
患者向医薬品ガイド・ワクチン接種を受ける人へのガイド・くすりのしおり®(検索ページ)
http://www.info.pmda.go.jp/ksearch/html/menu_tenpu_base.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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