障害のある方の熱中症や脱水症を予防する「お出かけ前チェックシート」

知的障害

はじめに
 猛暑が続く夏、体に異変が出やすい状況になっています。外出注意といった情報も連日のように出されるものの、だからと言って、家から外に一歩も出ないというような生活を送ることはできないでしょう。よって、外出後、あるいは外出中に体調不良になることのないよう対策することが重要になると言えます。

 ここでは、外出時に必要なものを忘れないための方法としての「お出かけ前チェックシート」の利用について、その目的や利点を見つつ、夏ならではの問題を踏まえた「夏用のお出かけ前チェックシート」のポイントについて、まとめています。



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1. お出かけ前チェックシートとその効果

「図-お出かけ前チェックシートとその効果」
お出かけ前チェックシートとその効果

(1) 障害の状況によっては、忘れものをしやすい、という事実

 「ついうっかり忘れものをした」という経験は、多くの方が持つものでしょう。筆者自身、忘れものをしたという経験は、一度や二度ではありません。そんなとき、実際に困るのは「当の本人」なのですが、それに加えて、学校では先生に叱られ、家に帰ってはご家族の方に叱られ、仕事などの場合であれば、仲間に迷惑をかけ、さらに嫌な気持ちになる・・・。

 このようなご本人にとっても、周囲の方にとっても、決して良いことはない忘れもの。障害の状況によっては、頻発させてしまう場合も少なくないと言われています。

(2) お出かけ前チェックシートとは?

 このような忘れもの対策として有効とされるものに、「お出かけ前チェックシート」があります。

「お出かけ前チェックシート」は、いつも必要となるものの他、その日に特別に必要になるものなどをチェックリストの形で、事前に紙などに示したものです。「チェックシートに従って、それを持ったか、お出かけの前に一つずつ確認する」という使い方をすれば、結果的に忘れものをなくせるというもので、忘れものをしやすいという場合、その対策として有効と言えるでしょう。

(3) 夏こそ重要! お出かけ前チェックシート

 既に見た通り、多くの方は「ついうっかり忘れものをするもの」です。その対策は、実は多くの方がしているもの。頭の中で思いをめぐらせ、「あれを持ったか、これを持ったか」と考えながら、チェックをする方ももちろんいらっしゃるでしょう。ただその方法では、「その物を思い出せなかった」場合、結果的に忘れものをしてしまうことになります。

 一方で、「お出かけ前チェックシート」のように、必要なものを事前に目に見える形にしておけば、格段に忘れものをしにくくなると考えられるわけです。

 特に夏場は、忘れものをしない工夫をすることが非常に重要です。なぜなら忘れものにより、生死に関わるような問題に巻き込まれかねないからです。その原因は、現代の日本の「夏の暑さと湿気」という大問題です。

参考:
厚労省 e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

2. 夏、特有の問題 ~ 熱中症・脱水症とは?

「図-夏、特有の問題 ~ 気をつけたい熱中症・脱水症」
夏、特有の問題 ~ 気をつけたい熱中症・脱水症

(1) 日本の夏は、死に至る可能性のある状況になりやすい

 実は日本の平均気温は、この100年の間に1.19℃程度上がる状況にあり、年々、その暑さは猛烈なものになっています。「1℃」と聞くと大したことがないように感じるかもしれませんが、これはあくまで平均でのこと。2018年7月、熊谷市で史上最高の41.1℃を記録するなど、日本の夏の暑さは、過去に例を見ないものとなっています。

このような状況が、死に至らしめる場合すらある熱中症・脱水症を引き起こす大きな要因となっているのです。よって夏の暑さ対策は、現代の日本では誰にとっても必要で、かつ重要なものと言えるでしょう。

(2) 死に至る可能性すらある熱中症

① 熱中症とは?

熱中症は、高温多湿な環境に、私たちの身体が適応できないことで生じるさまざまな症状の総称です。めまいや立ちくらみ・筋肉の硬直程度ですぐにその症状が改善するような軽症のものから、その数は毎年数十名程度ではあるものの死に至るものまであり、決して侮ってはならないのが熱中症であると言うことができるでしょう。

熱中症を引き起こす条件としては、「環境」と「からだ」と「行動」の3つがあげられています。
「環境」条件とは、気温が高い、湿度が高い、風が弱いといった、気候などによる要因です。
「からだ」の条件は、その時の体調のことと言えるでしょう。同じ環境、同じ行動をしていても、体調によっては熱中症になる場合があるということです。
「行動」条件は、激しい労働や運動によって体内に著しい熱が生じることなどが考えられます。

熱中症のメカニズム

人の体は、平常時であれば体温が上がっても、汗によって、あるいは、皮膚の温度が上昇することによって、体の中の熱を外に逃がすしくみになっています。つまり、自然と体温調整が行われているということです。
しかし、熱中症になると、汗や皮膚を使った体温調整ができず、対内に熱がこもってしまうのです。その熱は、ひどい場合には42℃を超えるほどにもなると言われており、これが死に至る要因なのです。

③ 熱中症の症状

熱中症に見られる主な症状は次のとおりです。番号が若いものは初期症状で、次第に重症度が高くなります。ただし、これらの症状が必ず出るというわけではありません。

1) めまいや顔の火照り
めまいや立ちくらみ、顔が火照るといった症状は、熱中症の典型的な初期症状です。一時的に意識が遠のいたり、腹痛が出たりする場合もあります。

2) 筋肉痛や手足の痙攣
手足の筋肉がつるなどの症状である「こむら返り」や、筋肉がピクピクと痙攣したり、硬くなったりするという症状です。

3) 体のだるさや吐き気
体がぐったりしたり力が入らなくなったりするといった症状です。場合によっては、吐き気やおう吐、頭痛などを伴います。

4) 異様な汗のかき方
いくら拭いても汗が出る・止まらない、または、逆に暑いはずなのにまったく汗をかいていないなど、汗のかき方が普段と異なるという症状です。

5) 体温が高い、皮膚に異常が見られる
体温が極端に高く、皮膚も熱い、あるいは、皮膚が赤くなり乾燥しているといった症状です。

6) 呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない
声をかけても反応が薄かったり、反応しなかったり、また、質問に対しておかしな返答をするのは、重度の熱中症の可能性が高くなります。他に、体がガクガクとひきつけを起こしたり、まっすぐ歩けなかったりするなどの異常が見られることもあります。

7) 水分補給ができない
飲み物を渡しても、自分で上手に水分補給ができない場合は大変危険な状態です。

(3) 脱水症

脱水症とは?

熱中症と共に語られることの多いものに脱水症があります。脱水症とは、水分と塩分などの電解質などから構成される体液が不足した状態のことを言います。つまり、水分だけでなく、塩分などの電解質の不足も起きているのが脱水症であり、また、脱水症が熱中症の引き金となることも多いと言えます。

体液は、体の50~70%を占めていて、「酸素や栄養素を体内に運搬する」「尿や汗として老廃物を体外に排出する」「発汗により体温を調節する」という3つの働きを主に担っています。私たちの体を構成する細胞は、体液の水分と電解質の作用を通じて、細胞内外で栄養と老廃物の交換を行っているのですが、脱水症により体液が減少してしまうと、この3つが出来なくなってしまいます。

その結果、必要な栄養が全身の細胞に行き渡らず、また、老廃物が蓄積してしまうことになるのです。

② 脱水症のメカニズム

体内の水分は、毎日およそ1500~2500mL、尿や汗などの形で失われています。ただ、通常は、体内の水分を失ったとしても、失った分を水分補給や食事で補っており、体液はバランスを保ち続けています。一方で、さまざまな原因で大量の水分を失うなどして、体液に含まれる水分量のバランスが崩れると脱水症が起こるのです。

③ 脱水症の症状

 脱水症では、次のような症状が見られると言われています。これらの症状は、熱中症と同様、すべてが見られるわけではありません。

1) 急激な体重の減少
1週間以内に4%以上急激に体重が減少した場合は、脱水症が疑われます。水分量は日単位で増減するため、1週間以内の急激な体重減少は体液が失われたことを意味するからです。

2) 体温の上昇
 脱水症で体液の量が減ると、汗の量も減少することになります。すると発汗により体温を下げることができなくなるため、熱が体内に蓄積され、体温が上昇するのです。

3) 中枢神経系の異常
 認知機能・集中力・記憶力の低下などが見られる場合があります。

4) 消化器系の異常
 食欲減少・消化不良などの消化器系の異常が見られる場合があります。

5) 神経や筋肉の異常
 筋力の低下・手足のしびれ・足のつりなど、神経と筋肉の症状見られる場合があります。

参考:
環境省熱中症予防情報サイト
熱中症の予防方法と対処方法
http://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php

気象庁
日本の年平均気温
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html
日本の季節平均気温
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/spr_jpn.html

一般財団法人日本気象協会 熱中症ゼロへ ホームページ
https://www.netsuzero.jp/

公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット
脱水症
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/dassui.html

厚木胃腸科医院
脱水症・熱中症
http://www.atsugi-ichouka-dc.com/heatstroke/

3. 夏用のお出かけ前チェックシートをつくる

「図-夏用のお出かけ前チェックシートのポイント」
夏用のお出かけ前チェックシートのポイント

(1) 夏用のお出かけ前チェックシートのポイント

 夏は熱中症や脱水症の対策が重要であることが明確になると、「夏用のお出かけ前チェックシート」のポイントが見えてくるのではないでしょうか? つまり、普段のチェック項目に加えて、熱中症や脱水症対策のチェック項目を追加することが重要になるということです。熱中症や、熱中症の引き金ともなる脱水症予防の最も重要なポイントは、水分補給・塩分補給です。

 このことから、普段も持ち歩くだろうタオルやハンカチ、ティッシュ、財布などを持ったかといったチェック項目に、以下のような項目を最低限追加した「夏用のお出かけ前チェックシート」を用意し、日々活用すると良いと言えるわけです。

① 十分な補給をできるだけの水分(水筒)を持ったか?

 夏場の水分補給は欠かせません。いつでも、こまめに水分補給ができる状態にしておくことが大切です。夏場は、長期休暇などがあることもあり、普段とは異なる場に行くこともあるでしょう。すぐには飲料を買えない場合もあるかもしれません。よって、常に水筒に必要な水分を入れて、持ち歩くことが大切になると言えるでしょう。

② 塩分補給ができるタブレットなどを持ったか?

 既に見てきたように、単に水分だけを補給すればよいというわけではありません。「体液の不足」という視点から考えれば、同時に電解質である塩分補給も必要と言えるわけです。持ち歩く水分が、スポーツドリンクのように塩分を含むものでない場合、塩分を含むタブレットや飴なども持ち歩き、水分補給と併せて補給することが大切です。

③ 財布以外に、小銭を持ったか?

 水筒を忘れたときや財布を忘れたときのことも考えておく必要があります。その際は、自動販売機などで飲み物を買えるよう、小銭を別に用意しておくと良いでしょう。このとき500円玉1枚というような形ではなく、100円玉4枚と10円玉10枚のような形で持っている方がベター。「釣銭切れ」などの可能性も考慮しておくということです。

④ 常温で長期間保存可能な栄養補助食品を持ったか?(例:ウィダーinゼリーなど)

 さらに万が一のときに備え、ウィダーinゼリーのような、水分と塩分を補給でき、また常温で長期間保存可能な栄養補助食品を持ち歩くのもおススメです。

(2) お出かけ中の熱中症・脱水症予防行動の促進にも要注意

 このような事前の対策をしていても、実際に補給しなければ、何の意味もなくなってしまいます。こまめに水分・塩分補給をするような工夫やしかけをつくることが重要だということです。

 たとえば、携帯電話・スマートフォンのカレンダーやアラーム機能を利用して、一定の時間ごとに水分・塩分補給をするよう通知するというのも工夫のひとつでしょう。場合によっては、支援されるご家族の方が、定期的に水分・塩分補給を促す連絡を入れる、という方法もあるのではないでしょうか。

参考:
環境省熱中症予防情報サイト
熱中症の予防方法と対処方法
http://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php

一般財団法人日本気象協会 熱中症ゼロへ ホームページ
https://www.netsuzero.jp/

公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット
脱水症
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/dassui.html

最後に

 夏は、熱中症や脱水症の危険の高まる季節です。特に外出時には、その十分な対策が必要と言えるでしょう。このときおススメなのが、「お出かけ前チェックシート」の利用です。特に、熱中症や脱水症対策のポイントである、水分補給や塩分補給といったポイントを踏まえた「夏用のお出かけ前チェックシート」を利用すれば、障害の特性などにより、忘れものをしやすいという方にも大きな効果が得られやすい対策にできるでしょう。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省 e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療

ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療


みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

環境省熱中症予防情報サイト
熱中症の予防方法と対処方法
http://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php

気象庁
日本の年平均気温
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html
日本の季節平均気温
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/spr_jpn.html

一般財団法人日本気象協会 熱中症ゼロへ ホームページ
https://www.netsuzero.jp/

公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット
脱水症
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/dassui.html

厚木胃腸科医院
脱水症・熱中症
http://www.atsugi-ichouka-dc.com/heatstroke/

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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