高齢者 使用済み紙オムツ 処分の苦労から解放される日

社会的課題

はじめに
 高齢の方がいらっしゃるご家庭において、紙オムツは非常に便利な排泄ケアの道具と言えるでしょう。一方で、使用済み紙オムツの処分については、相当の負荷がかかっているのではないかと考えられます。そのような使用済み紙オムツの処分の課題について、国交省が解決策を検討しはじめています。その方法は「下水道を利用する」というものです。

ここでは、課題になっていることを含めた現在の紙オムツ事情を押さえつつ、国交省が検討している課題解決の具体的な方向性、その実現のメドなどを中心にまとめています。

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1. オムツは大人のためのもの?
(1) 生きている限りする排泄

人は生きている限り、いくつかのことを必ずします。いわゆる生理的な活動というものです。この中に、排泄という行為があります。人は生きている限り、排泄という行為をしないことはないのです。

(2) オムツはもはや大人のためのもの ~大人用オムツは子ども用オムツを抜いた

 オムツというと、かつては幼い子どものためのものというイメージが大きいものだったでしょう。実際、大人用のオムツのCMがTV放映されるようになったのはつい最近のことかもしれません。しかしこのような印象とは別に、その出荷額は、すでに子ども用を上回っているのです。

(3) 今後も伸びが予想される大人用オムツ

 大人用のオムツの出荷額が子ども用を上回っている背景には、日本が超高齢社会であるという現実があります。認知症のある方を中心に、大人用紙オムツは多く利用されているということです。

この傾向は、少なくとも数十年先まで続くことが予想されています。というのも、65歳以上の人口比率である高齢化率は、日本では2016年時点で27.3%。75歳以上の割合だけでも13.3%に達しており、今後も増加することが予想されているからです。高齢者人口は2042年が、75歳以上の人口は2054年がそれぞれピークと予想されてはいるものの、高齢化率は高い水準を維持したままであることが推計されているのです。

 また高齢の方の中には、生活介助を必要とされている方が多く含まれます。介護が必要な方を支えるしくみとして介護保険制度がありますが、この制度の利用対象者とも言える「要支援を含む要介護」認定を受けている方は既に620万人に達しており、この方々のうちの相応数の方々がオムツを利用していると推測されます。 

つまり、子どもの出生数が年々減少していることとも含め、このような事情を考えた場合、「オムツはもはや大人のためのもの」という認識を持っても良いものかもしれないということなのです。

参考:
内閣府ホームページ
平成29年版高齢社会白書(全体版)
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/index.html

国交省 ホームページ
下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討会
http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000540.html

2. 紙オムツにまつわる課題

「図-介護にまつわる苦労」

(1) 介護にまつわる苦労、そのトップは?

 内閣府が平成25年に公表した「介護ロボットに関する特別世論調査」の結果によれば、介護で苦労したことは、「排泄時の付き添いやおむつの交換などを含む排泄に関するもの」がトップになっており、実に回答者の6割以上が苦労したこととして上げています。

以降、入浴、食事、車いすからベッド・便器・浴槽・椅子への移乗が続くのですが、これらの介助よりも負担が大きいのが排泄にまつわる問題であり、また排泄という行為が一般的にはひとりで行うものであることを考えた場合、介護する側・される側の双方にとって非常に大きな問題になっているのが排泄の問題などです。そして、利用されているのが紙オムツです。

(2) 使用済み紙オムツの捨て方

 その昔、オムツと言えば布製で、使っては洗い、洗ってはまた使いというのが一般的でした。しかし現在は、衛生面の問題、肌に直接接する部分のサラサラ感の向上や尿の吸水力、尿漏れへの防水性、動きやすさに配慮した伸縮性など、その高機能化に伴い紙オムツの利用が一般的となっています。その中で問題になっているのが使用済み紙オムツの捨て方です。

使用済み紙オムツは、一般家庭と介護施設、病院と、それが出される場によって廃棄のされ方が異なります。

① 一般家庭の場合

一般家庭の場合、基本的には「可燃ごみ」として各自治体が回収し、焼却処分されますが、一部異なる自治体もあります。

② 介護施設の場合

事業系一般廃棄物か、あるいは産業廃棄物として扱われるのが一般的です。自治体自ら回収・処分する場合もあれば、自治体が許可した専門事業者が回収・処分するケースもあり、また、その費用も有償・無償さまざまとなっているようです。

③ 病院の場合

感染症廃棄物または事業系一般廃棄物として扱われ、自治体が許可した専門事業者が回収・処分します。
 
(3) 老老介護の現実と、紙オムツの捨て方にまつわる問題

「図-紙オムツにまつわる問題」

 これまで見てきた紙オムツの捨て方は、一体どのような問題を引き起こしているのでしょう?

① 老老介護の増加

 実際の問題点を確認する前に、見ておく必要があるのが老老介護の問題です。老老介護とは、高齢の方の介護を別の高齢の方が行うことで、主に65歳以上の高齢の夫婦・親子・兄弟などが、それぞれ介護する側・される側になることを言います。

2013年の「国民生活基礎調査」によれば、介護する側・される側が共に65歳以上の老老介護は49.1%でほぼ半数、75歳以上でも23.4%となっています。また配偶者間介護の場合、さらにこの状況が深刻で、主たる介護者が 65歳以上である場合が 89.8%、75歳以上でも 57.1%となっているのです。

② 老老介護における紙オムツの処分

 このような老老介護の現実は「ごみを出す」ということ自体に問題が生じつつあることを物語っています。
 
1) ごみの分別ができない
先に見た「ごみが出た場ごと」のごみの捨て方の違いは、ごみとしての分別に影響を与えます。お住まいの地域による分別方法の違い、家庭と施設とでの分別の違いというようなことが、ごみの分別において混乱を生む原因となっている面があることは否定できません。この結果、不適切なごみ出しをしてしまい、場合によっては周辺住民とのトラブルに発展してしまうのです。

2) 無理なごみ出しによるケガなど
・使用済み紙オムツの重量
 使用済み紙オムツは、その吸水力の高さが思わぬ課題になっている面があります。重量が非常に重くなるという点です。

福岡都市圏内の介護や医療施設などを対象にした調査結果によれば、介護の現場から排出される紙オムツの一日一人当たりの重量の平均は、介護施設で1.15kgとなっています。つまり、それだけの重量のものをごみ出しする必要があるということです。

可燃ごみの収集が、自治体によっても異なるものの、概ね週2回程度と考えた場合、1回あたり、紙オムツだけで3.5kg~5kg程度のゴミを出す必要があるということになります。

・ごみ回収場所への持ち寄り
 ごみの回収方法は、自治体によりさまざまです。自宅前に出しておけばよいという自治体もあれば、回収場所が指定されていて、そこまでは持って行かなければならないという自治体もあります。筆者の実家周辺は後者の環境。往復400m程度の距離をごみ出しのために移動せざるをえない環境です。

つまり、紙オムツだけで3.5kg~5kgということは、日によっては10kg程度のごみをそれだけの距離運ばなければならないということ。雨の日も風の日も、雪の日もあることを考えれば、いつケガをしたり、体を壊したりといったことが起きないと限らないわけです。

3) ごみ出しができなくなる
 このような状況が進む中では、ごみ出しができなくなることも想定されます。ケガをしてしまった、ごみを出せなかったといったことの積み重ねが、ごみを出す習慣を奪い、結果的にいわゆるごみ屋敷となってしまったり、不衛生な住環境となったりしていくことが考えられるということです。

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参考:
内閣府ホームページ
「介護ロボットに関する特別世論調査」の概要
https://survey.gov-online.go.jp/tokubetu/h25/h25-kaigo.pdf

国交省 ホームページ
下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討会
http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000540.html

福岡県ホームページ
平成 25 年度紙おむつ広域回収実証実験の概要
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/188663_51467839_misc.pdf

独立行政法人国民生活センター ホームページ
老老介護の現状と課題
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201502_06.pdf

3. 紙オムツが下水道を使って処分できる日の到来

「図-紙オムツの下水道を使った処分、3つの方式」

(1) 国交省の施策

このような状況を受けて国交省が検討しているのは、「紙オムツを下水道を使って処分できるようにする」というものです。2018年3月に、既にその検討と実現に向けたロードマップが策定されており、2022年には各自治体が具体化の検討をするためにガイドラインを公表することを目標としています。また、このガイドラインの公表にあたっては、具体的な方法論やそのために必要となる設備等、検証も行われた上で行われる見込みです。

使用済み紙オムツにより起こり得る問題を解決する上で、非常に期待の大きい施策と言えるのではないでしょうか。

(2) 下水道を利用した紙オムツの3つの処理方式

 下水道を利用して紙オムツを処分できるとは言っても、その方法はいくつかあり、実際に利用する側にとっても対応しなければならないことが異なる面があります。

① 固形物分離タイプ

使用済み紙オムツから汚物を分離させ、分離された汚物は下水道を通じて回収、残った紙オムツのみをごみとして出すというものです。使用済み紙オムツ自体はごみ出しが必要で、また、ごみ出し日までの保管が必要というタイプです。紙オムツ専用の汚物分離装置をトイレに設置することになります。

ごみの軽量化が可能という点で、ごみ出しの負荷が軽減できるというのが、このタイプのメリットになります。

② 破砕・回収タイプ

 使用済み紙オムツを、設置した紙オムツ破砕装置にそのまま投入すると、汚物も含めた紙オムツを破砕、建物外の分離回収装置で分離され、ごみとして回収されるというものです。使用済み紙オムツの保管もごみ出しも不要となりますが、破砕装置の他、分離回収装置が必要という点で、コストが高くなる可能性が指摘されています。

③ 破砕・受け入れタイプ

 本当の意味での下水道による紙オムツの受け入れ方式と言えるものです。使用済み紙オムツを破砕装置に投入すると、汚物も紙オムツもすべて下水道を通じて回収するというものです。

(3) 5年後には、一部の自治体では実現か?

3つの処理方式のうち、技術的にもっとも単純なものは固形物分離タイプで、実は2018年度中にはその検討が終わるとされています。

逆に最も技術的な課題が多いのは、破砕・受け入れタイプです。とはいえ、この検討、実証実験も、2021年度には終了するとの計画が立てられています。この検討や実証実験の結果も受けて、ガイドラインが定められることになるため、また、そのガイドラインをもとに各自治体で施策を行うことになるため、その後数年の間には、本当の意味での下水道の紙オムツの受け入れが始まる可能性があると言えるでしょう。

参考:
国交省ホームページ
下水道への紙オムツ受入に向けた検討ロードマップ
http://www.mlit.go.jp/common/001226938.pdf

最後に

 超高齢社会の日本において、その性能の向上も含め、紙オムツはもはや大人のためのものと言える状況になっています。その一方で、使用済み紙オムツというごみの処分は、介護する方にとって非常に負荷の高いもので、この負荷の高さが、実はごみ問題の大きな原因の一つとなっていると言うこともできます。

 このような大きな課題を解決することを目的に、国交省が「下水道を使った使用済み紙オムツの回収」という施策を検討しはじめており、2022年度には自治体向けに、技術的な条件なども含めた具体的な方法論を提示するという目標が立てられています。

 物理的にも精神的にも高い負荷を考えた場合、待望される「下水道を使った使用済み紙オムツの回収」。早期の実現が待ち望まれていると言えるのではないでしょうか。

 なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
内閣府ホームページ
平成29年版高齢社会白書(全体版)
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/index.html
「介護ロボットに関する特別世論調査」の概要
https://survey.gov-online.go.jp/tokubetu/h25/h25-kaigo.pdf

国交省 ホームページ
下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討会
http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000540.html
下水道への紙オムツ受入に向けた検討ロードマップ
http://www.mlit.go.jp/common/001226938.pdf

福岡県ホームページ
平成 25 年度紙おむつ広域回収実証実験の概要
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/188663_51467839_misc.pdf

独立行政法人国民生活センター ホームページ
老老介護の現状と課題
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201502_06.pdf

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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