認知症と認知症サポーター ~ みんなで認知症を理解する

社会的課題

はじめに
「認知症は、誰でもなりうる」という認識は、広く知られるようになってきました。その一方で、認知症に関する正しい知識を持つ方は、意外なほど少ないのも事実です。このような中で、その正しい知識を持つことで認知症を患う方の見守りの役割を担える方々である「認知症サポーター」が、2018年6月、1000万人を突破しました。

ここでは、そのような認知症サポーターとは何か、どのようにしたらなれるのかなどを見つつ、認知症サポーターの皆さんとの取り組みをすすめる地域の具体例などを中心にまとめています。

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1. 誤解されることの多い認知症
(1) 認知症を患う方の数 ~2025年には700万人?

認知症を患う方の人数に関する調査は多くあり、実はさまざまな説(推計)があります。たとえば、「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)においては、2012年時点で462万人(65歳以上の人口の15%)となっており、2025年には700万人(同20%)と推計されています。

他にも、2010年時点で242万人(65歳以上の人口の15%)、2020年には325万人と推計されているものもあります。また、若年性認知症を患う方も2009年発表の厚労省の調査で、3.78万人と推計されています。

いずれにしても、高齢社会である日本では、今後も認知症を患う方が増えることが予想されており、若年性認知症も含めまさに「誰でもなりうる」と言うことができるでしょう。

(2) 誤解される認知症 ~ 認知症、その症状の本当のイメージ

「図-認知症、その症状」・・・文字で表現すると

 このように、誰でもなりうる認知症は、年齢を重ねることに伴う「脳の病気」の一つです。認知症では、実際に「文字として表現すると」、次のような中核症状が見られ、また、場合によってはその他の行動・心理症状が見られるとされています。実は、このように「文字として表現されること」が、認知症に関する誤解を生んでいる面があるのです。

① 認知症の中核症状

1) 記憶障害
自分が体験した過去の出来事に関する記憶が抜け落ちてしまう障害のことです。認知症の場合、最近のことから忘れていくという特徴があります。

2) 理解・判断力障害
日常生活の些細なことでも判断することができなくなる障害です。料理を作るときどの食材を使えばいいかといった、日常生活の些細なことでも判断できなくなるという特徴があります。

3) 実行機能障害
ある目標に向かって、計画を立てて順序よく物事をおこなうことができなくなる障害です。計画的に買い物ができなくなったり、家電製品の使い方がわからなくなったりするというような特徴があります。

4) 見当識障害
時間・場所・人物や周囲の状況を正しく認識できなくなる障害です。今日の日付や曜日、今自分がいる場所や、家族も含めた他者と自分との関係などがわからなくなるというような特徴があります。

② 認知症、その他の行動・心理面での症状

 中核症状以外には、次のような行動・心理面での症状が見られる場合があります。ただし、あくまで見られる場合があるということであり、必ず見られるというわけではありません。

妄想:物を盗まれたなど、事実でないことを思い込む、など
幻覚:見えないものが見える、聞こえないものが聞こえる、など
せん妄:落ち着きなく家の中をうろうろする、独り言をつぶやく、など
徘徊:外に出て行き戻れなくなる、自分がどこにいるのかわからなくなる、など
抑うつ:気分の落ち込み、無気力になる、など
人格変化:性格が変わる、たとえば穏やかだった人が短気になる、など
暴力行為:自分の気持ちをうまく伝えられない、感情をコントロールできずに暴力をふるう、など
不潔行為:入力を嫌がる・風呂に入らない、排泄物をもてあそぶ、など

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③ 認知症に関する誤解

「図-認知症、そのイメージ」

 認知症の症状は、既に見たように「文字では」表現できるのですが、「その程度」は、人それぞれ。たとえば記憶障害で記憶が抜け落ちると言っても、それがいつもなのか、たまになのか、それによってどのような困りごとが起きているのかなどは「人それぞれ」なのです。

また、いつも同じ状態にあるとは言えず、調子の波のようなものも存在しています。さらに、これもよくある誤解ですが、仮に認知症と診断されたとしても、その時点から白黒はっきり分かれるかのように、その症状が目立つようになるわけでもないのです。

つまり、認知症とは、上図に示すような、切れ目が不明確で、分けられない、あるいは、分けにくい連続体のようなイメージのもので、認知症を患う方は、その中で大まかに位置づくには「居つつ」も、その中で常に症状が揺れ動いているような状態と言えるわけです。

また、認知症は、最近ではその進行を遅くする薬が開発されており、早期に発見できればできるほど、支援や対策が必要となる場面はあっても、持てる力を発揮し、それまでと同様の暮らしを続けていくことも可能とされているのです。

(3) 本当にツライのは? ~ 支援の中心となるご家族の声への対応が中心だった認知症支援

 認知症を患うと、その中核症状にあたる症状が見られたり、その他の行動・心理面での症状が見られたりします。つまり、日常生活の中で困りごとが生じるというわけです。この困りごとに対して支援の中心となっているのはご家族の方であるのが現実です。

またその症状は重度の場合もあるため、ご家族の方々にとっての負担は非常に大きいとこれまでも考えられてきました。そして、このような事実を受け、認知症を患う方の支援のしくみは拡充されてきた面があります。もちろん、ご家族にとってのご負担は、非常に大きいものでしょう。筆者自身の経験からも、それは理解している面もあります。

一方で、「本当にツライのは、認知症を患うご本人である」という考え方が、近年では広がりを見せつつあります。たとえば、その症状があらわれはじめた当初に感じる今と将来への不安がどれだけ大きなもので、また、心身をすり減らすものなのか。

そして、その症状により困りごとが発生したとき、その困りごとがナゼ起きているのか、自分でも理解できないこと、そして、それを表現できないことなどが、どれほど苛立たしく感じられることなのか。そのようなツラさを理解しようと努めること、そして、そのような不安や苛立ちがあることを理解できれば、「早期発見と早期治療」という行動に向かっていける、向かわせる支援につなげていけるのではないかとも考えられるわけです。

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参考:
厚労省 ホームページ
認知症対策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/
若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0319-2.html

日本脳神経学会 ホームページ
ガイドライン
http://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo.html

日本認知症学会 ホームページ
http://dementia.umin.jp/index.html

2. 認知症サポーターとは?

「図-認知症サポーターとは?」

(1) 1000万人突破! 認知症サポーターとは?

① 認知症サポーターとは? ~認知症に関する正しい知識を持ち、その「見守り」ができる方

これまでに見てきたような認知症に関わる問題、つまり、認知症を患う方の増加や、誰でもなり得るという認知症の特性、症状などに関する正しい知識を得ることによって、結果的に身近な方々の異変に気づける「見守りができる」程度になることを目的として、厚労省が養成をはかっているのが認知症サポーターです。

つまり、認知症サポーターとそれにまつわる制度は、介護に携わる方の養成を目指しているのではなく、「認知症に関する正しい知識を持とう」という、いわば啓発キャンペーンとして実施されているというわけです。

身近な方に認知症を患う方が増えているからか、自分も認知症になりうるという理解が深まったからか、理由はともかくとして、この認知症サポーターは、2018年6月で100万人を突破。これは、国の当初の養成目標を200万人以上上回っています。

② 認知症サポーターにできること

1) 認知症への誤解や偏見を持たず、受け入れること
既に見ているように、認知症サポーターは、認知症を患う方の介護の専門家ではありません。あくまで、「認知症に関する正しい知識を持つ方」と言えます。

実は、「認知症に関する正しい知識を持つ人であることそのもの」が非常に重要な役割を果たすと考えられるのです。なぜなら、認知症に関する正しい知識を持たない限り、認知症に対する偏見を助長しかねないからです。

実際2004年、「痴呆」が「認知症」に改められた当時は、認知症に関する誤解が今以上に激しく、「その原因がわからず治らない、おかしなことをする人」「得体の知れない存在」というような偏見に満ちていました。そのような誤解や偏見のある社会では、何か正しいことを行おうとしても、なかなかうまくいかない、受け止められない、でしょう。

2) 見守る、ということ
認知症サポーターは、地域の認知症の人が穏やかに生活できるように見守り、支援していくことが目的で設けられたものではありますが、だからといって、何か特別なことをしなければならないというわけではありません。

くり返しになりますが認知症サポーターの役割は、認知症に関する正しい知識に基づき、それを理解することを通じて、認知症を患うご本人だけではなく、その支援の中心となっているご家族の方にとっての「よき理解者であること」と言えるわけです。

よって、何か特別なことをしなくとも、その都度気づく範囲で想像をめぐらせ、ちょっとした声がけをしたり、やさしい目で見守ったり、立ち止まり待ってあげたりと、できる範囲での支援をすればよいということでもあります。

たとえば、困っている様子の方を見かけたとき、その困りごとの原因が「もしかしたら認知症にあるかもしれない」と想像をめぐらせるだけでも、「大丈夫ですか?」「お困りですか?」と声をかけることにつながる場合があるのではないでしょうか。

他にも、気になる高齢者を見かけたときに、最寄りの警察や、民生委員の方などに報告することも重要な役割を果たしていることになると言えます

(2) 認知症サポーターになるには?

① 誰でも受けられる無料の認知症サポーター養成講座

認知症サポーターになるには、認知症サポーター養成講座を受講する必要があります。認知症サポーター養成講座は、都道府県及び市区町村が主催するものの他、全国規模の職域団体・企業などが主催するものがあります。前者は地域住民の他、地域の生活関連企業・団体活動等に携わる人を対象として開催するもので、いわば誰でも無料で参加できる講座です。

一方後者はその関係者を対象として開催するものであるので、たとえば職場などが全体で認知症サポーターを養成したい場合などに利用するものととらえるとわかりやすいでしょう。

お住まいの市区町村が主催する認知症サポーター養成講座の開催日程などについては、以下から、最寄りの自治体事務局の連絡先をご確認の上、直接お問合せいただく方法があります。

認知症サポーターキャラバン ホームページ
自治体事務局連絡先
http://www.caravanmate.com/office/

他にも、各自治体ホームページで「認知症サポーター養成講座」と検索すれば、開催日程や申し込み方法などを確認できるでしょう。

なお、認知症サポーター養成講座を受講すると、認知症サポーターには認知症を支援する「目印」としてのブレスレットである「オレンジリング」が配られます。この「オレンジリング」の輪の広がりが目指されているということでもあります。

② 認知症サポーター養成講座の主な内容

認知症サポーター養成講座は、基本的には専用のテキストを使用し60~90分間を目安に行われます。その主な内容は、次のようなものです。

1) 認知症とはどのようなものか
2) 認知症の症状について(中核症状と周辺症状)
3) 認知症の診断や治療について
4) 認知症予防について
5) 認知症の方に接する時の心構えと介護者の気持ちの理解について
6) 認知症サポーターにできることとは?

参考:
厚労省ホームページ
認知症サポーター
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508.html

認知症サポーターキャラバン ホームページ
認知症サポーターキャラバンとは?
http://www.caravanmate.com/aboutus/
認知症サポーター養成講座基準
http://caravanmate.com/web/wp-content/uploads/2015/10/whats001.pdf
自治体事務局連絡先
http://www.caravanmate.com/office/

3. 地域ぐるみで行われる認知症サポーターの養成とその支援
(1) 熊本県菊池市の事例

 菊池市は、認知症サポーター養成に積極的です。「認知症サポーター」と、認知症サポーターを養成する「キャラバン・メイト」の人口に占める割合が、全国平均の6.5%を大幅に上回る3割近くに達している他、市内の小中学校で認知症サポーター養成講座を開催しています。

地域の認知症サポーターが、認知症を患う方を含む高齢の方の見守りの役割を担っており、徘徊による行方不明者ゼロを実現しているとのこと。また、「オレンジセーフティネット」と呼ばれる、全国規模での情報連携を視野に入れた認知症高齢者等の行方不明者捜索協力システムの構築を中心となって進めていますが、ここでも地域の認知症サポーターは、行方不明者の捜索の役割を担うことになっているとのことです。

(2) 福井県若狭町の事例

 若狭町は、認知症サポーターの数が、高齢者ひとりあたり2.4人である他、認知症の初診を受ける方のうち、75%が軽度で、認知症による入院患者の割合も周辺自治体の半分程度に抑制できているとのこと。また、「認知症資源地域支援マップ」を作成、公開するなど、認知症とその支援対策に力を入れています。

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参考:
毎日新聞ホームページ そこが聞きたい 
認知症サポーター、1000万人に 「全国キャラバン・メイト連絡協議会」事務局長・菅原弘子氏
https://mainichi.jp/articles/20180702/ddm/004/070/004000c

菊池市ホームページ
オレンジセーフティネットのプレトライアルを実施しました
https://www.city.kikuchi.lg.jp/q/aview/230/13185.html

西日本新聞
全小中学でサポーター講座 軒先に「オレンジリング」 認知症にやさしい地域へ 熊本県菊池市の松永美根子さん 京都の国際会議で発表
https://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/324591/
若狭町ホームページ
認知症資源地域支援マップ
http://www.town.fukui-wakasa.lg.jp/chiikishigen/

最後に

 認知症は誤解されることも多いものです。そのような誤解が、認知症に関わる偏見を生むことなどがあったことは紛れもない事実でしょう。そのような中で、認知症の正しい知識を持つことを目的に創設されたのが認知症サポーターです。認知症サポーターは、60~90分程度の無料の養成講座を受講することで、誰もがなれるものでもあります。

実際問題として、この養成講座を受けるだけで、認知症を患う方に何か特別な支援を行うことはできないかもしれません。

そうではあっても、「正しい知識を持つこと」が、困った様子の方を見かけたときに、「もしかしたら認知症でお困りかもしれない」と考え、ひと声かけるなどの行動に結びついたり、ご自身に異変を感じたときに、「もしかしたら認知症の初期症状かもしれない」と考え、病院へ行くといった行動に結びついたりといった効果が期待できるわけです。このような地ならしが、本当の意味での共生社会づくりには欠かせないものだと言えるのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省 ホームページ
認知症対策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
認知症サポーター
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508.html
若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0319-2.html
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

認知症サポーターキャラバン ホームページ 認知症サポーターキャラバンとは?
http://www.caravanmate.com/aboutus/
認知症サポーター養成講座基準
http://caravanmate.com/web/wp-content/uploads/2015/10/whats001.pdf
自治体事務局連絡先
http://www.caravanmate.com/office/

菊池市ホームページ
オレンジセーフティネットのプレトライアルを実施しました
https://www.city.kikuchi.lg.jp/q/aview/230/13185.html

若狭町ホームページ
認知症資源地域支援マップ
http://www.town.fukui-wakasa.lg.jp/chiikishigen/

日本脳神経学会 ホームページ
ガイドライン
http://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo.html

日本認知症学会 ホームページ
http://dementia.umin.jp/index.html

毎日新聞ホームページ そこが聞きたい 
認知症サポーター、1000万人に 「全国キャラバン・メイト連絡協議会」事務局長・菅原弘子氏
https://mainichi.jp/articles/20180702/ddm/004/070/004000c

西日本新聞
全小中学でサポーター講座 軒先に「オレンジリング」 認知症にやさしい地域へ 熊本県菊池市の松永美根子さん 京都の国際会議で発表
https://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/324591/

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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