認知症サポーター養成講座を受講して考えたこと

高齢者・認知症

はじめに
 先日筆者は、認知症サポーター養成講座を受講してみました。ここでは、認知症サポーター養成講座の実際の講義内容や受講された方の様子などを中心にレポートしつつ、そこで筆者が改めて考えたことなどをまとめています。

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1. 認知症サポーターとは?
(1) 認知症サポーターとは?

認知症サポーターとは、ひと言で言うなら「認知症に関する正しい知識を持つ方」です。決して認知症介護の専門家というわけではありません。認知症は、2025年には700万人になると推計されていますが、年齢を重ねることに伴う「脳の病気」の一つであり、誰もがなりえるものです。

そのような状況、特性、症状などに関する正しい知識を得ることによって、結果的に身近な方々の異変に気づける「見守りができる」程度ができる方、あるいは、自らの異変に気づける方になることを目的として、厚労省が養成をはかっているのが「認知症サポーターだ」と言えます。

(2) 認知症サポーターにできること

① 認知症への誤解や偏見を持たず、受け入れること

認知症サポーターは、あくまで、「認知症に関する正しい知識を持つ方」ではありますが、実はそのこと自体が、非常に重要な役割を果たすと考えられています。と言うのも、認知症に関する正しい知識を持たない限り、認知症に対する偏見を助長しかねないからです。

実際2004年、「痴呆」が「認知症」に改められた当時は、認知症に関する誤解が今以上に激しく、「その原因がわからず治らない、おかしなことをする人」「得体の知れない存在」というような偏見に満ちていました。そのような誤解や偏見のある社会では、何か正しいことを行おうとしても、なかなかうまくいかない、受け止められないでしょう。

つまり、正しい知識を持つ方が増えれば増えるほど、認知症を患う方が地域社会で生活していける環境づくりに役立つというわけです。

② 見守るということ

認知症サポーターは、地域の認知症の人が穏やかに生活できるように見守り、支援していくことが目的で設けられたものではありますが、だからといって、何か特別なことをしなければならないというわけではありません。認知症サポーターの役割は、認知症に関する正しい知識に基づき、その理解を通じて、認知症を患うご本人だけではなく、その支援の中心となっているご家族の方にとっての「よき理解者」であることです。

よって、何か特別なことをしなくとも、その都度気づく範囲で想像をめぐらせ、ちょっとした声がけをしたり、やさしい目で見守ったり、立ち止まり待ってあげたりと、できる範囲での支援をすればよいということになるわけです。

たとえば、困っている様子の方を見かけたとき、その困りごとの原因が「もしかしたら認知症にあるかもしれない」と想像をめぐらせるだけでも、「大丈夫ですか?」「お困りですか?」といった声をかけることにつながる場合があるのではないでしょうか。他にも、お住いの地域などで気になる高齢者を見かけたときに、最寄りの警察や民生委員の方などに報告することもできるでしょう。

参考:
厚労省ホームページ
認知症サポーター
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508.html

認知症サポーターキャラバン ホームページ
認知症サポーターキャラバンとは?
http://www.caravanmate.com/aboutus/
認知症サポーター養成講座基準
http://caravanmate.com/web/wp-content/uploads/2015/10/whats001.pdf

2. 認知症サポーター養成講座を受講してみたら・・・
(1) 全国で開催される認知症サポーター養成講座

認知症サポーターになるには、認知症サポーター養成講座を受講する必要があります。都道府県及び市区町村が主催するものが各地で開催されており、誰でも無料で参加できます。お住いの地域の認知症サポーター養成講座の開催日程などについては、自治体事務局にお問い合わせいただけば確認できる他、各地域広報誌などでも告知されています。

なお、各自治体事務局の連絡先は、以下から確認できます。

認知症サポーターキャラバン ホームページ
自治体事務局連絡先
http://www.caravanmate.com/office/

(2) 認知症サポーター養成講座で学ぶこと ~ 養成講座受講レポート

 次に、認知症サポーター養成講座について、筆者が実際に受講した際の内容や参加された方のご様子などを振り返っていきます。

① 認知症があるということ ~ 映像から

認知症があるということを、「バアちゃんの世界」という映像で学びます。なお、「バアちゃんの世界」は、以下から視聴することが可能です。
笑顔とこころでつながる認知症医療
バアちゃんの世界
https://www.egaotokokoro.jp/movie/mobile.html

② 認知症とは何か?

「図-認知症の原因」

 認知症が脳の病気であること、それには大きくは「脳の細胞が少しずつ死に、脳が委縮するもの」と「血管が詰まって一部の細胞が死ぬもの」の2つがあり、現在の認知症の50%が、前者のうち、脳の大脳皮質連合野や海馬領域で神経細胞のネットワークが壊れることで発症するアルツハイマー病に起因するものであることを学びます。

③ 認知症の症状と治りにくいもの、治る可能性のあるもの

「図-認知症の中核症状と行動・心理症状」

 認知症には、「記憶障害」「見当識障害」「理解・判断力の障害」「実行機能障害」の4つを中心とした「中核症状」と、「不安・焦燥」「うつ状態」「幻覚・妄想」「徘徊」「興奮・暴力」「不潔行為」などに代表される「行動・心理症状」があることを学びます。

なお、認知症の「中核症状」は、その進行を抑制することができるものの、現状では治らない、あるいは、治りにくいものととらえられています。一方で、「行動・心理症状」は治る可能性があるものとされています。

④ 認知症でご家族の方が困ること

 認知症によりご家族が困ることの中心は、「行動・心理症状」であることを学びます。既に見たように、「行動・心理症状」は、治る可能性があるととらえられるもの。つまり、ご家族の方が「認知症のご本人の症状により困ること」は、「改善できる可能性がある」ととらえられているということです。

「そこに至るまでには大きな苦労があるかもしれませんし、必ずしもうまくいく場合だけではないかもしれません。それでも、認知症による困りごとは一定程度改善できる可能性があります」

これは、ご家族の方がご本人を支援するにあたって、非常に重要な指摘ではないでしょうか。

⑤ 認知症のある方の支援 ~ ご本人の支援とご家族の支援

認知症のある方の支援について、ご本人の支援とご家族の支援の両面があること、また、その基本を学びます。

1) ご本人の支援の基本
基本姿勢と7つの具体的な対応のポイントがあります。基本姿勢としては、「3つのない」が提示されています。それは、「驚かせない」「急がせない」「自尊心を傷つけない」とされています。

その上で具体的な対応の7つのポイントとして、「まずは見守る」「余裕をもって対応する」「声をかけるときは1人で」「後ろから声をかけない」「相手に目線を合わせてやさしい口調で」「おだやかに、はっきりとした話し方で」「相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する」が提示されています。

2) ご家族の支援の基本
 認知症介護をされているご家族の方の支援のポイントは、ご家族の方の気持ちを理解することが最も重要とされています。

認知症介護にあたるご家族の方が、認知症を受け入れるには4つの段階を踏む必要があるとされていますが、「その段階を踏む必要があること」、さらに、「段階ごとに訪れる気持ちの理解をすること」が、認知症サポーターとしてはまずは大切だということです。

 なお、ご家族の方が認知症を受け入れる4つの段階とは、「とまどい・否定」「混乱・怒り・拒絶」「割り切り」「受容」です。特に2段階目の「混乱・怒り・拒絶」の段階が最も辛い時期にあたるものであり、このときの周囲のサポートや気持ちの理解は非常に重要になると言えるでしょう。

(3) 認知症サポーター養成講座で学んだこと ~ 出席された方の様子から

 養成講座に参加されたのは20名程度。「認知症があるとはどういうことか?」を学ぶため、つまり、この講座の主旨と合って参加されている方が中心ではありました。

講座座終了後、参加された方のお一人とお話ができたのですが、お勤め先がお客様と直接接する職場であるため、この養成講座などに参加し、積極的に勉強することを推奨されているとのことでした。このような職場が拡大していくことは、まさに、この講座が開催される大きな意味であると言えるでしょう。

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参考:
認知症サポーターキャラバン ホームページ
自治体事務局連絡先
http://www.caravanmate.com/office/
認知症サポーター養成講座標準教材 認知症を学び地域で支えよう、NPO法人地域ケア政策ネットワーク

笑顔とこころでつながる認知症医療
バアちゃんの世界
https://www.egaotokokoro.jp/movie/mobile.html

3. 認知症のある方のご家族の辛さ
(1) 認知症のあるご家族がいる、ということ

筆者が参加した講座には、実は、「今、実際、認知症のある方のご家族のことで、本当に困っている」という、非常にお若い方も参加されていらっしゃいました。最後に質問ができる時間があったのですが、この方は、ご家族の状況を訴えられ「どうしたら良いのか」と泣き出されるような状態だったのです。他にも、「実際にご家族が認知症で困られている」という方が、その状況に関する質問をされていました。

(2) 「どうしたらいいのか?」という気持ち

 「バアちゃんの世界」を視聴いただくと、認知症のご家族を持つということがどういうことか、その一端を知ることができるでしょう。しかし、映像の世界というのは限られた時間の中で見る世界。これが毎日、昼夜を問わず、24時間、ずっと続く。

そして、それがいつ終わると言えるものではないわけです。筆者の経験的にも、ご家族の心身のご負担の大きさと、「どうしたらいいのか」という想いは、相当なものだろうと想像することができます。養成講座でこの課題が解決されることは残念ながらないでしょう。

開催主旨を考えても、それをこの場で求めることにも無理があると言えます。ただ、実際にご家族の方の困りごとが、それだけ切実だということでもあると考えられるわけです。

(3) ご本人への支援と、そのご家族への支援という2つの側面とそのバランス

「図-認知症、その支援の考え方」

 筆者が認知症サポーター養成講座で受講した際の「体験」を通じてもわかるように、また、この講座でも指摘されているとおり、認知症のある方の支援とは、認知症を患うご本人の支援とそのご家族の支援をどう両立させるのか? ということになると言えるでしょう。

 近年主流になりつつあるのは、ご本人が地域社会で、ご本人の意思を尊重された形で生活できるよう支援するという考え方です。しかし、それを尊重しようとするだけでは、支援の中心となるご家族の方が心身両面で疲弊しきってしまう可能性がある。とすれば、やはりご本人の支援とご家族への支援の2つの支援が必要ということになるでしょうし、さらに、両者のバランスが重要になるとも言えるのではないでしょうか。

(4) ご家族が癒される時間を持つために

① 福祉サービスの有効利用

 認知症をはじめとする高齢の方の生活を支援する制度に介護保険制度があります。介護保険制度には、利用者視点で言えば、訪問系サービス、通所系サービス、短期滞在系サービス、居住系サービス、入所系サービスの、大きく5つのサービスがあります。これらはすべて、認知症のご本人へのサービスでありつつ、認知症介護にあたるご家族へのサービスという側面もあると言えるでしょう。

 特に短期滞在系のサービスは、ご家族の方が癒しの時間を得るためにも利用したいもの。認知症のあるご本人を直接介護しない時間を作ることに「うしろめたさ」を感じられる方もいらっしゃるようです。しかし、ご家族の方が癒される時間も必要。それが、認知症介護を安定して続けていくコツでもあると言えます。

② 話せるということが重要という場合も

 認知症介護をされるご家族にとって、その状況などを含め、「話ができる」ということは非常に重要と考えられます。それは筆者が参加した講座で、受講者の方が涙ながらにご家族のことについて話をされたことからも推察されます。もちろんその効果はわずかかもしれません。が、わずかなことではあっても「吐き出す」ことは意外な効果があるのもまた事実です。

それは、「息を吐かなければ吸えないことと同じようなもの」と言えるかもしれません。相談できる先としては、お近くの役所や地域包括支援センターなどがある他、現在では同じような悩みを持つ方が集う場としての認知症カフェなどが開催されるようになってきています。しかし何より重要なのは、「周囲の方が話を聞く環境づくり」と言えるのではないでしょうか。

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参考:
厚労省ホームページ
介護保険制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html

独立行政法人福祉医療機構WAMNETホームページ
サービス一覧/サービス紹介
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/service/

最後に

 認知症サポーター養成講座の講義内容は、認知症に関する基本と言えるでしょう。「認知症に関する正しい知識を持ち、認知症への誤解や偏見を持たず、認知症のあるご本人やそのご家族のよき理解者を養成する」という主旨を考えれば当然と言えるかもしれません。

よって認知症に関する知識をほとんど持たない方、たとえば認知症のある方がお客様の場合がある若い方などには、ぜひ受けていただくと良いのではないかと感じますし、そのような学びを支援する事業者が増えることは非常に重要と言えるでしょう。

一方で、講座に参加された方の中には、今、実際にご家族の介護で困られている方もいらっしゃいました。これは想像ですが、お若いこともあり、お友だちなどにその状況を話すことができない、あるいは、話をしてもわかってもらえないというような方だったのかもしれません。

それだけ周囲の方の支援がなければ辛いのが認知症介護と言えるでしょう。介護サービスの利用はもちろん、認知症カフェなど、話をできる場づくりとその場への参加も必要かもしれません。しかしそれ以上に、認知症について「いつでも話せる環境づくり」が非常に大切になるでしょう。その意味で、認知症サポーター養成講座は大きな役割を果たしていると言えるのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
認知症サポーター
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508.html
介護保険制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html

独立行政法人福祉医療機構WAMNETホームページ
サービス一覧/サービス紹介
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/service/

認知症サポーターキャラバン ホームページ
認知症サポーターキャラバンとは? http://www.caravanmate.com/aboutus/
認知症サポーター養成講座基準 http://caravanmate.com/web/wp-content/uploads/2015/10/whats001.pdf
自治体事務局連絡先 http://www.caravanmate.com/office/

認知症サポーター養成講座標準教材 認知症を学び地域で支えよう、NPO法人地域ケア政策ネットワーク

笑顔とこころでつながる認知症医療
バアちゃんの世界
https://www.egaotokokoro.jp/movie/mobile.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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