若年性認知症とは?

高齢者・認知症

はじめに
若年性認知症とは? 認知症は高齢者の方だけがなるものと思われている方も多いようです。しかし実際には、若い世代でも発症することがあります。認知症の中でも、65歳未満で発症した認知症を若年性認知症と言います。

若年性認知症では、その多くがアルツハイマー型(若年性アルツハイマー)と言われています。ここでは若年性認知症に見られる症状やタイプをはじめ、主な経済的な面での支援内容などをまとめています。



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1. こんな症状が見られたら・・・若年性認知症の初期症状

「忘れっぽくなった」「同じものを買ってくる」「仕事の段取りが遅くなる」「失敗が増える」「やる気が起きない」

これらの症状が表れた場合、年齢に関係なく認知症の可能性があります。ただし、これら症状は、ご本人は感じにくいこともあります。ご家族の方も含め、「もしかしたら」と思うようなことがあったら、早めに専門医に相談することをおすすめします。

参考:
政府広報オンライン ホームページ
暮らしに役立つ情報
https://www.gov-online.go.jp/useful/

2. 若年性認知症とは?
(1) 若年性認知症とは?

65歳未満で発症した認知症を若年性認知症と言います。若年性認知症の患者数は、厚労省の補助金事業の調査によると、3.78万人と推計されています。

物忘れが出たり、仕事や生活に支障をきたすようになっても、年齢の若さから認知症を疑わなかったり、「日々の疲れのせい」というようにとらえてしまうケースが多いようです。

病院で診察を受けても、うつ病や更年期障害などと間違われることもあるようで、診断までに時間がかかってしまう場合が多いと言われています。

(2) 認知症とは?

若年性認知症を含む認知症とは、年齢を重ねることに伴う「病気」の一つです。

生まれた後、いったん正常に発達した脳の細胞や神経機能が、さまざまな原因により、死んでしまったり、働きが悪くなったりすることで、「記憶・判断力の障害などが起こることで、社会生活や対人関係に支障が出ている状態(およそ6か月以上継続)」を言います。

つまり、後天的な原因により生じる知能の障害であり、先天的な原因で起きる知的障害(精神遅滞)とは異なるものとして区別されています。

年齢を重ねることに伴い、誰もが思い出したいことがすぐに思い出せなかったり、新しいことを覚えるのが難しくなったりしますが、「認知症」はこのような「加齢によるもの忘れ」とは、「病気である」という点でも異なります。

ただ、加齢に伴い発症する可能性が高まるという意味で、誰もが発症する可能性がある病気である、と言うこともできます。

(3) 認知症の主な症状 ~ 認知症と年齢を重ねることに伴う物忘れとの違い

「図-認知症の主な症状 ~中核症状」
認知症の主な症状 ~中核症状

若年性認知症を含む認知症は、加齢に伴う物忘れとは、実際に表れる症状にも異なる特徴が見られます。認知症に関する主な症状(中核症状)として、以下のような症状があります。

① 記憶障害

自分が体験した過去の出来事に関する記憶が抜け落ちてしまう障害のことです。認知症の場合、最近のことから忘れていくという特徴があります。

② 理解・判断力障害

日常生活の些細なことでも判断することができなくなる障害です。料理を作るときどの食材を使えばいいかといった、日常生活の些細なことでも判断できなくなるという特徴があります。

③ 実行機能障害

ある目標に向かって、計画を立てて順序よく物事をおこなうことができなくなる障害です。計画的に買い物ができなくなったり、家電製品の使い方がわからなくなったりするというような特徴があります。

④ 見当識障害

時間・場所・人物や周囲の状況を正しく認識できなくなる障害です。今日の日付や曜日、今自分がいる場所や、家族も含めた他者と自分との関係などがわからなくなるというような特徴があります。

以上のような中核症状を中心に、認知症と加齢に伴う物忘れとを比較すると、以下のような違いが見られます。
認知症と加齢に伴う物忘れを比較

⑤ 行動・心理症状

「図-認知症の主な症状 ~行動・心理症状」
認知症の主な症状 ~行動・心理症状

 また、中核症状以外に、行動面・心理面で次のような症状が見られるようになります。ただし、これらの症状のすべてが表れるというわけではありません。

妄想:物を盗まれたなど、事実でないことを思い込む、など
幻覚:見えないものが見える、聞こえないものが聞こえる、など
せん妄:落ち着きなく家の中をうろうろする、独り言をつぶやく、など
徘徊:外に出て行き戻れなくなる、自分がどこにいるのかわからなくなる、など
抑うつ:気分の落ち込み、無気力になる、など
人格変化:性格が変わる、たとえば穏やかだった人が短気になる、など
暴力行為:自分の気持ちをうまく伝えられない、感情をコントロールできずに暴力をふるう、など
不潔行為:入力を嫌がる・風呂に入らない、排泄物をもてあそぶ、など

参考:
厚労省 ホームページ
認知症対策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/
若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0319-2.html

3. 若年性認知症
(1) 若年性認知症の種類

若年性認知症は、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の2つが圧倒的に多く見られ、2疾患で6割を占めるとの調査結果があります。

脳血管性認知症の割合が多いことは、若年性認知症の特徴と言えるでしょう。

その他のものには、事故などで脳に損傷を受けたために起こる頭部外傷後遺症、前頭側頭葉変性症(ピック病)、多量のアルコールを飲む事で脳が委縮するアルコール性認知症、レビー小体型認知症などがあります。

厚労省ホームページ
若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0319-2.html

(2) 若年性認知症の原因

若年性のものを含め、認知症の原因は不明とされています。一方で、いずれの場合も、脳機能に何らかの不具合が発生した結果、症状が現れると考えられています。

(3) 認知症を患う方の数

若年性認知症を患う方は、2009年発表の厚労省の調査で、3.78万人と推計されています。

一方で、既に見たように、その年齢の若さなどにより認知症を疑わないケースもあることから、実際には、より多くの方が若年性認知症を患っている可能性があることも否定できません。

【関連記事】
若年性アルツハイマー病の早期発見のためのチェック方法
https://jlsa-net.jp/kn/zknalzheimer-check/

参考:
厚労省 ホームページ
認知症対策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/
若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0319-2.html

日本脳神経学会 ホームページ
ガイドライン
http://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo.html

日本認知症学会 ホームページ
http://dementia.umin.jp/index.html

4. 若年性認知症と診断されたら
(1) 経過

「治る」とされるもの以外、若年性認知症を含む認知症は、その症状が徐々に不可逆的に進行していくとされています。たとえばアルツハイマー型認知症の場合では、次のように症状が進行していきます。

① 初期の症状

中核症状である、記憶障害、理解・判断力障害、見当識障害のうち、記憶に限定した認知障害が発生します。過去に起きたことはきちんと覚えているのに、新しいことは覚えていないという特徴があります。

生活面では「言いたいことがあるのに言葉が出てこない」「やる気が出ない」といった問題が、仕事や家事では注意不足を指摘されることがそれぞれ多くなります。

【関連記事】
若年性アルツハイマー病の初期症状と早期発見・早期治療の重要性
https://jlsa-net.jp/kn/zyalzheimer-syozyo/

② 中期の症状

他人の言うことを理解するのが難しくなってきます。そのため、会話をしても、コミュニケーションと言えるような内容が伴わなかったり、一方通行に言いたいことだけを主張したりといったことになりがちです。

また、妄想・焦燥・不穏・うつなどの症状が徐々に現れてきます。

さらに、生活をするうえで必要な車の運転や買い物、食事の支度などを実際にすることが難しくなります。過去の重要な出来事も覚えていないといった症状も、徐々に進行していきます。

③ 後期の症状

徐々に痩せていき、立ち上がることや歩くことなど、運動機能面でも支障が出てくるようになります。運動機能は生理的な機能にも現れ、失禁などを繰り返すようになります。病気にもかかりやすくなり、そのことが結果的に死に結びついていきます。

認知症を患った方の死因として、嚥下性肺炎や尿路感染に由来する敗血症などが多いと言われています。

(2) 治療など

現時点での若年性認知症を含む認知症の治療薬はアルツハイマー型認知症に対するもので、また、病気の進行を緩やかにする作用を持つ薬が中心です。

また、脳血管障害の治療薬は多いものの、脳血管性認知症自体を対象にするものではないと言われています。

認知症を完全に治せる薬物療法がないため、非薬物療法と組み合わせて治療効果を高めようとするアプローチが一般的です。

非薬物療法とは、心理・社会的な治療アプローチのことで、認知・刺激・行動・感情の4つを対象に働きかける方法です。デイケアサービスなどで実施されています。

また、デイケアサービスなどは、日々の介護の中心となる支援者の方々のサポートの役割を担っているという面もあります。

このように見ると、社会的支援制度や福祉サービスの内容をしっかり理解し、必要なサービスを選択できるようにすることが治療効果を高めるために必要だ、とも言えるのです。

参考:
厚労省 ホームページ
認知症対策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

公益財団法人 日本看護協会 ホームページ
認知症ケアガイドブック
http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/ninchisyo/index.html

5. 若年性認知症の方を支える福祉サービス

「図-若年性認知症を患う方の生活を主に経済的な面で支援するしくみ」
若年性認知症を患う方の生活を主に経済的な面で支援するしくみ
若年性認知症を患う方を保護・支援するしくみは、若年性認知症を患う方が、個人としての尊厳を保てるだけの日常生活・社会生活をおくれることを目的に、少しずつ拡充されてきています。以下は、そのうち経済的な面での支援の主だったものです。

(1) 障害者手帳制度

若年性認知症と診断されると、「精神障害者保健福祉手帳」を取得できます。血管性認知症やレビー小体型認知症などにより身体症状がある場合は、「身体障害者手帳」に該当する場合もあります。

障害者手帳があれば、福祉サービスを受ける必要があることを証明できたり、企業の障害者雇用枠の中で働くことができたりといった支援を受けることができます。また、以下のような経済面での補助サービスが受けられます。

① 障害者手帳の取得で受けられるサービス

障害の等級、地域などにより違いはありますが、以下のようなサービスを受けることができます。詳細は窓口でおたずねください。

公共料金等の割引:NHK受信料減免、交通機関の運賃割引、携帯電話や上下水道の割引など
税金の控除・減免:所得税・住民税の控除、相続税の控除、自動車関連税の軽減など
手当の支給など:福祉手当など
その他:障害者雇用での就職、公営住宅への優先入居など

(2) 障害年金

病気やけがで仕事を続けることが困難となった方やその家族の方の生活を支えるための公的年金制度です。若年性認知症も、その症状によっては障害年金の対象です。

【関連記事】
若年性認知症と障害年金
https://jlsa-net.jp/kn/zykunenninchi-nenkin/

(3) 自立支援医療制度(精神通院医療)

若年性認知症で通院治療している場合、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費の自己負担が1割に軽減される制度です。ただし、世帯の所得や疾病等に応じて自己負担額の上限が定められています。

(4) 医療費控除

1年間(1月から12月まで)に負担した医療費の総額が一定額を超えている場合に、税金が還付される制度です。

(5) 高額療養費制度

医療機関や薬局で支払う自己負担額が1カ月単位で一定額を超えた場合に、その超えた分の現金が支給される制度です。事前に「限度額適用認定証」を入手し、窓口で提示すれば、自己負担限度額を超えた分を支払う必要はありません。

(6) 高額介護サービス費制度

同じ世帯の利用者が1カ月に支払った介護サービス費の自己負担額の合計額が、一定金額を超えた場合に、その超えた分の現金が支給される制度です。

(7) 高額医療・高額介護合算療養費制度

同じ世帯内で同一の医療保険に加入している人で、毎年8月から翌年7月までの1年間に「医療保険」と「介護保険」の両方に自己負担があり、その合計が一定の額を超えた場合に、その超えた分の現金が支給される制度です。

参考:
厚労省 ホームページ
自立支援医療(精神通院医療)の概要
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin.html
高額医療・高額介護合算療養費制度について
http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0724-1.html
身体障害者手帳
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/shougaishatechou/
厚労省 みんなのメンタルヘルス総合サイト ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

東京都保健局ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/tetuzuki/techo.files/tetyou_hanteikijyun.pdf

日本年金機構ホームページ
障害年金
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html
国税庁ホームページ
医療費を支払ったとき(医療費控除)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1120.htm

全国健康保険協会 ホームページ
医療費が高額になりそうなとき
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3020/r151

公益社団法人 全国有料老人ホーム協会ホームページ 
[厚生労働省]高額介護(予防)サービス費の負担上限額の見直しについて
http://www.yurokyo.or.jp/news/20170525_01.html

最後に

若年性認知症は誰でもなる可能性がある病気です。そして、若年性認知症含む認知症の症状は、その方の行動レベルだけではなく、性格的な面でも、状況を一変させる場合があります。

また、代表的なアルツハイマー型認知症などは、患ってしまうと、その進行をある程度緩やかにすることは可能だとしても治ることがないのが現状です。

このような中で、若年性認知症を患う方の支援のしくみは、少しずつ拡充されてきています。若年性認知症は、その後の人生の長さも含め、ご家族だけで何とかできるようなものでもありません。必要な支援は受けることが重要と言えるでしょう。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省 ホームページ
認知症対策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0319-2.html
認知症サポーターについて
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508.html
自立支援医療(精神通院医療)の概要
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin.html
高額医療・高額介護合算療養費制度について
http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0724-1.html
身体障害者手帳
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/shougaishatechou/

厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

日本脳神経学会 ホームページ
ガイドライン
http://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo.html

日本認知症学会 ホームページ
http://dementia.umin.jp/index.html

政府広報オンライン ホームページ
暮らしに役立つ情報
https://www.gov-online.go.jp/useful/

公益財団法人 日本看護協会 ホームページ
認知症ケアガイドブック
http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/ninchisyo/index.html

東京都保健局ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/tetuzuki/techo.files/tetyou_hanteikijyun.pdf

日本年金機構ホームページ
障害年金
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html

国税庁ホームページ
医療費を支払ったとき(医療費控除)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1120.htm

全国健康保険協会 ホームページ
医療費が高額になりそうなとき
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3020/r151

公益社団法人 全国有料老人ホーム協会ホームページ 
[厚生労働省]高額介護(予防)サービス費の負担上限額の見直しについて
http://www.yurokyo.or.jp/news/20170525_01.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構 代表理事として広報を担当する。現在、株式会社目標管理トレーニングの代表取締役としても活動を行っ...

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