要注意! 認知症・高齢者の方の熱中症の症状と対策

社会的課題

はじめに
 夏場になると十分な注意が必要になるものに熱中症があります。特に認知症を患う方を含む高齢の方は、熱中症になりやすいことがわかっています。ここでは、そもそも熱中症とはどのようなものなのか、そして、高齢の方が熱中症になりやすいのはナゼなのかといったことや、熱中症を予防するための方法、高齢の方の熱中症予防支援の視点などを中心にまとめています。

1. 熱中症とは

「図-熱中症のメカニズム」

(1) 熱中症とは?

熱中症は、高温多湿な環境に、私たちの身体が適応できないことで生じるさまざまな症状の総称です。めまいや立ちくらみ・筋肉の硬直程度ですぐにその症状が改善するような軽症のものから、その数は毎年数十名程度ではあるものの死に至るものまであり、決して侮ってはならないのが熱中症であると言うことができるでしょう。

熱中症を引き起こす条件としては、「環境」と「からだ」と「行動」の3つがあげられています。

「環境」条件とは、気温が高い、湿度が高い、風が弱いといった、気候などによる要因です。
「からだ」の条件は、その時の体調のことと言えるでしょう。同じ環境、同じ行動をしていても、体調によっては熱中症になる場合があるということです。
「行動」条件は、激しい労働や運動によって体内に著しい熱が生じることなどが考えられます。

(2) 熱中症のメカニズム

 では、熱中症はどのようにして起きるのでしょうか? 人の体は、平常時であれば体温が上がっても、汗によって、あるいは、皮膚の温度が上昇することによって、体の中の熱を外に逃がすしくみになっています。つまり、自然と体温調整が行われるのです。

 しかし、熱中症では、汗や皮膚を使った体温調整ができず、対内に熱がこもってしまうのです。その熱は、ひどい場合には42℃を超えるほどにもなると言われています。

参考:
環境省熱中症予防情報サイト
熱中症の予防方法と対処方法
http://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php

一般財団法人日本気象協会 熱中症ゼロへ ホームページ
https://www.netsuzero.jp/

2. 認知症を含む高齢の方に多い熱中症
(1) 熱中症の発生状況

① やはり夏場に多い熱中症

2011年から2017年に熱中症により救急搬送された方は、6月~9月の4カ月で4万人~6万人弱の間で推移しています。その大きな原因の一つは、日本の高温多湿化にあると考えられます。実は日本の平均気温は、100年の間に1.19℃程度上がる状況にあるのです。特に春の気温の上昇は大きく、同じ基準で1.45℃/100年となっています。

このような事情もあってか、消防庁は2015年から、5月の熱中症による救急搬送数を調査し始めており、各年3千人前後、救急搬送された方がいらっしゃる状況です。とはいえ、やはり夏場の7、8月が熱中症のリスクが高い時期であることには間違いがなく、7年間の熱中症による緊急搬送の85%が、7、8月に発生していることがわかっています。

② 地域別では西日本に多い

地域別にみると、西日本で、熱中症により救急搬送された方が多いこともわかっています。2017年の都道府県別人口10 万人あたりの熱中症による救急搬送数は、沖縄県が最も多く90.26 人。次いで鹿児島県の89.67 人、宮崎県78.35 人、熊本県78.21 人、佐賀県75.29 人の順となっており、上位は軒並み九州地方です。もちろん年ごとに若干の違いはあるものの、この傾向は毎年同様となっています。

(2) 高齢の方に多い熱中症

① 熱中症による救急搬送の半数は65歳以上の方

 2017年の場合、熱中症による救急搬送の半数近くの48.9%、25,930人が65歳以上の高齢の方。この「半数近くが65歳以上の方」という傾向も、毎年同じです。

② ナゼ高齢の方に多いのか?

 では、ナゼ、高齢の方に熱中症による救急搬送が多いのでしょうか? その大きな原因として、高齢の方が温度に対する感覚が弱くなることが考えられています。夏場でも、季節に似合わないような厚着をされている方がいるのはそのためです。つまり、ご本人は暑さを感じてはいないのだけれど、実際には非常に暑い中で生活されていて、汗や皮膚を使って体温調整することができなくなってしまい、体温が上昇、熱中症になってしまうというわけです。

参考:
総務省消防庁ホームページ
過去の全国における熱中症傷病者救急搬送に関わる報道発表一覧
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList9_2_1.html

環境省熱中症予防情報サイト
熱中症の予防方法と対処方法
http://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php

気象庁
日本の年平均気温
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html
日本の季節平均気温
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/spr_jpn.html

3. こんな症状が見られたら・・・熱中症の症状と応急処置
(1) 熱中症の症状

「図-熱中症の主な症状」

 熱中症に見られる主な症状は次のとおりです。番号が若いものは初期症状で、次第に重症度が高くなります。ただし、これらの症状が必ず出るというわけではありません。よって、熱中症が疑われる場合には、後ほど見るような対処策を早めに講じることが大切になると言えるでしょう。

① めまいや顔の火照り

めまいや立ちくらみ、顔が火照るといった症状は、熱中症の典型的な初期症状です。一時的に意識が遠のいたり、腹痛が出たりする場合もあります。

② 筋肉痛や手足の痙攣

 手足の筋肉がつるなどの症状である「こむら返り」や、筋肉がピクピクと痙攣したり、硬くなったりするという症状です。

③ 体のだるさや吐き気

 体がぐったりしたり力が入らなくなったりするといった症状です。場合によっては、吐き気やおう吐、頭痛などを伴います。

④ 異様な汗のかき方

 いくら拭いても汗が出る・止まらない、または、逆に暑いはずなのにまったく汗をかいていないなど、汗のかき方が普段と異なるという症状です。

⑤ 体温が高い、皮膚に異常が見られる

 体温が極端に高く、皮膚も熱い、あるいは、皮膚が赤くなり乾燥しているといった症状です。

⑥ 呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない

 声をかけても反応が薄かったり、反応しなかったり、また、質問に対しておかしな返答をするのは、重度の熱中症の可能性が高くなります。他に、体がガクガクとひきつけを起こしたり、まっすぐ歩けなかったりするなどの異常が見られることもあります。

⑦ 水分補給ができない

 飲み物を渡しても、自分で上手に水分補給ができない場合は大変危険な状態です。

(2) 熱中症の症状が見られたら

 熱中症の症状が見られたら、実際に熱中症か否かを問わず、できるだけ早く以下のような対応を取ることが大切です。

① 安全で涼しい場所に移動。横になって休ませ、体を冷やす

 まずは涼しい場所に移動することが第一です。室内であれば、冷房をすぐに効かせたり、扇風機で送風したりすることなども重要な対処法です。移動する際にはめまいや立ちくらみ、一時的な失神によるふらつきや転倒によって頭を打つなどしないよう、支えることも大切になります。

横になって休ませるときには、衣服を緩め、また、足を10cm程度高くできるよう、座布団や枕などを利用すると、心臓へ血液が戻りやすくなるため、脳への血流を改善させる効果があります。
体を冷やす際には、首筋や脇の下など、太い静脈が通る部分を冷やすのが有効です。

② 水分と塩分を補給させる

 スポーツドリンクなどを用いるのが最も効果的です。主なスポーツドンクの塩分濃度は0.1~0.2%程度。スポーツドリンクがない場合などは、同程度の濃度の食塩水をつくって飲ませるという方法もあります。このときの分量は、水1リットルに対して食塩が1~2グラムになります。また、場合によっては、水分と同時に塩分を含む飴・タブレット・梅干しなどを補給する方法もあります。

 水分と塩分を補給させるのには理由があります。実は大量に発汗しているときなどは、体内の水分とともに塩分やミネラルも奪われているのです。そこに水分のみを補給してしまうと、血液中の塩分濃度やミネラル濃度が低くなりすぎ、かえって熱中症の症状を悪化させてしまう場合があるのです。

血液中の塩分濃度やミネラル濃度が低くなりすぎた場合、筋肉の収縮が起こります。その結果、手足の痙攣や筋肉の硬直が見られるのです。

③ 医療機関を受診させる

 少し安静にしていても症状の改善が見られなかったり、「呼びかけへの反応がおかしい」「まっすぐ歩けない」「自分で水分補給ができない」といったすでに重症化が疑われるような症状が見られたりする場合は、すぐに医療機関を受診させることが重要です。

 特に体を冷やしているのに熱が一向にひかないという場合、命の危険に及ぶ可能性が高まります。人の生命の危機ラインは42℃と言われていまが、熱中症が重症化している場合、この42℃を超える高熱につながることもあるのです。

参考:
環境省熱中症予防情報サイト
熱中症の予防方法と対処方法
http://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php
熱中症の対処方法(応急処置)
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_checksheet.php
一般財団法人日本気象協会 熱中症ゼロへ ホームページ
https://www.netsuzero.jp/

4. 熱中症の予防

「図-熱中症予防の視点」

(1) 熱中症の予防策

熱中症の予防にあたっては、熱中症の条件である「環境」と「からだ」と「行動」の3つ視点からその対策を検討することができます。

① 環境 ~ 涼しい環境づくりを

 そのとき自分のいる環境の気温と湿度に注意することが重要です。室内であっても、夏の日中は非常に高温、多湿になりがちです。窓を開けて風通しを良くしたり、カーテンなどで日差しを遮ったりするという方法もありますが、やはり、エアコンや扇風機などを上手に使うことも重要です。

また、衣服も重要です。実はネクタイの有無で体感温度が2度程度変わるという調査結果があるのですが、そう考えれば、胸元が緩やかな衣服を着た方が、熱中症を防ぎやすい面があると言えるでしょう。

② からだ ~ 暑さに負けない体づくり

 熱中症になるかならないかは、体調に左右される面も大きくなります。よってバランスのよい食事、日々の適度な運動で、暑さに負けない体をつくることが非常に重要です。また、しっかりと睡眠をとることも大切。通気性や吸水性の良い寝具を使ったり、エアコンや扇風機を適度に使ったりして、睡眠環境を整え、日々十分な睡眠をとることが熱中症の予防につながります。

なお、睡眠中の熱中症という問題もあります。この対策の意味でも、エアコンや扇風機はうまく使いたいものです。

③ 行動 ~ 熱中症に備えた行動を

 たとえば出かけなくてはならないというとき、朝の涼しめの時間と真昼とでは、その暑さも、熱中症のなりやすさもまったく異なると言えます。よって、まずは行動する時間帯の工夫が大切になると言えるでしょう。また、こまめな水分と塩分やミネラルの補給は重要です。日中だけでなく、睡眠の前後、入浴の前後など、補給するタイミングをある程度習慣づけていくことも大切になるかもしれません。

 さらに、外出するなど、特別な時には、帽子をかぶったり、冷却グッズを持ったり、飲料を持ち歩くといった行動の工夫も必要でしょう。

(2) ご家族や後見人の方ができること

 認知症の方を含む高齢の方の熱中症予防に、ご家族の方や後見人の方ができることは何でしょう? 上で見た熱中症の予防策である「環境」「からだ」「行動」のサポートをすることが非常に大切になるのではないでしょうか。そして、それは、一緒にいないとできないものばかりではありません。

 たとえば「環境」面でのサポートであれば、一定温度以上になったらクーラーの電源を入れられるよう、スマートフォンなどのアプリを使うといった方法があります。そのようなものを使わなくても、一定の時刻になったら自動的にクーラーの電源が入るよう、タイマー機能などを利用するという方法もあるでしょう。

 「からだ」面であれば、いつでも栄養価の高いものを食べられるよう、たとえばトマトソースなどの作り置きをし、冷ややっこなどの簡単な食事のときでも、それだけにならないようすることもできるかもしれません。寝具の購入などは、お金はかかるものの、お時間をかけられない場合などにできる工夫の一つでもあるでしょう。

 「行動」面で言えば、GPS機能やアラーム機能などを使い、水分や塩分を補給することを促すという方法もあるでしょう。環境省が推進役となって提供している無料の暑さ指数 メール配信サービス(http://www.wbgt.env.go.jp/mail_service.php)などを登録しておき、熱中症の警戒をするという方法も考えられます。

 このように、熱中症に関する「こんなことができるといいな」というものについては、実は比較的さまざまなサービスが提供されている部分もあります。こまめな情報収集が、より良い支援につながると言えるのではないでしょうか。

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参考:
環境省熱中症予防情報サイト
熱中症の予防方法と対処方法
http://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php
熱中症の対処方法(応急処置)
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_checksheet.php
暑さ指数 メール配信サービス(無料)
http://www.wbgt.env.go.jp/mail_service.php

一般財団法人日本気象協会 熱中症ゼロへ ホームページ
https://www.netsuzero.jp/

最後に

 熱中症により緊急搬送されるケースのうち、その半数が65歳以上の高齢の方であることがわかっています。その理由として、年を重ねると温度に対する感覚が弱くなることが考えられます。この感覚は元に戻ることはないと考えた場合、習慣として熱中症に気をつけていけるよう支援することも重要になるでしょう。

 その際の視点として考えたいのは、「環境」「からだ」「行動」の3つです。涼しい環境であれば熱中症は避けられます。体調管理が十分できていれば、熱中症になりにくくなります。そして、暑さを避けたり、水分や塩分を補給したりといったことは、熱中症の予防につながります。ご本人による対策のみならず、支援についても同じ視点で考えていくことで、さまざまな熱中症対策をしていくこともできるのではないでしょうか。

 なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
総務省消防庁ホームページ
過去の全国における熱中症傷病者救急搬送に関わる報道発表一覧
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList9_2_1.html

環境省熱中症予防情報サイト
熱中症の予防方法と対処方法
http://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php
熱中症の対処方法(応急処置)
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_checksheet.php
暑さ指数 メール配信サービス(無料)
http://www.wbgt.env.go.jp/mail_service.php

一般財団法人日本気象協会 熱中症ゼロへ ホームページ
https://www.netsuzero.jp/

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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