実は怖い! 認知症の方を含む高齢者の便秘

高齢者・認知症

はじめに
実は怖い! 認知症の方を含む高齢者の便秘に関する注意点。「便秘」と聞くと、「命にかかわるようなものではない、大したものではない」と考えられる方が多いかもしれません。しかし、認知症の方を含む高齢の方が便秘になると、命の危険すらあるようです。

 ここでは、認知症の方を含む高齢者の方の便秘について、加齢に伴う有症率増加の実態などを見つつ、そのケアのポイントなどを中心にまとめました。

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1. 実は怖い便秘 ~ 便秘は生命の危険?
(1) 便秘で倒れる!?

先日認知症を患う高齢の方のご家族から、ご本人が「便秘が原因で、救急車で運ばれた」という話をうかがいました。よくよくお話をうかがうと、便秘だったご本人が排便直後にトイレで気を失って倒れ、救急車で病院に運ばれたとのことでした。

(2) 便秘が原因でナゼ倒れたのか?

たまたまご家族の方がいらしたことから、大事に至らず、その後ご帰宅されたとのこと。では、倒れられた原因は何だったのでしょう? 

それは、血圧の乱高下。排便は、排便前~排便中~排便直後で大きく血圧が変動することがわかっているのです。特に便秘になると排便時に「いきむ」という行為を行いがち。この「いきむ力」が大きければ大きいほど、心拍や血圧の変動幅が大きいとの研究結果もあるようです。

この方の場合、排便時にいきんだ結果、急激に血圧が低下したことで倒れられたとのことでした。特に冬場のトイレは部屋の中と比較して大きく室温が低下している場合があり、これも急激な血圧の低下の一因となったようです

参考:
J-Stage
排便時における怒責圧が循環系に及ぼす影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnas/10/1/10_111/_pdf

国立情報学研究所 学術コンテンツサービス サポートCiNii
排便時の努責と血圧変動の関係
https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20171110160616.pdf?id=ART0008633937

2. 加齢に伴い便秘は増える

「図-加齢と便秘の関係」

(1) 加齢とともに便秘は増える

便秘は圧倒的に女性に多いと思われている方もいらっしゃるでしょう。しかし実際には、男女ともに加齢に伴い、便秘を抱える方が増えることが、厚労省の平成28年国民生活基礎調査でも明らかになっています。

この調査によれば、男性の便秘は50代から増え始め、75歳以降では男女でほぼ同じ人数になるとされています。他の調査でもこのことは明らかになっており、実際、便秘や便失禁などの排便障害の65 歳以上での有症率は、便秘で30%程度、便失禁で 7%程度という報告もあるようです。

つまり、高齢になると便秘は男女ともに共通の悩みとなるということなのです。

(2) 便秘とは?

① 便秘の症状

便秘とは、「排便回数の減少があり、また、排便困難を伴うもの」ということができるでしょう。しかし、自覚症状としては、下腹部の不快感、腹の膨れた感覚である膨満感、腹痛、吐き気、嘔吐などが見られる場合が多いとされており、排便回数に関する自覚症状は少ないとされています。

つまり、便秘での困りごとは、排便回数でないことが多いということです。また便秘をそのまま放置すると、便が腸の中で固まってしまったものである糞塊により、腸閉塞や直腸潰瘍、そして虚血性腸炎などの合併症を引き起こすことがあるとされています

② 便秘の診断

以下のうち2つ以上の症状がある場合に「便秘」と診断されることになります。

<排便回数の視点>
週に3回未満の排便

<排便困難症状の視点> 
排便時のいきみ
残便感
4回に1回以上、肛門に手を入れて便をかきだす摘便をしている状況
腸がつまった感覚
便の硬い状態(コロコロ便または硬い便)

③ 便秘のタイプと注意点

1) 便秘のタイプ
 便秘は、世界的には便の消化管の通過時間の異常と肛門機能の異常の2つの視点から、次の3つのタイプに分類されます。

2) 便のタイプと消化管の通過時間との関係
 便のタイプと消化管の通過時間との関係は、次の図のように分類されます。タイプ1を兎塊状便、タイプ2を硬便ととらえると、便秘のタイプの判断に役立つでしょう。

「図-便のタイプと消化管の通過時間との関係」

3) 注意点
 便秘は、他の疾患が原因で起こる場合があります。この場合、便秘の解消ではなく、その原因となっている疾患の治療が必要になります。以下のような症状が見られないか、きちんと把握することが重要になります。

・大腸がんなど、消化器がんの家族歴がある
・45歳以上である(この場合、消化器症状を発症している場合がある)
・病悩期間が短く、症状が進行性である
・6カ月以内にダイエットなどによらない大幅な体重減少がみられる
・尿検査や血液検査で異常がみられる
・血便がみられる、または、便潜血に陽性反応がみられる
・夜間の腹痛と下痢、または、持続性の強い腹痛がある
・発熱や嘔吐がみられる

(3) 便秘の原因

認知症を患う方を含む高齢の方にみられる「便秘」は、加齢に伴う食事量の低下、日常生活動作の低下、生理的機能の低下などが原因で起こるとされています。便秘の原因となる加齢による生理的機能の低下には次のように整理することができます。

① 食事の質や量に関するもの

少ない1回の食事の量、繊維成分の少ない食事、水分摂取の低下 など

② 日常生活動作の低下

洗顔やトイレ、掃除・洗濯・買い物などの家事全般も含めた身体活動量の低下 など

③ 腸機能の低下

腸容量の減少、腸管壁への物理的拡張刺激の減弱・腸局所血流の低下、腸がガスを吸収する機能の低下、腸の神経機能の変化、腸管の分泌機能の低下、排便反射の低下や消失 など

④ 筋力や運動機能の低下

排便に関する腹筋・横隔膜筋・骨盤底筋群等の筋力の低下、腹圧の低下、直腸と肛門の角度を保つ力の低下、腸管の緊張や蠕動運動の低下 など

⑤ 心理的要因

便意の抑制 など

⑥ 基礎疾患との関係によるもの

消化器系がん、糖尿病、脳血管障害、甲状腺機能低下症、パーキンソン病など

⑦ 薬剤の影響によるもの

基礎疾患の治療薬による副作用、浣腸や下剤の乱用 など

参考
厚労省 
平成 28 年 国民生活基礎調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf

公益財団法人長寿科学振興財団
便秘
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/benpi.html

J-Stage
平成 27 年度日本内科学会生涯教育講演会 慢性便秘の診断と治療
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/3/105_429/_pdf
第 51 回日本老年医学会学術集会記録〈教育講演〉 高齢者の排便障害
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/46/5/46_5_398/_pdf

一般社団法人日本臨床内科医会
便秘
http://www.japha.jp/doc/byoki/049.pdf

3. 便秘ケアのポイント
(1) 便秘の治療

① 治療の主眼は、排便困難症状の解消・軽減

 どの疾患でも基本的には同じですが、治療は、「その症状の緩和」に主眼が置かれた上で行われることになります。すでに見た通り、便秘による困りごとは、排便回数ではなく排便困難症状。よって、治療の主眼は、この解消・軽減に置かれることになるということです。

② 原因となる疾患がある場合は、その治療が優先

とはいえ、他の疾患が原因で便秘が症状としてあらわれている場合、その症状である便秘にだけ目を向けた治療が行われるわけではありません。「元を絶つ」必要があるわけです。よって、元となっている疾患に対する治療が優先され、併せて、生活習慣の改善や食事・運動療法が行われることになります。

また、他の疾患などで薬を利用している場合、その薬が原因となった便秘である可能性があります。その場合、中止可能な薬であればその薬の服用を中止します。薬の服用中止が難しい場合は、生活指導や食事療法とともに、適切な下剤を併用することになります。

③ 便秘の治療で使用される薬

便秘の治療で使用される薬には以下のようなものがあります。

1) 大腸刺激性下剤
腸の粘膜を薬の機能を利用して刺激し、腸の運動を活発にさせるタイプのものです。

2) 塩類下剤
 腸内の浸透圧を高めて、体内の水分を腸管内に移動・保持させるタイプのものです。水分で便を柔らかくすると共に、便を水分量の分だけ増量させることで腸壁を刺激し、蠕動運動を起こすことで排便を誘発します。

3) 膨潤性下剤
腸内で膨張するタイプのものです。腸内容が増大することで腸壁を刺激し、排便を誘発します。他にも腸管内への水分分泌を促進するタイプのものも利用されるようになってきています。

(2) 家庭で出来る便秘ケアのポイント

「図-家庭でできる便秘ケアのポイント」

 便秘は生活習慣を改善することで、相応程度解消できるとされています。このときのポイントとしては、「食生活」「適度な運動」「排便の規則性」「排便姿勢」の4つの視点が考えられるでしょう。

① 食生活

便秘を軽減したり解消したりするための食生活では、以下のポイントを押さえることが大切とされています。

1) 規則正しい食事と量の確保
1日3回の規則正しい食事は生活の基本です。また、加齢に伴い何らかの薬を服用する場合が多くなることも含めると、この習慣が非常に大切になることもわかるのではないでしょうか。特に朝食を摂ることは腸を刺激し、排便を促します。

さらに、1回の食事で相応量を摂ることも重要。食事量の不足は、便の視点から言えば材料不足による「便秘」の原因になってしまうのです。

2) 適度な油や刺激物の摂取
食事には適度な油を取り入れることが重要です。油は腸での潤滑油となり、便を出やすくします。また、適度な酸味や香辛料で腸を刺激することも便秘の改善には有効と考えられます。

3) 十分な水分摂取
食中・食間の水分の摂取のほか、起床時に冷たい牛乳や冷水をコップ1杯程度飲むのも水分補給と腸の刺激に有効とされています。

4) 食物繊維の摂取
食物繊維が水分を吸着し、便量を多くし、柔らかくして、便を排泄しやすくするとされています。

② 適度な運動

適度な運動は便意を促すだけでなく、排便に必要な筋力低下を抑制する効果もあります。骨盤を上下に移動させたり、体をねじったりといった運動のほか、腹部のしっかりとしたマッサージは、特に腸を刺激しやすい運動と考えられます。

ご本人が自ら積極的に運動ができないという場合でも、マッサージを中心とした腸を外から刺激する方法は、便秘には一定程度有効と考えられるでしょう。

③ 規則的な排便習慣

毎朝、便意がなくても一定の時間にトイレにいく等、排便の規則性、習慣をつけることが、便秘改善のひとつのポイントとされています。ウォシュレットなどの温水洗浄便座のあるトイレを利用しているのであれば、排便がなくても利用すると、肛門周辺のマッサージができるため、便秘の改善につながる面があるようです。

④ 排便姿勢

 排便姿勢も排便を促す場合には大切になります。「腹圧をかけやすいこと」「直腸と肛門の作る角度をまっすぐに近い状態にすること」が重要とされていますが、なかなかイメージしづらいでしょう。この姿勢は、洋式トイレを利用する場合であれば、「ロダンの考える人」の姿勢を思い浮かべるとわかりやすくなります。

つまり、便座に前かがみに座るということです。

実は、直腸と肛門の作る角度がまっすぐになり、腹圧をかけやすいという意味では、和式トイレの方が適しているとも言われています。とはいえ、和式トイレは足にかかる負担も大きい面がありますし、高齢になればなるほど、体を支え切れずに転倒するといった可能性もあります。

いずれにしても、「前かがみの姿勢」が、最も排便に向いた姿勢であるという点は、押さえておくとよいでしょう。

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参考
公益財団法人長寿科学振興財団
便秘
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/benpi.html

J-Stage
平成 27 年度日本内科学会生涯教育講演会 慢性便秘の診断と治療
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/3/105_429/_pdf
第 51 回日本老年医学会学術集会記録〈教育講演〉 高齢者の排便障害
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/46/5/46_5_398/_pdf

一般社団法人日本臨床内科医会
便秘
http://www.japha.jp/doc/byoki/049.pdf

独立行政法人 福祉医療機構 WAMNET
介護技術の基本
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/sppub/top/column/kaigogijyutu/kaigogijyutu011.html

最後に

 便秘の一般的なイメージは、「女性に多い」「大したことはない」というものかもしれません。

しかし実際には、加齢に伴い、その有症率が増加し、高齢であるほど男女差がなかったり、また、便秘が原因で事故が起きたりといったことにつながる面があります。よって、便秘にならない習慣づくりがまずは大切になると言えるでしょう。

 ご家庭でできることとしては、「質と量、頻度に配慮した食生活」「適度な運動」「規則的な排便習慣」「排便姿勢」の4つが大きなポイント。ただし、他の疾患や薬の副作用が便秘の原因となっている場合もありますので、注意も必要です。

 いずれにしても、「たかが便秘、されど便秘」という考え方が重要と言えるのかもしれません。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考
厚労省 
平成 28 年 国民生活基礎調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf

公益財団法人長寿科学振興財団
便秘
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/benpi.html

J-Stage
平成 27 年度日本内科学会生涯教育講演会 慢性便秘の診断と治療
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/3/105_429/_pdf
第 51 回日本老年医学会学術集会記録〈教育講演〉 高齢者の排便障害
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/46/5/46_5_398/_pdf
排便時における怒責圧が循環系に及ぼす影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnas/10/1/10_111/_pdf

独立行政法人 福祉医療機構 WAMNET
介護技術の基本
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/sppub/top/column/kaigogijyutu/kaigogijyutu011.html

国立情報学研究所 学術コンテンツサービス サポートCiNii
排便時の努責と血圧変動の関係
https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20171110160616.pdf?id=ART0008633937

一般社団法人日本臨床内科医会
便秘
http://www.japha.jp/doc/byoki/049.pdf

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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