SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)とは? ~ソーシャル・スキルを効果的に身につけるために

発達障害

はじめに
 ソーシャル・スキルは、障害の有無に関わらず人が生きていく上で欠かせないスキルです。このスキルは、訓練によって身につけていくことができると考えられていますが、そのトレーニングのことをSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)と言い、学校や療育施設、病院などで取り入れられています。
ここではSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)について、そのトレーニングで身につける力であるソーシャル・スキルとは何か、また、そのトレーニングの方法などについて、まとめています。

1. ソーシャル・スキルとは?
(1) 生きる上で必要なソーシャル・スキル ~ソーシャル・スキルとは?

ソーシャル・スキルとは、ごく簡単に言えば、人が生きていく上で必要となる、人間関係やコミュニケーションに関わる「技術」「技能」のことを言います。

とはいえ、その範囲は非常に幅広いと言えます。その一つの理由として、たとえば「自分のことは自分でできること」や「あいさつ」などの基本的スキルも、問題解決のためのスキルや友だち関係などのスキルといった高度なスキルも、どちらもソーシャル・スキルと言えることがあげられます。

また二つ目の理由として、ソーシャル・スキルを身につける目的や必要となるレベルが、家庭・学校・職場といったそれぞれの社会の位置づけや、そこに集まる人々によって異なる部分もあるということがあげられます。

このようにとらえると、ソーシャル・スキルとは、終わりなく常に向上させていく必要があるスキルと言うことができるかもしれません。

(2) ソーシャル・スキルの不足がもたらす問題 ~問題行動の原因としてのソーシャル・スキル

このようなソーシャル・スキルは、そのスキルのレベルが高まると、周囲の人々との良好な関係をつくることに役立つことがわかっています。その一方で、ソーシャル・スキルが不足していると、ストレス反応として引っ込み思案や攻撃行動のような形で表れたり、「いじめ」や「不登校」のような形で表れたり、さらには学業成績などを引き起こしたりといったことが多くなることもわかっています。

つまり、学校不適応と深い関係があるということです。また、子どもたちのソーシャル・スキルは、いじめ、不登校、キレる、学級崩壊といった学校に関わる問題とも関係すると考えられています。

参考:
日本学校教育相談学会 ホームページ
ソーシャルスキルトレーニングの理論と実際
http://jascg.info/wp-content/uploads/2015/03/4a848f73644d6264353f2cd4545435e5.pdf

2. SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)とは?
(1) ソーシャル・スキルは、学習によって学べる ~ SSTとは?

ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)とは、心理療法として開発されたもので、既に見てきたソーシャル・スキルを訓練で学ぼうとするものであり、その考え方でもあります。コミュニケーションや対人関係に関わる「困難」を、性格のゆがみなど個人的な要因からとらえられるのではなく、コミュニケーションの技術ととらえれば、その技術を向上させることで「困難」を解消できると考えられるからです。

(2) SSTで学ぶこと

「図-SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)で学ぶこと」

ソーシャル・スキル・トレーニングの目的は、家庭や学校などでの生活に適応できるようになることだけでなく、将来社会生活を送るようになったときを見越して、対人関係上の問題を抱えないためのソーシャル・スキルを身につけることにあります。よって、ソーシャル・スキル・トレーニングを通じて学ぶことには、以下のようなものがあります。

① 対人関係における基本的な知識

遊びの仲間に入れてもらうにはどうすればいいのか、仲直りするには何と言えばいいのか、先生方など目上の人にはどのように振る舞えばいいのか、あるいはどのような言葉づかいをすればいいのか、といった適切な対人行動についての基本的な知識。

② 自分以外の方の考えや思い、感情などを理解する方法

相手の言葉の理解の仕方や、相手の表情やそのしぐさなどからその意図や表には出てこない感情を読み取る方法。

③ 自分の思考と感情の伝え方

自分の考えや思いを相手に伝えるために、自分が求めていること、考えていること、感じていることをとらえ、それをその場の状況に合わせ伝える方法。合わせて実際の場面での感情のコントロールの仕方、それを実際に行動できるようにするための訓練。

④ 対人関係で起きる問題を解決する方法

他者から誤解されたり、理不尽な要求をされたりといった、自分の思いどおりにならないときの対処方法。その方法は一つではなく複数の方法があること。その方法を実際に使うことによって得られた成功体験の積み重ねにより、解決する力を高めること。

参考:
日本学校教育相談学会 ホームページ
ソーシャルスキルトレーニングの理論と実際
http://jascg.info/wp-content/uploads/2015/03/4a848f73644d6264353f2cd4545435e5.pdf

兵庫教育大学
ソーシャルスキルトレーニング実施が学級適応感や自尊感情に及ぼす効果について
http://repository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/16087/1/gakkokyoiku_vol28_06.pdf

3. SSTの具体的な方法
(1) 全体像 ~ 学習から生活への応用

「図-SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の全体像・前提」

 ソーシャル・スキルは、生活の場面でそれが使えるようになることが目的です。つまり、学習の場だけで使うものではなく、日常生活の中で使うことが大切です。日常生活の中で使うと必ずしもうまくいくことばかりではありません。学びを日常生活で使えるようにするには、その都度振り返ったり、学習する内容に反映させたりといった、サイクルをまわしていくことが大切になると言えるでしょう。

(2) 具体的なSSTの方法 ~学習と生活への応用

「図-SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の例」

 上記の前提を抑えた上で、ソーシャル・スキル・トレーニングの具体的な方法には、次のようなものがあります。

① SSTの具体的な方法

1) ゲームなどの遊び
ゲームなどの遊びには、「ルールを守る」「勝ち負けの結果を受け止める」「仲間と相談や協力をする」など、多くのソーシャル・スキルの要素が含まれています。子どもが楽しみながら社会性を身につけることができるためのソーシャル・スキル・トレーニングの非常に有効な手段と考えられます。実際、ゲームなどの遊びを通じたトレーニングは特別支援教育でも取り入れられているものです。

指導にあたっては、「参加すること」「声をかけること」「友だちと協調すること」など、それぞれの子どもの目標を常に意識しながら進めることが重要になります。

2) 話し合い
話し合いをするには、自分の意見を主張するだけでなはなく、他者の思いや考えをしっかりと理解したうえで、何らかの結論をみんなで出していくことが必要になります。このため、コミュニケーション力を向上させるための非常に有効な訓練であると言えます。

ただし、要求される力が高くなりがちでもあるので、子どもたちが興味を持っていることをテーマにする、みんなが意見を言えるようにする、どの意見も否定しないといったルールづくりなど、事前の準備が必要な面があると言えるでしょう。

3) ロールプレイ
どんな場面でどんな振る舞いをすればいいのかということを実際に演じたり、人形劇のような形にしたりして、実際の場面での適切な振る舞い方を学ぶ方法です。そのときのご本人の課題となっている行動や言動などについて、多少アレンジしながら行うとより効果が高くなると言えるでしょう。

4) 共同活動・共同行動
「何かを作って遊ぶ」「何かを作って食べる」といった活動を行う過程で、他者と相談したり、役割分担をしたり、助け合いをしたりといった、社会生活に必要なスキルを学ぶことができます。特に子どもの興味のある分野の活動を中心に考えると、活動の動機づけにもなるでしょう。

5) ソーシャル・ストーリーなどの活用
ソーシャル・ストーリーは、世の中の暗黙のルールやコミュニケーションスキルをやさしい文章や絵などを用いて学ぶものです。ぜひ一度、「ソーシャル・ストーリー」で調べてみてください。ご本人が自ら学べるような優れた素材が見つけられる可能性があります。

② 生活の場面での応用

1) あいさつをする
あいさつは、人とのコミュニケーションにおける基本とも言われるものです。一方で、どこでどのようにすればよいかわからなかったり、その言葉を口に出すのが恥ずかしかったりなど、さまざまな理由からあいさつができない方が多いのも事実です。

あいさつができるようになるためには、「あいさつをすることは気持ちがよいこと」「相手の気持ちがうれしくなること」などを肌で感じられるような環境づくりが必要。そのためにも、大人が積極的にあいさつをすること、そして、いっしょにあいさつをすることが最初の一歩になるのではないでしょうか。

2) 順番を守る
順番を守る必要が出てくる場面は、交通機関を利用するときや買い物をするときといった社会生活の中だけでなく、遊びの場面でも出てきます。たとえば、一つしかないおもちゃや遊具を使うときなどです。このような場面は、ソーシャル・スキル・トレーニングで学んだことを活かせる絶好の機会と言えるでしょう。

「あの(トレーニングの)場面では、こうしたよね? 今もそれをするときだと思うけど、どう思う?」というような問いかけをしたり、自ら順番待ちをできたりしたときなどは「順番守れたね、偉いね」とホメたりといったことをくり返すことで、順番を守ることは良いことだという理解が深まり、日常生活の中で順番を守れるようになっていくと考えられます。また、大人が日頃から順番を守る姿を見せることも大切なことと言えるでしょう。

3) 相手の気持ちに気づく、相手の気持ちを考える
相手の気持ちを考えたり理解したりといったことは、トレーニングだけではなかなか身につきにくいものです。そこで、「○○ちゃんは、どう思ったかなあ?」といったような問いかけをすることで一歩立ち止まって考えることを促したり、「私はこう感じたんだよ」ということを積極的に伝えたりといったことをしていくことが大切になるでしょう。

また、不適切な行動をした場合には、実際にその行動を本人に見せるという方法もあります。見せられた行動が自分にとって不快なものだとしたら、他者にとっても不快なものなのだということを教えるということです。

4) 会話をする
会話は、そのタイミングを選んだり、適切な言葉を使ったり、また、他者の気持ちをくみとったりなど、多くのソーシャル・スキルを必要とするものです。よって、積極的に会話の機会をつくることは非常に重要と言えるでしょう。たとえば、日々あったことを振り返るなど、たくさんの会話の機会をつくれば、自然と会話のスキルを身につけていける場面にしていけます。

ただし、ただ機会が多ければ良いというものではありません。たとえば、時間を決めて話す、同じ話を何度もくり返したりしない、相手の話も聞くなど、会話で必要となるポイントを意識したルールをつくって会話するということを考えてもよいのではないでしょうか。

参考:
日本学校教育相談学会 ホームページ
ソーシャルスキルトレーニングの理論と実際
http://jascg.info/wp-content/uploads/2015/03/4a848f73644d6264353f2cd4545435e5.pdf

広島市教育センター
幼児のソーシャルスキルを向上させるための援助に関する研究
http://www.center.edu.city.hiroshima.jp/kennkyu/kenkyu/h26file/01futakawa.pdf

J-STAGE
ソーシャルスキル教育における発達段階ごとの目標スキルの選択と実施時期に関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cou/47/4/47_221/_pdf

日本標準ホームページ
U-SSTソーシャルスキルワーク
https://www.nipponhyojun.co.jp/teacher/sst/contents.html

和歌山県教育センター学びの丘 ホームページ
実践編
http://www.wakayama-edc.big-u.jp/tokusi/jirei02.pdf
茨城県教育研修センター ホームページ
手軽にできるSSTエクササイズ集
http://www.center.ibk.ed.jp/?action=common_download_main&upload_id=337

4. SSTを効果的なものにするためのポイント

「図-SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を効果的なものにするためのポイント」

(1) 学びのサイクルをまわす ~教える側に必要なしくみ

ソーシャル・スキル・トレーニングを行っていく際には、それを教える側がしくみを作っておくことが大切でもあります。しくみと言っても難しいものではなく、以下のような点をポイントにするということです。

① よく観察し、行動を評価する。その上で、その行動に対して良かったのか、悪かったのか、悪かったのなら何が悪くどうすればよかったのかを伝えていく。
② タイプの異なるトレーニングを組み合わせる、学んだことを使える場面を作る。
③ 解決したい問題を出発点として、問題を明確にし→解決策・案を考え→解決策を決め→解決策を実行し→その効果を見極め→解決案を再度考えるといったサイクルをまわす

(2) 楽しい雰囲気の中で行う

ソーシャル・スキル・トレーニングの目的は、「楽しく人とつきあう方法を学ぶ」こと。つまり、楽しみながらできることが何より大切だと言えるでしょう。「やってみたい」「楽しそうだ」と思えるようなトレーニングを選択することも重要になります。

(3) ホメる

「できていることはホメる」、「できていないことや守らなかったことは、その理由とどうしたらできるようになるかを一緒に考える」というのが基本です。

後者は、ある意味では「叱る」ということです。できていないこと、守らなかったことを冷静に見つめることは非常に重要ですし、その意味で、叱ることは重要なことと言えるのです。ただし、「叱る」ことは、一時的な感情で行う行動である「怒る」とは全く異なるものであるということは、十分理解する必要があると言えます。

また、ホメるときも「あくまでできたことに対してホメること」が大切。できていないことに対しても「やればできる」というような声がけをしてしまうと、「やればできるのだから、今やらなくてもいい」という感情を芽生えさせてしまう可能性が高いと考えられています。

(4) スモール・ステップ ~時期の選択

ソーシャル・スキル・トレーニングを行う場合、少しずつ身につけるのが基本です。ソーシャル・スキルは訓練で向上するというのが、ソーシャル・スキル・トレーニングの考え方ですが、ハードルが高すぎては、そのハードルを乗り越える前にやる気を失ってしまいかねません。

また、すでに身についているスキルであるのに、それしかしていなければ、身につけられるものも身についていきません。何ができて何ができないのか、次に積み上げられるのはどんなスキルかを専門家とも相談しながら身につけていけるようにしていくことが大切と言えるでしょう。

5) 効果が上がらないときのチェックポイント

ソーシャル・スキル・トレーニングの効果が上がらないときは、(1)~(4)を見直すとともに、次の点をチェックしていくとよいでしょう。

① ソーシャル・スキル・トレーニングに意欲を持って取り組んでいるか?
② 教えるソーシャル・スキルと、現状があっているか?
③ トレーニング方法を誤って用いていないか?
④ 楽しい雰囲気でできているか?
⑤ ご本人にフィードバックができているか?

参考:
兵庫教育大学
ソーシャルスキルトレーニング実施が学級適応感や自尊感情に及ぼす効果について
http://repository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/16087/1/gakkokyoiku_vol28_06.pdf

日本学校教育相談学会 ホームページ
ソーシャルスキルトレーニングの理論と実際
http://jascg.info/wp-content/uploads/2015/03/4a848f73644d6264353f2cd4545435e5.pdf

最後に

 ソーシャル・スキルは、人が生きていく上で必要となる対人関係を中心としたスキルです。この力はトレーニングによって身につくと考えられることから、学校や療育施設、病院などでも積極的に取り入れられていますが、ご家庭でも応用していくことができます。

特に、トレーニングをトレーニングのママで終わらせないようにするには、学んだことを日常生活の場で用いることが重要。その意味で、ソーシャル・スキル・トレーニングを効果的なものにするためには、ご家庭の役割は非常に重要だと言えるでしょう。 

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
日本学校教育相談学会 ホームページ
ソーシャルスキルトレーニングの理論と実際
http://jascg.info/wp-content/uploads/2015/03/4a848f73644d6264353f2cd4545435e5.pdf

J-STAGE
ソーシャルスキル教育における発達段階ごとの目標スキルの選択と実施時期に関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cou/47/4/47_221/_pdf

和歌山県教育センター学びの丘 ホームページ
実践編
http://www.wakayama-edc.big-u.jp/tokusi/jirei02.pdf

茨城県教育研修センター ホームページ
手軽にできるSSTエクササイズ集
http://www.center.ibk.ed.jp/?action=common_download_main&upload_id=337

広島市教育センター
幼児のソーシャルスキルを向上させるための援助に関する研究
http://www.center.edu.city.hiroshima.jp/kennkyu/kenkyu/h26file/01futakawa.pdf

兵庫教育大学
ソーシャルスキルトレーニング実施が学級適応感や自尊感情に及ぼす効果についてhttp://repository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/16087/1/gakkokyoiku_vol28_06.pdf

日本標準ホームページ
U-SSTソーシャルスキルワーク
https://www.nipponhyojun.co.jp/teacher/sst/contents.html

金森 保智

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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