障害年金とは 申請と受給要件

発達障害

はじめに
障害年金とは、日常生活能力や労働能力などの低下や困難を引き起こす原因となった障害の状態によって診査され、生活保障としての年金が支給される制度です。しかし、制度自体の複雑さと周知されていない現実から必要な方が受給できていないケースが多く見られます。

ここでは、障害年金を必要とされる方に、申請方法や受給要件、金額などの情報をまとめました。

障害年金のことなら永井事務所まで


1.障害年金とは

障害年金とは、社会保険のひとつです。すなわち、「保険」であり、日頃から年金の保険料を一定以上支払っている方が不測の事故等で障害の状態になった場合に、保険料の対価として年金が支給されるというもので、保険の原則に則っています。

したがって、保険料を滞納していると、障害年金の受給資格が確保できない場合もありますので注意が必要です。
社会保険のしくみ

2.障害年金をもらう3つの条件

障害年金を受給するために必要な条件について確認します。

(1)初診日に年金に加入していること(加入要件)

初診日とは、障害の原因となった傷病で初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日をいいます。初診日時点で国民年金や厚生年金に加入している必要があるということです。

ただし、国民年金の加入義務は20歳から60歳までですので、20歳前の国民年金未加入期間に初診日がある方や60歳から65歳に達するまでの期間中(任意加入なし)に初診日がある方は、例外としてこの条件を満たしていなくても対象となります。

(2)一定以上の障害の状態にあること(障害の程度要件)

当然ですが、病名がつけばもらえるというものではなく、一定以上の状態に該当していることが必要です。ほとんどすべての病気やケガが対象となります。

(3)一定以上の保険料の未納がないこと(保険料納付要件)

保険料の支払いについて、次のいずれかの条件を満たす必要があります。

①原則

年金に加入している初診日の前々月までの期間の中で、3分の1を超えて未納がないこと。

②特例

初診日の前々月までの直近の1年間に未納がないこと。

※上記①、②について、保険料の支払い以外でも学生納付特例や免除が承認された期間については未納とはなりません。

また、保険料の納付状況については、初診日の前日の状況で判断されるため、初診日以後に過去の分の保険料をさかのぼって支払ったり、さかのぼって免除申請等を行って承認されたとしても、障害年金上は未納扱いとなりますのでご注意ください。

なお、年金の加入義務は20歳からですので、20歳前の年金未加入期間中に初診日がある方については、保険料納付要件は問われないことになっています。



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3.重要な保険料の納付状況について

原則として保険料を負担しなかった方に年金が支給されることはありません。たとえ今どんなに障害の状態が重くても、保険料納付要件を満たしていなければ障害年金は支給されないということです。

筆者は障害年金の請求代理業務を行っていますが、保険料の未納が多くあるために障害年金の受給資格が得られず涙を呑む方を少なからず見ています。

その場で泣き崩れる方もいらっしゃいます。みなさん口をそろえて、「制度を知っていたら保険料を支払っていたのに」とおっしゃいます。このような事態にならないよう、日頃から保険料納付要件を満たすべく行動することが大切です。

保険料の支払いが難しい場合は、免除等を申請することも重要です。決して放ったらかしにしてはいけません。負担している年金の保険料には、将来の老齢年金のためだけではなく、遺族年金や障害年金のための効果も含まれていることをしっかりと認識していただきたいと思います。

そして、万が一必要になったときには、当然に権利が行使できるようにしておきましょう。

4.初診日の判断について

障害年金は初診日から判断することが多く、初診日を証明することが最も重要です。実際は初診日でない日を初診日と誤認して診断書などを取得してしまうと、取り直しになってしまうこともありますし、保険料納付要件から再度調べ直す必要もあります。

多くの方は、病名が確定した日を初診日だと思い込んでいますが、必ずしもそうではありません。

例として、統合失調症のKさんの治療歴から初診日を判断します。

Kさんは、幻聴や幻覚の症状を訴えてA病院やB病院を受診していましたが、耳や目には異常がないとされ、原因がわからずに数年間経過してから精神の病気を疑いC病院を受診しました。
初診日の判断

C病院で初めて精神科を受診し、「統合失調症」と判明して病名がついたので、Kさんの初診日はC病院を初めて受診した日だと思われがちですが、そうではありません。

この場合は、「統合失調症」と関係があると思われる幻聴や幻覚も含めて(幻聴や幻覚は統合失調症の症状のひとつ)、最初の病院の最初の診察日が初診日となる可能性が高いです。したがって、Kさんの例では、A病院の最初の診察日が初診日となる可能性が高いといえます。

初診日の特定には厳密な判断が求められます。

その他、初診日を判断するうえで重要な条件を挙げておきます。
・同一の傷病で転医があった場合は、いちばん初めに医師の診療を受けた日
・過去の傷病が治癒し再発した場合は、再発し医師の診療を受けた日
・誤診の後、正確な傷病名が確定した場合は、誤診をした医師の診療を受けた日
・障害の原因となった傷病の前に関係があると認められる傷病がある場合は、最初の傷病の初診日

※初診日は、原則として「受診状況等証明書」という書類を病院に記載してもらって証明します。

5.障害年金の請求方法

請求方法を理解するには、まず「障害認定日」を理解する必要があります。まず障害認定日について確認し、次に具体的な請求方法を見ていくことにします。

(1)障害認定日とは

 障害の程度を認定する日のことをいいます。程度とは等級のことであり、原則と特例の2つがあります。

①原則

初診日から1年6ヵ月経過した日

②特例

初診日から1年6ヵ月を経過する前にその病気やケガが治った場合(症状が固定して治療の効果が期待できない場合を含む)は、その治った日

※先天性の傷病の場合等、初診日が18歳と半年より前にある場合は、20歳の到達日(20歳の誕生日の前日)が障害認定日となります。

(2)3つの請求方法

請求方法には次の3つがあります。

①本来請求

本来請求

②遡及請求

遡及請求

③事後重症請求

事後重症請求

※状況に合わせて、最善の請求方法をとりましょう。

6.障害年金の等級と年金額

障害の状態による等級は国民年金法及び厚生年金保険法に定められています。より具体的に「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に記載されておりますので、ご興味がある方は日本年金機構のホームページより閲覧ください。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html

年金額は物価の変動等によって毎年見直されます。
以下の金額はいずれも令和元年度の金額で1年間受給した場合を表しています。

(1)障害基礎年金(国民年金の障害年金)

障害基礎年金
※障害基礎年金には2級までしかありません。

(2)障害厚生年金(厚生年金の障害年金)


※1級及び2級の場合は、原則として同じ等級の障害基礎年金も一緒にもらえます。
※3級に該当した場合、年金額が585,100円を下回る場合は585,100円となります。
※障害厚生年金の対象となるには、厚生年金加入中に初診日があることが不可欠です。

7.カルテの保存期間

医師は、カルテを確認して過去の事実に基づいた初診日の証明書である受診状況等証明書や診断書を記載してくださいます。

したがって、カルテがなければそれらの書類の記載ができないことになります。カルテは、「医師法」という法律で終診日から5年間の保存義務が課されているのみですので、場合によっては廃棄されてしまうことがあります。

原則として初診日は、受診状況等証明書を記載してもらうことにより証明しないといけませんが、初診の病院を受診していたのが5年以上前で、さらに5年以上前に転医している場合は、まず病院にカルテが保存されているかを確認しなければなりません。

5年を超えてカルテを保存している病院もありますので、必ず5年で廃棄されるわけではありません。カルテが残っており受診状況等証明書が記載してもらえれば問題はありませんが、残念ながらカルテが廃棄されてしまった場合には、病院に受診状況等証明書の記載を依頼しても断られてしまいます。

このような場合はどのように初診日を証明するかというと、診察券や領収書、お薬手帳など初診日を客観的に証明できる書類を添付して、申し立てている初診日が確からしいということを認めてもらうことになります。

ただし、そのような客観的事実を積み上げても、必ずしも認められないこともありますのでご注意願います。初診日が証明できずに障害年金の請求そのものが止まってしまっている方も多くいらっしゃいます。

大切なことは、将来の請求を見越して、客観的な証明となる上記のような書類などは必ず保管しておくことです。場合によっては転院する際などに受診状況等証明書を取得しておくことも効果的かもしれません。

さらに、転医後の病院が前医の初診日を間接的に証明してくれることもありますので、前医の治療歴や初診日などをしっかりと伝えておくことも非常に重要です。

8.初診日を証明する書類を添付することができない場合の取扱いについて

見てきたように、保険料納付要件の判断において非常に重要なため、初診日がいつであったかという確認は厳密に行われます。

しかし、長期間を経て重症化する傷病の場合は、初診日を特定できずに障害年金を受けられないといった問題が多く生じていたことを受け、このような事案が少なくなるよう平成27年10月1日から初診日証明の取扱いが見直されることとなりました。

ここでは、厚生労働省年金局事業管理課長通知『障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて』(平成27年9月28日年管管発0928第6号)における重要な取り扱いについて2つご紹介します。

(1)請求者の申立てに基づき医療機関が過去に作成した資料の取扱いについて

請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)に請求者申立ての初診日が記載されている場合には、初診日と認めることができることとする。

(2)初診日があると確認された一定の期間中、同一の公的年金制度に継続的に加入していた場合について

初診日があると確認された一定の期間が全て国民年金の加入期間であるなど同一の公的年金制度の加入期間となっており、かつ、当該期間中のいずれの時点においても、障害年金を支給するための保険料納付要件を満たしている場合は、当該期間中で請求者が申し立てた初診日を認めることができることとする。

※参考資料により、初診日があるとされる一定の期間を特定する必要があります。

上記(1)、(2)を使うことで請求に至るケースも多くあります。

障害年金のことなら永井事務所まで

最後に

障害年金は制度が複雑であるため、まずは正しく理解することが重要です。そして、あきらめないで、年金事務所や専門家に積極的にご相談ください。本記事が必要とされている方に届き、障害年金受給のきっかけとなればうれしく思います。

岡部健史

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社会保険労務士法人永井事務所 社員。 【経歴】 長野県出身 大学卒業後団体職員として勤務し、渉外業務を担当し年金に携わる。その後、上部団体に出向し年金相談業...

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