地域密着のレストラン運営等で工賃UPへ 「らっく」の挑戦1

インタビュー記事

皆さん、こんにちは。全国地域生活支援機構(JLSA)の加藤です。

全国地域生活支援機構では、障害者就労の拡大に向け、積極的に事業に取り組んでいる施設運営者の方々に、定期的に取材させて頂き、障害のあるご本人・ご家族の方や、施設の方に向けて情報発信をしております。

このシリーズも今回で第4弾となりました。
今回は、神奈川県の相模原にある「社会福祉法人 らっく」様の挑戦をお伝えします。らっく様は、障害福祉サービス施設運営を行い、地元、相模原に密着したオシャレなレストランの運営やチャリティ商品の販売をしています。

今回インタビューに応じて頂いたのは、事務長の鈴木様。鈴木様は福祉畑の方ではなく、元国家公務員として活躍されていた異色の経歴の持ち主の方です。

らっく様の設立の経緯から、今、どのような事業活動を通じて、ご利用者の方々の工賃アップにつなげていく取組みをしているのかを詳しくお話をして頂きました。

今回の記事は、全部で5部構成となっております。
第1回 社会福祉法人らっくは、こんな想いを込めて設立した!
第2回 今、工賃はどれくらい? 工賃アップに向けた取り組み 
第3回 レストラン「AMI」とチャリティっショップ「楽来」の店内を拝見!  オペレーションマニュアルとサービスレベルの評価表がすごかった!
第4回 店舗運営を通じて、障害者就労を可能にする具体的な取り組み方法と実践
第5回 質の高いWEBページ、そして、施設運営に対する熱き想い

これより、らっく様の挑戦をお伝えしていきます。
●取材にご協力頂いた方及びインタビュアーのご紹介

社会福祉法人らっく 事務長 鈴木 拓也様
社会福祉法人らっくの事務長として、法人全体の経営及び事務の取り仕切り行う。法人は、現在、80名を超える障害者の方とともに、多機能型(就労移行、就労継続支援B型及び生活介護)の施設としてレストランやチャリティ商品を扱うショップを運営。レストランやショップは地元のリピーターでいつもにぎわう人気店である。また、デザート作りにも強みを持ち、地元企業から受託の依頼が絶えないなどの技術力を有する。就労支援にも力を入れ、B型から就労、生活介護から就労に結び付けるなど就労支援でも定評がある。https://luck.or.jp/


インタビュアー 全国地域生活支援機構 加藤雅士
全国地域生活支援機構の広報委員として、障害のあるご本人、ご家族、その支援者の方に向けた情報配信を行っている。障害者就労支援施設の「挑戦シリーズ」を、現場に直接足を運び、定期的に取材を行い、情報を発信している。


第1回の目次は、以下の通りです。
1.社会福祉法人らっく設立までの経緯 
2.この施設には、どういう方が通われているのでしょうか?
3.利用者様は、らっくさんをどのようにして知るのでしょうか?

第1回 社会福祉法人らっくは、こんな想いを込めて設立した!

1.社会福祉法人らっく設立までの経緯 理事長は北里大学病院の元看護師

加藤
鈴木さん、この度は、取材のご協力を頂き、誠にありがとうございます。

本日は、らっく様(社会福祉法人らっく、以下「らっくさん」)のこと、色々とお聞きしたいと思っております。きっと、施設運営されている方で、レストラン運営に興味のある方も、たくさんおられると思います。

是非、色々と教えて頂きたいと思います(笑)。

鈴木
了解致しました。この度は、弊施設にご足労をいただきまして誠にありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いします。

加藤
早速ですが、らっくさんの設立の経緯を教えて頂けますか?

鈴木
まず当法人の理事長(鈴木純恵様)を紹介させていただきます。
理事長の鈴木純恵は、北里大学の精神科領域で約30年、看護師をしておりました。

理事長は、元々、人と関わる仕事をしたいと看護師になり、小児科か精神科を希望していたようなのですが、精神科に配属となり、それ以後ずっと精神科領域に勤務しておりました。

外来や病棟なども経験し、最後の10年は、北里東病院の精神科に付属しているデイケアの施設で、日中活動を通じたリハビリテーションに携わっておりました。

当時、デイケアの看護師として勤めていた頃は、急性期が終わって、社会や地域に出て行く障害者の方のリハビリに携わりながら、デイケアの中で就労支援もしていたそうです。

その当時、デイケアで就労プログラムを組んで、会社見学などしていたそうです。その際、医療の立場からだけでは、就労という分野では限界があることを感じていたそうです。

そこで、定年退職の数年前に北里大学を退職し、障害者のための就労支援施設を作ることにしました。

活動の当初、はじめに「作業所を作ろう」というところが動き始めました。そのためには、まず市の指定を受けなければいけない、ということで、行政に相談に行きました。

丁度その頃、相模原市が精神保健福祉センターを設置したばかりで、精神障害者への福祉サービスの受け皿として、私たちが考えているような就労支援施設を作ることを考えていたそうで、いろいろと協力していただくことができました。

市の計画とうまく時期とベクトルが一致したというところは幸運だったのかなと思っております。

大学病院で長く看護師として勤務してきた実績を汲んでいただいたこともあったと思いますが、
何より、市の担当の方が、就労支援施設を作ることにとても熱意があり、とにかく一生懸命な方で、施設の立ち上げを後押ししてくださったと聞いています。

この事業に賛同してくださるとともに、地域に絶対にこういう施設が必要だ!ということで、本当に力強いご支援を賜りました。

行政の方からは、施設を立ち上げる場合は社会福祉法人にして運営もしていくとよいなど具体的な方法までご指導頂きました。そういったご指導のお蔭で、この施設ができ上がりました。

加藤
では、らっくさんは、最初は就労支援施設からスタートしたのでしょうか。

鈴木
はい。当初から、そのサービス内容は今と同じです。
就労移行支援、就労継続支援B型(以下「B型」)、あと生活介護の3つの多機能型で運営しています。この1階にある「あみ」という通所施設です。施設の名前はひらがなで、レストランは「AMI」と表記して「アミ」と読みます。

※レストラン「AMI」は下記のような外観と内装です。
とてもオシャレな外観です。

店内も清潔感があって、落ち着いた雰囲気があって、とても良いです(笑)。

2階は、「コーポさんふらわー」というグループホームで共同生活援助事業を行っています。

2階と1階で別々の施設として運営しています。


加藤
他の場所にも、通所施設とグループホームがあるようですね。

鈴木
法人としては、もう1つ「くれあ」という施設を持っています。

ここから、車で10分位のところにあります。
そこは同じように1階が「くれあ」という多機能型事業所で、生活介護を除いた就労移行支援とB型という2つのサービスを同時に提供しています。そして2階がグループホームになっています。

2.この施設には、どういう方が通われているのでしょうか?

加藤
ここの施設にいらっしゃる障害のある方はどういう障害の方が多いのでしょうか。

鈴木
私たちの施設は主たる対象を「精神」としていますので、障害種別でいうとらっくに通われているほとんどの方が精神障害の方です。

精神保健福祉手帳を持ってらっしゃるか、自立支援医療給付と言って、精神科に通院するための医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度の対象となっている方です。

通院の方も、所定の疾患で精神科にかかっている方は対象になります。
らっくに通うほとんどの方は精神障害の方ですが、発達障害の方で知的つまり療育手帳しか持ってないという方も何人かおられます。

ご利用者様の診断名としては、統合失調症の方が40%から50%弱です。
発達障害の方はおおよそ30%程度です。

そのほかにはうつ病や気分障害の方。最近、増えているのは高次脳機能障害(脳に障害を後発的に受けた方。事故や脳の病気などが原因)の方です(全体の20%程度)。

近年の傾向としては、発達障害の方と高次脳機能障害の方の通所が増えているように思います。

加藤
今、通所の方って何人位おられますか。

鈴木
今年度(平成30年度)は利用率(定員数に対する通所した延べご利用者数の比率)が少し下がりました。現在、「あみ」が定員60名と「くれあ」の定員が20の定員80名です。利用率は80%前後となっています。多い時には、90%前後あります。日によっては、100%を超えている日もあります。

80%位ですと、休憩スペースにみんなが座れるのですが、それ以上に利用率が上がってくるとご飯を食べる場所が手狭になるなどご利用者様にご不便をかけてしまう状態が、一昨年まではありました。

今、定員80人で通所率が80%位ですと、60人程度の方が、毎日「あみ」と「くれあ」に通所されているということになります。

日によっては、60人以上の方が施設内で活動すると、手狭な印象になりますが、今は少し、落ち着いた状態で運営できております。

加藤
2階にはグループホームがある?

鈴木
はい。グループホームは9床、つまり9部屋ございます。短期入所も1部屋も併設して全部で10部屋あります。

現在、グループホームは、ほとんど空くことはありません。どなたかが退所すると、すぐに次の方が決まる状態です。

私たちとしては、今後、グループホームを拡充していきたいと思っております。
なので、理事長はいつも物件を探しております(笑)。

これは、理事長の1つの方針なのですが、経営の安定という観点から、賃貸ではなく、法人で土地建物を所有し、サービスを展開していくのが基本的な考えです。
賃貸ですと、色々な要因でそのサービスの提供を左右されてしまうのを懸念しているからです。

3.利用者様は、らっくさんをどのようにして知るのでしょうか?

加藤
ちなみに、普段、施設運営されている際の課題やお悩みがありましたら、教えてください。

鈴木
そうですね。やはり福祉サービスの質の維持と更なる向上です。

私たちは常に、質のよいサービスを提供することによって、ご利用者様から選んで頂ける施設にならなければいけません。

日頃からきちんとした支援をすることがとても重要だと思っております。

ご利用者様に寄り添って、課題にしっかり向き合い、自立のお手伝いをする。
そういう福祉サービス、提供するサービスの質を維持・向上していくことが課題だと思います。

そしてたくさんの方に私たちの施設を利用していただき、1人でも多くの方が、ご自身の夢や目標を叶えることができればと願っています。

加藤
ちなみに、現在のご利用者様は、らっくさんのことを、どのようにして知ることが多いのでしょうか?

鈴木
きちんと調べたことがないのですが、感覚的に一番多いのは、同じ福祉サービス事業者様からの紹介です。

特に、計画相談支援を行っている相談支援事業所様からつないでいただくことが多いです。計画相談支援事業所は、障害福祉サービスの利用について、相談から利用開始までの手続きを支援してくれます。

それと同じくらい、ご自身で調べて問い合わせをされてくる方も多いと思います。

相模原市の窓口でも情報提供してくれますし、「障害福祉サービス情報かながわ」という情報サイトがあり、県内のすべての事業所情報が簡単に検索できます。そういったところからご自身で調べて問い合わせをいただく方も多いと感じています。

あとは、ハローワークや相模原市をはじめとする行政機関です。

就職の相談に行き「すぐに就職は難しいかもしれないから、まずは、こういう施設を利用してみたら?」という形で、らっくを紹介して頂くケースもあります。後は、神奈川県の職業センターや市の窓口で紹介されたり情報収集されたりしていらっしゃる方ですね。

それと、医療機関からの紹介も少なくありません。

理事長が元々、病院に勤務していたので、医療関係のつながりで、病院から紹介を頂くケースもあります。例えば昨年は、北里大学東病院のデイケアが閉鎖された際に、代替の日中活動先として利用を開始された方が多くいらっしゃいました。

各医療機関のワーカー様からの問い合わせもコンスタントにある印象です。

第1回はここまでとなります。

らっく様の設立の経緯を伺うと、理事長の鈴木様の先見性もさることながら、時代の流れをしっかり捉えられていたこと。そして、こういう施設運営したい!と熱い思いに、色々な方達が集まって実現したことがわかります。

第2回は、工賃アップ対策として、今、どんな事に取り組んでいるのか? ※こちらからご覧になれます。 現状の報告と合わせてお知らせします。

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

プロフィール

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