地域密着のレストラン運営等で工賃UPへ 「らっく」の挑戦4

インタビュー記事

皆さん、こんにちは。全国地域生活支援機構(JLSA)の加藤です。

全国地域生活支援機構では、障害者就労の拡大に向け、積極的に事業に取り組んでいる施設運営者の方々に、定期的に取材させて頂き、障害のあるご本人・ご家族の方や、施設の方に向けて情報発信をしております。

社会福祉法人様等が、工賃アップのために色々な取り組みに挑戦している様子をご紹介するシリーズ。シリーズ第4弾は社会福祉法人らっく様の挑戦です。今回は「第4回目」をお届けします。

第1回は、神奈川県の相模原にある「社会福祉法人 らっく」様の設立までについて。
https://jlsa-net.jp/interview/luck-1/

第2回は、工賃アップに向けた取り組みについて。
https://jlsa-net.jp/interview/luck-2/

第3回 レストラン「AMI」とチャリティショップ「楽来」の店内を拝見!
  オペレーションマニュアルとサービスレベルの評価表がすごかった! についてお話をしました。
https://jlsa-net.jp/interview/luck-3/

今回は、 店舗運営を通じて、障害者就労を可能にする具体的な取り組み方法と実践についてお伝えしていきます。

なお、今回のシリーズの記事は、全部で5部構成となっております。
第1回 社会福祉法人らっくは、こんな想いを込めて設立した!
第2回 今、工賃はどれくらい? 工賃アップに向けた取り組み 
第3回 レストラン「AMI」とチャリティショップ「楽来」の店内を拝見!
  オペレーションマニュアルとサービスレベルの評価表がすごかった!

第4回 店舗運営を通じて、障害者就労を可能にする具体的な取り組み方法と実践
第5回 質の高いWEBページ、そして、施設運営に対する熱き想い

今回は、第4回 「店舗運営を通じて、障害者就労を可能にする具体的な取り組み方法と実践」についてお知らせします。

●取材にご協力頂いた方及びインタビュアーのご紹介

社会福祉法人らっく 事務長 鈴木 拓也様
社会福祉法人らっくの事務長として、法人全体の経営及び事務の取り仕切り行う。法人は、現在、80名を超える障害者の方とともに、多機能型(就労移行、就労継続支援B型及び生活介護)の施設としてレストランやチャリティ商品を扱うショップを運営。レストランやショップは地元のリピーターでいつもにぎわう人気店である。また、デザート作りにも強みを持ち、地元企業から受託の依頼が絶えないなどの技術力を有する。就労支援にも力を入れ、B型から就労、生活介護から就労に結び付けるなど就労支援でも定評がある。https://luck.or.jp/


インタビュアー 全国地域生活支援機構 加藤雅士
全国地域生活支援機構の広報委員として、障害のあるご本人、ご家族、その支援者の方に向けた情報配信を行っている。障害者就労支援施設の「挑戦シリーズ」を、現場に直接足を運び、定期的に取材を行い、情報を発信している。


第4回の目次は、以下の通りです。
1.仕事をしていくうちに分業制に。それが「らっく」の強みになっていた!
2.民間に就職する方はどれくらい?
3.他の施設との就労システムの違いは? 答えは「現場」にあり!
4.3か月に1度のメニュー改定でお客様のハートを掴む! そして、徹底した数値管理!
5.強みのデザート部門、厳しい評価基準を設定してお客様満足を真摯に追求する姿勢が大事!

第4回 店舗運営を通じて、障害者就労を可能にする具体的な取り組み方法と実践

1.仕事をしていくうちに分業制に。それが「らっく」の強みになっていた!

加藤
らっくさんは、接客部門もあれば、バックヤード部門などが本当に充実していますね!

鈴木
設立当初は、このような分業制にはしていませんでした。

レストランやチャリティ事業を行っていく中で、色々な仕事を切り離し、「これは、1つの部門の仕事としてやってみても良いのではないか?」というところから皆で組み立ててきました。

このように、色々な作業を提供できる環境が作れていることが、らっくの特徴です。
最近、らっくに見学に来られた方々が、とても興味を持って下さるポイントになっています。私たちの強みです。

ただ、この間、利用者の方から、「“らっく”というと、チャリティショップとレストランの印象が強く、仕事は“接客がメイン”だと思われている方が多いですよ。だから、接客が苦手だから、らっくに行くことに二の足を踏んでいる方、結構いますよ」と言われました。

ご覧になって頂いたように、実は、バックヤードでは、様々なお仕事があります。その方に合った作業を提案できるっていうところが、私たちの強みです。

そういう意味では、私たちも、もっと情報発信をしていかなければならないと思っています。

2.民間に就職する方はどれくらい?

加藤
ちなみに、この施設の利用者の方で、民間企業に就職できた方は、いらっしゃいますか?

鈴木
もしよろしければ、これを差し上げます。平成29年の事業報告です。ホームページにもアップされているものです。

平成29年度までのデータしか掲載されていませんが、毎年20名前後の方が就労されています。B型からも、コンスタントに就労されています(棒グラフの赤がB型からの就労者)。最新の数字ですが平成30年度は21名の方が就労されました。

私たちとしては、就労移行であろうがB型であろうが、就労したいというご希望があれば、それを目指した支援をしております。

就労を希望される場合は、それを見据えた課題を設定し、就労するために必要なことを、一緒に考えて支援をしていきます。ですから年度ごとの就労者数は私たちにとってもっとも大切な指標のひとつです。

今年は、生活介護でずっと通所されていた方が就労されました。
支援区分の高い方で、らっくのグループホームに入りながら、働くっていうことを目標に、生活と仕事と両面で支援してきました。

らっくで働いていく中で徐々に安定してきて、最後はほぼ毎日フルタイムで働けるようになりました。

その方は出勤率90%以上目指していました。「90%が3か月続いたら、仕事紹介して欲しい」という目標をたてて「そしたら一緒に考えよう」と話合いました。支援者側としては、半ば「どうかな?」という思いもあったのですが、継続できるよう支援し、ご本人も本当に頑張りました。

それで応募した就労先とも、うまく話しがまとまり採用となりました。
今、トライアル雇用を使って1か月経っていますが、給料も手取りで十数万円あるようです(笑)。本人もそれがとてもうれしかったみたいです。

障害年金を受給されていましたが、らっくに通所している間に等級が下がり、支給される年金額は下がってしまったのですが、それよりも「もっと、働こうぜ!」って話合い、らっくを経て今、しっかりと企業で働いています。小売業の物流にかかわる仕事をしています。

3.他の施設との就労システムの違いは? 答えは「現場」にあり!

加藤
ホームページを拝見した際に、就労支援もそうですが、日中の活動の支援も含めて、他の施設との就労システムの違いを教えてもらえますか?

鈴木
特に就労支援では、一番大きな違いは「現場がある」、ということだと思います。実際の仕事をしながら就労移行支援を行っている事業所はそう多くないと思います。一般の企業等への就労に向けた課題に取り組みをしていく中で「現場がある」ってことは、すごく大きな意味のあることだと思います。

そして、私たちの基本方針としては、「利用者のみなさんを中心に」というものですから、チャリティショップにしてもレストランにしても、利用者さんがその運営にもドンドン関わってもらえるような取り組みをしています。

例えば、メニュー班とチラシ企画班、2つの運営に関わる作業班があります。
この2つの班は、ご利用者様なら誰でも参加できます。

チラシ企画班は「工賃アップのために、どういうことをやろうか?」とか、「セールの企画としてどういったことをやろうか?」ということを話し合い、決まったことを各部門に伝えて、みんなに協力してもらい企画を実現していくための活動をしています。

メニュー班は、メニュー改定とメニュー開発を担当します。メニュー開発は「こんなレシピの料理を見つけたんだけど、メニュー化できないだろうか?」というところから話合います。

3か月に1回のメニュー改定に向けて、3か月前には次期メニューを決定して全部門の先頭に立ってメニュー改定に向けた準備を進めます。
資料があるのでお見せします。

加藤
ありがとうございます。

鈴木
これは、先程のPC部門でみていただいた「データ入力」作業で作成してもらった資料の1つです。何が何食売れたっていうデータを集計したものです。

メニューごとに何が何食売れたっていうのを毎日分入力して、それを月次で集計し、そのデータが揃うと、メニュー班に届きます。

メニュー班は売上状況や利益率を見ながら、「このメニューは優秀」とか「数はでているけど利益は薄い」とか「あんまり売れてないし、利益率も良くないけどメニューとしては必要だ」とかいう議論をしながら、キッチンの負担も考えてメニュー構成を決めていきます。

なかには「中止」というメニューもあったりします。

こういった取組みを、3か月に1回、メニューをローテーションしながら、改善していきます。そのなかでメニューをストックしたり、復活させたりします。

メニューの改定となれば、レストランで使っているオーダー表とかメニュー表も全部つくり直すことになります。そこで、また仕事が発生します。PC部門やサポート部門の仕事になります。

加藤
実際のショップ運営していることで、実社会の現場と同じ環境で仕事ができるという強みがある!
ということですね。

4.3か月に1度のメニュー改定でお客様のハートを掴む! そして、徹底した数値管理!

加藤
人気の秘密が大分わかってきました(笑)。

鈴木
3か月に1回のメニュー改定は大変な作業ではありますが、実際の売上アップにつなげることと、みんなの仕事をつくっていくという観点ではとても大事なことだと思っております。

加藤
だから、レストランにお客さんが一杯なんですね(笑)。
定期的にメニューが改定されたら、来ている側も楽しいですよね(笑)。
また、このように数値管理をして、改善していくことはとても重要だと思います。

鈴木
はい、数値管理はとても重要視しています。感覚で経営をするのではなく、数字的な根拠をもって運営していくことが重要だと思っております。その数字的根拠を作る作業も仕事になるなら尚更重要です(笑)。

それからメニュー開発では、メニュー化の基準も決まっています。

メニュー班で、メニュー化までの試作を進めていきます。第一試作、第二試作という形で進めいきます。試作をクリアすると、安定化試験を行います。これは、誰がつくっても同じ味になるのか?などを評価していきます。

安定化試験では、誰が作っても同じような味になることが重要です。支援員が作っても、利用者さんが作っても同じ味。ソースなどは消費期限内に作って数日経っても味の違いがでないことも確認したりします。

メニュー化まではこうしていくつかの段階を経ることになります。

そして、原価も大切です。
一次試作の時点で原価を確認します。原価が40%を超えると厳しくなります。そこをクリアできると二次試作に進みます。

加藤
40%とは、結構、原価率が高いと思うのですが。

鈴木
レストランのランチは540円で提供しています。
本当は、もう少し値段を上げたいところでもあるんですが(笑)。

加藤
それは、やはり冒頭でお話をされていた地域との交流という観点で値段を抑えているということでしょうか?

鈴木
はい。地域への還元とか地域との交流という側面は大きいですね。
やっぱり、たくさんの方に来て頂きたいっていう思いがありますし、訓練という要素もあります。

来て下さることへの感謝の気持ちも込めて、やっぱり500円!
元々は、ワンコイン、税込500円でスタートし、これを維持したかったのですが、途中から、540円にさせて頂いたという経緯があります。

加藤
ヘビーユーザーの方が多そうですよね(笑)。

鈴木
そうですね。何度来ていただいても、ちょっとずつでも小さな「新しい」があるとお客様に喜んでもらえるのではないかと思います。そういう意味でメニュー開発は重要だと思います。

一次評価、二次評価。そして、安定化試験まで通ること。こうした基準を明確にすることで、メニュー開発にご利用者様も含めていろいろな方がかかわれるような仕掛けになっていると考えています。

5.強みのデザート部門、厳しい評価基準を設定してお客様満足を真摯に追求する姿勢が大事!

加藤
デザートを作る作業場を見させてもらってもいいですか?
こちらでデザートを作られている?

鈴木
はい、そうですね。
今、ちょうど終わって、片付けの作業に入っているところです。きれいに片付けします。

ちなみに、これは失敗したシフォンケーキを、施設内で販売しています。

加藤
え、10円?!

鈴木
安いから、結構、みんながこれを買っていきます。
形は悪いのですが、品質には問題ないので、美味しいですよ(笑)。

加藤
お、新しい商品を開発されているんですか?

鈴木
ちょうどサンプルがあります。
実はこれ、明日からレストランで販売する新商品です。
プレミアムチョコレートケーキ。

加藤
いい感じですね~。おいくらですか?

鈴木
972円です。

このケーキ、食べた時に感じるのは「チョコレート」です。
でも、実はこれ、カカオの粉とデーツペーストと、あと米粉で作っています。小麦粉を使っていません。でも本当に少しの量でも、ものすごいしっかりと満足感のある食べごたえなんですよ(笑)。

加藤
ヘルシーなスイーツなんですね!
これ、今日買えるんですか(笑)

鈴木
明日からの販売ですが、今回はサンプル品をお持ちください。

加藤
スミマセン、ありがとうございます(笑)。

それから、先程の10円のシフォン。
ちなみに、何が駄目で商品にならなかったのでしょうか?

鈴木
これは、大きさですね。
ちょっと、焼き縮みを起こして小さくなったからだと思います。

加藤
これが商品化されないとは・・・、
すごい厳しい基準をもって、お客様に商品を出されているんですね。

鈴木
この辺は、たぶんここが欠けているのが駄目ですね。
あとは、穴がボコボコしていると駄目です。
評価基準、見てみましょう。

カットした状態での評価基準です。

そして、これがケーキのホールの状態での評価基準です。

加藤
なるほど。お店に並ぶには、本当に厳しい基準をクリアしないといけないのですね。
ありがとうございました。

鈴木
ただ作ればいいだけじゃなくて、一般の市場でこのくらいは要求されるだろうという品質なんかを意識しながら工程を組み立てております。

第4回は、以上となります。

第4回は、らっくさんが運営する、レストランとチャリティショップでの、障害者就労を可能にする具体的な取り組み方法と実践をテーマにご紹介しました。

取材していて感じたのは、
1)利用者の方が実践を通して、仕事を学べ、自分の強みを知ることができること、
2)接客もあればバックヤードもある、色々な仕事を経験できること
3)お客様に真摯に向き合い、お客様を喜ばせつつ、徹底した数値管理で経営を安定化させていること
が、非常に仕組み化され、徹底できているな~と感じました。

レストラン「AMI」が地元の方から愛される理由もわかりましたし、利用者の皆さんもやりがいを持って働けている理由がわかったような気がします。

次週は第5回、質の高いWEBページ、そして、施設運営に対する熱き想い をお知らせします。お楽しみに!

バックナンバー
第1回 社会福祉法人らっくは、こんな想いを込めて設立した!
第2回 今、工賃はどれくらい? 工賃アップに向けた取り組みについて 
第3回 レストラン「AMI」とチャリティショップ「楽来」の店内を拝見!

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

プロフィール

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