実践型障害者委託訓練事業 障害者の方と企業側のメリット

障害者就労

はじめに
実践型障害者委託訓練事業をご存知ですか?

障害者雇用で働きたいが、その経験がない、あるいは働いた経験自体がなく自信がない、仕事のブランクが長い方などは、障害者委託訓練事業の実践型を有効活用することをお勧めします。

障害者委託訓練事業の中には、技能やスキルを習得するコースと訓練を通してそのまま就職に繋がるコースもあります。障害者委託訓練事業は、就労移行支援事業とセットで活用することが可能です。

就労移行支援事業所に通いながら障害者委託訓練事業に参加する場合は、事業所の支援員とよく話し合いをしながら活用することをおススメします。

今回は、障害者委託訓練事業についてまとめるとともに、障害者委託訓練事業を利用した際のメリットを障害のある方と企業側の視点別でまとめました。

*障害者委託訓練事業は求職者・在職者の両者が利用をすることができます。今回は求職者の方を想定してコラムを書きました(求職者と在職者では、応募資格と申請手順・方法が異なります)。

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1.障害者委託訓練事業について
(1)障害者委託訓練事業の概要

障害者委託訓練とは、公益財団法人東京しごと財団がハローワークと連携して実施している障害のある方のための職業訓練です。職業訓練は委託している企業、社会福祉法人、NPO法人等で実施されています。職業訓練中は、仕事で役立つ知識や技能を身につけることができます。

(2)職業訓練の内容

障害者委託訓練事業のコースは5つあります。その5つコースは、訓練型と実践型の2種類に分けることができます。

訓練型は、スクリーリングや作業体験を通して、技能・技術・スキル・知識の習得を目的としています。

実践型は、実際の仕事をすることで業務スキルの習得を目指しています。障害者委託訓練事業を利用する際は無料となっていますが、交通費や昼食代は自己負担となります。

【知識・技能習得訓練コース】 訓練型
就職に必要な知識・技能の習得を目指します。具体的には、パソコンの操作、ビジネススキルの習得、清掃・軽作業の技術、事務補助、調理補助、配膳、洗い場業務、軽食喫茶店業務、飲食店での開店準備、接客等が学べます。

【e-ラーニングコース】 訓練型
都内在住で、訓練施設への通所が困難な障害のある方を対象にしています。在宅でIT技能の習得を目指すコースです。具体的には、ホームページの作成やマイクロソフトオフィスの操作を習得することができます。

【在職者訓練コース】 訓練型
企業等で働いている障害のある方が雇用の継続や職域拡大を目的として必要な技能のスキルアップを目指すコースです。具体的には、ビジネスで使うパソコン技能等を学ぶことができます。

【障害者向け日本版デュアルシステム】 実践型
就職に必要な知識技能の習得に加え、職場実習を一体的に行い、実践的な職業能力の習得を目指します。

【実践能力習得訓練コース】 実践型
雇用を検討している企業等を委託先とし、実際の職場環境を活用した実践的な職業能力の習得を目指すコースです。コースの内容は事務補助の業務が多いです。

各コースの訓練科目、訓練内容、対象障害、訓練実施場所、訓練人数、訓練日数、訓練開講月、開始・終了時間は、以下のサイトで確認できます。

公益財団法人東京しごと財団「受講生募集中コース公募一覧」
https://www.shigotozaidan.or.jp/shkn/yourself_supporter/trust_training/boshuuannai.html

(3) 応募資格

以下の①〜⑤すべてに該当する方です。

① 身体障害者手帳、愛の手帳(療育手帳)、精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持っている方。知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難病等があり、公的な判定書(意見書、診断書)、難病指定の医療受給者証等をお持ちの方。
② 居住地管轄のハローワークに求職申込を行い、訓練受講の推薦を受けた方(中途障害等で休職中の方は要相談)。
③ 職業訓練を通じて就労しようという意思のある方。
④ 障害の症状が固定もしくは安定しており、訓練受講に支障のない方。
⑤ 訓練施設まで通所ができる方。
ただし、e-ラーニングコースについては、上記1から5の要件に加えて、都内在住で訓練施設への通所が困難な方のみが対象となります。

(4)申請手順・方法

はじめに、しごと財団のホームページから「受講生募集中コース公募一覧」を確認します。
https://www.shigotozaidan.or.jp/shkn/yourself_supporter/trust_training/boshuuannai.html

そして、5つの訓練の中からコースを選び、どんな内容を希望するのか目星をつけます。次に居住地管轄のハローワークに出向き、専門援助第二部門でコースや内容の選択の相談をします。

ハローワークに出向く前に障害者委託訓練事業の件で相談したい旨を専門援助第二部門に電話連絡しておくと当日はスムーズに事が進みます。

*専門援助第二部門:障害のある方が職業相談や職業紹介を受ける窓口です。
東京都福祉保健局ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/chusou/jouhou/shien/syuro_1.html

コースと内容が決まれば、受講希望シートを記載して提出します。この受講希望シートは、専門援助第二部門で受け取れますが、公益財団法人東京しごと財団ホームページでもダウンロードが可能です。
https://www.shigotozaidan.or.jp/shkn/yourself_supporter/trust_training/moushikomi.html

シートを提出した時点で受講申し込みの完了です。後日、指定の場所に面接通知が届きます。就労移行支援事業を利用しながら障害者委託訓練事業を受ける場合は、就労移行支援事業所に面接通知が届くことが多いです。就労移行支援事業を利用していない場合は自宅に面接通知が届きます。

面接通知には面接する場所と時間が記載されています。その日時に指定の場所に出向き、障害者委託訓練事業の委託先の担当者としごと財団の担当者と面接をします。後日、障害者委託訓練事業の合否の通知が届来ます。面接に受かっていれば、訓練開始の詳細な情報を受け取ることができます。

参照
公益財団法人東京しごと財団「障害者就業支援事業」
https://www.shigotozaidan.or.jp/shkn/yourself_supporter/trust_training/index.html

2.実践型の障害者委託訓練事業を受けるメリット
(1) 障害のある方が実践型の障害者委託訓練事業を受けるメリット

【実践に近い形で働ける】
実践型の障害者委託訓練事業では実習という形を通して、職場で働く疑似体験ができます。今まで、働いた経験のない方は、仕事のイロハを学ぶことができます。後、仕事のブランクが長く空いてしまっている場合は、今現在働く力がどのくらいあるのかを確認することができます。

具体的には、実戦型の訓練を通して、向いている仕事はなんなのか、働く準備が整っているのか、どんな環境であると働きやすいのか等を確認することができます。

【実績・フィードバック】
これはすべてのコースの障害者委託訓練事業に言えることですが、訓練終了後は修了証が授与されます。この修了証の内容は、履歴書に記載することができるため、就労の実績につなげる事が可能です。

実践型の障害者委託訓練事業の中には、3週間(勤務日数は14日)の長丁場の訓練も存在しています。

障害者委託訓練事業の終了と同時に職場の担当者から、訓練の様子の評価をもらえます。評価をもらうことで現在の自分の立ち位置が認識できます。加えて、自己を客観的に捉えることもできます。その評価は今後の就職活動のヒントになり得ます。

【雇用の可能性】
実戦型の障害者委託訓練事業を実施して、その評価が良好であると、そのまま採用されることもあります。そのため、訓練中はベストのパフォーマンスを出すことをお勧めします。

もちろん、職場から雇用を打診されても、自分がその会社に合わないと感じたら、申し出を断ることも可能です。

【関連記事】
障害者就労 就活のための「自分取り扱いマニュアル」のススメ
https://jlsa-net.jp/syuurou/zibun-manual/

(2) 企業側が実践型の障害者委託訓練事業を受けるメリット

【スタッフの教育】
実戦型の障害者委託訓練事業を実施する際には、訓練生に対して仕事を教えるスタッフを選任しなければなりません。すでに社内で障害者雇用が進んでいる場合は、適任だと思う障害のある方に仕事を教える担当者になってもらいましょう。

選任した担当者が訓練生の指導・サポートをすることで、その方のスキルアップにつなげることもできます。

【委託料の受領】
職場側が障害者委託訓練事業を受けた場合には、各種書類の手続きを済ますことで、東京しごと財団から委託料をもらうことができます。委託料の金額については、訓練受講生の人数や訓練のコースによって金額が変わります。

詳細につきましては以下の資料から確認ができます。
「受託機関募集」のご案内
https://www.shigotozaidan.or.jp/shkn/company/trust_training/documents/2018trasttraning.pdf

【採用活動】
定期的に実戦型の障害者委託訓練事業を実施することで、そのまま自社の障害者雇用の採用活動につなげる事ができます。もし、職場にマッチする方がいれば採用することも可能です。

その際は、本人の気持を尊重しながら、働く意思の確認をしていきましょう。もし、就労支援機関や就労移行のサポートを受けている場合は、その支援員に相談することをお勧めします。

【関連記事】
障害者雇用で失敗しないために
https://jlsa-net.jp/syuurou/sgs-employment/

障害者雇用における企業の向き合い方 ~調査結果から見えること~
https://jlsa-net.jp/syuurou/sgs-tyosa/

3.障害者委託訓練事業と就労移行支援事業の併用

就労移行支援事業所に通所しながら障害者委託訓練を受講することも可能です。就労移行支援事業所につきましては以下の記事を参考にして下さい。

【関連記事】
就労移行支援事業所選びのポイント総まとめ 2019年版
https://jlsa-net.jp/syuurou/syurou-2019/

就労移行支援事業所を利用しながら障害者委託訓練事業を受講するメリットは、支援員と相談しながら多角的に就職活動を進められる点です。委託訓練のふりかえり(訓練の最終日)やフィードバックの結果を分析しながら次の就労活動に役立てることができます。

【職場定着率が常に95%超】都心にある就労移行支援事業所

参照
公益財団法人東京しごと財団「障害者就業支援事業」
https://www.shigotozaidan.or.jp/shkn/yourself_supporter/trust_training/index.html

最後に

今回は、実践型の障害者委託訓練事業を利用した際の障がいのある方と企業側のメリットについて記載しました。

障害者委託訓練事業を利用する障害のある方のメリットは、「実践に近い形で働ける」「企業側から実績・フィードバックをもらえる」「委託訓練を受けることで、そのまま雇用の可能性がある」ことです。

一方企業側のメリットは、「現在障害者雇用で働いているスタッフの教育ができる」「委託訓練を申請・実施することで委託料を受け取れる」「訓練生を採用することができる」ことです。

障害のある方は、就労移行支援事業所を利用しながら委託訓練を受けることでメリットを最大限に生かすことが出来ます。障害者委託訓練事業を申請・実施する中で企業側は、必要書類の提出や準備に時間が取られてしまう事もありますが、コラムに書いたメリットを活かすことで十分なリターンを得ることも可能です。

田中 佑樹

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社会福祉士、就労支援員、障害者雇用促進のサポート。一般社団法人障害者就労支援協会(就労移行支援事業所・定着支援事業所)で勤務。事業所では全ての障害の方を対象...

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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