アートの力で福祉を変える! 工房集の挑戦(第2部)

インタビュー記事

はじめに
前回に引き続き、埼玉方式 アートの力で福祉を変える! 工房集の挑戦の第2部をお知らせします。
第2部は、工房集様の生い立ちと現在、企業(BEAMS等)とコラボしている取組みなどをご紹介します。

今回の記事の目次は、下記の通りです。
第2部 工房集様の生い立ちと現在に至るまでの取組みのご紹介
7.庭師の長崎さん、「これ、面白いじゃん。東京美術館の展覧会に出てみない?」で始まった!
8.新しい施設(工房集)は「もっと素敵な、もっともっと人がきやすい環境に!」
9.「ここは、みんなの宝物にする!」
10.「教えるんじゃない。  さぁ、やってみよう!」
11.アートで企業様とコラボ 「BEAMS」様などとの取り組み事例
12.人の縁って、本当に不思議です。

今回のインタビュアー:
全国地域生活支援機構(JLSA)
広報委員   加藤雅士
業務拡大委員 園部博正

工房集のご担当者様:
工房集 管理者  宮本恵美様

第2部

7.庭師の長崎さん、「これ、面白いじゃん。東京美術館の展覧会に出てみない?」

宮本:
実は、この本(問いかけるアート)にも出てくる方ですが、

その中のお一人に長崎さんという庭師の方がいます。長崎さんが、たまたま色んな作品を探していたところに、「ここ、面白いじゃん」って言ってくださり、工房集に訪問して頂きました。

実際に、アーティストの佐々木さんや横山さんの絵を見て、「これ、いいね」ということで、
「今度、東京都美術館で、展覧会があるから、そこに出さない?」というオファーを頂きました。
すごいタイミングと出会いでした。

その展覧会に出たことがキッカケで、また違うアーティストさんが「ここ、面白そうだな」といって見に来て頂けるようになりました。

他にも、今もお付き合いくださってる中津川さん、水川さん、本当にいろいろなアーティストさんや、デザイナーさんに、繋がっていきましたし、盛り上がるキッカケになりました。

この時に、皆さんが言われて気づいたことがあります。
皆さんが言われていたのは、「福祉施設に関わりたくても関わり方がわからない」と。

加藤
確かに、関わりたいけど、どう関わればいいのか、わからないところがあります。

宮本
「関わりたいけど、どう関わっていいかわかんない」って言ってたアーティストさんたちも、今では、
「自分ができることで、関わればいいんだね」みたいになっています。

そうすると、あるデザイナーさんは、「自分はデザインができるから、彼らの作品を、こういう形にして、こんな商品にしたらいい」と実際にカレンダーやポストカードになっています。

改めて、「デザインの力ってこんなに大きいんだ」と学ばせていただきました。

加藤:
今、工房集様の中で行われている美術会議とか、デザイン会議っていうのは、そういう外部の方も来てくださることもあるのでしょうか?

宮本
今では、そうです。

加藤
先程、気になった作品に「ニギリ」がありました。(重い障害のある方が、紙粘土をニギったもの)

最初、画像で見たとき、「うん?これはなんだ?」と思いましたが、
商品化の過程で、台座をつけるなどを施すと「こういうふうに変わるんだ」、「面白いな」と思って拝見しておりました。
きっと、そういう方々が関わってるんですね。

宮本
そうですね。

加藤
宮本さんから始まったうねりが、求心力を産み、色々な方が吸い寄せられているようですね。

宮本
色々な方と関わり、繋がり、新しいものを産み出す。そういう流れが工房集の特徴だと思います。

この事業をスタートして7年ぐらい経った頃から、いろんな人たちとつながりを持て、アーティストの方が来てくださったり、織を加工してくださるボランティアさんが増えたりなど、もうそれは本当に、広がりが出てきました。

この事業は、当時、困った人からのキッカケで始まりました。その人は、環境が整ったことによって、いっぱい描くようになりました。そうすると、その人以外の何人かも、ほんとに生き生きと描くようになった、作るようになりました、そして織も。

ただ、当時は、やっぱり私が担当してるグループだけの活動でした。
そんな中、タイミングよく、「2002年に新たな施設をつくろう」という話になりました。

この時、せっかくアートの広がりが出てきてるから、その先を目指そうということになり、工房集が出来ました。

8.新しい施設(工房集)は「もっと素敵な、もっともっと人がきやすい環境に!」

加藤
こちらの建物は、本当におしゃれですよね。天井高くて、とても開放的ですよね。

宮本
ありがとうございます(笑)。
ただ、その当時、この施設をつくる際大きな問題となったのは、建物の設計でした。

ある建築会社さんに頼んだ設計は、施設の建物要件だけの設計でした。

私は、新しく建設する施設は、「もっと素敵な、もっともっと人が来やすい環境がしたい」という思いがあったので、施設長と何度も話し合い、施設長は思いを受けとめて頂き、役割分担では、「宮本さんは中身を考えて、僕は行政とちゃんとやり取りするから」って言って頂きました。今でも、本当にありがたいと思っております。

なので、私は、今まで関わってくれたアーティストさんとかに電話して、定期的に集まって頂き、この建物を設計していきました。結果、このような施設ができあがりました。

加藤
なるほど。建物1つにも、色々なドラマがありますね(笑)。

宮本
はい。 実際、皆さんが集まった会議などでは、「この先、ここで、こんなすてきなことやりたい」って言ったら、
賛同してくれた皆さんも本当に思いを込めてくださって、「じゃあ、今までにないものをつくろう!」ということで、この建物を建てられることができました。

福祉の現場にギャラリーがあるというのは、かなり先駆的でした。「全国的に初めてだった」とも言われました。

加藤
すごいですね。

宮本
ちなみに、当時はギャラリーという発想はあまり持っていませんでした。
「ちょっとすてきな環境にしたい」ぐらいのことを思い、皆さんに話しておりました。

そんな中、「(宮本さん)の思いを実現するならば、ギャラリーは必要だ」っていう話になりました。
結果、私たち現場の職員と、アーティストさん、設計士さんと含めて、すり合わせを何度も行い、こういうギャラリーとショップを作ろう! 庭も含めて、こんな建物にしよう! と、話をまとめていき、工房集の建物ができました。

ただ、この建物も出来たときも、様々な意見がありました。

宮本:
「床にみんなでペイントしたのですが、せっかく新しいのをつくったのに、こんな汚い床にしてしまって。なんてことしてくれたんだ!」っていう方もいましたし、

「みぬま福祉会は一人一人を大事にする法人なのに、特別な人の特別な活動にするつもりなのか?!」みたいな意見もありました。 

実際、障害の重たい人たちが多く、支援とか、ケアに追われてる施設も多くあります。ほんとに生きることだけで精いっぱいなのに、「何をやろうとしてるんだ!」みたいな、そういう意見もありました。

加藤:
何だか、大変なことばかりですね(笑)。

9.「ここは、みんなの宝物にする!」

宮本
でも、またそのときに、腹をくくりました。

「みんな、一人一人がいろんな表現してるものを形にして、社会に出していく。それを彼らの労働として位置づけ、それを目指す。だから、特別な人の特別な活動にするんじゃなくて、表現は誰しも可能性があるし、どの人たちも可能性を求めてきます」みたいなことを豪語しました。

加藤:
かっこいいなぁ~。

宮本:
その時は、施設長も一緒になって言ってくれました。
ここは、みんなの宝にしますから。大丈夫です。」と。

「ここを利用してる仲間たちとか、みぬま福祉会にとって不利益があるようだったら考える。まずはやらせてください」と施設長んが言ってくれて、スタートしました。

加藤
なるほど。

宮本
それで、そのとき考えたのが運営会議。

加藤
みんなに、ということですよね。

宮本
みんなにということで、運営会議は、それぞれの事業所の代表の人に参加してもらうことにしました。
代表の職員と、あと、家族会からも出てもらい、理事と後援会とか、いろんな立場の人に出てもらって、
月1回の定例会を行っています。

加藤
すごいですね。

宮本
そんな活動をもう16年継続しています。

加藤
本当にすごいの一言に尽きます。

宮本
運営会議で色々な方に入ってもらうことは、初めのときから位置づけ、形にしてきました。
いろんな企画を出して実行に移し、アーティストさんにも入ってもらっていました。

しかし、最初は、代表の職員からは、
「入所施設の人たちに対して、表現とか、アートの大切さはわかります。けれど、私たちは支援とか、常にケアに追われてて、そんな余裕ないです」みたいな話や、

「絵を描いてもらうとか、何かやってもらうって、どういうふうにやればいいんですか」という意見が出てきます。
でも、それはそうだなと思いました。

10.「教えるんじゃない。  さぁ、やってみよう!」

加藤
絵を教えられないから、「描いて」しか言えないですよね。そこをどうやったのか。

宮本
そんな時、実際、アーティストに入ってもらって「みんなでベニヤに絵を描こう!」というワークショップをやったりするなど、
そういう場を提供するようにしました。
自由な表現の場を作るという企画をしています。

アーティストが実際にやって見せたり、関わって見たりとかをします。
そうすると、次第に「さあ、やってみよう」という雰囲気になります。

こういった活動を積み重ねることで、徐々に、考えや見方が変わったりします。実際、利用者の方が、普段見せない表情や、生き生きとした顔で絵を描いていたりすると、職員たちも考えます。
「普段、この人たちは、こういうの好きなのかもしれない」と思ったりしてくれたりしました。

加藤:
なるほど。

宮本:
あと、意外と職員たちが、気持ちが解放されていたようです。職員たちが、喜んでやってたりしています。

加藤:
行き詰まっていたのが、ちょっとそういうところで解放されたのでしょうか。

宮本:
重要なのが、職員たちの意識が変わると、雰囲気が変わります。

加藤:
アートの力って、すごいですね。

宮本:
そうですね。

加藤:
うちもやるかなぁ(笑)。

宮本:
そうですよ。いいかもしれないですよ(笑)。

宮本:
こういう取組を広げていって、ちょっとずつ環境を変えながら、色々な取り組みが増えてきました。
今では入所施設でもやるようになり、蓮田太陽の里 大地でも取り入れています。

宮本:
あと、太陽の里では、POPOという表現活動グループができました。
※表現活動グループPOPOは、絵画と織りを主に創作しておられます。


その他にも、もともとやってた仕事を切り替えたグループもでてきました。

宮本:
もともと、牛乳パックから和紙をつくっていたグループがありました。
よく施設でやられてるの知ってます?

園部:
はい。よく聞きます。

宮本:
牛乳パックの再生です。はがして、ミキサーにかけ、ビニールと、牛乳パックのドロドロしたものに分けます。その牛乳パックのドロドロしたものを、すいていくと、牛乳パックの和紙になります。
そういう仕事をしてる施設が結構あります。工程も実にいっぱいあります。

宮本:
そういう工程を細分化して、その人にできるところを頑張ってもらう。
たとえば、ミキサーの人だったら、ずっとミキサーやる。ミキサーに水入れるとか、「ここの線まで水入れるんだよ」みたいなことに取り組み、「線まで入れれるようになったね」とか。

すく人は、すくという流れ作業で、みんなで1つのものをつくり、みんなで「できたね!」っていうことをやっていました。

それはそれで間違いではないと思いますが、
「一人一人の表現としての仕事のあり方」を考えるようになったとき、やっぱりここのグループも悩むようになりました。

いつまでも、同じことばかりでいいのか・・・。
障害が重たいからって、「ばっかり」で、ずっと何年もやっていても、
「この人の人生どうなのか」って思ったりします。

だから、そこの職員もすごく悩んでいました。思い切って、牛乳パックをやめて、表現活動をやるようになったりしたら、もう一人一人色々な表現をするようになりました。

あと、ステンドグラスのグループがあります。

もともとは、ステンドグラスも流れ作業で行っていました。たとえばみんなで話し合って、「時計をつくりましょう」って決めたら、同じ形の時計を決めて、それから型を起こして、それの通りにガラスを切る。

切れる人はガラスを切って、それを銅のテープで巻いていきます。銅のテープで巻ける人は、銅のテープをずっと巻いています。ハンダができる人は、ハンダを。その工程さえできない人は、最後、磨く役割だけの人もいました。

そういう一連の流れ作業で行っていたステンドグラスのグループも、やっぱり一人一人のステンドグラスづくりにこだわるようにしました。だから、やり方をもう180°変えて行いました。そうしたら、ステンドグラスでジェットコースターをつくったりするなど今やアート的なステンドグラスが生まれたりしています。

園部:
すごいですよね。こだわりや思いが詰まった、作品になってるのでしょうね。

宮本:
はい、すごいです。

加藤:
その発想というのは、型にはめるんじゃなくて、自由に。

園部:
それが表現されると、すごい形になるということですね。

宮本:
だから、教えられることばっかりです。

加藤:
私自身が先生時代(余談ですが、私は10年間、専門学校で教師をしておりました)で行っていたことを反省します。

園部:
反省してる?

加藤:
画一的にはめてましたからね。パターンを、「これ覚えろ」みたいな感じでやってました(苦笑)。
それで、脱落する子がいっぱいいましたから(苦笑)。

宮本:
日本ってそういうとこありますから。だけど、そういう意味で、彼らから教えられることたくさんあります。
「生きることは何か」とか、「豊かに生きることは何か」とかね。なんか幸せそうなので。

加藤:
そういう環境を提供できるのが素晴らしいですね。

宮本:
そうですね。だから、よくお客さんが来られて、「ここの社会が世の中だったら、みんな救われるのに」とか。
やっぱり障害のある方たちだけじゃない、今の世の中って、生きづらさを抱えてる方たちがたくさんいるようです。

宮本:
工房集に来られる方は元気になるみたいです。彼らの姿から元気がもらえるようです。

加藤:
楽しそうに働いてるというか、なんかしてるっていうのは一番いいですよね。

11.アートで企業とコラボ 「BEAMS」

宮本:
そうですね。素晴らしいですよね。

加藤:
話は変わりますが、あちらで販売されていた作品ですが、工房集さんは、BEAMSさんとかとコラボされてますよね。

宮本:
そうですね。

加藤:
ああいう営業も、宮本さんがされるんですか。

宮本
営業までは出来ないです。

加藤:
サイトを拝見すると、結構、有名な企業が並んでいたので。
BEAMSさんとか、高島屋さんとか、りそな銀行さんとか。

宮本:
そうですね。

加藤:
あと、一青窈さんのコンサートにも携わっておられる。

宮本:
携わったわけではなく、コンサートグッズに採用されました。

加藤:
ホームページを拝見したとき、「なんで、こんな有名企業と取引しているんだろう」と思ってました。

宮本:
BEAMSさんも、ほんとに人と人の縁でつながって、というところからスタートしました。

加藤:
BEAMSさんも、アーティストさんのご紹介なのでしょうか?

12.人の縁って、不思議です。

宮本:
BEAMSさんは、女優の東ちづるさんからのつながりです。
東ちづるさんは、そういった活動をされています。

園部:
Get in touch!※ですね。
※一般社団法人 Get in touch(理事長 東ちづる http://getintouch.or.jp/)

宮本:
そして東さんはアートがお好きな方です。確か、パリかなんかに行かれたときに、ファッションデザイナーさんが工房集とコラボした洋服を出しておられ、東さんが日本のアーティストさんだというのを聞き、買ってくれていたのです。

宮本:
そんな時、全障研(全国障害者問題研究会 http://www.nginet.or.jp/)の人たちが東さんへの取材をすることになりました。その東さんの取材の際に、「うちでも、こういう活動してます」ということで、作品集とかをお持ちしたんです。

持っていったら、「あ、ここの子(の作品)だったんだ」って話になって、工房集まで来てくれました。
そのことがキッカケで、東さんとも知り合え、東さんがBEAMSの社長さんとお友だちだったことでBEAMSさんにもつながり、人のご縁でつながっています。

実際、BEAMSさんの中で、「じゃあ、こういう施設があるから、行ってみようよ」という話になり、それぞれのセクションの担当の方々が工房集に来てくれました。

工房集の取り組みに共感してくださり、「じゃあ、これからもやっていきましょう」ということで、1年に1回ぐらいの感じで、商品化して、つながっています。

加藤:
素晴らしい。

宮本:
ほんとにいろんな人のつながりとかで、すごくいいお話があって、ありがたいです。

加藤:
歯車は、最初の一転がりが重要と言いますが、うまく回り始めたら、良い方向、良い方向へと回り始めていくものですね(笑)。本当に、素晴らしいです。

さて、お話を聴きながら、少し、気になった点をお聞きしたいと思います(笑)。
先程、「お金を稼がなきゃいけない」と言っておられました。

宮本:
はい。

加藤:
どうですか? 状況というか、年々上がっていますか?

以上までが、第2部となります。
工房集様がここまでに至るまで、様々な困難があったことをお聞きしました。

ポイントは、本気で仕事に取り組むと賛同者が必ず現れ、流れが加速していく。私自身、とても勉強になりました。
また、これから工房集様のアーティストの皆さんの活躍の場がドンドン広がっていく可能性を感じました。

第3部では、工房集様のアートティストに皆さんがどのように活躍されているのか。工房集様のこれから目指すところと、アートの現場を見て、私が感じたことをお伝えします。
第3部はこちらから。https://jlsa-net.jp/interview/koubosyu-3/

第1部をご覧になりたい方は、こちらから。https://jlsa-net.jp/interview/koubosyu-1/

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

プロフィール

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