障害者雇用促進法改正 短時間特例給付金制度は企業にとって多くの価値をもたらす!
はじめに
障害のある方の雇用に関する法律で、障害者雇用促進法というものがあります。皆さんよく耳にする「法定雇用率」という言葉は、この法律によるものです。2020年4月から障害者雇用促進法がいくつか改正になりました。ここでは、障害のある方、雇用主である企業にとってもメリットがある「短時間労働者に対する特例的な給付金制度」についてお話します。
1.短時間から始める意義
まず、特例というからには、特例じゃないものがあるわけです。現在の障害者雇用に関する雇用率制度では、週の所定労働時間が20時間未満の働き方については支援の枠組みの対象とされていない、という現状があります。
しかし、精神障害の増加、20時間未満であれば仕事ができるという方がいることを受け、その方々にも支援の手を広げていこうというのが、この給付金の趣旨です。
実は、この短時間というのは、すでに「有用である」ということは考えられていました。障害者の就労状況に関する調査によると、精神障害の方は一年以内に離職する割合が50.7%です。他の障害に比べて多い状況がわかると思います(表1)。
(表1)
そして、障害者雇用の現状に関する調査では、精神障害の方の離職理由の上位に「疲れやすく、体力意欲が続かなかった」「症状が悪化(再発)した」というものがあります。
(表2)(出典:障害者雇用の現状等 平成29年9月20日 厚生労働省職業安定局)
これらを考えると、法定雇用率でカウント1を埋めるために週40時間のフルタイムで採用するというのは、本人の生活保障や会社の法定雇用率を満たす、という観点から有益だと思われがちですが、必ずしもそうではないということが考えられます。
この調査からしても、短時間勤務というのは、労使双方にとって価値があるのかもしれません。
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3.短時間は、雇用を検討する中小企業にとっても有用である、という考え方
そして、実は短時間から採用するというのは、もう一つ価値があります。それは中小企業にも雇用が広がるということです。
中小企業は大企業のように毎年多くの社員を採用するというよりは、欠員が出たら、または事業拡大をするから募集するというところも多いです。
そういうときに、想いがある経営者が、障害のある方を採用しようと思っても「いきなりフルタイムではなぁ」「続くかなぁ」と心配になる声も耳にします。それでも採用したとしても、前述したように体力的理由で離職してしまうと「やっぱりうちでは無理なのかなぁ」とあきらめてしまう可能性もあります。
その時に、今回のように短時間での採用というムードが世の中でできることで、採用の敷居を下げることができると私は思っています。
病気・障害がある方働けないというのは、個別的な事情はあるかもしれませんが、私は基本的には相性とアイディアと複数関係者の支援ネットワークで何とかなると思っています。1社が過度な負荷を背負う必要はないと思います。
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最後に
前述したように、病気や障害があるから仕事ができないというのは、個人の事情はあるとはいえ、環境的な要素も多くあると思います。当事務所では、がんを患っている方だけを採用する部門を作りました。がんで治療をしていたり、そのためにフルタイムで仕事ができない方を対象したものです。
当事務所の取り組みそのものは大した価値はありません。しかし「自分たちの会社は何ができるだろうか」と考えて行動することには価値があります。
その意味では、今回の障害者雇用促進法の改正は、法定雇用率とは関係なくても、そして今までフルタイムで採用することに躊躇していた会社が「自分たちの会社は何ができるだろうか」と考える大きなきっかけになる、とても良い法改正だと私は思っています。
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