統合失調症の方がいるご家族の困りごととその対応

精神障害

はじめに
 統合失調症の方がいるご家族の困りごととその対応について。統合失調症は、精神障害の中でも患う方が多いものであることがわかっています。統合失調症がある場合、ご本人が生活をする上での困難が伴うのはさることながら、支援の中心となるご家族の方にとっても大きな苦労があることでしょう。

 ここでは、統合失調症のある方を支えるご家族の困りごとについて、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会が実施した調査結果を読み解きながら、その対応方法として考えられることなどについてまとめています。

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1. 統合失調症のある方のご家族にとっての困りごと
(1) ご家族にとって、多くの場合困りごとがある

 統合失調症のあるご本人には、その症状がゆえに、生活をおくる上でさまざまな困難、障害があると言われています。そして、その症状の不安定さや障害の特性から、家に引きこもって生活をしている方は少なくないそうです。

そもそもこの事実自体が、ご家族にとっての困りごと、と言い換えることもできるかもしれません。しかし実際には、それ以上の困りごとがあると考えられます。

(2) ご家族にとっての困りごと

「図-統合失調症、ご家族の困りごと」

 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会が実施した調査から、統合失調症の場合、特にその症状が悪化したとき次のような状態が見られることがわかっています。

① 意思疎通ができないという問題

 症状が悪化したときにもっとも多く見られるのは「意思疎通がうまくできない」という点で、6割以上が該当するとの結果が得られています。

② 暴力という問題

 次いで多く見られるのは「家族に対する暴言や暴力」で、これも5割以上が該当しています。家族以外の他人に対する暴言や暴力も1割以上に見られることから、他者に対する暴言・暴力でご家族の方が対応に苦慮されていると考えられます。

他にも「部屋への閉じこもりや食事を摂らない」、「眠らない」、「自殺を試みようとする」、「普段はしないような恥ずかしい行動をする」、「常識はずれの浪費」など、さまざまな状態が見られることがわかっています。

これらの多岐に渡る症状をご本人と何とかしようとしても、ご本人に言い聞かせようとしても、対応しきれない現実があると考えられます。

特に、ご本人だけ、あるいは、ご家族の方だけに降りかかる問題以上に、他者に対して危害を与えるような問題については、その影響範囲が広いという意味で、非常に大きな困りごとと言えるかもしれません。

参考:
精神障がい者の自立した地域生活の推進と家族が安心して生活できるための効果的な家族支援等の在り方に関する全国調査報告書、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会

2. 統合失調症とは?
(1) そもそも統合失調症とは?

① 統合失調症とは?

統合失調症は、幻覚や妄想といった症状が特徴的な精神障害です。慢性化したり、幻覚や妄想が強くなる期間があったりする場合もありますが、初めて発症した方のほぼ半数は、「完全に、あるいは、長期的に回復する」とされています(WHO 2001)。

よって、早期発見・早期治療、薬物療法に加え、ご本人とご家族の方々との協力の下での再発予防のために治療を継続することが大切と言われています。ただ、その回復に至るまでには、先に見たような多くの困りごとが起こりえるということになります。

② 統合失調症に見られる主な症状

1) 陽性症状
「幻覚と妄想」は、統合失調症における陽性症状と呼ばれており、統合失調症の代表的な症状です。その特徴は次のようなものです。

・幻覚
幻覚とは、実際にそこには存在しないものが感じられることです。統合失調症で最も多いのは、幻聴(幻声)と言われています。「お前はサイテーだ」といったご本人への批判・批評、「あっちへ行け」といった命令、「今シャワーを浴びています」といった監視、が代表的なものとしてあげられます。

・妄想
妄想とは、明らかに誤った内容であるのに信じてしまい、周囲の人が間違っていると指摘しても受け入れられない状態になってしまうことです。「被害妄想」や「誇大妄想」といったものが主な症状です。

2) 陰性症状
統合失調症では、幻覚・妄想とともに、「日常生活や社会生活において適切な会話や行動や作業ができにくい」という陰性症状が見られます。

・会話や行動の障害
話のピントがずれる、話題が飛ぶ、相手の話のポイントや考えがつかめない、作業のミスが多い、行動の能率が悪いといった症状です。症状が酷くなると、会話や行動が支離滅裂であるように見える場合もあります。

・感情の障害
感情の動きが少ない一方で不安や緊張が強いといった症状です。また、相手の気持ちに気づかない、極端な誤解をするといったことが増えるとされています。このため、自分を理解してもらったり、周囲の人とコミュニケーションを取ったりすることが苦手になってしまいがちだと考えられます。

・意欲の障害
何かしようとしてもゴロゴロばかりしてしまう、部屋の整理をしない、体を清潔に保とうとしないといった症状が見られます。さらに無口で部屋に閉じこもってしまうといった症状が見られる場合もあります。

3) 病識の障害
ご本人に起きていること、つまり幻覚や妄想などが起きていることを、ご自分では認識できない状況が見られます。他の患者さんの症状については、それが病気の症状であることを認識できるので、判断能力そのものの障害ではないことがわかるのです。

(2) 統合失調症の特徴と困りごととの関係

「図-統合失調症の特徴とご家族の困りごととの関係」

 このような統合失調症の特徴は、ご本人とそのご家族の方々の困りごとと密接に結びついていることがわかるでしょう。たとえば暴言や暴力を例にすれば、

幻覚や妄想といったものがひどくなる

実際にご本人の周りにいる他者の言行とそれらが混じったり、その他者が実際には言っていないことを「言った」と思い込んでしまったりする

不安・緊張が高まる

不満が溜まり、突如爆発し暴言や暴力につながる

といったメカニズムが働いていると考えられるわけです。これは、他の困りごとについても同様のことと言えるでしょう。

つまり、幻覚や妄想といったものに始まるこのメカニズムにより、時に意思疎通ができなくなる、部屋への閉じこもりや食事を摂らない、眠らない、自殺を試みようとする、普段はしないような恥ずかしい行動をする、常識はずれの浪費をするなどにつながると考えられるのです。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

京都府精神保健福祉総合センター
心の健康のためのサービスガイド
http://www.pref.kyoto.jp/health/index.html

公益社団法人 日本精神神経学会ホームページ
統合失調症について -精神分裂病と何が変わったのか-
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=77

公益財団法人 東京都医学総合研究所ホームページ
統合失調症プロジェクト
http://www.igakuken.or.jp/schizo-dep/

3. 止血と抜本的な対応という考え方

「図-統合失調症によるご家族の困りごとへの対応の大きく2つの視点」

(1) 困りごとへの対応の大きな2つの視点

 世の中にはさまざまな課題で溢れています。それらの課題への対応の基本は、「止血策」と「抜本策」とに大きく分けて考えていくこととされています。同様の考え方は、統合失調症に見られるご家族の困りごとに対しても当てはめられるでしょう。

 既に見たように、統合失調症は、初めて発症した方のほぼ半数は、「完全に、あるいは、長期的に回復する」とされていることから、抜本策に当たるものは治療でしょう。一方で、当座の困りごとに対応する止血に相当する対応策を検討することも、非常に重要になると考えられます。

(2) ご家族の方が真っ先にできることは何か?

 止血にあたる対応策として考えられるものには、次のようなものがあるのではないでしょうか。

① 理解者を得るということ ~ 医療提供者と家族会との関係づくり

 まず一つ大切なことは、ご本人とご家族の方だけで悩まないということでしょう。

先に取り上げた調査で、信頼できる専門家がいると回答された方は3分の2。つまり、3割以上の方が、信頼できる専門家がいないと回答されています。また、信頼できる専門家がいると回答された方にとって、その専門家とは、「主治医や家族会の会員」が多数を占めています。

ソーシャルワーカーや行政の職員も含め、こうした方々と良好な関係をつくること、つまり、多くの理解者を得ることが、まずは大きな止血策の1つになると考えられるのです。

このことは、統合失調症の症状の悪化により危機的な状況になったとき、特に苦労や不安はなかったという方は1割にも達しない反面、ご本人がいつ問題を起こすかという恐怖心が強くなった方、ご家族の精神状態や体調面で不調が生じた方は6割にも達していることからも重要であることがわかるはず。

つまり、その時の状況や対応について相談したり、具体的な対応策を共有してもらったりすることが非常に重要になるわけです。

② 社会福祉的な側面からできること ~ 障害者手帳、障害者総合支援法のサービス利用など

 社会福祉サービスの積極的な利用も検討したいことの1つです。中でも、障害者手帳の取得や障害者総合支援法に基づくサービス利用などは、経済的な面でも大きな支えになる部分があります。障害者手帳について、統合失調症の場合は、それ単独であれば精神保健福祉手帳の取得が可能で、実際9割の方が取得されています。

その一方で、障害者総合支援法に基づくサービスを受けるために必要となる障害支援区分に基づく認定は、1割程度の方しか受けておらず、中には障害者総合支援法の存在をご存知ない方もいらっしゃるようです。

障害者手帳や障害者総合支援法以外も含め、障害のある方に対する各制度の利用にあたっては、それぞれで手続き・申請が必要で、精神的な面も含め負荷が高い面があるのは事実。しかし、行政の職員など、他者との関係づくりの面を考えても、その手続きをすること自体が有効な側面もあると言えるのです。

また、さまざまな情報を得られるといった面も期待できます。
 

③ 万が一の備えとして

 止血という点では、万が一の備えも重要になるでしょう。統合失調症の場合、先に見た通り、他者に対する暴言・暴力が、症状が悪化した際に見られる場合が多いことがわかっています。つまり、他人に危害を加えてしまい、損害賠償請求されるケースも想定されるのです。

一方で、たとえば「優しいことばをかけられた」などの理由で詐欺被害に遭ってしまう可能性もあるでしょう。このような万が一のときに備え、民間の保険の利用などを検討する必要もあるのではないでしょうか。

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(3) 抜本的な課題への対応

① ご家族の方にできる抜本的な課題への対応

抜本策として考えられる視点の第一は、何よりもご本人の回復です。よって、最も大切なことは治療であることは間違いないでしょう。

一方で、社会の統合失調症に対する差別や偏見をなくしていく取り組みや、ご本人やご家族を支援するしくみ・制度の整備も大切です。もちろんこれらは「社会の側」が整備していく責任があるわけですが、その一方で、「当事者のことは当事者にしか、本当のところはわからない」のも事実です。

その意味で、本当に必要な支援を要請していくこと、その声を上げていくことは、非常に大切なことだと言えるのです。

② 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会がまとめた提言

 統合失調症のある方のご家族への調査をまとめた公益社団法人全国精神保健福祉会連合会は、別の調査結果をもとに、次のような社会への提言をまとめています。ここでその詳細は取り上げませんが、社会の側への要求として、非常に重要な提言になっていると言えるのではないでしょうか。

1) 本人・家族のもとに届けられる訪問型の支援・治療サービスの実現
2) 24時間・365日の相談支援体制の実現
3) 本人の希望にそった個別支援体制の確立
4) 利用者中心の医療の実現
5) 家族に対して適切な情報提供がされること
6) 家族自身の身体的・精神的健康の保障
7) 家族自身の就労機会および経済的基盤の保障

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参考:
厚労省
障害者総合支援法が施行されました
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index.html
みんなのメンタルヘルス
精神障害者保健福祉手帳
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会
平成21年度「家族支援に関する調査研究」報告
https://seishinhoken.jp/researches/b84fc89b9a5d8e30bda81610eeab5af786370aa3

最後に

 統合失調症は、精神障害の中でも非常に多いものです。その症状の特性ゆえ、ご本人のみならず、ご家族の方も大変なご苦労をされていることが、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会が実施した調査結果からもわかっています。

もっとも多くの方が経験されているのは、症状が悪化した際に、意思疎通ができないこと、そして、暴言・暴力ですが、他にも部屋への閉じこもりや食事を摂らない、眠らない、自殺を試みようとする、普段はしないような恥ずかしい行動をする、常識はずれの浪費といった多岐に渡る困りごとを経験されています。

これらの困りごとに対応するには、大きく2つの視点で、つまり、止血策と抜本策に分けて考えることも大切になると考えられます。

抜本策としては、ご本人の治療、また、社会の障害への理解の浸透が上げられますが、「今、その時」の困りごとにも、当然手を打つ必要があると言えます。調査を実施した同法人による「7つの提言」は、非常に重要な提言と考えられ、社会がしくみとして整備していくことが必要と言えるものの、なかなかそれが進まないのも事実。

よって、理解者を多く得るための医療機関との連携や家族会への参加、社会福祉制度の積極的な利用、万が一のトラブルへの備えなどが、ご家族の方が今できること、つまり止血策としては上げられるのではないでしょうか。いずれにしても、社会の側のしくみや制度の整備不足は否定できません。

その意味で、多少なりとも障害について知っている筆者を含む一人ひとりが、社会に対する働きかけをしていくことが重要だと言えるでしょう。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省
障害者総合支援法が施行されました
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index.html
みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/
みんなのメンタルヘルス 精神障害者保健福祉手帳
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

京都府精神保健福祉総合センター
心の健康のためのサービスガイド
http://www.pref.kyoto.jp/health/index.html

公益社団法人 日本精神神経学会
統合失調症について -精神分裂病と何が変わったのか-
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=77

公益財団法人 東京都医学総合研究所
統合失調症プロジェクト
http://www.igakuken.or.jp/schizo-dep/

公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会
平成21年度「家族支援に関する調査研究」報告
https://seishinhoken.jp/researches/b84fc89b9a5d8e30bda81610eeab5af786370aa3

精神障がい者の自立した地域生活の推進と家族が安心して生活できるための効果的な家族支援等の在り方に関する全国調査報告書、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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