障害が判明したら、真っ先にしておきたいこと ~手続き・申請のハードルを低くする

JLSA個人会員

はじめに
障害によって、日常生活や社会生活をおくる上でさまざまな支障が出てくる場合があります。障害のあるご本人や支援されるご家族の方だけでは解決が難しい場合もあるでしょう。そんな時、積極的に利用したいものに各種のしくみや制度があります。ここでは、そんなしくみや制度の利用にあたって、どうしても必要になる手続き・申請の負担を少しでも下げる方法について考えていきます。

1. 支援のしくみや制度はあるけれど・・・~それぞれに手続き・申請が必要だという現実
(1) 支援のしくみや制度はすべて「それぞれ」

障害のある方やそのご家族の方を支援するしくみや制度は多岐に渡っています。たとえば、経済的な面での支援だけをとっても、以下のようなものがあります。

各種の手当や給付金、年金といった直接現金給付されるもの
各種の割引などが受けられる手帳制度
医療費の助成
税金の軽減 など

ただ、これらの支援を実際に受けるには、必ず「手続き・申請」が必要になります。この理由としては、

各種支援の基になる法律などがそれぞれであること
そのため、
支援を実施する主体が、国であったり、お住まいの都道府県など地域であったりすること
国の制度でも管轄する省庁が異なること
しくみや制度ごとに支援対象とする基準が異なること

などがあげられます。
いずれにしても、こうした理由から、「しくみや制度に基づく支援を受けるには、それぞれに手続き・申請が必要」という形になっているのです。

(2) しくみや制度がそれぞれでしっかりしたものである、ということのマイナス面

 これらのしくみや制度は、一つひとつが独立してできている分、個別の事情にも対応できるような、ある意味ではしっかりとしたものです。これは、逆の言い方をすれば、個別すぎる制度ということでもあります。

しくみや制度ごとに、独自の申請書があり、手続き・申請上の書類が異なり、それぞれで申請する窓口も異なる場合があるといった、マイナスのとらえ方ができるということです。

多くの書類やガイドラインなどがあるため、このようなしくみや制度を初めて利用しようとする場合、それを理解するだけでも、非常に多くの労力が必要だということです。このことが、各しくみや制度の手続き・申請が後まわしにしがちになる大きな理由の一つと言えるでしょう。

(3) 自分でやり切るという想いと現実

 各しくみや制度の手続き・申請のハードルを上げるもう1つの理由は、「やれることは自分でやる」という、私たちが教育されてきた道徳や価値観であったり、支援されるご家族の「自分が支えたい」という強い愛情であったりという面もあります。

「何とか、可能な限りは、自分たちでがんばる」という想いは非常に大切なことですが、そんな「想い」と、「手続き・申請の個別度の高さやその種類の多さ」とが結果的に結びついてしまい、各しくみや制度の手続き・申請を後まわしにしてしまいがちになるとも言えます。

参考:
厚労省 ホームページ
経済的な支援
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/docs/supportguide_hq_6.pdf
みんなのメンタルヘルス ホームページ
治療や生活に役立つ情報 経済的な支援
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_05support.html

東京都福祉保健局ホームページ
第6章 高次脳機能障害に関わる社会制度
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/tosho/hakkou/…files/2016-6shou.pdf

2. 真っ先にしたいこと=お住まいの地域の窓口の把握

こんな複雑なしくみや制度の手続き・申請をスムーズに行い、本当に必要となる支援をできる限り早く受けられるようにするにはどうすればいいのでしょう? それは、

お住まいの地域の「市区町村役所の各手続き・申請について相談できる窓口と、その担当の方を知る」

ということです。

(1) 市区町村の役所の窓口を把握する目的

窓口を把握する一番の目的は、各しくみや制度に関する情報を入手することです。
たとえば、ある1つのしくみや制度について手続き・申請をしたときに、「他に利用できそうな制度はないか?」といった質問ができたり、窓口のご担当の方から「こんな制度もあるが、利用しているか?」というアドバイスをもらったりすると言い換えることもできます。

それぞれのしくみや制度の申請窓口は、実は異なる場合が多くなります。前述したとおり、それぞれの法律などに基づき運用されているからです。ただ、それらのしくみや制度を大まかには把握しているところがあります。

それが、お住まいの地域の市区町村の役所の窓口なのです。主に社会福祉課などの名前がついているところが多いようですが、その名称もそれぞれの地域で異なるというのも厄介な点です。

(2) 市区町村の役所の窓口を把握するためのステップ

いずれにしても、窓口を把握し、また、ご自身の障害の状況などをその窓口のご担当の方に理解してもらうことが、各しくみや制度を有効活用するための最初のステップと言っても言い過ぎではないでしょう。

というのも、ご自身の障害の程度や年齢、生活環境や支援の中心となる保護者の方を含めた所得の状況などで、利用できるしくみや制度が異なるため、窓口のご担当も障害があるからといって、一律に、すべての制度をご紹介することはできないのです。

実際の市区町村の役所の窓口を把握は、以下のようなステップで進めるとスムーズではないかと考えられます。

① 市区町村の役所に電話し、どこが担当窓口なのか、を聞く

 まずは、お住まいの地域の役所に電話しましょう。役所の代表電話でも構いません。
「こんな障害がある。受けられる支援に何があるかわからない。相談できる窓口を知りたい。くわしい説明を受けたいので、窓口に行く約束をしたい。」
というような内容で連絡すれば、担当窓口を案内いただけます。

電話がどうしても苦手という方もいらっしゃるとは思いますが、ここは勇気を振り絞って連絡してください。窓口が把握できれば、後々スムーズに話が進みやすくなります。

② できれば実際に窓口のご担当と会う

 市区町村の役所の窓口を把握したら、できれば実際に出向くことをおすすめします。ご友人など、どなたかに同行いただいてもまったく問題ありません。窓口に実際に行く目的は3つあります。

1つは、ご自身の障害の状況などを、窓口のご担当に知っていただくことです。このことで、何度も同じ説明をする手間を省くことができるなど、手続き・申請の負担を軽減することができます。

2つめは、窓口のご担当の方を知ることです。説明は受けたけれど、細かい点などで疑問が出てくる場合もあるでしょう。そんなときに、一度会ったご担当なら、状況をある程度把握している分、話もスムーズに進みやすくなります。

3つめは、それぞれのしくみや制度が複雑だからです。電話で説明を受けることも可能でしょうし、書類を送ってもらって、それを確認することもできるかもしれません。

しかし、それが多数あり、それぞれでありということになると、どうしても混乱しやすくなり、誤解してしまう可能性もあります。その点、実際にお会いしておけば、各しくみや制度でどこがポイントになるのかなどを説明いただくことで理解がしやすくなると言えるでしょう。

3. 相談にあたって準備すること

 各種の手続き・申請などの相談にあたって、準備しておいた方が良いと考えられることがあります。

(1) 相談の基本

「図-相談の基本」

一つは相談の基本をおさえるということです。相談をする際の基本は、「なるべく具体的にする」ということ。たとえば、「この手続きについて、どうしたらいいかわからない」という相談より、「この手続きをするために申請に必要な書類を集めているが、所得を証明するものをどこで入手すればよいかわからない」という相談の方が、必要な情報を得られやすくなると言えます。

相談事を整理する視点としては、次の5つの視点や5W1Hと呼ばれる視点などが考えられます。

① 誰が

例)障害のある方の保護者の方が

② 何をしようとしているのか

例)●●の申請をしようとしている

③ どういう状態か

例)申請に必要な書類を集めようとしている状態

④ わかっていること

例)必要な書類が何かはわかっている

⑤ 何がわからないか

例)所得を証明するものをどこで入手すればいいのかわからない

(2) 相談にあたって整理しておいた方がよいこと

 今、必要になっているのは、障害があることに対する支援について、その手続き・申請をできるだけ負担をかけずに得られるようにしたいということです。そのためには、以下のような視点での整理が欠かせないと言えるでしょう。

① 既に手続き・申請した制度などの情報

これまで見てきたように、障害のある方を支援するしくみや制度は多くあります。このため、どのしくみや制度を利用しているかなど、説明できる状態にしておくとよいでしょう。もちろん、どのしくみや制度も利用していないというのも重要な情報です。

② 準備しておくと手続き・申請を進めやすいもの

 手続き・申請に必要な情報は、しくみや制度ごとに過不足はあるものの、大きく次のようなものがあげられます。

1) 障害の状況(誰が、どんな障害があるか、生活で困ること・サポートが必要なことは何か、診断を受けているか、診断を受けてからどの程度の期間が経っているか、など)
2) 家族構成
3) 職業(自営か、お勤めか、など)
4) 所得の状況
5) 加入している公的年金制度(国民年金・厚生年金)

上記の点で大まかな状況が事前にわかれば、利用できるしくみや制度にどんなものがあるか、窓口のご担当も判別しやすくなるということもできます。

4. 手続き・申請の基本

各しくみや制度を利用するための手続き・申請は、大枠をまとめると次のようになります。くりかえしになりますが、しくみや制度ごとに、それぞれ必要になるものや要件などが異なりますので、あくまで全体像としておさえておきたいポイントということになります。

(1) 手続き・申請する窓口

お住まいの地域の市区町村の担当窓口が中心となります。主な窓口として、社会福祉課、年金課といったものがありますが、お住まいの地域により名称が異なります。

その他、年金事務所やお勤めの共済組合などが窓口となっているしくみや制度もあります。

(2) 手続き・申請に必要なもの

「図-各しくみや制度の手続き・申請に必要となる主なもの」

手続き・申請に必要なものも、各しくみや制度で異なりますが、大きくは以下の視点のものが必要となります。

① 申請書自体
② 所得を証明するもの
③ 障害のある方との続柄、家族関係がわかるもの
④ 障害があることを証明するもの(医師による診断書など)
⑤ 本人であることを確認できるもの
⑥ 振り込み先情報(手当、年金など現金給付される場合)
⑦ 印鑑(認印として使用できる、朱肉で押印するもの)
⑧ マイナンバーカード(または、マイナンバーがわかるもの)

申請書や医師による診断書などは、各しくみや制度で決まっている様式があります。これらは、各申請窓口で入手することが必要になります。

(3) 毎年更新が基本

各しくみや制度は、一時金の支給以外、基本的には更新制です。毎年更新するのが基本と考えておくと、更新忘れなどの防止にもつながるでしょう。

(4) 申請手続きでの不明点は、窓口で質問する

手続き・申請の基本としてまとめましたが、これだけでも相当幅の広い情報がそれぞれで必要であることがわかります。不明点が出てくるようであれば、市区町村の役所の窓口に相談、必要な窓口を確認して、改めて相談というぐらいの気持ちの方が対応しやすいとも言えそうです。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス総合サイト
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html
自立支援医療制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/gaiyo.html
東京都保健局 ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/tetuzuki/techo.files/tetyou_hanteikijyun.pdf
心身障害者医療費助成制度(マル障)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/josei/marusyo.html

公益財団法人東京都福祉保健財団ホームページ
障害のある方への手当一覧
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/20k_fukusu_service/teate/syougaiteate_hyo.html
障害者(児)のための手当
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/0302chiteki/service/05teate/05_01s_teate.html

国税庁ホームページ
医療費を支払ったとき(医療費控除)
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1120.htm

日本年金機構ホームページ
障害年金
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html

5. 記録として残しておくこと ~スケジュール帳などの使い方

どのしくみや制度の手続き・申請をしたのか、それはいつしたか、そのときに必要になった書類や記載したことは何かといった情報は、何らかの形で残しておいた方がよいでしょう。特に、毎年更新が必要なしくみや制度の場合、どの時期に更新手続き・申請が必要となるのかなど、把握しやすくなるというメリットがあります。スケジュール帳などを用意しておくのも一つの方法です。

また、障害の状況や、障害があることでの困り事などを一緒にメモしておくのもおすすめです。こちらも、手続き・申請の際、必要な情報となる場合があるからです。

最後に

障害のある方を支援するしくみや制度は多くあります。ただ、それぞれが独立した制度であるため、それぞれに手続き・申請が必要です。そのため、支援を受けられる範囲の全体をとらえるのが難しかったり、それぞれの手続き・申請に必要なことが異なったりするなど、混乱しがちで、その分負担も大きいという現実があります。

そんな負担をなるべく減らす上でも、お住まいの地域の市区町村の役所の窓口のご担当に相談できる環境をつくることが大切になると言えるでしょう。直接の担当窓口でない場合でも、担当窓口を教えてもらえたり、必要な情報を教えてもらえたりといった支援を受けられるようにするということです。

その際、ご自身の障害の状況や必要となる情報をそろえておけば、よりスムーズに手続き・申請を進めることができるでしょう。日頃からスケジュール帳などに記録を残しておくといったことも、そのための方法の一つと言えます。
なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。


参考:
厚労省 ホームページ
経済的な支援
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/docs/supportguide_hq_6.pdf
自立支援医療制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/gaiyo.html
厚労省 みんなのメンタルヘルス総合サイト 
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html
治療や生活に役立つ情報 経済的な支援
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_05support.html

東京都保健局 ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/tetuzuki/techo.files/tetyou_hanteikijyun.pdf
心身障害者医療費助成制度(マル障)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/josei/marusyo.html
第6章 高次脳機能障害に関わる社会制度
www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/tosho/hakkou/…files/2016-6shou.pdf

公益財団法人東京都福祉保健財団ホームページ
障害のある方への手当一覧
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/20k_fukusu_service/teate/syougaiteate_hyo.html
障害者(児)のための手当
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/0302chiteki/service/05teate/05_01s_teate.html

国税庁ホームページ
医療費を支払ったとき(医療費控除)
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1120.htm

日本年金機構ホームページ
障害年金
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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