特別支援教育の現場に息づく「温かみ」 ~筆者の特別支援教育との「出会い」、特別支援教育を通じた人々との「出会い」、そして学んだこと

発達障害

はじめに
筆者は大学にて特別支援教育を専攻しました。「特別支援教育」は、「障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うもの」とされています。(出典:文科省ホームページ特別支援教育についてhttp://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm)ただ、この文字だけを読むと、ある種の冷たさを感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは、特別支援教育を筆者が学ぶきっかけとなった「出会い」、特別支援教育での学びを通じた「出会い」、そして、筆者がそれらの「出会い」から学んだことなどに触れながら、特別支援教育に流れる「温かみ」ついて、筆者が感じたことなどを中心にまとめています。

1. 小学校での「出会い」~特別支援教育を学ぶきっかけとなった「出会い」

筆者が小学生だったころ、Aくんという同級生がいました。Aくんはとても明るく、一緒にいるだけでこちらまで元気が出るような、そんな力を持った友だちでした。個性溢れる人で、クラス全員の名字と名前を覚えていて、いつもみんなに明るく声をかけてくれていました。

けれども、彼だけ違うクラスで授業を受けていました。その時に疑問に思ったこと、それは、「なんでAくんだけが違うクラスで授業を受けているのだろう?同級生なのに。」「あのクラスの先生は、何の先生なのだろう?」当時はその理由が分かりませんでした。

それから数年の時間が経ち、筆者は大学受験準備の真只中にいました。漠然と、「先生になりたい」という夢を持っていた筆者は、岡山大学の教育学部を受験することに決めました。しかし、「自分は何の先生になりたいのだろう?」そのような悩みを持っていました。

その時思い出したのが、小学校の休憩時間の度に、Aくんのクラスへ遊びに行き、楽しい時間を過ごしていたこと、そのクラスの先生がいつも笑顔で、温かく、筆者を迎え入れてくれていたことだったのです。

そして筆者は岡山大学教育学部学校教育教員養成課程特別支援教育コースを専攻することを選択しました。そこには、私の長年の疑問に対する答えのヒント、そしてたくさんの素敵な「出会い」がありました。

2. 岡山大学での「出会い」~学びの中での多くの人々との「出会い」

「図-特別支援教育の底流にあるもの ~ 岡山大学での学びを例に」

(1) ボランティアでの「出会い」

岡山大学特別支援教育学部特別支援教育コースでは、先生方や先輩方からのつながりで、多くのボランティアの機会を得ることが出来ました。代々受け継がれているボランティアも多くあるので、たくさんの学生が何かしらのボランティアに参加しています。

筆者が参加したボランティアには、次のようなものがあります。

岡山県障害者スポーツ大会
研究協議会:岡山大学教育学部附属特別支援学校
運動会:岡山大学教育学部附属特別支援学校
スポーツフェスティバルinひらた旭川荘

これらのボランティアの場で出会ったのは、一生懸命、力を振り絞って自分の限界に挑戦する児童・生徒のみなさん、声を枯らしながら、涙を目に溜めながら、子どもたちを応援する先生方、子どもたちを支え続け、その成長を温かく見守る保護者の方々です。あんなに素敵な空間に一緒に居られたことに、感動を覚えずにはいられませんでした。

「来てくれて、ありがとうね。」
児童・生徒のみなさん、先生方、保護者の方々は、いつも私たちボランティア学生に、こう声を掛けてくださいました。

「こちらこそ、ありがとうございます。」
筆者はいつも心の底からそんな感謝の想いを伝えずにはいられませんでした。

(2) 教育実習での「出会い」

① 特別支援教育コースでの実習内容

岡山大学では、大学1年生から実際に教育現場に赴き、教育の実際を学んでいきます。特別支援教育コースの学生は、原則として特別支援教育以外の教員免許の取得も必要です。つまり、2つの教員免許を取得するために、以下に示す実習のすべてが必要になります。

(引用元:岡山大学教育学部)

② 実習を通じた「出会い」~「温かみ」との「出会い」

実習を通して、一番感じたのは「温かみ」です。この温かさは、もちろん温度のことではありません。言葉では、うまく表現することが出来ないのですが、人の温もりと言いましょうか。そういったものを本当に身近に感じながら、実習やインターンシップに参加させて頂き、多くを学ぶことができました。

また、ここでの「温かみ」との「出会い」を通して、先生方と保護者の方々の、子どもたちへの「大きな愛」を感じることができました。その温かく、大きな愛で以って、学校全体で子どもたちを温かく包み込んでいるかのようだったのです。

筆者は大学1年次の実習の頃から、特別支援学校高等部の生徒・先生方と接する機会が多かったのですが、そこは、まるで学年団が1つの家族の様でした。先生方は、自分のクラスの生徒だけでなく、高等部の生徒一人ひとりに声をかけ、様子を見て、何か少しでも気になることがあれば、すぐに他の先生方に情報を共有されていました。勿論、筆者ら実習生にも同じように伝えてくださり、言葉だけではなく、実際に行動で示しながら丁寧に教えてくださいました。

先生方は、「聞きたいことがあれば、その場で何でも聞いてね」と筆者ら実習生に声をかけてくださり、お忙しいにもかかわらず、筆者ら実習生のことも常に気にかけてくださいました。

③ 実習を通じた先生方の教えとの「出会い」、筆者の課題との「出会い」

また、恥ずかしながら、それまでの筆者は、障害のある児童・生徒に対して、「何かしなきゃ」とばかり思っていたのですが、

「信じて見守ることも1つの支援」

ということを指導教員の先生から教えて頂いたとき、とても衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えています。障害のある児童・生徒もやがて卒業していきます。つまり、特別支援学校の中学部や高等部に在籍しているうちに、社会での自立のため、自分一人でできる力を身につける必要があるのです。もちろん、生徒一人ひとり、障害の状況も障害に伴う困難も異なるため、それぞれに合わせた目標はあります。

その目標はきちんと把握した上で、それでも自分一人でできることを信じて待つことを大切に、生徒と接するようにすることがとても大切であることを学びました。また、同時に、教育実習を通じた「温かみ」との「出会い」が、私に課題を与えてくれました。それは

「ことばを児童・生徒の心におく」

ということです。
「誰のために一つひとつのことばを発するのか」
「何のために、ことばをとどけるのか」
「どうすれば、生徒たちの心にとどくのか」
実習中、とても考えさせられたことでした。

中学3年生の英語の授業では英語という言語を伝え教える難しさを、特別支援学校高等部の授業ではことばを伝え授業を進行していく難しさを、生徒が筆者の伝えようとしていることを理解することが出来るように、ことばを心におくためにはどうすればいいのか。

筆者が出会った先生方は、常にこどもたちのことを一番に想い、一つひとつの行動、ことばを発する意味についても考えながら行動されていました。「温かみ」との「出会い」は、筆者に素敵な学びと、課題との「出会い」を与えてくれました。

(3) 研究補助での「出会い」

大学時代の指導教員であった先生からのご紹介で、大学院生の研究補助をさせて頂ける機会に恵まれました。内容は、週に一回、特別支援学校小学部へ赴き、研究に必要なデータを収集させて頂くことでした。先にも述べさせていただいたように、筆者は実習中、高等部の生徒や先生方と関わることが多かったので、この研究補助の活動は、とても新鮮でした。

小学部の児童たちも、本当に愛らしく、また、先生方や保護者方の温かな愛を身近で感じることが出来た「出会い」でした。

参考:
岡山県ホームページ
http://www.pref.okayama.jp/page/538178.html

ひらた旭川荘ホームページ
http://www.asahigawasou.or.jp/

岡山大学教育学部附属特別支援学校ホームページ
http://futoku.okayama-u.ac.jp/
岡山大学大学院教育学研究科
岡山大学教育学部ホームページ
https://edu.okayama-u.ac.jp/features/teaching_practice/

3. 海を越えた「出会い」

岡山大学教育学部特別支援教育講座では、二つの海外研修プログラムを実施しています。

(1) カンザス研修

アメリカ合衆国カンザス州又はミズーリ州の学校訪問、カンザス大学の教員との交流を通して、海外の特別支援教育について学ぶことができます。

(2) ハワイ研修

アメリカ合衆国ハワイ州の学校訪問、現地の教育関係者との交流を通して、海外の特別支援教育について学ぶことができます。
(引用元:岡山大学教育学部特別支援教育講座)

筆者はこのうちの一つである、カンザス研修に参加させて頂きました。なぜ、この研修に参加しようと思ったのか? 理由は二つあります。

一つ目は、海を越えた場所で、どのような特別支援教育が行われているのか、自分の目でみたいと思ったからです。二つ目は、英語教育も専攻していたため、英語圏へ行き、本場の英語を肌で感じてみたいと思ったからです。

この研修で見た姿があります。それは、海を越えたところでも、日本と同じように、障害を持つ人々のことを想い、大きな愛で以って活動されている方々の姿です。ここでは、この研修の詳細については触れませんが、ここでの「出会い」も、筆者に大きな影響を与えてくれました。

参考:
岡山大学教育学部特別支援教育講座
https://edu.okayama-u.ac.jp/~tokushi/

4. 学習支援を通じた「出会い」

「図-信頼関係づくりとは?」

筆者が大学1年生の頃、発達障害と診断を受けているBくんと、心のサポートを必要としていたCさんの学習を支援することになりました。このときは、彼らとの「出会い」が、筆者の大学生活の学びの中心になるとは、思いもしませんでした。

4年前、なかなか勉強に集中できず、困っていたBくんと、なかなか他人を信じることが難しかったCさん。とても個人的な意見なのですが、子どもたちと接するときに、「この子はこの障害だから」といったように障害を中心に接するのではなく、BくんやCさんというその人個人を中心に関係を築き上げていくことが、「その子をみて、知る」ということにつながるのではないかと思います。

大学卒業までの4年間、BくんとCさん、彼らの家族とおつき合いさせて頂けた経験は、かけがえのないものでした。大学での講義だけでは得ることのできなかった貴重な学びという「出会い」が、そこにはありました。

「まず、自分を開くこと。そして相手を受け止めること。」

相手のことを解ろうとするならば、まず自分自身をさらけ出さなければ、相手は心の扉を開いてはくれません。
「あ、この人なら信じられる。話してもいいかな。」という信頼の関係づくりの大切さを、彼らと接する中で感じることができました。

参考:
文科省ホームページ
発達障害者支援法
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/001.htm
発達障害とは
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm

最後に

いかがでしたでしょうか?ここでは、筆者が特別支援教育を学ぶきっかけとなった「出会い」や、特別支援教育を学ぶ中での数多くの人々との「出会い」、そして、筆者がそのような多くの「出会い」から学んだことなど、「出会い」をテーマに紹介させて頂きました。

筆者は特別支援教育が作ってくれた、大切な「人とのつながり」に心から感謝しています。この記事を読んでくださった方の中に、「特別支援教育って、まだ何だか分からないけど、なんか心がポカポカする」と感じてもらえた方がいらっしゃったなら、そして、少しでも特別支援教育の「温かみ」、子どもたちへの大きな愛を感じ取ってもらえれば、大変うれしく思います。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
文科省ホームページ
特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm
発達障害者支援法
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/001.htm
発達障害とは
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm

岡山県ホームページ
www.pref.okayama.jp/page/538178.html

ひらた旭川荘ホームページ
http://www.asahigawasou.or.jp/

岡山大学教育学部附属特別支援学校ホームページ
http://futoku.okayama-u.ac.jp/

岡山大学大学院教育学研究科
岡山大学教育学部ホームページ
https://edu.okayama-u.ac.jp/features/teaching_practice/

岡山大学教育学部特別支援教育講座
https://edu.okayama-u.ac.jp/~tokushi/

向井美沙希

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岡山大学教育学部卒,特別支援教育専攻

プロフィール

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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