コミュニケーションハンドブックの効果的な使い方

発達障害

はじめに
 知的障害・発達障害・精神障害のある方を支援するにあたっては、その方を理解するためのコミュニケーションが欠かせないと言えます。では、そのコミュニケーションの基本は何か?と問われたとき、明確に答えることができるでしょうか? 

 ここでは、知的障害・発達障害・精神障害のある方への「応対」をする際の参考書として国交省がまとめた「コミュニケーションハンドブック」とそのポイントとなっている点をご紹介しつつ、その効果的な使い方などを考えていきます。

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1. コミュニケーションハンドブックとは?
(1) コミュニケーションハンドブックとは?

「図-知的障害・発達障害・精神障害のある方とのコミュニケーションの基本」

① コミュニケーションハンドブックとは?

コミュニケーションハンドブックは、

1) 公共交通機関、公共施設、商業施 設などの建築物、公園や駐車場などで、その利用者に接する職員などの方々が、
2) 外見からは障害があることがわかりにくい知的障害・発達障害・精神障害のある利用者の方々の「困りごと」を理解し
3) 状況に応じて、適切な応対をするためのポイント

を記載した参考書として、国交省が発行しているものです。

国交省ホームページ ~ コミュニケーションハンドブック
http://www.mlit.go.jp/common/001130223.pdf

② コミュニケーションハンドブック制作の背景にあるもの

コミュニケーションハンドブックが制作された背景には、平成18年12月に施行されたバリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)があります。この法律では、高齢者と身体障害者に加え、新たに、知的障害・発達障害・精神障害のある方も含む、すべての障害のある方が、「移動等の円滑化促進の対象となること」が明確化されました。

これを受け、国土交通省では、知的障害・発達障害・精神障害のある方が安心して移動や施設利用ができる方策を当事者団体、学識者、関係事業者等からなる委員会で検討し、公共交通機関、商業施設、公共施設等の職員の方向けに作成したのが、このハンドブックなのです。

③ 障害のある方とのコミュニケーションの基本がまとめられている

このハンドブックは、「参考書」とされていることからもわかるとおり、知的障害・発達障害・精神障害のある方の、一般的な傾向や、施設などを利用する際の「困りごと」をシーン別などで想定できるよう、まとめられています。その制作にあたっては、各障害等の支援団体なども関与されていることも含め、基本的なポイントがまとまっているものとなっていると言えるでしょう。

④ このハンドブックで「コミュニケーションの基本とされていること」~ゆっくり・ていねいに・くりかえし

 このハンドブックでは、知的障害・発達障害・精神障害のある方との「コミュニケーション=応対」の基本を、「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」としています。また、このような応対は、小さなお子さんや高齢の方々、外国人など、すべての方々に対して活用可能ととらえられています。

(2) コミュニケーションハンドブックで取り上げられているシーン別の応対

 コミュニケーションハンドブックでは、以下のようなシーン別に、応対のポイントが提示されています。これらのポイントは、自分が言葉の通じない外国へ行ったときに、どういう行動をするかであったり、どのように支援されたらありがたいかだったりということを想像してみると、わかりやすいかもしれません。

① このような方を見かけたら・・・

次のような方を見かけたら、障害による困りごとが発生している可能性があるとされています。

1) その場を行ったり来たりしている
2) その場で動けない
3) 何か言いたそうなのに声をかけない
4) 独り言を言っている
 
このような場合、1)2)であれば、「案内やサインが見つけられない」「目的の場所に行ったり見つけたりすることができない」「初めての場所でわからない」「情報量が多すぎて混乱している」「文字が読めずにわからない」といった可能性が、3)4)であれば、「声をかけられない」「困りごとをうまく伝えられない」「初対面の人に緊張している」「緊張のため混乱してしまう」といった可能性が、それぞれ想定されるということです。
 
② 基本的なコミュニケーション

「図-「話しかける・話を聞く・説明する」ときのコミュニケーションの基本」

 支援を必要とされている可能性方がいらした場合の基本的な応対の方法は以下、とされています。

1) 話しかけるとき
・やさしい表情で、ゆっくり、やさしい口調で声をかけること
・びっくりしてパニック状態にならないよう、正面から声をかけること
・「何かお手伝いすることはありますか?」といったように声をかけること。場合によってはその場の状況に合わせて困りごとを想定し、「切符を買うのですか?」といったように、具体的に質問すること
・また、声をかけた後は、様子を見ること

2) 話を聞くとき
・安心して話ができるよう、リラックスした雰囲気を作ること
・話すのに時間がかかっている場合であっても、ゆっくり待って応対すること
・断片的な言葉から、相手の状況、気持ちなどを推測し、話の内容を理解するように努めた上で、その後、やさしく話の内容を確認すること
・必要に応じて、「はい」「いいえ」で答えられる質問をし、困りごとを把握すること
・必要に応じて、絵記号で表現されたコミュニケーションボードを利用し、困っていること、探しているものなどを指し示してもらうこと

3) 説明をするとき
・たくさんのことを一度に言われるとわからなくなってしまう人もいるので、ポイントを絞って、ゆっくり、はっきり、短く、具体的に話すこと
・「もうちょっと」「あそこ」といった抽象的な表現ではなく、「あと5分」「黄色の柱」のように具体的な言葉で説明すること
・復唱してもらうなどして、説明した内容を理解しているか確認すること
・伝わっていないのに相づちを打ってしまっている場合もあるため、伝わっていないと感じたら、ポイントをくりかえして伝える、視覚的にわかる方法で伝えるなど、伝え方を工夫すること
・場合によっては、絵記号で表現されたコミュニケーションボードを利用したり、メモをして渡したりするなどの工夫をすること

③ シーン別の対応

 このハンドブックでは、さらに、以下のようなシーン別のコミュニケーションについても解説されています。

1) パニック
次のような様子が見られるとき、パニックに陥っている可能性があります。

・大声を出したり、奇声をあげたりする
・飛び跳ねたり、泣き叫んだりする
・耳をふさいで固まってしまう
・柱や壁などに頭をゴンゴンとぶつけ出す
・怒り出したり、暴れたり、周囲の方に乱暴をしたりする
・動悸、胸の痛み、めまい、吐き気、息苦しさを訴える

このような場合、ケガをすることなどがないよう、安全な場所に誘導することがまずは第一です。その際は「大丈夫ですよ」「危ないので一緒に●●に行きます」といった声がけが大切になります。その上で、落ち着くまで見守り、場合によっては保護者の方に連絡を取ったり、地域の精神保健福祉センター・障害者支援センター・特別支援学校などへ連絡したり、救急車を要請することが必要になる場合もあります。

2) 災害が発生したときなど、普段と異なる状況が発生したとき
 災害発生時は、誘導指示がわからない場合があります。周囲の状況を伝えたり、避難誘導の内容を伝えたりすることが必要ですが、その内容が理解できていないような場合には、付き添って安全な場所へ誘導することが必要になる場合もあります。

 同様に、列車やバスなどの運転中止や遅延などが発生した場合、その内容を聞き取れなかったり、理解できなかったりする場合もあります。状況を伝え、目的地を聞き、その行き方などを説明することが必要です。

3) 目的地への移動
 声をかけ、必要に応じ目的の場所まで同行したり、その行き方を説明したりします。必要に応じて、言葉だけではなく、メモをしたり、図示したりすることが必要です。

4) 注文や会計
注文がうまくできずに時間がかかったり、 商品がうまく探せないために行ったり来たりをくり返す場合があります。ゆっくりと時間を取って、あせらずに決められるように配慮すると同時に、場合によっては、図や写真、実物、商品のある場所を示す地図などを使って説明します。

 会計に時間がかかる場合も、せかさず、必要な代金やおつりをわかりやすく伝えます。場合によっては、「100円玉が●枚、10円玉が●枚になりますよ」といったようなコミュニケーションの方法も考えられます。

5) 機械の操作
 券売機などで、ボタンが多かったり、普段使っているものと異なったり場合などすると、戸惑われる場合があります。「切符を買うのですか?」といったように、なるべく具体的な質問をするほか、紙幣や硬貨の投入などに困られているような場合は「代わりに買いましょうか?」とたずねるなどした上で、それをしてほしいと意思を確認できたら代わりに投入するなどの支援をします。

6) 書類の記入、手続きなど
 書類の記入は、その実物だけでは難しい場合もあります。記入例などを用意すると理解しやすくなります。また、必要事項を正しい場所に書くことが難しい場合もありますので、その場合は、記入箇所を一つひとつ順に示すなど、記入の支援をします。

 時間がかかるようであれば、ゆっくり書くことができるように落ち着ける場所に案内し、そこで記入してもらうなどの工夫も必要です。

 手続きにかかる時間で不安になる場合もあります。かかる時間の目途などを具体的に伝えておくと、不安が和らぎます。場合によっては、落ち着ける場所に案内することも必要です。

④ トラブル時の対応

 ルールが理解できずに、トラブルを起こしてしまう場合があります。たとえば、レジの支払いの際に並ばなかったり、整理券をもらって待つというようなしくみがわからなかったり、支払いが必要であることがわからず商品を持ち去ってしまったり、商品を傷つけてしまったり、といったようなことが考えられます。他にも、場にふさわしくない行動、たとえば、大声を上げたり、走り回ったり、といった行動をしてしまう場合があります。

 このようなときには、「●●しましょう」という肯定的な言葉で注意するほか、「これはあなたのものではありません」「ここはあなたの家ではありません」といった言葉で注意することも必要です。

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参考:
国交省ホームページ
バリアフリー新法の解説
http://www.mlit.go.jp/barrierfree/transport-bf/explanation/kaisetu/kaisetu_.pdf
知的障害、発達障害、精神障害のある方に対応したバリアフリー化施策
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000005.html
コミュニケーションハンドブック
http://www.mlit.go.jp/common/001130223.pdf

2. コミュニケーションハンドブックから学べることと注意が必要なこと
(1) 障害の概要を理解すること ~ 自分理解と、支援の対象となる方の理解

 ここまでで、コミュニケーションハンドブックに示されていることの概要を見てきました。トラブル時の対応を除けば、このハンドブックで取り上げられていることは、障害のある方の特性や、起こりやすい困りごととその応対の方法などが、端的にまとめられています。

ただ、一点気をつけたいのは、あくまで「そういう場合がある」ということを示しているハンドブックであるという点です。同じ障害であっても、その程度や状況は人それぞれ。つまり、障害のある方がすべて同じように困っているわけではない、ということです。

また、困りごとに対して、ご自身で工夫されたり、努力して自分でできるようになったりしている方々もたくさんいらっしゃること、また、少しずつできるようになろうと努力されている方もいらっしゃることは、忘れてはならないでしょう。その意味で、ご本人の意思を尊重し、必要とされる支援に限って行うことは非常に重要だと言えるわけです。

(2) 困りごとを理解する

 また、このハンドブックでは、表面的に見られる行動や問題ではなく、その背景にある困りごとが「こんな事で困っています」という形で取り上げられている点が、非常に優れていると言えるのではないでしょうか。

表面的に見られる状況から、何に困っているのかを推測することは、障害の特性を理解しない限り難しい面があります。その意味で、「こんな事で困っています」という形で「障害のある方が、ナゼそのような行動をしてしまうのか」という「原因」がわかることは、障害の一般的な特性を理解するのに大いに役立てられると考えられるからです。

参考:
国交省ホームページ
知的障害、発達障害、精神障害のある方に対応したバリアフリー化施策
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000005.html
コミュニケーションハンドブック
http://www.mlit.go.jp/common/001130223.pdf

3. 障害のある方やその支援者の、コミュニケーションハンドブックの使い方例

「図-障害のある方やその支援者の、コミュニケーションハンドブックの使い方例」

(1) 事前の危機回避への利用

 では、このハンドブックは、障害のある方ご自身や、障害のある方を支援される方にとっては、どのような意味があるのでしょう? もちろん、ご自身を他者に理解してもらう一助にできるという面はあります。他にも、「障害のあるご自身が日常生活で困る可能性がある場面はどこかを知る」という利用方法があるのではないでしょうか。

 もちろん、そういう場面を避けるという使い方もあるかもしれません。しかしより積極的には「そのような場面で的確な行動ができる準備をしておく」という使い方があるでしょう。

(2) 実際にやってみる、実際にやってみることを支援する

 事前の準備ができたら、「準備したものを使って訓練する」ということも、障害のある方ご本人の世界を広げるために必要なことでしょう。事前に準備ができていれば、その分安心して、さまざまなことに挑戦することができるのではないでしょうか。そして「実際にやってみる」ことが、障害のある方ご自身の世界を広げていくことにもつながります。

(3) やってみた後に考える対策

 とはいえ、それによって周囲に迷惑をかけることになったり、まして障害のあるご自身の身に危険が及ぶ状況になったりすることは、当然ながら避けなければなりません。よって実際に挑戦するにあたっては、事前準備だけでなく、実際に挑戦するときの支援も必要と考えられます。

挑戦はしてもらいつつも後ろから見守るというような対応は、一つの挑戦の支援の方法でしょうし、場合によっては各所に事前に連絡を入れておくという方法もあるでしょう。

それでも想定外のことが起きる可能性があるのも事実です。挑戦してみては修正し、をくり返し、準備を整えつつ、できることを増やしていく、というような段階の踏み方を検討してみるのがよいのではないでしょうか。

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最後に

 国交省が制作したコミュニケーションハンドブックは、公共交通機関、各種施設などで、その利用者に接する職員などの方々が、知的障害・発達障害・精神障害のある利用者の方々の「困りごと」を理解し、状況に応じて適切な応対をするためのポイントを記載した参考書です。

このハンドブックでは、困りごとへの応対方法だけでなく、その困りごとの背景となっている原因も取り上げられており、障害の特性をつかむのに非常にわかりやすいと言えるでしょう。実際に障害のある方にとっては、どのような場面で困りごとが発生する可能性があるかを知るという利用方法があります。挑戦をする際の事前準備を考える視点として、利用していくこともできるのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
国交省ホームページ
バリアフリー新法の解説
http://www.mlit.go.jp/barrierfree/transport-bf/explanation/kaisetu/kaisetu_.pdf
知的障害、発達障害、精神障害のある方に対応したバリアフリー化施策
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000005.html
コミュニケーションハンドブック
http://www.mlit.go.jp/common/001130223.pdf

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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