若年性認知症と障害年金

高齢者・認知症

はじめに
 若年性認知症とは65歳未満で発症する認知症のこと。若年性認知症を患う方は、3.8万人ほどいらっしゃると推計されており、今後も増加が見込まれるなど、大きな社会問題として認識されつつあります。そして、実際に若くして認知症を発症された場合の大きな心配事の一つは「経済的な面」と言えるのではないでしょうか。

 ここでは、若年性認知症を患う方を支える社会保障制度としての障害年金について、そもそも障害年金とは何か、そのしくみはどのようになっているのか、障害年金を受給するにはどうすればよいのかといったことについてまとめています。

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1. 認知症で年金受給できる可能性
(1) 認知症を発症した場合の生活の問題

認知症を発症した場合、その中核症状として「記憶障害:自分が体験した過去の出来事に関する記憶が抜け落ちてしまう」「理解・判断力障害:日常生活の些細なことでも判断することができなくなる」「実行機能障害:ある目標に向かって、計画を立てて順序よく物事をおこなうことができなくなる」「見当識障害:時間・場所・人物や周囲の状況を正しく認識できなくなる」の4つの症状が見られるほか、妄想、幻覚、せん妄、徘徊、抑うつ、人格変化、暴力行為、不潔行為、排泄物をもてあそぶといった行動・心理症状が見られる場合があるとされています。

このような症状が実際にどういうものなのかについては、なかなかイメージしにくい部分もあるかもしれません。しかし、家庭内での生活、社会での生活のいずれにおいても、さまざまな支障、つまり障害になることが発生することは否定しがたい事実です。

これは、年を若くして認知症を発症した場合でも同様です。つまり、それまで仮に社会で活躍し、収入を得られていたとしても、同じように活躍することは難しくなると考えられるわけです。では、認知症を発症し、上記のような症状が見られる中で、経済的な面での生活の基盤はどのように築いていくことになるのでしょう?

(2) 障害年金とは?

① 憲法が保障する生活と、そのための制度としての社会保障

日本では、憲法に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定されています。これを受けて、傷病や失業、労働災害、退職などで生活が不安定になった時に利用できる、健康保険や年金、社会福祉制度といった、法律に基づく公的なしくみが整備されています。

先に見たような症状があらわれる認知症を発症した状態とは、まさに、疾病により生活が不安定になった状態。つまり、公的なしくみや制度などにより、最低限度の生活を営む権利を保障すべき対象であると言い換えることができるのです。

② 年金とは? ~ 公的年金の大きく3つの種類

「図-公的年金の3つの種類」

そもそも「年金」とは、「終身または一定期間にわたり、毎年定期的に一定の金額を給付する制度のもとで、支給される金銭」で、「保険料を負担しているご本人やそのご遺族の方の生活保障を目的とする保険制度」のことを言います。

 このような目的を持った年金について真っ先に思い浮かぶものには、原則65歳から受給できる「老齢年金」があるでしょう。また、保険に加入されていた方が亡くなった際に、その配偶者の方や子どもに支払われる「遺族年金」もご存知の方が多いかもしれません。

しかし実際にはもう1つ、「障害年金」という年金があるのです。つまり、日本の公的年金制度は、大きく3つの年金から構成されているということです。
 
③ 障害年金とは? ~認知症を発症した場合に受給できる可能性のある年金

障害年金とは、病気やケガで生活や仕事などが制限される場合に受け取ることができる年金で、認知症を発症した場合、この障害年金の受給対象となる可能性があります。

障害年金の受給対象となるか判定し、またその支給額を決定するのは、「等級」という基準です。つまり、症状の程度やその生活に与える影響などの総合的な判断により、障害年金の支給対象であるか、また支給対象の場合は「等級」が判定され、その等級に応じた年金が給付されることになるのです。

なお、認知症に伴う症状による等級は、次のように定められています。

<表:認知症における等級と認定基準>

④ 認知症を発症したときに加入していた年金保険の違いによる、障害年金の差異

1) 「二階建て」とも呼ばれる公的年金のしくみ
年金保険制度は、以下の大きく2つのしくみで構成されており、その特徴から「二階建て」のしくみとも言われています。

・国民年金
国民年金は、全国民が加入する年金制度で、定額の基礎年金が給付される公的年金です。全国民が加入するものであるため、基礎年金とも呼ばれます。個人事業主や自営業者などが加入対象となると思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、現実的には、個人事業主や自営業者などは、この国民年金だけに加入していると言い換えられるのです。

・厚生年金
 厚生年金は、会社員など民間企業の従業員が加入する公的年金です。国民年金が「全国民が加入する年金制度であること」を考えると、厚生年金の加入対象となる方は、国民年金に加え、厚生年金にも加入しているととらえた方がわかりやすいでしょう。

このように公的年金制度は二層構造のような形になっているのです。「二階建て」とも称される所以です。

2) 障害年金も二階建て構造。だから受給額に差異が出る
公的年金制度が二階建て構造であることを受け、障害年金も「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の二階建て構造になっています。つまり、加入している年金により、次のような差異が生じることになるのです。

・受給額の差異
国民年金だけに加入している場合、障害基礎年金のみが給付されるのに対し、厚生年金に加入している場合は障害厚生年金も給付されることになります。つまり、加入している年金により、受給額に差が発生することになるわけです。

・3級相当の症状の場合の給付有無の差異
 認知症による等級区分は3段階設定されていますが、障害基礎年金部分は1級と2級のみ。3級があるのは障害厚生年金のみなのです。このため、発症した時点で厚生年金に加入していない場合、3級相当の認知症に伴う障害が見られても、障害年金が支給されないことになるというわけです。

⑤ 実際の障害年金の給付額

 各障害年金の支給額は、毎年支給額が変更されています。平成30年度の場合、以下のように整理することができます。

※上記は年間での年金額です。
※子の加算額:第1子・第2子:各224,300円、第3子以降:各74,800円
※配偶者の加給年金額:224,300円

障害厚生年金における「報酬比例の年金額」の計算式は非常に複雑です。また、障害基礎年金についても、一部で世帯の所得に応じた所得制限が設けられています。よって、実際の給付金額については、お住いの地域の年金保険事業所にお問い合わせの上ご確認いただく必要があります。

なお、厚労省が発表している「平成26年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、各年金の平均受給月額は以下のようになっていますので、参考まで確認ください。

障害基礎年金:月額平均71,995円(年額換算863,940円)
障害厚生年金:月額平均101,906円(年額換算1,222,872円)

参考:
電子政府の総合窓口 e-Gov
国民年金法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=334AC0000000141&openerCode=1

厚労省
平成24年版厚生労働白書 -社会保障を考える-
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/12/
障害年金について
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000010opz-att/2r98520000010v2g.pdf
障害基礎年金お手続きガイド
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/0000086263.pdf

日本年金機構
障害年金
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/index.html

一般社団法人障害支援センター 
障害年金サポートサービス 
https://nenkin-support.jp/

2. 認知症における障害年金の受給条件

「図-認知症を発症した場合の障害年金の受給条件」

(1) 障害年金の受給条件 ~ 65歳未満なら原則受給できる

障害年金を受給するには、認知症を発症していること以前に、いくつかの条件を満たしている必要があります。この条件は、以下のように定められています。

① 国民年金または厚生年金に加入していること
② 年金加入期間、または20歳前、60歳以上65歳未満の間に、認知症であることを初めて診断された日である初診日があること
③ 20歳前を除き、年金保険料の納付要件を満たしていること

このように見てみると、65歳未満で認知症を発症し、等級相当程度の症状が見られる場合、診断を受けていれば基本的には障害年金を受給できると考えられるのです。

(2) 認定のポイント

障害年金の給付対象となるか、の審査は、平成28年公表された「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に基づいて行われます。この等級判定ガイドラインでは、診断書の記載事項である「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」で、その目安が定められています。

① 日常生活能力判定

日常生活における次の7つの場面での状況を、それぞれ「できる」「自発的にできるが時には助言や指導を必要とする」「自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる」「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」の4段階で判定します。

② 日常生活能力の程度

日常生活能力を総合的に評価したもので、次の5つからご本人の状況に近いものを判定することになります。

参考:
厚労省
障害年金について
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000010opz-att/2r98520000010v2g.pdf
精神の障害に係る等級判定ガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12512000-Nenkinkyoku-Jigyoukanrika/0000130045.pdf

日本年金機構
障害年金
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/index.html

一般社団法人障害支援センター 
障害年金サポートサービス 
https://nenkin-support.jp/

3. 障害年金を受給するには

「図-若年性認知症により障害年金を受給するための大まかな流れ」

(1) 申請しなければ給付されない

障害年金は、他の制度と同様、申請しない限り給付されることがないものです。診断を受けることと障害年金を受給することとは別のことだということを押さえておくことが大切です。

(2) 申請までの流れ

障害年金は、認知症を発症していることが認められる状態になってから、つまり、診断を受けて以降、申請することが可能です。申請し受付られてから等級が判定されることになるため、実際に年金が支給されるまでに3カ月程度かかるようです。

(3) 申請先

自営の方など国民年金のみに加入されている方は、お住いの地域の各市区町村の年金課などの窓口、に申請することになります。企業にお勤めの方など厚生年金に加入されている方は、お住いの地域の年金保険事業所、または、加入されている共済組合が窓口になります。

(4) 申請に必要となるもの

申請には、必要な書類等をそろえる必要があります。大きくは、「必ず必要になるもの」と「子どもがいる場合」・「障害の原因が何らかの事故の場合」・「その他個別の事情」により必要になるものとに分けることができます。
申請時に必ず必要になるものは、以下のとおりです。

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参考:
日本年金機構ホームページ 障害年金
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/index.html
障害基礎年金お手続きガイド
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/0000086263.pdf

4. 若年性認知症を患う方の経済的な課題のとらえ方
(1) 収入と支出、という問題

 ここまで若年性認知症を患う方が「健康で文化的な最低限度の生活を営める」ために、経済的な面を保障する制度としての障害年金を見てきました。つまり、障害年金により、一定程度の収入が得られることになるわけです。

 一方で、経済活動というものは収入と支出のバランスで成立するもの。つまり、収入に見合う形で支出をどう管理するのかという点も、押さえておく必要があるということになります。

(2) 支出の抑制という視点で考えておきたいこと

① 社会福祉サービスの利用で支出の抑制を考える

 収入に見合う程度の支出という考え方をしようとするとき、ムダな支出を抑制することは重要です。その際に積極的に検討したいのは、各種の社会福祉サービスの利用です。少ない自己負担額で利用できるものや、大きく割引が適用されるものなどがあります。

 支援を受けられる可能性のある社会福祉サービスには以下のようなものがありますが、それぞれが別制度であるため、それぞれ申請・手続きが必要であることに注意が必要です。

1) 介護保険制度に基づくサービス
2) 障害者総合支援法に基づくサービス(自立支援医療など含む)
3) 医療費控除、高額療養費制度など、医療費に関するもの
4) 傷病手当金
5) 障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳、または、身体障害者手帳) など

② 認知症に伴う症状と、引き起こす可能性のあるリスクへの備え

 支出の抑制という面では、「認知症に伴う症状が引き起こす可能性のあるリスクへの備え」という視点でも検討が必要かもしれません。

たとえば、認知症に伴う症状としての暴力行為などで、直接他者に危害を与えてしまう可能性があったり、器物破損というような問題を起こしてしまったりする可能性もあるということ。

この場合、相応の損害賠償を求められることは否定できません。地道に支出を抑制していたとしても、一気に大きなお金が必要になってしまっては、その後の生活にも支障を来しかねないわけです。他にも詐欺に巻き込まれるといったことも考えられるでしょう。

このような万が一の備えとして、民間の保険の利用などを検討してもよいでしょう。

また、金銭管理面で不安が生じることもあるでしょう。このような場合には、成年後見制度を利用を検討する必要が出てくる場合があることも、合わせて押さえておきたいポイントです。

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参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス
経済的な支援 ~医療費への助成、控除、生活支援など~
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/promotion_4.html

最後に

 若年性認知症を発症した場合の大きな心配事に、経済的な面があると考えられますが、それを保障するしくみの一つが障害年金です。

障害年金は、老齢年金と同じ体系、つまり、いわゆる「二階建て方式」のしくみとなっています。このため、発症した際に加入していた公的年金保険により、また、症状の程度により、給付される年金額が異なります。

しかし、公的年金保険に加入していて、65歳未満で認知症を発症した場合であれば、原則障害年金は受給できるものでもあるので、経済的な基盤を担保するためにもしっかりと手続きをすることが大切になると言えるでしょう。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
電子政府の総合窓口 e-Gov
国民年金法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=334AC0000000141&openerCode=1

厚労省
平成24年版厚生労働白書 -社会保障を考える-
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/12/
障害年金について
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000010opz-att/2r98520000010v2g.pdf
精神の障害に係る等級判定ガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12512000-Nenkinkyoku-Jigyoukanrika/0000130045.pdf
障害基礎年金お手続きガイド
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/0000086263.pdf
みんなのメンタルヘルス
経済的な支援 ~医療費への助成、控除、生活支援など~
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/promotion_4.html

日本年金機構
障害年金
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/index.html

一般社団法人障害支援センター 
障害年金サポートサービス 
https://nenkin-support.jp/

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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