「おひとりさま」高齢者が自立した生活を送るためのヒント

高齢者・認知症

はじめに
ひとり暮らし高齢者は、年々増加傾向にあります。家族関係や親戚づきあいの変化などで親族内における支え合い機能(血縁)の希薄化がすすみ、老後も子どもや親族に頼らず暮らしている方が増えています。

また、濃密な近所付き合いを避ける傾向や、日本流個人主義の広がりなどによって、地域共同体内での支え合いの機能(地縁)も弱体化しています。

人と人との繋がりの希薄化は世代を超えて広がっており、高齢者も例外ではありません。これらの人々は、援助が必要な状況にあっても、それが顕在化しない恐れがあり、結果的に社会的孤立にも繋がりかねません。

そこで今回は、社会的孤立の恐れがある高齢者を、自立に転向させるためのヒントについて、「おひとりさま」というワードから見つけたいと思います。

 

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1.高齢期の住まいと地域包括ケアシステム

多くの人は高齢になっても、自宅で暮らしたいと考えています。厚生労働省が40歳以上の男女3,000人を対象に行った調査(*1)によると、高齢期に生活したい場所を尋ねた質問に「自宅」と回答した人が72.2%、有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの「施設」が16.2%でした。
「図-高齢期に生活したい場所」

高齢期に生活したい場所
実際には、高齢者の9割以上、要介護者の約8割が在宅で生活をしています。(*2)
「図-高齢者の住まいの現状」

高齢者の住まいの現状
厚生労働省は、2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。

「医療」、「介護」、「予防」という専門的なサービスと、その前提としての「住まい」と「生活支援」が相互に関係し、連携しながら在宅の生活を支える仕組みです。

高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるためには、ご近所や友人等とつながり、ともに活動し、助け合いながら生活できる地域が基盤となり、そのうえで、必要な時に、必要な医療・介護・その他の生活支援サービスが受けられる状態であることが重要である(*3)と言われています。
「図-高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるために」

高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるために
(参考・引用)
*1 厚生労働省 政策統括官付政策評価官室委託「高齢社会に関する意識調査」(平成28年10月)
*2 厚生労働省 老健局 高齢者支援課・振興課 課長補佐 山口義敬 「介護を受けながら暮らす高齢者向け住まいについて」
*3 横浜市青葉区「横浜型地域包括ケアシステムの構築に向けた青葉区行動指針」(平成30年3月)


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2.おひとりさま高齢者を考える

「おひとりさま」には明確な定義がないため、言葉の使い方や、受け取る印象も様々です。

多くの人は、飲食店に1人で入った時に、「おひとりさまですか」と店員から尋ねられた経験があると思います。また、「独身者」「未婚または配偶者との別離により一人で生活している人」といった具体的な場合や、「身寄りのない人」「精神的に自立している人」といった抽象的な意味で使うケースも見られます。

「独身を謳歌している」「上質な暮らしを追求する凛とした女性」といったポジティブなイメージを連想する場合もあれば、「孤独」「寂しい」と紐づける人もいます。

この章では、おひとりさま高齢者を「ひとり暮らしをしている高齢者」と「ひとり暮らしをしている自立した高齢者」いう階層を通じて、自立している高齢者の特徴などを見つけようと思います。

(1) ひとり暮らしをしている高齢者
高齢社会白書(令和2年版)によると、65歳以上のひとり暮らしの者は2015年には593万人でしたが、2025年には751万人、2035年には842万人となる予測をしています。65歳以上人口に占めるひとり暮らしの者の割合は、2015年には男性13.3%、女性21.1%でしたが、2035年には男性19.7%、女性24.3%に増加する見込みです。
「図-65歳以上の一人暮らしの者が増加傾向」

65歳以上の一人暮らしの者が増加傾向
横浜市が実施した高齢者実態調査(*4)では、心配事や悩みの有無を尋ねています。「心配事や悩みがない」と回答した割合は、高齢者一般13.3%に対し、ひとり暮らし世帯は10.3%でした。調査では、10項目の具体例を挙げて、それぞれに心配事や悩みがあるかを尋ねています。

高齢者一般と比較して、ひとり暮らし世帯が「ある」と回答した割合が高かった項目は、「病気などの時に面倒を見てくれる人がいないこと」(高齢者一般10.5%/ひとり暮らし世帯29.3%)、「ひとり暮らしや孤独になること」(12.7%/21.3%)でした。

また、同調査では、近所付き合い状況と心配事や悩みの関連性も調べています。近所の人との付き合いが最も濃密な「親しく付き合っている」のうち、「心配事や悩みがない」と回答した割合は17.9%でした。また、10項目の具体例の全てにおいて、「ある」と答えた割合が高齢者一般よりも低いことが分りました。

(2) ひとり暮らしをしている自立した高齢者
自立とは、「他の援助を受けずに自分の力で身を立てること」といった意味もありますが、福祉分野では、人権意識の高まりやノーマライゼーションの思想の普及を背景として、「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」、「障害を持っていてもその能力を活用して社会活動に参加すること」の意味としても用いられています。(*5)

内閣府が行った「一人暮らし高齢者に関する意識調査」(*6)では、日常生活のちょっとした用事からトラブル時のアシストが必要な場面で、頼りたいと思う相手がいるかを尋ねています。その結果は、以下の通りでした。

・電球の交換などの日常のちょっとした用事を頼みたい相手(あてはまると感じる人がいる52.9%/そのことでは頼りたいと思わない32.2%/あてはまる人はいない14.9%)
・病気で何日か寝込んだ時に看病や世話を頼みたい相手(69.5%/12.6%/17.8%)
・心配ごとや悩み事を相談したい相手(68.6%/14.6%/16.8%)
・一緒にいるとほっとする相手(70.9%/5.7%/23.4%)

いずれの場面でも、「あてはまると感じる人がいる」若しくは「そのことでは頼りたいと思わない」と回答(自己決定)した人が8割前後いました。また、「あてはまると感じる人がいる」のうち、8割超が子やその配偶者、兄弟姉妹、親戚、友人や近所の人(インフォーマル・セクター)を選んでいます。

一方で、「あてはまる人はいない(頼りたい人はいない)」と回答した人が、どの場面でも2割前後いました。

(参考・引用)
*4 横浜市「横浜市高齢者実態調査」(平成30年3月)
*5 社会保障審議会福祉部会 参考資料「社会福祉事業及び社会福祉法人について」(平成16年4月)
*6 内閣府 政策統括官(共生社会政策担当)「一人暮らし高齢者に関する意識調査」(平成 27 年3月)

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3.まとめ

社会福祉資源(生活支援サービス)の配分の主体は民間、政府、民営(市場)の3セクターに、インフォーマル・セクターを加えた考え方があります。インフォーマル・セクターは、政府、民間などのフォーマル・セクターによる福祉サービスの提供が開始されるまでのつなぎとして、重要な役割を果たしています。

血縁や地縁の希薄化が進行することで、インフォーマル・セクターからサービスを受けることができない人が増えるでしょう。

政府、民間セクターにその役割を移転させるには、社会保障制度(費用)の拡充が必要となります。そこで、今できることの1つに、民営(市場)セクターから供給を受ける(サービスを購入する)方法があります。

次回は、市場から購入できる「高齢者向け生活支援サービス」を「日常生活」「トラブル時」「死後事務」の3つに切り分けて紹介しようと思います。

保険制度にとらわれないサービスは、幅広いニーズに対応することができ、人々のQOL(生活の質)を向上・維持し、豊かな生活の実現に寄与しています。ADL(日常生活動作)の著しい低下やトラブルが起きる前に、サービスの利用契約を結んでおくことが望ましいと思います。



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村上功

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社会福祉士。横浜市青葉区で暮らす高齢者に、生活支援サービスから身元保証、死後事務まで総合提供する一般社団法人 ビサイドあおば を設立し代表理事に就任。

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構 代表理事として広報を担当する。現在、株式会社目標管理トレーニングの代表取締役としても活動を行っ...

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