認知症・高齢者の方が質の高い介護サービスを受けるために

高齢者・認知症

はじめに
 介護サービスは、認知症を含む高齢の方の多くが利用されるサービスです。介護サービスは生活の一部とも言えるサービスですから、より質の高いサービスを期待するのは当然のこととも思います。では、より質の高い介護サービスを受けるために、利用者側でできることはあるのでしょうか?

 ここでは日本の介護保険制度に基づくサービスの全体像を押さえながら、現実問題としてより質の高いサービスを受けるためにはどうしたらよいのか、その条件について見ていきます。

認知症の方がいるご家族のために。日常生活でトラブルが起きた時の損害賠償責任、弁護士費用、ケガを補償↓↓↓

1. 日本の介護保険制度の全体像

「図-日本の介護保険制度の全体像」

 認知症を含む高齢の方向け介護サービスは、介護保険制度の下で運用されています。

(1) 介護保険制度とは?

介護保険制度とは、人は年を重ねることによって生じる認知症などさまざまな病気に伴う困難や、加齢に伴う生活をする上での困難に対して、必要な支援を受けられるようにすることを目的にしくみ化された、公的な高齢者福祉制度です。

ここで最も重要なのは、「公的な」制度であるという点です。つまり、日本国民であれば誰もが平等に、介護保険制度に基づくサービスは受けることができるということになります。

(2) 介護保険制度のポイント

介護保険制度のしくみ上の主なポイントは以下の3点ですが、介護保険制度に基づくサービスは、この3つのポイントを満たしている、あるいは、この3つのポイントに従ってサービス設計されているということになるのです。

① 自立支援

単に介護を必要とされる高齢者の方々の身のまわりのお世話をするのではなく、高齢者の方々が自立した生活をおくれること、そのことで、お住いの地域社会で生活できよう支援することを理念としていること

② 利用者本位

ご本人、またはご家族の方を中心とした介護支援をされる方が、多様な保健医療サービスや福祉サービスの中から選択することができ、また、総合的に受けられる制度であること

③ 社会保険方式

社会全体で支えあうということから、給付と負担の関係が明確な社会保険方式が採用されていること。

社会保険方式であるという点について、少し補足します。介護保険は、サービスの対象となる年齢にあたる40歳以上の方と、国とが1:1で負担し合うしくみになっています。

40~64歳までの方は、公的医療保険と併せて徴収され、65歳以上の方は、公的年金からの天引き、または、各市区町村から個別に徴収されることになります。

なお実際に介護保険サービスを利用した場合は、自己負担は原則1割となっています。ただし、「どの程度の介護上の支援が必要か」を表す「要介護度」ごとに上限額が設定されており、その上限額を超える介護保険サービスを受けた場合、上限額を超える分は全額自己負担になります。

認知症・高齢者の方が、施設利用中、レジャーや自宅なで、ケガをした時の入院・通院費用を補償↓↓↓

参考:
厚労省ホームページ
介護保険制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html

2. 介護保険制度の中で利用できるサービスの種類

介護保険サービスで設定されているサービスには、大きくは以下の5つがあります。介護保険制度の「制度上」は、いつでも、どこでも、誰にでも、同じ内容のサービスが提供されるようになっているのです。

(1) 訪問系サービス

必要な介護や支援などのサービスを、ご自宅で受けるものです。訪問介護・訪問看護・訪問入浴介護・居宅介護支援などで、たとえば、ホームヘルパーが1時間、身体介護を行うといったものがあります。

(2) 通所系サービス

必要な介護や支援などのサービスを、デイサービスなどのサービスを提供する通所施設で受けるものです。通所介護・通所リハビリテーションなどとも呼ばれるもので、たとえば、デイサービスで日中の時間を過ごし、食事を取ったり、リクリエーションをしたり、入浴したりといったものがあります。

(3) 短期滞在系サービス(ショートステイ)

普段は在宅で介護を受けている方が、短期間だけ介護施設に入所し、入浴や食事などの日常生活やリハビリテーションなどの機能訓練などのサービスを受けるものです。このサービスは、介護の中心となっている「ご家族の方」が、ご自身の時間を作ることに主眼の置かれたサービスとして位置づけられています。

たとえば、普段ご支援されているご家族の方がご都合で自宅にいらっしゃらないときなど、ご本人が介護支援を受けながら宿泊するといったものがあります。

(4) 居住系サービス

介護保険の指定を受けた介護付有料老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅といった日常生活をおくる場で、入浴・排せつ・食事等の介護やその他必要な日常生活上の支援サービスを受けるものです。

(5) 入所系サービス

寝たきりや認知症などで常に介護が必要で、自宅での生活が難しい方が、入浴・排せつ・食事などの介護、機能訓練、健康管理、療養上の世話などの介護サービスを、特別養護老人ホームなど、日頃の介護支援を受ける場で受けるものです。

参考:
厚労省ホームページ
介護保険制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html

独立行政法人福祉医療機構WAMNETホームページ
サービス一覧/サービス紹介
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/service/

3. 介護サービスのバラツキという問題
(1) 実際のサービスを提供するのは、介護事業者

実際のサービスは、国や自治体が認可した介護事業者が提供する形になっています。事業者ごとに、その運営方針、施設の新旧度合い、具体的なプログラム、実際にサービスをするスタッフ、そして利用される方々は異なります。つまり同じ枠組みの中でのサービスであっても、それぞれに特徴が出てくるわけです。

また、地理的な面、文化的な面なども含め、地域性などがサービスに影響する面もあると考えられます。

(2) 人によるサービスであることが、サービスのバラツキを生む面も

介護サービスというものは、人によって提供されるサービスであるというのが基本です。人にはそれぞれ強みや弱みがありますし、経験による差異もあります。ということは、現実問題として、サービスに関する知識や技術の面で、個人差というものが存在することになります。

つまり、人が介在するサービスである以上は、介護保険制度に基づくしくみ・制度上は平等なサービスであるとはいえ、一定程度のバラツキがあるのは避けられないということになるわけです。

参考:
厚労省ホームページ
介護保険制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html

4. 介護保険制度のサービスの本音と建て前 ~得する方、損する方の特徴と質の高いサービスを受けるために

 人には感情というものがあります。もちろん、介護保険制度上は、介護サービスを提供するスタッフが、サービス利用者を好き嫌いなどの感情で接することはありません。しかしスタッフに、サービス利用者に対する感情を芽生えさせるなと言ってもそれは無理というものでしょう。

そして、スタッフのサービス利用者に対する好き嫌いの感情は、現実問題としてはサービスの質に、「バラツキの範囲内」とはいえ、一定程度影響すると考えられるわけです。

各種情報を見ても、「若干のバラツキがあること」が推察できる情報はたくさん入手できますし、また、実際に介護職に携わる方々に話をお聞きしても、建て前の部分と本音の部分があるのは事実なのです。

では、どのような利用者がスタッフから好かれ、どのような方が好かれないのでしょう? これは一般的な人間関係でもあてはまることから類推していけばよいということになるでしょう。

(1) 介護スタッフに好かれる方

「図-介護スタッフに好かれる方の特徴」

 介護スタッフに好かれる方の特徴としては、次のようなものが考えられます。その基本は、「サービス利用者と提供者」との関係以前に、「人と人」との関係、つまり、円滑な「人間関係づくり」だと言えるでしょう。

① スタッフが困っているときに手を差し伸べる

 これは何も介護の現場だけの話ではありませんが、サービス利用の場では「手違い」や「連携モレ」といったことが往々にして起こるもの。

そのようなスタッフにとっての困りごとが発生したとき、たとえば入浴の順番で手違いがあったとした際、「順番を代わってもらえるか」お願いすると、「いつでもいいよ」と快く受け入れてくれるような方は、やはり好かれるものでしょう。 

② 伝え方がうまい、コミュニケーション能力が高い

たとえば管理者スタッフから指導を受けた、あるいは、別の利用者から怒られたというようなときに、慰めてくれたり、時にはアドバイスをくれたりという利用者の方は、そのスタッフにとっての癒しになってくれる面があると考えられます。

このようなコミュニケーション能力の高さは、スタッフの方から好かれる要因になると言えるでしょう。

③ スタッフに対して、積極的に感謝の気持ちを伝える

 コミュニケーション能力と言うと非常にハードルが高いように感じられるかもしれませんが、ちょっとしたことでも感謝の気持ちを伝えられれば、それだけでも人はうれしく感じるもの。

「利用者としてサービスを依頼しているのだから、やってもらって当然」という態度と比較すれば、「ありがとう」のひと言が、非常に大きな意味を持つことも理解できるのではないでしょうか。

④ サービス利用に楽しみを見つけられる

 たとえばデイケアの場合、介護スタッフは日々「何をやるか?」「多くの利用者の方が楽しんでもらえるものは何か?」で頭を悩ませていると言います。そのような活動について、「面白くない」「自分はやらない」といったような態度を取られれば、良い感情は抱かないでしょう。

仮にあまり得意でないものであっても、積極的にかかわり、自ら楽しもうとされる方の態度は、周囲の方にも良い影響を及ぼすものでもあります。

⑤ ご家族が定期的に会いに来る、様子を見に来る

 ご本人だけでなく、ご家族の態度も重要です。ご家族の基本姿勢として「サービス利用者なのだから、任せる」というのはもちろん大切です。しかし、まったくの無関心であったり、事が起こると文句だけ言ったりというのでは、介護スタッフの方もやはり良い感情を抱くことはないでしょう。

介護スタッフがサービスを提供するのに邪魔にならない程度に定期的に様子を見ているということが、信頼関係づくりにもつながると考えられるのです。

(2) 介護スタッフに好かれない方

「図-介護スタッフに好かれない方の特徴」

 逆に、介護スタッフに好かれない方には、どのような特徴があるのでしょう? 「好かれる方の裏返し」としてとらえてみると、わかりやすいのではないでしょうか。

① 現役時代の肩書にこだわるなど、プライドが高い

 「社長だった」「取締役だった」などなど、現役時代の肩書を持ち出す方は、介護職を経験されたことのある方が一様に「敬遠したい」と言います。

② 介護スタッフに対し、「部下」のように接する

 現役時代の肩書の問題は、介護スタッフの方々への接し方にも見られる場合があるようです。ご本人にしてみれば良かれと思って指導しているつもりなのかもしれません。

③ 他の利用者への介護に口を挟む

 他の利用者への介護に口を挟むというケースもよく見られるようです。これは介護スタッフに向けられるものだけではなく、他の利用者の方へ向けられるケースもあるとのこと。利用されている方はそれぞれの症状に伴う困りごと・障害を抱えられていることを、なかなか理解できない面もあるのかもしれません。

④ 自分のルールを曲げない、こだわりが強すぎる

 「この時間になったら必ずこれをする」といった個人のルールを決められ、日々過ごしている方がいらっしゃいます。もちろん、ご自身の「生活のリズムづくり」という点で、相応の効果を発揮するのも事実で、介護スタッフもその点は承知していますし、なるべく合わせようと努力もされています。

とはいえ、多くの方が生活される場。「社会」としてのルール以上に、自分のルールを優先されようとするケースは、やはり介護スタッフにとっても大きな負荷ですし、制約事項ととらえられてしまうものでもあると言えるのです。

⑤ 暴言、暴力、セクハラなどが多い

 認知症など、その疾患の症状によって、暴言、暴力、セクハラといった問題行動が見られることがあることは、介護スタッフも承知はしています。しかし、それとはまったく関係のないところで、暴言、暴力、セクハラなどの問題行動を起こす方もいらっしゃるとのこと。

実際、介護従事者でつくるUAゼンセン・日本介護クラフトユニオンが2018年行ったアンケート調査の最終報告によれば、回答された介護従事者の方のうち、介護サービスの利用者やその家族による「ハラスメント経験がある方」は、7割以上にものぼっていることが判明しています。

⑥ ご家族の過干渉、ルール無視や捻じ曲げをする

 「ハラスメント経験がある介護スタッフは7割以上」という、UAゼンセン・日本介護クラフトユニオンの調査をよく見ていただくと、ハラスメントをしているのは、利用者ご本人だけではないことがわかるでしょう。「ご家族も」、介護スタッフへのハラスメントの加害者になっているケースがあるのです。

 「より質の高いサービスをご本人に受けてもらいたい」という思いは当然だとは思います。だからと言って、そのサービスに過度に干渉したり、施設のルール無視した特別な対応を要求したりするのは筋違いでもあります。またそのような態度は、後々のサービスの質の低下をもたらす面もあると言えるのではないでしょうか。

認知症・高齢者の方が、利用する施設などでトラブルを起こしてしまった時の損害賠償責任を補償↓↓↓

参考:
厚労省ホームページ
介護保険制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html

労働新聞ホームページ
パワハラ経験94% 現場実態を調査 NCCU
https://www.rodo.co.jp/news/48605/

日本介護クラフトユニオン ホームページ
ご利用者・ご家族からのハラスメントに関するアンケート
http://www.nccu.gr.jp/rw/contents/C03/20180709000101.pdf

「なぜか人に好かれる人」の共通点、齊藤茂太、PHP文庫

最後に

 介護保険制度に基づくサービスは、しくみ・制度上は、誰もが平等に受けられるものとして設計されています。とはいえ、そのサービスを提供しているのは、介護スタッフという人です。人である以上、知識や経験、その技量にもある程度のバラツキがあるのは否定できない事実でしょう。

また、人であるからこその感情というものが、提供されるサービスの質に影響を与える面があるのも現実でしょう。その中でも、できる限り質の高いサービスを求めるならば、サービスの利用者側でも、「良好な人間関係を築こうとする態度」が重要になると言えます。

ここでは、介護スタッフに好かれる方、好かれない方の特徴について見てきました。しかし、この特徴は、何も介護の場だけでのことではないでしょう。

人と人とが接する場、交わる場であるという基本を押さえ、介護スタッフに対しても、尊重する姿勢や態度で接することが、結果的に質の高いサービスを受けられることにつながると言えるのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
介護保険制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html

独立行政法人福祉医療機構WAMNETホームページ
サービス一覧/サービス紹介
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/service/

労働新聞ホームページ
パワハラ経験94% 現場実態を調査 NCCU
https://www.rodo.co.jp/news/48605/

日本介護クラフトユニオン ホームページ
ご利用者・ご家族からのハラスメントに関するアンケート
http://www.nccu.gr.jp/rw/contents/C03/20180709000101.pdf

「なぜか人に好かれる人」の共通点、齊藤茂太、PHP文庫

金森 保智

594,563 views

全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

621,906 views

電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。