認知症を患う方の服薬・薬の飲み方を支援する

高齢者・認知症

はじめに
 高齢になると、体のあちらこちらに不具合が出やすくなります。複数の病院に行き、その都度、その症状に合わせた薬が処方されることも多いのではないでしょうか。すると結果として、数多くの種類の薬を数多く飲まなければならなくなる場合が出てきます。

 しかし、実はその際、同じような機能の薬をいくつも処方されているといったようなことが起きていたり、取り合わせの悪い薬が処方されていたりといったケースも少なくありません。

 ここでは、高齢の方の薬とのつきあい方と、その支援のポイントを、高齢の方の服薬の実態や、副作用の問題、認知症の薬にも触れながら、まとめています。

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1. 半数近い高齢の方が医師の指示通りに服薬していないという事実

「図-高齢の方にまつわる服薬の問題発生のメカニズム」

(1) 医師の指示通りに飲まない? 飲めない?

 「高齢の方の半数近くにあたる48.4%の方が、医師の指示通りに薬を飲んでいない」という調査結果があります。このように言うと、「飲まないご本人が悪い」と思いがちではありますが、一概にそうとは言えない現実があります。
 そのワケを考え、実際に支援するには、「医師の指示通りに飲まない理由」に注目する必要がありそうです。

「うっかり飲み忘れる」というものが8割近くと圧倒的に多いのですが、「病気が良くなった」で14.6%、「副作用が心配なのでなるべく飲まない」で6.3%、「飲むと具合が悪くなる」で4.5%、「数が多すぎる」が2.7%となっています。「うっかり飲み忘れる」のは認知機能の低下が、その他は高齢の方に特有のある事情が関係している可能性があるのです。

(2) 高齢になるほど増える抱える病気・薬の種類

 年をとるほど抱えている病気も増えることは、一般的に言われること。このことは直感的には事実と思えるでしょう。実際、厚労省の調査によれば、75歳以上になると5種類以上の薬を服薬されている方が41%。65~74歳では28%、40~64歳では24%となっていることから、明らかに服薬する薬の種類が増えていることがわかります。

このことが、薬を医師の指示通りには「飲まない、あるいは、飲めない」という、一つの大きな理由となっていることが予想されるのです。

参考:
厚労省ホームページ
平成28年社会医療診療行為別統計の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa16/
J-stageホームページ
高齢者薬物療法の問題点
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/35/8/35_8_589/_pdf

2. 高齢の方と薬の副作用 ~ ナゼ高齢の方に薬の副作用が多いのか?
(1) 忘れるだけ、量だけが問題ではない! 高齢の方と薬の副作用

 また、薬の副作用という問題を無視することもできません。東大病院老年病科の入院患者に副作用が起こった割合は、高齢になるほど増えており、後期高齢者では15%以上となっているとの調査結果があるのです。副作用というと、発疹や頭痛、吐き気などの症状を思い浮かべる方も多いでしょう。

もちろん、そのようなものもあるのですが、高齢の方に多いのは「薬の効きすぎによる想定外の副作用」で、また、その副作用は重症化しやすい面があると言われています。

(2) 高齢の方に薬の副作用が多いワケ

 高齢の方に薬の副作用が多いのは、加齢に伴う体の生理機能の変化が影響している結果であると考えられています。

 薬は体に吸収されて効果を発揮した後、肝臓で分解されたり、腎臓から排泄されたりしていきます。しかし、年をとるについて、少しずつ肝臓や腎臓の機能が低下していきます。この機能の低下がわずかであっても、そのために薬の分解や排泄に時間がかかるようになり、体の外に出ていくまでに時間がかかるようになってしまう。

その結果、薬による効果も長く残ってしまい、「薬が効きすぎる」ということが起こってしまうのです。

(3) 薬の種類が増えるほど危険であるという可能性 ~ ポリファーマシーという概念

 薬には飲み合わせの相性が悪いものがあることは、ご存知の方も多いでしょう。ただ、この相性の悪さは、2種類を一緒に飲む場合のもののみが明らかになっているだけで、3種類以上の場合の相性の悪さや危険性はほとんど調べられていないと言われています。これが「予期せぬ副作用」の原因の一つと考えられるわけです。

 服用する薬の数と副作用の発生頻度に関する調査結果によれば、薬の数が増えるほど、副作用などの有害な事象、つまり、好ましくない、あるいは意図しない症状や病気の発生頻度が増加することがわかっています。このような複数種類の薬を飲むことにより起こる問題をポリファーマシーと言います。

 ただここで注意したいのは、複数の薬を飲むことが必ずしも問題なのではないという点です。薬の組合せによっては、副作用など有害な事象であるポリファーマシーが起きるということ自体が問題なのです。よって、必要な薬はきちんと服用することが大切である、と言えます。

(4) 厚労省の施策

 このような事情から、厚労省が医師や薬剤師らを対象に薬の服用の適正指針を示しました。つまり、高齢の方が薬を服用する種類や数を整理し、その方がきちんと服用できるようにすること、また、薬の組合せによる副作用等の悪影響を最小限にするための指針を提示したのです。

 いずれにしても、このような薬の副作用などの問題は、認知症を患う方を含む高齢者ほど多いという事実をしっかりと押さえておく必要があるでしょう。

参考:
厚労省ホームページ
「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)について」の通知発出について
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000208852.html
J-stageホームページ
高齢者薬物療法の問題点
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/35/8/35_8_589/_pdf
4. 薬剤起因性疾患
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/36/3/36_3_181/_pdf

3. 認知症と薬

「図-認知症と薬」

(1) 主な認知症の薬

 認知症の場合も投薬が行われます。現在認知症で用いられる薬は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬の大きく2種類の薬があり、アルツハイマー病やレヴィー小体型認知症で利用されています。

① アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

アルツハイマー病やレヴィー小体型認知症を患う方の脳では、アセチルコリンという神経伝達物質が減少しています。神経伝達物質が減少すると脳のネットワークがうまく働かなくなってしまうために認知機能が低下するということです。そこでアセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリンが分解されないように働き、脳の中でアセチルコリンが減るのを防ぐ目的で用いられます。

② NMDA受容体拮抗薬

NMDA受容体は、グルタミン酸という神経伝達物質の受け皿です。アルツハイマー病では脳の中でグルタミン酸の働きが乱れ、神経細胞が障害されたり神経の情報が障害されたりします。そこで、グルタミン酸の働きを抑えることにより、神経伝達を整えたり、神経細胞を保護したりする可能性があるNMDA受容体拮抗薬が利用されるのです。

(2) 認知症薬は副作用が少ないと言われているが・・・

基本的に認知症の薬にはひどい副作用は少なく、また、服用を中止すれば元の状態に戻るとも言われているため、副作用への過度の心配は不要とされています。

とはいえ、まったく副作用の事例がないというわけでもありません。飲み始めに吐き気などの消化器症状が生じたり、脈が遅くなる徐脈が生じることがあったり、その他にも精神症状などの副作用も出ることがあることがわかっています。

また、既に見た通り、他の疾患で薬を服用している場合など、服用する薬の数が多ければ多いほど、何らかの悪影響が発生する可能性は否定できないでしょう。
 

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参考:
和歌山県立医科大学附属病院 認知症疾患医療センター
認知症のお薬について
http://www.wakayama-med.ac.jp/med/dementia/ninchisyou/medicine.html

4. 認知症を患う方を含む高齢の方の服薬支援の視点

「図-認知症を患う方を含む高齢の方の服薬支援の視点」

 これまでに見てきた事実を元に、認知症を患う方を含む高齢の方の服薬支援のポイントを考えていきます。

(1) まずは全てを洗い出し、止める・まとめる相談を!

 これまで見てきたように、高齢になるほど、認知症の薬を含め、服用する薬の種類は増えると考えられます。また、種類や数が多いがゆえに、飲み忘れの他、副作用の心配や、実際副作用が生じる可能性も高まることになります。

 そこでまず重要になるのは、「服用している薬をすべて洗い出し、止める、あるいは、まとめることを医師に相談すること」と言えるでしょう。抱える病気や疾患によっては、同じような機能の薬を、複数の治療薬として処方されている場合もあるからです。服用する薬の種類が限られれば、副作用が生じる確率も抑制されると考えられます。

 このように考えると、「おくすり手帳」での薬の管理なども、やはり重要になる面があると言えるわけです。

(2) 用法の単純化という視点

 医師への相談の視点は他にもあります。それは用法の単純化です。薬は毎食後に飲むもの、朝夕のみ飲むもの、何かのときだけ飲むものなど、薬の種類によってその用法が異なりますし、その数も種類によって異なります。「毎食後に、すべての種類の薬を、1つずつ飲む」といったように、その用法がまとまっていれば、飲み忘れのリスクも軽減できる面があると言えます。

 認知症を患われている場合も含め、その用法が単純化できれば単純化できるほど、誤った服用をするリスクも小さくできると考えられるということです。

(3) 薬の形状や大きさという視点

 同じ効果のある薬であっても、粉状、錠剤、液体など、薬の形状は異なりますし、大きさなども異なるもの。ご本人の様子から、なるべく飲みやすいものを選ぶことが重要でしょう。飲みにくいものであればあるほど、飲みたくないものですし、それが結果的に飲まないことにつながりかねないからです。場合によっては、服用をサポートするシートやゲルなどの利用も検討したいところです。

(4) サプリメントや市販薬に注意

サプリメントや市販薬を服用してしまうと、せっかく薬をまとめたり、用法を単純化したりしても、その効果が得られないばかりか、副作用が大きな問題になる場合があります。どうしても利用を検討したいという場合は、合わせて医師に相談することが大切です。

(5) 薬の管理の視点

 薬の管理自体に注意することも重要です。もっとも良いのは、支援される方が薬自体とその服用も管理するというものです。

とはいえ、同居されていないなど、なかなかそこまではできない場合が多いのも事実でしょう。そこで、たとえば、薬の整理箱のような道具を利用したり、服用する日時がわかるように小分けにしたり、服用した後はカレンダーなどに印をつけたりといったような方法を検討することが重要でしょう。

また、スマートフォンなどのアプリケーションを使って、服薬を促したり、制限したりといった方法も検討できるかもしれません。最近では、記憶の電子的な補助装置もあります。

(6) 飲み忘れたときの対応を十分把握する

 薬を管理していても、飲み忘れなどが発生する可能性があります。そのときには、時間をずらしてでも服薬した方が良いのか、それともしない方が良いのかなど、その扱い方を知っておくことも重要です。

(7) 効きすぎに注意する ~ こんな症状をご本人が訴えられたら

「図-薬の効きすぎで見られる副作用」

 高齢の方の場合、既に見た通り「薬の効きすぎ」が問題になる場合があります。次のような症状をご本人が訴えたり、そのような様子が見られたりした場合、医師に相談することが大切です。

① ふらつき・転倒
② 記憶障害
③ 頭が混乱して興奮したり、ボーっとしたりする症状であるせん妄
④ 抑うつ
⑤ 食欲低下
⑥ 便秘
⑦ 排尿障害・尿失禁

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参考:
一般社団法人 島根県薬剤師会
高齢者と薬
http://www.simayaku.or.jp/yakuzaishi/kusuri/koreisha/
MSDマニュアル 家庭版
加齢と薬
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/24-%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%8A%A0%E9%BD%A2%E3%81%A8%E8%96%AC/%E5%8A%A0%E9%BD%A2%E3%81%A8%E8%96%AC

最後に

 高齢になるということは、その分、身体機能の変化や衰えが起こるもの。結果的にさまざまな病気や疾患などを抱えることになり、服用する薬の種類が多くなる傾向があります。実はそのことが薬の誤った服用や、薬の効きすぎといった副作用などにつながっている面もあります。さらにそのような経験が、医師の指示に従わない服薬習慣へと結びつきやすくなっている面もあるのです。

 よって支援にあたってまず重要になるのは、服用する薬全体での整理を医師に相談することと言えます。その際には、用法のまとめ、ご本人が服用しやすい形状への統一など、合わせて相談することも大切でしょう。そのように環境を整えることを通じて、正しい服薬習慣が身につくよう支援していくことが重要になるということです。

 なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
平成28年社会医療診療行為別統計の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa16/
「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)について」の通知発出について
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000208852.html

J-stageホームページ
高齢者薬物療法の問題点
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/35/8/35_8_589/_pdf
4. 薬剤起因性疾患
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/36/3/36_3_181/_pdf

和歌山県立医科大学附属病院 認知症疾患医療センター
認知症のお薬について
http://www.wakayama-med.ac.jp/med/dementia/ninchisyou/medicine.html

一般社団法人 島根県薬剤師会
高齢者と薬
http://www.simayaku.or.jp/yakuzaishi/kusuri/koreisha/

MSDマニュアル 家庭版
加齢と薬
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/24-%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%8A%A0%E9%BD%A2%E3%81%A8%E8%96%AC/%E5%8A%A0%E9%BD%A2%E3%81%A8%E8%96%AC

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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