認知症を患う方を支援する、新オレンジプランとは?

高齢者・認知症

はじめに
認知症施策推進総合戦略、通称「新オレンジプラン」は、今後も増加が予想される認知症を患う方が、それまで住み慣れた地域で、その人らしく生活し続けられることを目的に国が作った社会づくりの方針です。ここではそんな「新オレンジプラン」が作られた背景やその内容についてまとめています。

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1. 認知症施策推進総合戦略、通称「新オレンジプラン」とは?

「図-「新オレンジプラン」が作られた経緯」

(1) 「新オレンジプラン」とは?

「新オレンジプラン」とは、認知症を患う方が、ご自身の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現することを目的につくられた国の社会づくりの方針の一つです。厚労省が中心となり、内閣官房、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の関係省庁が一体になってつくられました。

(2) 認知症を患う方は、2025年には700万人に! ~認知症理解と対策が必要

第一次ベビーブームが起きた時期に生まれた世代、つまり、第二次世界大戦直後の1947~1949年に生まれた世代を「団塊世代」と言います。この「団塊世代」の方々は、2025年に75歳以上を迎えることになり、認知症を患う方が激増することが予想されています。

具体的には、認知症高齢者の数は、2012(平成 24)年で 462 万人と推計されていますが、その数が2025(平成 37)年には約 700 万人となると予想されているのです。つまり、これまで以上に、認知症に対する理解を深めていくこと、そして、具体的な対策が必要だということです。

(3) 進まない? 認知症の理解 ~「新オレンジプラン」が作られた理由①

一方で、認知症は近年の研究によって、ようやく少しずつわかることが増えてきた病気です。このため、国の施策も十分とは言えなかったという歴史があります。

以前は「ボケ」「痴呆」などと呼ばれていた認知症は、「年をとれば仕方がないもの」ととらえられていた時期があり、病気や症状が理解されず、適切なケアがされないどころか虐待の対象となることさえありました。支援が適切に行われないことで、抑うつ・興奮・徘徊・妄想などの「行動・心理症状(=BPSD)」が現れ、ご家族など支援される方では対応することが難しくなり、精神科病院への入院に至るケースも後を絶たなかったのです。

その後も認知症の理解はなかなか深まらないという状況にあります。

このような中、国の対策は、「痴呆」から「認知症」へ呼び方の変更に始まり、介護保険制度の導入などを通じた介護サービスの整備や地域ケア体制の構築、そして、認知症対策を一層効果的に推進し、たとえ認知症になっても安心して生活できる社会を早期に構築するというところまで変化してきています。

そして、それまでの施策の検証を踏まえ、今後目指すべき基本目標やその実現のための認知症施策の方向性が検討され、2012年6月に「今後の認知症施策の方向性について」という形でとりまとめられ、公表されたのがオレンジプランであり、それを発展させたのが「新オレンジプラン」です。

(4) 超高齢社会という問題 ~「新オレンジプラン」が作られた理由②

 国が本腰を入れて対応を進めようとするのは、国民の認知症に対する理解が深まらないことだけが理由ではありません。大きな問題は、日本が超高齢社会、人口減社会に突入したことにあるとも言えます。内閣府は、超高齢社会の課題として、以下の6点をあげています。

① 「高齢者」の実態と捉え方の乖離
② 世代間格差・世代内格差の存在
③ 高齢者の満たされない活躍意欲
④ 地域力・仲間力の弱さと高齢者等の孤立化
⑤ 不便や不安を感じる高齢者の生活環境
⑥ これまでの「人生65年時代」のままの仕組や対応の限界

このことを言い換えると、高齢者の方々にも、「できる限り長く支援される立場にはならず、むしろ社会に対して経済面も含めた貢献をしていただける」よう、「少しずつでもしくみや制度を変えていくこと」、さらに、「高齢者の方々が、住み慣れた地域で元気に活躍できる環境を整えること」が必要になるということでしょう。つまり、認知症に対する各種の施策は、超高齢社会という日本の課題を解決するためにも必要なものだと言えるわけです。

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参考:
厚労省ホームページ
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nop_1/
独立行政法人福祉医療機構
Wamnet ホームページ
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)制定までの経緯と概要について
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/appContents/wamnet_orangeplan_explain.html

内閣府ホームページ
第1章 第3節 1 超高齢社会における課題
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/gaiyou/s1_3_1.html

2. 新オレンジプラン、その主な内容 ~ その位置づけは「方針」

新オレンジプランは、「認知症高齢者等にやさしい地域づくり」を推進していこうとするもので、7つの柱で構成されています。

「図-新オレンジプラン ~ 認知症施策推進総合戦略の7つの柱」

(1) 7つの柱

柱1.認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
柱2.認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
柱3.若年性認知症施策の強化
柱4.認知症の人の介護者への支援
柱5.認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
柱6.認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
柱7.認知症の人やその家族の視点の重視

(2) 柱1.認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進

認知症は身近な病気であるということを、普及・啓発等を通じて社会全体で確認していこうとするものです。主なものとして、以下があります。

① 認知症への社会の理解を深めるための全国的なキャンペーンの展開

広告等を通じて展開する普及・啓発活動です。特に認知症を患う当事者の方々による情報発信など、認知症を患う方の視点に立った活動を重視するとされています。

② 認知症サポーターの養成と、認知症サポーターの方々による活躍の場面づくり

「認知症サポーター」とは、「認知症について正しく理解し、認知症を患う方やそのご家族の方を温かく見守り、支援する応援者」です。2017年度末までに、800万人の「認知症サポーター」の養成が目標とされています。また、認知症サポーターの方々が、地域や職場など様々な場面で活躍できるよう取り組みが進めていこうとされています。

なお、「認知症サポーター」になるには、市町村や職場などで実施されている「認知症サポーター養成講座」を受講することが必要です。

③ 学校における教育の推進

学校において高齢者と交流する場を設定するなど、高齢社会の現状や今後、あるいは認知症を患う方を含む高齢者への理解を深めるような教育を推進しようというものです。

(3) 柱2.認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供

認知症は、一部のものを除き、発症すると進行していく、いわば一生つきあっていく必要がある病気です。そのため医療機関や介護サービス提供機関だけでなく、地域なども含めた関係機関が発症の予防の時点から連携を図り、適切なサービスを提供できるしくみを作ることが重要になります。

つまり、医療、介護、地域などのぞれぞれの現場が、それぞれ個別のサービスを提供するのではなく、認知症の進行状態に合わせて、その時々に必要とされる支援を受けられる環境が必要だということです。このような考えに基づき、以下のような活動を推進するとされています。

① 本人主体の医療・介護等の徹底

「認知症を患っているのだから、こんなサービスを提供すればよいだろう」というようなサービスではなく、認知症を患うご本人が住み慣れた地域で、ご自身の力を発揮しつつ生きていくために必要な支援をしていこうという考え方の下で、サービス提供することを徹底していくということです。

受け身の医療や受け身の介護ではなく、認知症を患う方やそのご家族の方など、支援を必要とされる方々が本当に必要なサービスを選択して受けられるようしくみ化したり、サービスを充実したりしていこうとするものです。

② 発症予防の推進

適度な運動や会話など、日常生活における取り組みが認知機能低下の予防に繋がる可能性が高いと考えられています。このため、地域住民が主体となって運営するサロンなどの場づくりといった取り組みが支援・推進の対象となっています。

③ 早期診断・早期対応のための体制整備

 早期診断とその対応のために、認知症に詳しい専門家を育成しようとするものです。かかりつけ医や歯科医師・薬剤師に対する認知症対応力向上研修、認知症サポート医や専門医の養成、認知症疾患医療センターの設置、認知症初期集中支援チームによる認知症の早期発見体制の整備などを行おうとするものです。

④ 行動・心理症状(BPSD)や身体合併症などへの適切な対応

認知症を患うご本人にとって、もっとも適切な場所で、適切なサービスが受けられるようにしようとする取り組みです。たとえば、認知症の主な症状である記憶障害などの進行に、身体的要因や環境要因等がきっかけとなって現れる、「抑うつ・興奮・徘徊・妄想などの症状(=BPSD)」を予防したり、仮にその症状が現れた場合でも、薬に依存せずに症状とつきあっていけるようにしたりといった基本的な対応指針の徹底があげられています。

また、身体合併症を治療する医療機関が認知症を患う方への対応力を上げるような取り組みも含まれています。

⑤ 認知症の人の生活を支える介護の提供 認知症を患う方への介護サービス提供者の質の向上施策や基盤整備施策を計画的に実行していこうとするものです。

⑥ 人生の最終段階を支える医療・介護等の連携

認知症を患うご本人の尊厳が、人生の最後の瞬間まで尊重された医療や介護などのサービスが提供されるよう、しくみを作っていこう、具体的にしていこうとするものです。

⑦ 医療・介護等の有機的な連携の推進

認知症の発症予防から人生の最終段階まで、その進行に合わせ、「いつ・どこで・どのような医療や介護サービスを受ければよいのか」という標準的な流れを示すものに「認知ケアパス」があります。この「認知ケアパス」を地域ごとに整備することや関係する専門家がサービス提供に必要な情報を連携すること、認知症を患うご本人や支援されるご家族の方とサービス提供する支援機関とをつなぐ認知症地域支援推進員の配置などを、計画的に行っていこうとするものです。

(4) 柱3.若年性認知症施策の強化

全国に既に4万人近くいて、今後も増加の可能性がある「若年性認知症」を患う方々を総合的に支援しようとするものです。たとえば、認知症を患うことの理解促進の他、発症後も仕事と治療を両立できることなどを含む居場所づくり等、様々な分野の支援施策を実施していこうとされています。

(5) 柱4.認知症の人の介護者への支援

 認知症を患う方を支援すると同時に、「支援をするご家族の方」を「支援すること」が非常に大切だという考えの下、必要なしくみを作っていこうとするものです。精神的な負担の軽減として、認知症カフェ等、認知症支援者の方々が語り合える場の設置などがあります。一方、物理的な負担の軽減を目的とした支援として、介護用ロボット等の開発などが考えられています。

このような「支援者の支援」が、結果的に認知症を患う方の生活の質の向上にもつながるとも考えられています。

(6) 柱5.認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進

 認知症を患う方が、お住まいの地域で生活を続けられるようにするために、地域そのものをさまざまな面で変えていこうとするものです。

たとえば、掃除・洗濯・買い物などの家事や配送などサービスづくり、さらなるバリアフリーの推進や公共交通機関の整備などがあります。さらに、認知症を患う方が社会に貢献する場が生きがいの視点からも必要との考えから、さまざまな活動ができる場づくりやそのためのサービス提供も検討されることになります。さらに、見守り、交通安全、虐待の防止など安全面での配慮・支援も欠かせない視点と考えらえています。

(7) 柱6.認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進

 認知症は、現状ではその原因が解明されておらず、また、治すことはできないものです。

ただ今後研究が進む中で、多くの謎が解明されることが期待されてもいます。つまり、認知症の予防法・診断法・治療法・リハビリテーションモデル・介護モデルなどは、これから大いに研究していく必要があるということです。

(8) 柱7.認知症の人やその家族の視点の重視

これまでの認知症施策は、認知症を患う方にサービスを提供する側からの視点で考えられたものが中心だったという現実があります。そこで、実際に認知症を患うご本人や支援をされるご家族の方の視点をより重視していくことがプランの柱の一つとして掲げられたということです。

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参考:
厚労省ホームページ
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nop_1/

独立行政法人福祉医療機構
Wamnet ホームページ
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)制定までの経緯と概要について
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/appContents/wamnet_orangeplan_explain.html

最後に ~いかに具体的な施策にするか、ということ

「認知症を患う方は今後大幅な増加が見込まれる」という課題に対し、社会基盤づくりが重要であると国が考えていることは十分ご理解いただけるのではないでしょうか。

その一方で、「新オレンジプラン」の各柱とされているものは、「こうしていこう」という方針レベルのもので、「では一体どういう状態になっていることを目指すのか」あるいは「何をすることでその姿を実現するのか」といった具体策や「いつの段階でどうなっているのか」という数字面での目標などは、まだまだ具体的なものになっていないものが多くあることがわかります。

つまり、理想と現実の差を埋めるような動きが必要になるということですが、これは国や地方も含めた行政だけが考えれば良いことではないでしょう。国が掲げるこのプランの実現には、日本社会を構成する一人ひとりが役割を果たすことが求められるからです。「自分がいつ認知症を患うかもしれない」ということを起点に、積極的に関わることが大切になると言い換えることもできるのかもしれません。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン) http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nop_1/

独立行政法人福祉医療機構
Wamnet ホームページ
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)制定までの経緯と概要について
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/appContents/wamnet_orangeplan_explain.html

内閣府ホームページ
第1章 第3節 1 超高齢社会における課題
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/gaiyou/s1_3_1.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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