自閉症スペクトラム障害とは?

発達障害

はじめに
自閉症スペクトラム障害は、自閉症やアスペルガー症候群などを一つのグループとしてとらえたもので、精神障害の診断名の一つです。ここでは、「自閉症スペクトラム障害とは何か?」について、その中心的な「スペクトラム」というとらえ方や特徴的な症状などと合わせてまとめています。

1. 自閉症スペクトラム障害とは? 
(1) DSM-5を用いた医学的診断上の分類である自閉症スペクトラム障害

自閉症スペクトラム障害とは、米国精神医学会が作成した「DSM」の第5版である「DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアルー第5版)」という疾患や障害を分類する手引上の分類で、診断名として用いられています。
医学的な診断では、「DSM」での分類方法以外にも、WHOが作成する「ICD10(国際疾病分類第10版)」での分類方法などが国際的に用いられています。

作成元に違いがあること、また、「DSM」が精神障害のみを対象にしているのに対し、「ICD」ではすべての疾病を対象にしていることなどから、障害の状況やその程度が同じであっても分類の方法が異なる面があります。

(2) 「スペクトラム」という考え方 ~自閉症スペクトラムとは?

「図-スペクトラムのイメージ」

「スペクトラム」とは、「連続体」という意味で、上図のようなイメージでとらえるとわかりやすいのではないでしょうか。ひと言で言うなら、切れ目が不明確で分けられない、あるいは、分けにくいという特徴があると言えるかもしれません。

つまり、「自閉症」+「スペクトラム」という言葉である「自閉症スペクトラム」とは、自閉的な特徴を持つ方は、知的障害や言語障害などの有無やその程度にかかわらず、自閉的な特徴を持つという点で支援が必要であり、また、自閉症やアスペルガー症候群などは連続している一つのグループであると考えることができるという、二つの意味合いから生まれた考え方・概念という見方ができるということです。

(3) これまでの分類とDSM-5での分類との関係

「図-DSM-5で、はじめて設定された自閉症スペクトラム障害」

自閉症スペクトラム障害は、「DSM」の第5版として2013年に公開された「DSM-5」ではじめて設定されたものです。それまでの「DSM」での分類方法では、自閉症やアスペルガー症候群などは、それぞれの症状に違いがあり、診断基準も異なる独立した障害であると、とらえられてきたということです。

しかし、幼少期にアスペルガー症候群と診断された方が後年になって自閉症と診断される脳科学の領域における研究で、それぞれの差異が認められない場合がある、症状の程度によって同じ診断名であっても生活に支障をきたす方もいればほとんど支障なく生活できる方もいる、といったことが明らかになってきました。

そのような理解の深まりから、連続体として重なり合っている症状には多様性があるという考え方である「自閉症スペクトラム障害」にまとめられたととらえられるでしょう。

(4) 自閉症スペクトラム障害の方の数

自閉症スペクトラム障害の方の数は、約100人に1~2人いると報告されています。性別では男性に多く、女性の数倍にのぼるとされています。

参考:
公益社団法人日本心理学会ホームページ
医学的見方から― ASD の診断基準
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/10/67-5-8.pdf

文科省ホームページ
5 自閉症の理解と障害の状態の把握
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/06/13/1340247_13.pdf

厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

日本大百科全書 
DSM
https://kotobank.jp/word/DSM-192156

2. 自閉症スペクトラム障害の一般的な特徴 ~自閉的な特徴とは?

「図-自閉症スペクトラム障害の一般的な特徴」

自閉症スペクトラム障害の典型的な特徴、つまり、自閉的な特徴には、対人関係の障害・コミュニケーションの障害・興味や行動の偏りやこだわりの3つがあります。ただし、「DSM-5」では、対人関係の障害とコミュニケーションの障害を、基本的には1つの特徴としてとらえていると考えられます(実際には再構成されています)。

(1) (相互的な)対人関係の障害

社会で常識とされるようなことや、暗黙のルールといったものに無頓着であるという特性です。この特性は、周囲に関係なく自由な発想ができる、孤立してもやり続けられる・やり遂げられる、周囲の感情に惑わされないといった、長所となることでもあります。

一方で、その場の空気や相手の様子などを読むことができない、周囲に配慮しながら行動することができない、あいさつや礼儀をわきまえない、間違っていても謝らないといった行動に結びつきがちです。そのため、ご自身には全く悪気はないのに、「非常識」「自己中心的」と見られやすくなり、他人の怒りをかってしまうことにつながる場合があります。

(2) コミュニケーションの障害

自分の興味のあることや、頭に浮かぶことを次々話すといった特性です。この特性は、印象に残ったことを率直に話せる、独特の言い回しなどが面白い、あることについてとことん話を続けられるといった長所となることです。しかし、それは、相手に興味があるかないかに関わらず話し続ける、相手の話はまったく聞かず一方通行で話す、相手が話している途中で他のことを始めるといった行動に結びつきがちです。

仲間と一緒に何かをやるといった場面で他人の言うことはまったく聞かなかったり、休憩時間と勉強時間などの切り替えができずに話し続けたりといった問題を起こす場合があります。

(3) 興味や行動の偏り・こだわり(パターン化した興味や活動)

 決められた手順や一度決めたルールなどに徹底してこだわるという特性です。物事に真剣に取り組む、単純作業などを嫌がらずに続けられる、規則正しく生活できる、記憶力が高い、などの長所となってあらわれる面があります。その反面、突然のスケジュール変更や中止、ルールの変更、などを極端に嫌がり、時にパニック状態になったりする場合もあります。

これは、次に何が起こるか、どんなことが起きる可能性があるかといった想像力を働かせることがニガテであることが原因です。また、例外を認めなかったり、他人の誤りを許さなかったりといったことも、同じ特性が原因であらわれがちです。

参考:
公益社団法人日本心理学会ホームページ
医学的見方から― ASD の診断基準
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/10/67-5-8.pdf

厚労省ホームページ
発達障害の理解のために
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html

内閣府 ホームページ
自閉症・発達障害の理解と対応
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/pdf/soudan/04/s6.pdf

国立精神・神経医療研究センター ホームページ
http://www.ncnp.go.jp/

3. 自閉症スペクトラム障害に見られる発達段階別の特徴

 発達段階ごとに見られる主な特徴は次のとおりです。ただし、自閉症スペクトラム障害の症状は成長とともに変化しますし、すべての症状があらわれるわけでもありません。個人差が大きい面があるということです。

(1) 乳幼児期

① 対人関係を持とうとしない

 お友だちなどと視線を合わせない、指し示す方向を見ない、呼ばれても振り返らない、同年代のお友だちといても関わりを持とうとしないといった行動が見られがちです。この結果、孤立するようなケースも多く見られます。中にはお友だちなどに積極的に働きかける場合もありますが、その場合でも、相手の反応に構わず、一方的に自分の関心事を話してしまうといった特徴が見られます。

② オウム返しなどの現象

 相手の話したことをそのまま話す「オウム返し」や、「ちょうだい」と「どうぞ」・「ただいま」と「おかえり」といった関係のある言葉を逆転させて、あるいは、行動して使うケースが見られます。

③ 強いこだわりを示す

 行動する順序や物がいつも同じ場所にあることなどに強く固執する傾向が見られます。また、文字や数字、天気図などの記号的なものに興味を持ち、機械的に記憶することもしばしば見られます。

(2) 児童期

① 対人関係がニガテ

 対人関係を深めていくことが苦手であるため、特に夏休みなどの長期の休暇期間や放課後など、普段と異なる人との交流を求められる場面などで暴力をふるってしまうなど、トラブルに発展するケースが見られます。

② 変更や突発事項に対応できない

 決められたルールの中で過ごすこと好む傾向が見られます。ただ、学校生活などでは、行事など、普段とは異なる活動を行う場合が増えてきます。このような場合に指示されたことを理解できず、また、適切に質問することができず、結果、どうしたらよいのかわからないまま活動している場合があります。このようなことがストレスとなり、朝起きられない、頭痛・腹痛などの症状などにつながっていくケースがあると考えられています。

③ 表現することがニガテ

言葉をうまく扱えず、自分の気持ちや表現することが難しい場合があります。これが、理解していないことでも質問できず、わからないまま活動する原因になっている場合もあります。

(3) 青年期

障害とうまく折り合う方法を身につけてきた場合とそうでない場合や、障害の程度などにより、症状が多様化していくと言えます。幼いうちに診断を受け、その後周囲の理解を受けながら成長できた方々は、成長とともに症状が目立たなくなる場合が多いと考えられています。強みを生かし社会で目を見張るような活躍をされている場合もあります。

一方で、次のような問題を抱える場合も見られるようです。
① 仕事が臨機応変にこなせない、職場での対人関係などに悩む
② 不安症状やうつ症状などの二次障害を発症する

参考:
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター ホームページ
ライフステージに応じた自閉症スペクトラム者に対する支援のための手引き
https://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/tebiki.pdf

厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

4. もしかしたら自閉症スペクトラム障害? と思ったら
(1) なるべく早く専門機関に相談を

自閉症スペクトラム障害の症状が見られたら、なるべく早期に専門機関での診断を受けることをおすすめします。自閉症スペクトラム障害には、これまで見てきたような特徴がありますが、その特徴に合わせた支援に関する知見は、専門機関でないと得られにくいという状況があるからです。

また、早い段階から支援を得られれば、その特徴を強みに変えて、その道の第一人者と呼ばれるほどの活躍ができる可能性も広がります。

(2) 支援機関

子どもか大人かによって、支援の中心となっている専門機関が異なります。以下が主な支援機関となります。

【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター

【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所

参考:
東京都福祉保健局 ホームページ
発達障害
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.html

5. 自閉症スペクトラム障害と診断されたら ~自閉症スペクトラム障害の治療方法

現代の医学では自閉症の根本的な原因を治療する事は不可能とされています。しかし、早期の段階から自閉症スペクトラム障害のあるご本人がその困りごとへの対応法を学んだり、保護者を中心としたご家族の方や、周囲の方々が困りごとを未然に防ぐための支援方法を学んだり、また、生活の場である学校や職場での理解が深まるといったことを通じて、症状を緩和したり、困りごとを軽減することができると考えられます。

なお、自閉症スペクトラム障害のある場合、てんかん等の合併症を伴う場合があります。このため、不安障害を抑える薬やパニックを抑える薬などが処方されることがありますが、これは自閉症スペクトラム障害そのものを治すための薬ではありません。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

6. 自閉症スペクトラム障害のある方を支援するにあたって ~支援にあたって大切なこと
(1) 診断名にとらわれない ~基本的な支援の在り方

自閉症スペクトラム障害の症状のあらわれ方は、年齢によって変わると考えられ、そのため、支援に対するニーズも変わっていくと考えられます。とはいえ、この時期にこのような発達上の変化が起きるとは一概に言うことができません。また、自閉症スペクトラム障害特有の症状が軽減しても、それは我慢を強いているだけで、そのストレスなどにより他の症状が生じる場合もあり得ます。

よって、発達段階を通じて、自閉症スペクトラム障害の症状のあらわれ方だけでなく、生活全般に渡る行動に目を配り続けることが最も望ましい在り方と考えられています。

(2) 事務的な支援での注意点 ~医学的な視点と行政上の視点での違い

 自閉症スペクトラム障害と診断され、障害者手帳も含めた何らかの福祉サービスを利用したいという場合があるでしょう。この場合、実は注意が必要です。というのも、行政や司法の場で主に使われるのは、ICD(現時点ではICD-10)での分類・診断名で、DSM(現時点ではDSM-5)での分類・診断名ではないからです。具体的な例としては、福祉サービスの利用申請書に記載するために、ICD上の診断名・コード名が必要になるケースなどがあげられます。

 このような制度上の不都合も踏まえ、支援にあたっては、医療機関をはじめとした支援機関と目的に応じた相談や、密な連携を取ること重要になると言えるでしょう。

参考:
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター ホームページ
ライフステージに応じた自閉症スペクトラム者に対する支援のための手引き
https://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/tebiki.pdf

文科省ホームページ
発達障害者支援法の施行について
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06050816.htm

最後に

 自閉症スペクトラム障害とは、「DSM-5」という、精神に関わる疾患や障害を分類する手引きの中で初めて示された、新しい概念であり、診断名です。これまで個別の診断名で判断してきたものを、「スペクトラム=連続体」としてとらえたという意味で、障害の見方に非常に大きな変化があったと言えます。

自閉症スペクトラム障害は、その特徴的な症状に、対人関係、コミュニケーション、強いこだわりなどが見られる障害で、また、100人に1~2人に見られる障害です。診断を受けていない方も含めると、非常に多くの方々が生活上の困難を抱えていらっしゃる可能性があります。

症状のあらわれ方が個別でもあることから、乳幼児期から大人・高齢期に至るまで、その変化に目を配りながら、その時々のニーズに合わせつつも、一貫した考え方に基づく支援が必要でもあると言えます。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
内閣府 ホームページ
自閉症・発達障害の理解と対応
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/pdf/soudan/04/s6.pdf

国立精神・神経医療研究センター ホームページ
http://www.ncnp.go.jp/

文科省ホームページ
5 自閉症の理解と障害の状態の把握
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/06/13/1340247_13.pdf

厚労省ホームページ
発達障害の理解のために
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html
みんなのメンタルヘルス ホームページ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

公益社団法人日本心理学会ホームページ
医学的見方から― ASD の診断基準
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/10/67-5-8.pdf

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター ホームページ
ライフステージに応じた自閉症スペクトラム者に対する支援のための手引き
https://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/tebiki.pdf

日本大百科全書 
DSM
https://kotobank.jp/word/DSM-192156

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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