注意欠陥多動性障害(AD/HD)とは?

発達障害

はじめに
発達障害は近年、その理解が少しずつ進みつつある障害です。発達障害のある方は、多くの困り事を抱えていらっしゃる一方で、それを強みに昇華して活躍されている方も多数いらっしゃいます。ここでは、そんな発達障害の一つ、注意欠陥多動性障害(AD/HD)について、その症状の主な特徴や支援の在り方などを中心にまとめています。

1. AD/HDとは?
(1) AD/HDとは?

① AD/HDとは? ~文科省の定義

文部科学省はAD/HDを以下のように定義しています。

「AD/HDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。」

ここで言う「不釣り合いな注意力」とは、活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないと言った症状のことを言います。また、「不釣り合いな衝動性、多動性」とは、じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなどの症状のことです。このような症状が、頻繁に、また、強く表れる障害だということができます。

ただ、このような症状は、AD/HD以外の広い意味での精神障害や身体疾患、虐待や不安定な子育て環境などで見られる場合もあり、診断が難しい障害でもあると言われています。

② 発達障害とAD/HDの関係

発達障害には、大きく次の3つの障害がありますが、AD/HDはそのうちの1つということになります。

1) 注意欠陥多動性障害(AD/HD)

2) 広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群など)
自閉症スペクトラム障害とほぼ同じ意味で使われています。(スペクトラムとは「連続体」の意味です)。自閉症スペクトラム障害は、典型的には、対人関係やコミュニケーションが困難で、興味や行動への偏りが見られるという3つの特徴が現れる障害です。症状の強さによって、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害などいくつかの診断名に分類されますが、大きくは同じ1つの障害単位だと考えられています。

3) 学習障害(LD)
全般的な知的発達には問題がないのに、「読む」「書く」「話す」「計算する・推論する」など、特定のことをするのが極めて困難な状態、障害です。

以上をまとめると、以下のような図で表すことができる、ということになります。

「図-AD/HDの位置づけ」

(2) AD/HDの原因

AD/HDをお持ちの方は、脳の前頭葉や線条体と呼ばれる部位で、ドーパミンやノルアドレナリンといった物質がうまく働かない、あるいは、不足してしまうといった機能障害が起こっていることが想定されています。これには、遺伝的要因も関連していると考えられています。一方で、「保護者の方の育て方が原因で、AD/HDが起きているわけではない」ということもわかっています。

(3) AD/HDをお持ちの方の数

AD/HDをお持ちの方は、学校に通う年齢の子どものうち、3~7%程度と考えられています。ただし、さまざまな調査結果がある状況でもある、というのが実情です。

参考:
文科省 ホームページ 主な発達障害の定義について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm

厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
今村明先生に「ADHD」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39
精神神経学雑誌 オンラインジャーナルホームページ
https://journal.jspn.or.jp/

ADHD・LD・アスペルガー症候群かな?と思ったら・・・、安原昭博、明石書店

2. こんな症状が見られたら
(1) 発症時期とタイプ

「図-AD/HDの3つのタイプ」

7歳までに、多動-衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が現れます。また、そのタイプは2つの症状の現れ方により、次の3つに分類されています。

① 多動-衝動性優勢型
② 不注意優勢型
③ 混合型

「ドラえもん」の登場人物である、のび太とジャイアンに由来した、「のび太・ジャイアン症候群」という、精神科医である司馬理英子氏が命名した造語があります。著書の中で「多動・衝動優勢型」を「ジャイアン型」、「不注意優勢型」を「のび太型」として表現されています。AD/HDの各タイプを直観的にとらえやすい表現ではないでしょうか。

(2) AD/HDの主な症状

「図-AD/HDの主な症状」

AD/HDの症状は、以下のように整理することができます。ただし、これらの症状がすべて出現するわけではありません。タイプの違いの他、個人差もあり、また、全く逆の症状を示すこともあります。

① AD/HDの基本的症状

AD/HDの最も基本的な症状には、大きく2つの(実際には3つに分類される)症状があります。

1) 多動性:いつも落ち着きがなく、そわそわしている
2) 衝動性:後先考えず思いつきで行動してしまう
座っていても手足をもじもじする、席を離れる、おとなしく遊ぶことが難しい、じっとしていられずいつも活動する、気になるものを見つけて道に飛び出してしまう、友達の持ち物を「貸して」「見せて」などが言えずに取ってしまう、順番を待つのが難しい、他人の会話やゲームに割り込むなどがあります。

3) 不注意:集中できず、気が散りやすい
学校の勉強でうっかりミスが多い、課題や遊びなどの活動に集中し続けることができない、話しかけられていても聞いていないように見える、やるべきことを最後までやりとげない、課題や作業の段取りが下手、整理整頓が苦手、宿題のように集中力が必要なことを避ける、忘れ物や紛失が多い、気が散りやすいなどがあります。

② AD/HDのその他の症状

基本的なAD/HDの症状に関連し、次のような症状や傾向が見られる場合があります。

1)仕事の先延ばし傾向、期限が守れない、やらなければならないことがたまる
2)感情面の不安定さ
3)ストレスに弱い
4)その場の空気が読めず、人の話が聞けない
5)自己評価が低い
6)一つのことが長続きしない
7)整理整頓ができず、忘れ物が多い
8)計画性がない・管理が不得意
9)事故を起こしやすい
10)睡眠障害と昼間の居眠り、眠っていても睡眠不足になる
11)習慣化しているクセがある
12)収集癖、依存癖など、のめり込み傾向が見られる

③ AD/HDの症状の変化 ~子どもから大人へ

子どもから大人になるにつれ、実際に見られる症状は変化していきます。一方で、大人でも子供でその特徴の本質は変わりません。つまり、多くの方は成長する中で自分なりの工夫や対策を考え、努力し、その行動を抑制するなどして環境に合わせており、結果として、表面上現れる症状が変わったのだととらえることもできるということです。

このような症状は、意識的に防ぐことができません。その結果として、多くの失敗をおかしてしまいがちです。また、失敗すると厳しく叱責されることが多く、「どんなにがんばってもうまくいかない自分」という否定的な自己イメージを持ちやすくなりがちです。このようなことが重なることで、学習面でうまくいかなかったり、対人関係に悩むようになるだけでなく、気分が落ち込んだり、不安感をコントロールできなくなるなど、他の症状を誘発する場合があります。

(3) AD/HDの診断

以下のような条件がすべて満たされたときに、AD/HDと診断されます。いずれも医師の診察で観察された行動上の特徴に基づいて行われるもので、単独で診断ができるような確立した医学的検査がないのがAD/HDの特徴でもある、と言えます。

① 「不注意」と「多動-衝動性」が、同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
② 症状のいくつかが7歳以前より見られること
③ 家庭と学校など、2つ以上の環境で、障害となっていること
④ 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
⑤ 広汎性発達障害や統合失調症など他の発達障害・精神障害による不注意・多動-衝動性ではないこと

参考:
厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
今村明先生に「ADHD」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39
精神神経学雑誌 オンラインジャーナルホームページ
https://journal.jspn.or.jp/

新版 ADHD のび太・ジャイアン症候群、司馬理英子、主婦の友社

3. AD/HDと診断されたら
(1) AD/HDの治療方法

AD/HDをお持ちの方の治療は「薬物療法」「環境への介入」「行動への介入」などを組み合わせて行うと効果が高いと考えられています。

① 薬物療法

メチルフェニデートという中枢神経刺激剤がAD/HDの多動-衝動性や不注意を軽減する可能性があるとされています。副作用として比較的多いのは、口の渇き・食欲不振・吐き気・便秘・不眠・頭痛・体重減少といったものです。その他にも、動悸や頻脈・血圧変動など循環器系の副作用が見られる場合があります。

脳の覚醒作用なしに効果があるとされるアトモキセチンという薬も処方薬として用いられる場合があります。副作用として見られるものには、食欲不振や吐き気、腹痛などの胃腸症状があります。頭痛や眠気も比較的発生しやすく、特に、飲み始めや増量時に多くみられるようです。また、動悸や頻脈・血圧上昇など循環器系に異常があらわれることがあります。重い副作用としては、肝障害が報告されています。

いずれにしても医師の指示に従って、様子を見ながら服用することが大切と言えます。

② 環境への介入

物質的介入と時間的介入の2つがあります。

1) 物質的介入
ご本人が集中しやすい環境を物理的に作る方法です。
家庭で言えば、勉強するときはご本人の好きな遊び道具を片づけ、テレビを消すなど。
学校で言えば、教室での机の位置や掲示物など工夫するなど。
いずれも、ご本人の様子を観察することやご本人の集中のしやすさといった意見を聞くことも重要と言えるでしょう。

2) 時間的介入
勉強時間や作業時間を10~15分など、ご本人が集中できそうな最小単位に区切って行っていくという方法です。休憩時間をあらかじめ決めておくといった考え方もよいでしょう。慣れてくると、ご本人だけでもコントロールできる部分があると考えられます。

③ 行動への介入

多動症状を単に押さえ込もうとしてもなかなかうまくいきません。適切な行動とは何か? 不適切な行動とは何か? を理解できるようにしていくのがポイントです。これは、本人だけではなかなかできない方法。特に周囲の方の支援が必要と言えます。

1) 適切な行動へご褒美を与える
適切な行動が取れたら、その都度、その場で褒めることで何が適切な行動を理解させる方法です。逆に不適切な行動には、報酬を与えない、なぜそれが悪いのか理由を説明する、合わせて好ましい行動を教えることが大切です。

2) 問題行動の抑制やその頻度が減ることに対してご褒美を与える
また、問題行動の抑制やその頻度が減ることに対しても褒められる環境をつくることもポイントです。たとえば適切な行動をプラス、不適切な行動をマイナスとして、それぞれをポイントにし、ポイントが貯まったら好きなモノと交換できるようにするというような方法です。目に見えるシールなどを使うことも方法の一つです。

(2) 経過(予後・治りやすさ)

AD/HDを根本的な原因から治療することはできません。薬が処方される場合は、多動-衝動性や不注意を軽減することが目的です。このため、AD/HDは、生まれ持ったその人の特性と考えた方がわかりやすいとも言えるでしょう。一方で、医療機関で適切な診断・治療を受ければ、精神的な面も含め、落ち着いた毎日をおくることが可能です。

参考:
厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
今村明先生に「ADHD」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39
精神神経学雑誌 オンラインジャーナルホームページ
https://journal.jspn.or.jp/
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構ホームページ
http://www.pmda.go.jp/

4. AD/HDがある方を支援するにあたって

「図-AD/HD、支援のポイント」

実際の支援にあたって有効と思われるポイントをまとめると、以下のようになります。

(1) まずは理解しようとすること

対症療法的な面はもちろん考えていく必要があります。しかし、何よりも重要なのは、AD/HDを持つということが一体どういうことなのかを理解しようとする姿勢でしょう。「自分にその症状が見られたら、どんな気持ちになるだろうか」などと想像してみるのもよいでしょう。

(2) 適切な配慮をする

既に治療法でも見たように、環境への介入、行動への介入でAD/HDをお持ちの方をサポートすることができます。このことを再度ポイントとしてまとめなおすと、以下のようになるでしょう。

① 具体的な方法を示す

たとえば、勉強するときなどは、集中しやすい環境を整えることが必要です。それを口で言うだけではなかなかできないもの。チェックリストなどをつくるなどすると、具体的に何をすればよいのかがわかり、環境を整えやすくなります。また、急な予定変更などはなるべく行わないよう配慮することも大切です。

② 良いところを褒め、悪いところはきちんと叱り、適切な行動を教える

「褒められること=適切なこと」、「叱られること=不適切」という関係を徹底するような方法が考えられます。この場合は、その場ですぐにが鉄則です。また、不適切な行動については、その理由をきちんと説明し、適切な行動を教えることが大切です。褒めるにしても、叱るにしても、「理由」と「次にすべき行動」とをセットで示すと考えれば、わかりやすいかもしれません。

(3) 強みを生かす

できないことではなく、できることに注目することも大切です。たとえば衝動的な行動は、「どうしてもやりたい」という強い欲求ととらえることもできます。順番を待てずに横取りしてしまったというような場合、横取りしたこと自体は不適切としてきちんと叱るべき。一方で、そんな欲求を持てたこと自体を褒められないかと考えることも重要でしょう。そのような積み重ねが、得意を見つけ、強みや才能を伸ばしていけることにつながっていくと考えられます。

参考:
厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
今村明先生に「ADHD」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39
精神神経学雑誌 オンラインジャーナルホームページ
https://journal.jspn.or.jp/

最後に

AD/HDは、決して稀な障害ではありません。主な症状として、「多動-衝動性」と「不注意」とがあり、この症状の出方の強さで、3つのタイプに分けてみるとその特徴が把握しやすくなります。いずれにしてもその症状は、本人の意志だけで改善されるものではなく、場合によってはうつや依存症など、他の障害を引き起こす可能性もあるため、適切なサポートが必要です。

何より、AD/HDがあるとはどういうことかを理解しようとする姿勢、不適切な行動を改善しつつ、適切な行動を褒めるというメリハリを持った接し方が重要になると言えるでしょう。なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
文科省 ホームページ 主な発達障害の定義について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm

厚労省 
e-ヘルスネットホームページ
AD/HD(注意欠陥/多動性障害)の診断と治療
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
みんなのメンタルヘルス ホームぺ―ジ
発達障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
今村明先生に「ADHD」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39
精神神経学雑誌 オンラインジャーナルホームページ
https://journal.jspn.or.jp/

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構ホームページ
http://www.pmda.go.jp/

ADHD・LD・アスペルガー症候群かな?と思ったら・・・、安原昭博、明石書店

新版 ADHD のび太・ジャイアン症候群、司馬理英子、主婦の友社

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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