発達障害 幼児期の発達を支援する児童発達支援という施設

発達障害

はじめに
発達障害を含む障害のある方の幼児期の発達を支援する施設・サービスの代表的なものに、小学校就学前の6歳まで方の活動の場を提供する児童発達支援があります。

ここでは、児童発達支援について、その位置づけや提供されるサービス、利用までの流れなどをまとめています。



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1. 幼児期の早期発達支援施設 ~児童発達支援とは?

児童発達支援は、発達障害を含む障害のある小学校就学前の6歳までの子どもが主に通い、必要な支援を受けられる障害児通所支援の一つです。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった支援サービスの提供を目的に、2012年の児童福祉法改正により設置されました。

それまでは、障害の種類別に施設・サービスが分かれていましたが、この改正で障害のある子どもが通える施設は年齢や目的別に以下に再編成されました。

(1) 児童発達支援
(2) 医療型児童発達支援
(3) 放課後等デイサービス
(4) 保育所等訪問支援

幼児期の早期発達支援施設

参考
厚労省ホームページ
障害児支援の体系
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000117930.pdf

2. 児童発達支援での支援範囲

児童発達支援では、次のような大きくは3つの支援を行うとされています。

(1) 発達支援

発達支援には、2つの支援があるとされています。

① 本人支援

発達障害を含む障害のある方、あるいは、その可能性がある子ども方に対する直接的な支援のことです。障害のある子どもが将来、日常生活や社会生活を円滑に営めるようにすることが大きな目標とされています。

このため、心身の健康や生活に関する領域、運動や感覚に関する領域、認知と行動に関する領域、言語・コミュニケーションの獲得に関する領域、人との関わりに関する領域の5つの領域の支援が必要とされています。

② 移行支援

発達障害を含む障害のある方、あるいは、その可能性がある子ども方が、可能な限り地域の保育・教育等の支援を受けられるようしていくとともに、同年代の子どもとの仲間作りを促す支援のことです。

障害のある方の発達の状況を評価したり、ご家族の方の意向を踏まえながら保育所等への支援を行ったりといったことが必要とされています

(2) 家族支援

家族に対する支援は、日々子どもを育てている保護者の思いを尊重し、保護者に寄り添いながら、子どもの発達に沿った支援が必要とされています。一人ひとりの障害の特性に配慮し、子どもの「育ち」や「暮らし」を安定させることが基本とされています。

(3) 地域支援

発達障害を含む障害のある方、あるいは、その可能性がある子ども方の地域社会への参加を推進するため、児童発達支援と保育所等の各関係機関とが連携を進め、地域の子育て環境や支援体制の整備しようというものです。

参考
厚労省ホームページ
障害児支援の体系
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000117930.pdf
児童発達支援ガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000171670.pdf

3. 児童発達支援の2つのタイプ
(1) 児童発達支援センター

児童発達支援センターは、児童福祉法で児童福祉施設に位置づけられている施設です。厚労省が公表している2016年のデータによれば、全国で 500カ所設置されています。

センターが保有する専門機能を活かし、地域にお住まいの障害のある方やそのご家族の方への相談、障害のある方を預かる施設への援助や助言などを合わせて行うなど、各地域における児童発達支援の中核的な役割を担っています。放課後等デイサービスを併設している施設もあります。

(2) 児童発達支援事業所

児童発達支援事業所は、利用される障害のある方やご家族の方に対する支援のみを行う身近な療育の場とされています。一部のプログラムの提供のみを行うなど、事業所ごとに提供されるサービスが異なるのが特徴で、全国に5,000施設近く設置されています。

参考
厚労省 ホームページ
平成 28 年 社会福祉施設等調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/16/dl/gaikyo.pdf
児童発達支援の現状等について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000144238.pdf
障害児支援の強化について
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaiseihou/dl/sankou_111117_01-06.pdf

独立行政法人 福祉医療機構 ホームページ
児童発達支援センター
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/jidou/handbook/service/c078-p02-02-Jidou-07.html

4. 児童発達支援で提供されるプログラム

児童発達支援で提供されるサービスは、施設によって異なります。また、保育園や幼稚園の代わりのように毎日通うタイプ、習いごとのように週に何回か通うタイプなど幅広いタイプの施設があります。

発達障害を含む障害のある方自身や保護者の状況や環境などにより、ひと月にサービス利用できる量に上限が設定されますので、利用意向などを踏まえて、どの施設の、どのサービスを利用するか検討することが必要です。

具体的な支援として、以下のようなものがありますが、これらを組み合わせて障害のある方に最適なプログラムを考えていくことになるということです。
児童発達支援で提供されるサービス

(1) 心身の健康や生活に関する領域

例)基本的生活スキルの獲得支援
身のまわりを清潔にし、食事、衣類の脱ぎ着など、生活に必要な基本的技能を獲得できるようなプログラム

(2) 運動や感覚に関する領域

例)姿勢と運動・動作の基本的技能の獲得支援
遊びながら身体を動かすなどして、姿勢の維持や運動機能の発達を促すためのプログラム

(3) 認知と行動に関する領域

例)数量・大小・色などの概念の習得支援
時間や物の数量、大きさ、形の違い、重さの違い、色の違いなどの理解を促すためのプログラム

(4) 言語・コミュニケーションの獲得に関する領域

例)手話・点字・音声・文字等のコミュニケーション手段の活用支援
手話・点字・音声・文字・簡単な表現など、多様なコミュニケーション手段を活用しながら、その場の状況理解や自分の意思を伝達できるようになるためのプログラム

(5) 人との関わりに関する領域

例)協同遊びの支援
ソーシャルスキルトレーニングや自由遊びなどを通して、友だちや周囲の人とコミュニケーションをとる方法を学ぶプログラム

参考:
児童発達支援ガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000171670.pdf

5. 児童発達支援を利用するには?
(1) 児童発達支援の対象

児童発達支援が利用できる方は、「身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童(発達障害児を含む)」とされたうえで、「主に未就学の障害のある子ども」を対象とするとガイドラインにて定義されています。

「障害がある」とされると、療育手帳などの手帳を持っていないと利用できないと思われている方もいらっしゃるようです。

しかし実際には、専門家などの意見書などを提出、「受給者証」が発行されれば、児童発達支援を利用することができます。具体的には乳幼児健診などで療育の必要があると認められた場合、保育園や幼稚園に通っているが併せて障害の特性に合った専門的な療育・訓練が必要と認められた場合などがあります。

(2) 児童発達支援、利用までの流れ

「図-児童発達支援、利用までの流れ」
児童発達支援、利用までの流れ

児童発達支援を利用するまでの流れは次のとおりです。

① 利用相談をする

市区町村の福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などに、サービスを利用したい旨を相談します。どんなサービスを利用したいかなどの聞き取りが行われることもあります。どんな目的で、いつ、どのようにサービスを利用したいか検討しておくとよいでしょう。

また、窓口では、各地域で実際のサービスを提供している事業所などの情報を提供してもらえる場合もあります。また、この相談のタイミングでは、サービスの利用申請に必要なものや申請の流れを確認しておくとよいでしょう。

② 施設見学・相談

実際に利用したい事業所を見学しましょう。体験ができる施設もあります。その際に利用プランなどについても具体的に相談するとよいでしょう。また、 事業所の意見書など地域によって申請に必要な書類がある場合は作成を依頼します。

③ 障害児支援利用計画案の作成

利用したいサービスが決まったら障害児支援利用計画案を作成します。市区町村にある相談支援事業所に行くなどして、聞き取り調査をしてもらい、受給申請に必要な障害児支援利用計画案を作成してもらう方法とセルフプランとして保護者の方などご家族の方や支援者の方が作成する方法と大きくは2つの方法があります。 

④ 申請書等の提出

 障害児支援利用計画案ができたら、その計画案と障害児通所給付費支給申請書を市区町村の福祉担当窓口に提出します。このとき、保護者の方の所得等を証明する書類、保有しているようであれば療育手帳などを提示します。

手帳を保有されていない場合、児童相談所・市町村保健センター・医療機関などの意見書などの提出が必要になる場合があります。必要な書類は市区町村によって異なりますので、必要となるものは事前に確認しておくことが大切と言えます。

⑤ 調査

児童発達支援の利用対象となるか、その条件を満たしているか、また、その子どもに必要だと考えられる適切なサービスの量(日数)について、市区町村の支給担当窓口によって検討されます。面接調査や訪問調査では、ご本人の障害や生活面での状況の聞き取りの他、サービス利用意向の聞き取りなどが行われる場合もあります。

⑥ 審査

調査結果を踏まえて、受給者証の交付対象かどうかの審査が行われます。この審査には1~2カ月程度かかる場合もあります。
 
⑦ 受給者証の交付

児童発達支援などを利用できる対象であると判断されると、受給者証が交付されます。郵送される、直接受け取りに行くなど、受給者証の受け取り方法は市区町村によって異なるようです。

⑧ 障害児支援利用計画の作成

受給者証が交付されたら、障害児支援利用計画を作成します。障害児支援利用計画案と同様、相談支援事業所で作成してもらう方法とセルフプランとして保護者の方などご家族の方や支援者の方が作成する方法とがあります。

なお、相談支援事業所では受給者証の給付決定内容、つまり、どの程度サービスを利用できるかという判定内容と、利用を希望するサービス内容とを調整、また、サービスを提供する事業所と連絡を取り合った上で、計画をつくってもらえます。

⑨ 事業者との契約・利用開始

受給者証と障害児支援利用計画を持って、実際に児童発達支援を提供する事業所に行き、サービス利用に関する契約手続きをします。契約手続きが終わると、実際のサービス利用が始まることになります。

参考:
厚労省ホームページ
児童福祉法の一部改正の概要について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsushien/dl/setdumeikai_0113_04.pdf

東京都福祉保健局 ホームページ
障害児施設
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shogai/shisetsu.html

6.児童発達支援を利用できる頻度、利用にかかる費用
(1) 利用できる頻度

児童発達支援を利用できる頻度は、全員一律ではありません。受給者証によって一人ひとり受けられるサービスの量が決められているのです。

受けられるサービス量は、障害のある方や保護者の方の状況・環境、利用意向などをふまえて審査され、ひと月に利用できるサービス量、つまり、児童発達支援利用できる日数の上限が、受給者証の発行時に決定されるのです。このサービス量の上限範囲内で、必要なサービスを組み合わせて利用計画を立てることになります。

(2) サービスの選択 ~ 障害児支援利用計画づくりのポイント

実際にサービスを選択し、計画をつくる際には、障害のある方自身の興味や発達の状況に合わせ、様々な施設でのサービスを組み合わせていくことが多いようです。

これは、施設ごとに提供されるサービスに違いがあることが主な理由ですが、相性の良い施設を探すという面もあるようです。よって、一度決めたらずっと同じサービスを利用するのではなく、様子を見ながら計画を修正していくことが大切と言えるかもしれません。

(3) 費用

児童発達支援は、受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付されることになります。つまり、利用した日数に応じてかかった費用のうち自己負担は1割ということです。なお、前年度の所得によりひと月に保護者が負担する額の上限が決められています。

つまり、利用する日数が多くなったとしても、下記の金額以上の負担は発生しないことになります。また、地域によっては独自の助成金がある場合もありますので、問い合わせてみるとよいでしょう。

① 負担上限月額

児童発達支援のような通所施設を利用する場合、所得に応じて次の4区分の負担上限月額が設定されており、ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。
負担上限月額

② そのほかの費用

施設や提供するサービス内容によって、おやつ代や制作物の材料代などがかかる場合があります。

③ 食費の減免

児童発達支援を利用する場合、食費の減免があります。

食費の減免

※一般1は、年間の世帯所得がおおむね890万円以下が目安です。

参考:
厚労省ホームページ
障害児の利用者負担
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/hutan2.html

最後に

 児童発達支援は、児童福祉法で位置づけられているサービスで、就学前の発達障害を含む障害のある方が通える施設でもあります。心身の健康や生活に関する領域、運動や感覚に関する領域、認知と行動に関する領域、言語・コミュニケーションの獲得に関する領域、人との関わりに関する領域の5つの領域のプログラムが提供されています。

ただ、すべてのサービスを一つの施設で提供しているわけでは必ずしもないため、複数の施設を目的に応じて併用するのが一般的です。

また、児童発達支援は、障害のあるご本人に対する支援だけでなく、家族の方の支援、地域の支援という役割も持っています。利用の手続きは面倒な面もありますが、障害のある方の能力を引き出すとともに、ご家族の生活の充実のためにも、積極的に利用するとよいのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
障害児支援の体系
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000117930.pdf
児童発達支援ガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000171670.pdf
平成 28 年 社会福祉施設等調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/16/dl/gaikyo.pdf
児童発達支援の現状等について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000144238.pdf
障害児支援の強化について
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaiseihou/dl/sankou_111117_01-06.pdf
児童福祉法の一部改正の概要について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsushien/dl/setdumeikai_0113_04.pdf

独立行政法人 福祉医療機構 ホームページ
児童発達支援センター
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/jidou/handbook/service/c078-p02-02-Jidou-07.html

東京都福祉保健局 ホームページ
障害児施設
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shogai/shisetsu.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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