東京都 「児童発達支援」と「放課後等デイサービス」の拡充策

発達障害

はじめに
 東京都が2020年度までに、障害のある方の学校以外の生活の場を拡充するとの方針を発表しました。このような場の拡充は国も拡大を目指してきていました。結果、全国的にもその広がりを見せている部分もあり、他の道府県においても同様の個別施策を打ち出す場合もあると考えられます。一方で、ここには実際に利用される障害のある方やその保護者にとっても課題となり得ることがあるのも事実です。

そこでここでは、東京都が打ち出した施策を押さえつつ、全国的にも課題となり得ること、実際に利用される障害のある方やその保護者の方々に注意いただきたい点などを中心にまとめています。

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1. 東京都による障害のある方の学校以外の生活の場拡充施策

「図-東京都が打ち出した施策」

(1) 施策の概要

 東京都が2020年を目標とした障害のある子どもやその保護者に対する施策として、未就学児向けの「児童発達支援」と、小学生以上が通う「放課後等デイサービス」の拡充策をまとめました。サービスを提供する事業所に対し、開設にかかる初期費用への助成を拡充して開設ペースを加速させるというものです。

(2) 東京都が個別施策を打ち出した背景

 全国的に見ても、未就学児向けの「児童発達支援」と、小学生以上が通う「放課後等デイサービス」の施設数は年々増加しています。この背景には、障害のある子どものいる保護者の方々が仕事を続けられる環境を整え、自立支援や社会との接点をつくろうとする国の目標があります。

 一方で東京都の場合、施設の定員数は増えているものの、設置済みの区市町村は全体の半数以下にとどまっているという現状があるそうです。つまり、お住まいの地域でサービスを受けられる状況にはなっていないということです。

 たしかにお住まいの地域でサービスが受けられるようになるということは、障害のあるご家庭にとって非常に重要なことでしょうし、ありがたいと感じられる施策であると言えるのではないでしょうか。よって他の道府県でも同様の施策が打ち出される可能性も大いにあるのではないか考えられます。

参考:
東京都ホームページ
東京都障害者・障害児施策推進計画(平成30年度~平成32年度)を策定しました
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/03/29/21.html

日経新聞ホームページ
障害児の居場所、20年度までに全区市町村へ 東京都
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31917650Y8A610C1L83000/

2. 障害のある方の学校以外の生活の場
(1) 主な学校以外の生活の場

では、現在、障害のある方の学校以外の生活の場にはどのようなものがあるのでしょう? 2012年の児童福祉法改正により、それまで障がいの種類別に施設・サービスが分かれていたものが、年齢や目的別に以下のようなに再編成され、その拡充が進められています。

① 児童発達支援
② 医療型児童発達支援
③ 放課後等デイサービス
④ 保育所等訪問支援

(2) 放課後等デイサービスとは?

「図-放課後等デイサービスが提供するサービス」

① 放課後等デイサービスとは? ~ 児童発達支援との違いも含め

放課後等デイサービスは、障害のある小学生~高校生までの児童・生徒が、学校での授業の終了後や、夏休みなど長期休暇のときに利用できる施設・サービスで、2012年の児童福祉法改正により新しく設置されたものです。なお、児童発達支援も同様のサービスを提供しますが、小学校入学前の未就学児が対象のサービスであるという違いがあります。

② 放課後等デイサービスの役割

放課後等デイサービスの大きな役割は、障害のある方ご自身に、社会での生活を豊かにするためのサービスを提供することです。施設ごとに提供されるサービスが異なりますが、基本的には以下のような視点でサービスを提供するよう、ガイドラインが定められています。

1) 自立支援と日常生活の充実のための活動
自立支援と日常生活の充実のための活動とは、障害のある方の発達状況に応じて、必要となる基本的な日常生活動作や、自立した生活をおくれるようにすることを目的とした活動です。障害のある方が意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験を積み重ね、自己肯定感を育めるようにするとされています。

将来の自立や地域生活を見据えた活動を行う場合には、学校で行われている教育活動を踏まえ、方針や役割等を学校とも連携を図りながら支援することが求められています。

2) 創作的活動・作業活動
創作活動では、表現する喜びを体験できるようにすることが求められています。日頃からできるだけ自然に触れる機会を設け、季節の変化に興味を持てるようにする等、豊かな感性を培うことが目的とされています。

3) 地域交流の機会の提供
地域交流の機会の提供とは、障害があるがゆえに、社会生活や経験の範囲が制限されてしまわないように、社会経験の幅を広げていく機会を提供するサービスです。他の社会福祉事業や地域で行われている多様な学習・体験・交流活動等との連携、ボランティアの受入れ等により、積極的に地域との交流を図っていくとされています。

4) 余暇の提供
余暇の提供では、障害のある方が希望する遊びや、ご本人がリラックスできるような練習などの活動を、自ら選択して取り組む経験を積んでいくことを目的に、多彩な活動プログラムを用意、ゆったりとした雰囲気の中で行えるように工夫することが求められています。

なお、ここで言う活動プログラムとは、事業所の日々の支援の中で、一定の目的を持って行われる個々の活動のことをさし、障がいの特性や一人ひとりの課題、平日・休日・長期休暇などの時期的なものに応じて柔軟に組み合わせ、実施することが求められています。

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参考:
厚労省ホームページ
障害福祉サービスの利用について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000059663.pdf
障害児支援の体系
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000117930.pdf
放課後等デイサービスガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf

3. 拡充自体は良いことではあるが・・・
(1) 全国的に拡充される放課後等デイサービス

 これまでに見てきたように、放課後等デイサービスには大きな役割が期待されており、その数はここ数年で飛躍的に増加しています。放課後等デイサービスは、制度が創設された2012年度には全国で2,540か所でした。それが2016年度には8,352カ所になっています。わずか5年で3倍以上に急増しているのです。

(2) 同じように拡充した就労継続支援A型事業所が引き起こした問題

① 就労継続支援A型事業とは?

放課後デイサービスと同じように新設されたサービスに就労継続支援A型事業所があります。

就労継続支援A型事業所とは、「少なくともその時点では一般就労が難しい障害のある方が雇用契約を結び、最低賃金が保証される中で、職員のサポートを受けながら働くことのできる障害者福祉サービス」です。制度が創設された翌年の2007年度には全国で148か所でした。それが2016年度には3,158カ所。10年足らずの間に20倍以上に急増しています。

② 就労継続支援A型事業所が引き起こした問題

就労継続支援A型事業所の急増で問題になったのは、質の低いサービスを提供する事業所の乱立です。生産活動の内容が適切でない事業所や、利用者の意向にかかわらず、全ての利用者の労働時間を一律に短くする事業所など、不適切なサービスを提供する事業所が増えたのです。

これを受け、厚労省が指定基準の見直しなどを行ったところ、発生したのが経営悪化を理由とした障害のある方の大量解雇という問題です。この問題は大々的に報道されたこともあり、ご記憶の方も多いのではないでしょうか。

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(3) 放課後等デイサービスの課題と厚労省の施策

 放課後等デイサービスも、同様の課題を抱えている事業所が多いことがわかっています。実際厚労省が、「利潤のみを追求する事業所の増加」「テレビを見せているだけ、ゲーム等を渡して遊ばせているだけといった適切ではない支援を行う事業所の増加」といった課題に対して、制度の見直しを行っています。以下はその施策の具体的な内容です。

① 施策1:経験者の配置

人員配置基準について、配置すべき職員を「児童指導員、保育士又は障害福祉サービス経験者に見直し、そのうち、児童指導員又は保育士を半数以上配置すること」とされました。

② 施策2:放課後等デイサービスガイドラインの遵守及び自己評価結果公表の義務づけ

放課後等デイサービスには運営上のガイドラインがあるのですが、その内容に沿った評価項目を設定、それに基づき自己評価を行うこと、さらに、その結果を1年に1回以上公表することが義務づけられました。

③ 施策③:情報公開の努力義務

タイムスケジュールなどの形での支援内容の公表、BS(貸借対照表)やPL(損益計算書)などの財務諸表等、財務状況がわかるものを都道府県等に提供し、事業所のHP等で公表していくことが努力義務として課されることになりました。

参考:
放課後等デイサービスガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf
放課後等デイサービスの見直しについて
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168835.pdf
資料6 放課後等デイサービス、就労継続支援A型の見直しについて
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168860.docx

(株)東京商工リサーチ
2017年「障害者就労継続支援事業等」の倒産状況
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180510_07.html

4. 放課後等デイサービスのサービス提供事業所選びの視点

「図-サービス事業所選びの視点」

(1) 淘汰は避けられないという現実

障害のある方にとっての学校以外の生活の場が拡大すること自体は、目指す社会を考えても望まれることです。一方、民間企業が淘汰されるのと同様、放課後等デイサービスの提供事業所が、その事業の質の問題から淘汰される可能性があることは否定できない事実でしょう。つまり、放課後等デイサービスを提供している事業所が、就労移行支援A型事業所のように経営破たんすることはあり得るということです。

このような事実は、放課後等デイサービスを選択するときには相応の目でサービス提供事業所を選択することが重要であることを示しています。

(2) 放課後等デイサービスのサービス停止に巻き込まれないようにするための視点

① そうは言ってもまずは提供されるサービス内容や事業所の雰囲気、人間関係が大切

放課後等デイサービスは、全国に8,000ヶ所以上設置されています。また事業所ごとに、提供するプログラムなどの支援内容や施設の雰囲気などが異なります。よって、サービス停止のリスクなどを検討する以前に、まずは次のような視点で「候補を上げること」が大切になると言えるでしょう。

1) 求めるプログラム内容と、提供されるプログラム内容とが合っているか
ご本人が興味のあることや伸ばしていきたいスキルや知識などと、事業所が提供しているプログラムの内容が合っているかという点は、事業所選びのもっとも重要な視点の一つです。このことが、利用される障害のある方にとっての将来に向けたステップになる面があるからです。

2) 事業所の環境や雰囲気
放課後等デイサービスは、利用を始めると多くの時間を過ごす生活の場にもなります。サービスを受ける上で、あるいは、サービスを通じたスキルや能力の向上をするための訓練を受けるという意味で、集中できる環境にあるか、人間関係が良好に築けるかなどを中心に、事業所の環境や雰囲気といったものがご本人に合っているかという視点も非常に大切です。

② サービス提供停止に巻き込まれるリスクを下げるための基本的な視点

とはいえ、サービスの停止リスクなどを考えた場合、単に求めるプログラムが提供されているから、事業所の環境や雰囲気がよかったからだけでは、その事業所を選択するわけにもいかないのではないでしょうか? つまり、自衛の視点が必要だということです。

自衛のための基本的な視点は、「公表義務のある情報の整備状況」と、公表の努力義務として課されている「支援内容」と「財務状況」の確認の3点です。

1) 公表義務のある情報の整備状況
既に見たとおり、ガイドラインの遵守状況は1年に1回以上自己評価を行い、その結果を公表することが義務づけられています。これがないのは当然ながら法令違反です。この義務を果たしていない事業所は、やはりそれなりのリスクがあることを想定せざるを得ないでしょう。

また、年に1回ではなく2回以上、自己評価結果を公表している事業所は、ある意味ではサービスに対して自信があったり、あるいは、サービスの改善に積極的であったりする場合が多いと考えられます。公表する情報は自己評価。その評価結果以上に、情報提供の頻度に事業所の姿勢があらわれる面もあるのです。

2) 支援内容の公表状況
 タイムスケジュールなどの実際の支援内容は、現在のところ公表が努力義務として課されています。逆に言えば、公表していないこと自体は法令違反とまでは言えないのです。とはいえ、努力義務とされていることに対応していない、ということは、何らかの問題を抱えている可能性を否定できないということです。平日、休日、長期休暇などごとにその内容が公表されていれば、ある程度安心できると言えるでしょう。

3) 貸借対照表と、損益計算書または活動計算書などの財務諸表を公表しているか
 財務諸表も、現在のところ公表は努力義務の範囲です。支援内容と同様、きちんと公表されていることは安心の材料と言えます。

 また、財務諸表の中では、特に損益計算書または活動計算を確認いただくことが重要です。その中で特に確認いただきたいのは、売上高と営業利益です。売上高に対してあまりに営業利益が多いという場合、サービス自体に必要なお金をかけていない可能性もあります。

 利用候補となったサービス事業所の、売上高に対する営業利益の割合を比較してみると、その地域での妥当な状態がある程度推測できるのではないかと考えられます。

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参考:
放課後等デイサービスガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf
放課後等デイサービスの見直しについて
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168835.pdf
資料6 放課後等デイサービス、就労継続支援A型の見直しについて
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168860.docx

最後に

 東京都が、2020年度までに障害のある方の学校以外の生活の場として、放課後等デイサービスや児童発達支援を拡充する施策を公表しました。近年の動向から、他の道府県でも同様の施策を行う自治体が拡大する可能性もあり、障害のある方にとって、また、その保護者の方々にとって、スキルや能力を磨ける場やその機会が増えることが考えられます。

 もちろんこのこと自体は、目指す社会を実現する上で非常に良いことと言えるでしょう。しかし一方で、就労継続支援A型事業所が、その急増もあって質が伴わず、経営破たんするといったことが起きたことと同様の事態が、放課後等デイサービスでも起こる可能性はあると言えるでしょう。

 こういった問題に巻き込まれないようにするためには、サービスを提供する事業所を見る目を養うことが大切。提供しているサービス内容だけではなく、公表義務のある自己評価の実施頻度とその内容、努力義務とされているタイムテーブル等のサービス内容や財務諸表の公表に積極的であるかどうかなどが、サービス事業所を見極めるにあたっての一つの大きなポイントになると言えるでしょう。

 なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
障害福祉サービスの利用について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000059663.pdf
障害児支援の体系
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000117930.pdf
放課後等デイサービスガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf
放課後等デイサービスの見直しについて
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168835.pdf
資料6 放課後等デイサービス、就労継続支援A型の見直しについて
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168860.docx

(株)東京商工リサーチ
2017年「障害者就労継続支援事業等」の倒産状況
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180510_07.html

日経新聞ホームページ
障害児の居場所、20年度までに全区市町村へ 東京都
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31917650Y8A610C1L83000/

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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