精神疾患・精神障害の治療法 オペラントの条件付けと認知行動療法

精神障害

はじめに
 精神疾患・精神障害の治療法として、「オペラントの条件付け」や「認知行動療法」などがあります。 ちなみに、精神疾患・精神障害における治療法がいくつあるか、ご存知の方はいらっしゃるでしょうか? 

実は、体系づけられているもの、科学的にその効果が証明されているものだけでも多数あり、その実際の数を正確に示すことは難しい状況にあります。とはいえ、各療法の背景となる基本的な理論というものは存在します。

ここでは、そのような基本的な理論のうち、心理や行動面にはたらきかける治療法の基本的理論となっているオペラントの条件付けについて、そもそもオペラントの条件付けとはどのような理論なのかと、認知行動療法との関係などについてまとめています。

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1. 認知行動療法とは?
(1) さまざまな精神疾患・精神障害の治療法

① 精神疾患・精神障害におけるさまざまな治療法

 薬物療法、精神療法、自律訓練法、認知療法、認知行動療法、カウンセリング療法、精神分析療法、催眠療法、森田療法、ペアレント・トレーニング、作業療法、遊戯療法、介護療法・・・これらはすべて、精神疾患・精神障害の治療法です。ここに上げただけでも、多くの治療法があることがわかるでしょう。

② 精神疾患・精神障害の治療アプローチ

「図-精神疾患・精神障害の治療アプローチ」

これだけ多くの治療法がある理由として、各治療法は、それぞれ独自の理論を背景に、それぞれの疾患・障害に対して、個別の治療アプローチからその治療法が考案されてきたことが上げられます。その結果、個別の治療法の特徴、つまり、何に重点が置かれるかといったことには違いが生じることにつながっているわけです。

一方で、各治療法には共通点も多くあります。つまり、それぞれの考え方を出発点に開発されてきた効果の見込める治療法は、結局は同じような視点で整理できる面もあるということです。各治療法を整理する視点としては、主に次のようなものがあります。

1) 対症療法と根本課題への働きかけ
 精神疾患・精神障害には、抑うつや不安などの気分や、暴力行為などに代表される問題行動といった症状が、その疾患・障害ごとに見られます。これらは言わば表面的な症状です。しかし実際には「そのような症状が見られる心理面、つまり精神面での障害」があると言えます。

 そこで、精神疾患・精神障害の治療アプローチとしては、表面的な症状に対して行う治療と、根本問題に対して行う治療と、大きく2つの側面から行うのが一般的になります。逆に言えば、各治療法は2つの視点のうち「どちらに比重を置いたものなのかという視点で分類することができる」ということです。

2) 薬物療法と認知や行動面へ働きかける治療
 「治療」と言うとすぐに思いつくものに、外科的手術や服薬があるでしょう。しかし、よくよく「治療」というものを考えると、他にもリハビリテーションなどの治療を受けることに思い至るのではないでしょうか。

また、精神疾患・精神障害は、疾患・障害の対象が脳のまた働き、つまり、脳が指示を出すことによって生じる心理面や行動面ということから、心理面や行動面に対する治療が必要になるということ。このことから、薬物により脳に働きかけるだけでなく、認知や行動面から脳に働きかけるアプローチが開発されてきたという経緯があるのです。

3) ご本人への治療、集団での治療
 また、精神疾患・障害のあるご本人と治療者との1:1の人間関係を基礎にした治療法と、精神疾患・障害のある方々同士の働きかけ合いによる効果を見込む集団精神療法とに分類することもできます。

(2) 認知行動療法とは?

 心理面や行動面にはたらきかける治療法としての代表は、認知行動療法です。その名のとおり、認知や行動にはたらきかける治療法であり、また、根本課題へ働きかける治療法である側面が強い治療法とも言えます。

精神疾患・精神障害のある方は、気持ちが大きく動揺したり辛くなったりした時に、ある意味では「反射的に」頭に浮かんでしまう「思考」があり、それが精神疾患・精神障害に見られる症状の原因となっているとされます。

そのような思考を「自動思考」と言いますが、認知行動療法は、そのような「思考」を最終的なターゲットとして、行動面からはたらきかけていくのです。

具体的には、「自動思考」によって生じる「考え」について、それがどの程度現実と食い違っているかを検証、「他の考え方があること、できること」を知り、選択肢を増やすことを通じて、症状としてあらわれる行動や現象を変えていく、というアプローチを取っていきます。実際の治療ステップは、以下のようになります。

① ご本人と治療者との1:1の人間関係を土台に、ご本人の困りごと、問題点、強みや長所を洗い出し、治療方針を立てる
② 生活のリズムを作る、自信を持つ、他者と安定した関わりを持つ、適応力やストレス耐性を強化することなどを目的に、行動的技法を用いて治療する
③ 自動思考に焦点をあて、ご本人の根拠していること、と、その根拠に対する反証とを比較・検証することを通じて、「他の考え方があること、できること」を知り、好ましい行動ができる場面を増やす

参考:
厚労省
心の健康
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html

認知行動療法センター
認知行動療法とは
http://cbt.ncnp.go.jp/guidance/about

日本認知療法・認知行動療法学会
http://jact.umin.jp/manual.shtml

2. オペラントの条件付けとは? ~ 認知行動療法の基本となるモデル
(1) 人の能動的な行動と受動的な行動

 人の認知や行動面にはたらきかける治療法には、2つのアプローチが考えられてきたという歴史があります。その一つは、人間の行動の「受動的な側面」からのアプローチです。「パブロフの犬」という実験をご存知の方は多いのではないでしょうか? 

この実験は、「犬に特定の音を聞かせ、その後餌を与えることをくり返すと、その音を聞いただけで、犬は唾液を出すようになる」というもの。この実験のポイントは、他者から刺激により、唾液を出すという自分の生理的な反応が引き起こされることを示している点です。

犬が唾液を出すという生理的な反応は受動的な反応、受動的な行動であるということです。つまり、この側面を利用して、精神疾患・精神障害の治療に活かそうというアプローチが考えられるわけです。

しかし、人間の行動は、受動的なものだけではありません。自らが主体となって起こす行動、つまり、能動的な行動があります。この点からも、精神疾患・精神障害の治療に活かそうとするアプローチが考えられるでしょう。

(2) オペラントの条件付けとは?

① オペラントの条件付けとは?

オペラント条件付けとは、認知や行動面へ働きかける治療法の基本的なモデルで、行動主義心理学の基本的な理論とされています。そして、「人間の能動的な行動を促すためのモデル」でもあります。

つまり、自主性や主体性を育むことを目的にした教育手法の基本モデルとも言え、オペラントの条件付けを基本モデルとして発展したのが、認知行動療法と言われているのです。ちなみに、「オペラント」とは、自発的な行動を意味する「オペレーション(Operation)」をもじった言葉と言われています。

② ある一つの行動を分解する

実はある一つの行動というものは、

1)「刺激:どのような条件や状況のとき」
2)「反応:どのような行動が見られ」
3)「反応の結果:どのようなことが起きたのか」

の3つに分解することができます。

オペラントの条件付けでは、報酬や罰といった「反応の結果」、つまり、「行動の結果として得られるものや与えられるものに適応して、自発的に行動を行うようになること、つまり、<反応>できるようになること」を、「学習すること」として理論づけています。現在では、動作や運転などの技能訓練、嗜癖や不適応行動の改善、障害児の療育プログラム、身体的・社会的リハビリテーション、e-ラーニングなど、幅広い領域で応用されています。

③ オペラントの条件付けの全体像

「図-オペラントの条件付け、その全体像」

 オペラントの条件付けにおける学習のパターンには、大きくは次の4つのものがあるとされています。それぞれの学習の方法についてはこの後見ていきますが、まずは、少なくとも4つの学習方法を組み合わせて、指導・育成をすることが必要になるのだという点を押さえてください。

1) 正の強化
2) 負の強化
3) 正の弱化
4) 負の弱化

なお、ここで言う「強化」とは、行動に対して積極的になることを言います。一方「弱化」とはその逆に行動に対して消極的になることを言います。

④ 反応を促す刺激

 先に、行動は、「刺激」「反応」「反応の結果」の3つの要素に分解できることを確認しました。実はあるときの「反応の結果」は、次に似たような場面で「反応」する際の「刺激」というとらえ方ができます。オペラントの条件付けでは、この「刺激」を2つに分類しています。

1) 強化刺激(好子・強化子とも言います)
「お小遣いをもらった」「反響があった」など、いわゆるご褒美のことを言います。「ホメられる」ことも、この強化刺激にあたります。

2) 嫌悪刺激(嫌子・罰子とも言います)
「叱られた」「無視された」「好きなことをさせてもらえなくなった」「悪い印象を持った」など、罰や、行動を消極的にした要因のことを言います。

⑤ オペラントの条件付けにおける4つの学習パターン

 ここまで見てきたことを用いて、オペラントの条件付けにおける4つの学習パターンを確認していきましょう。

1) 正の強化
ホメられることやご褒美といった強化刺激を与えられることにより、行動が強化されることを言います。たとえば、

お手伝いをした → ホメられた → お手伝いを率先して行うようになった

という場合、「ホメられる」という強化刺激が与えられたことで、「お手伝い」という行動が強化されています。

2) 負の強化
「叱られる」などの嫌悪刺激を取り除くことにより、行動が強化されることを言います。たとえば、

 手伝いをしないと叱るというルールを作った → 叱られたくない → 手伝いをする

という場合、「叱られるというルール」が実行されることをなくすこと、つまり叱られるという嫌悪刺激を回避することを目的に手伝いをするという行動が強化されています。

3) 正の弱化
「叱られる」などの嫌悪刺激を与えられることにより、行動が弱化されることを言います。たとえば、

 ルールを破る → 叱られる → ルールを守る

という場合、「叱られる」という嫌悪刺激を与えられたことにより、「ルールを破る」という行動が強化されています。

4) 負の弱化
ご褒美などの強化刺激を取り除くことにより、行動が弱化されることを言います。たとえば、

何かを欲しいとごねた → 無視された → ごねるのをやめた

という場合、「希望を聞いてもらう」という強化刺激が与えられず、無視されたことにより「ごねる」という行動が弱化されています。

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参考:
J-STAGE
学びの場が生まれるとは
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arepj/54/0/54_153/_pdf

労働安全衛生総合研究所
行動分析学との遭遇
http://www.jniosh.go.jp/publication/mail_mag/2011/36-3.html

立命館大学人間科学研究所
「障害」と行動分析学
http://www.ritsumeihuman.com/uploads/publication/ningen_02/02_011-019.pdf

Kumano’s Information Base
オペラント学習と行動療法
http://hikumano.umin.ac.jp/hosei/CBT4.pdf

3. オペラントの条件付けとペアレント・トレーニング

オペラントの条件付けを上手く利用した認知行動療法の一つとして、ペアレント・トレーニングがあります。

(1) ペアレント・トレーニングとは?

ペアレント・トレーニングは、保護者の方を対象に、子どもの適切な養育技法を指導するプログラムの総称です。そもそもは子育てに悩み、ストレスを感じ、また不安を抱える保護者の方に、子どもとの適切な関わり方を教えるものとしてアメリカで開発されたものです。

つまり保護者の方に子どもの養育技法を身につけてもらうことが主眼となっているプログラムだということなのですが、そのポイントは「子どもが主体的に好ましい行動を選択するように導くこと」と言えるわけです。

(2) ペアレント・トレーニングに見られるオペラントの条件付けの適用 ~ ペアレント・トレーニングに見られるホメ方、計画的な無視の仕方、指示の出し方

「図-オペラントの条件付けのペアレント・トレーニングへの適用」

ペアレント・トレーニングでは、子どもの行動を、「増やしたい行動」「減らしたい行動」「止めさせたい行動」の3つに分け、それぞれの対応方法を学んでいきます。この対応方法で「オペラントの条件付け」が利用されています。

① 増やしたい行動の場合

基本的にはホメる、ことになります。ホメられることによって、「どのような行動をとればホメられるのか」を理解させるということです。このとき、くり返すこと、が重要。何が好ましい行動なのかということを理解していくことにつながるということです。オペラントの条件付けに当てはめれば、「正の強化」に当たります。

② 減らしたい行動の場合

「計画的な無視」、「次にすべき行動の指示」、「その子どもが好むことを与えない」といった対応をします。計画的な無視とは、事前に明確に位置づけた「減らしたい行動」について、その行動をとった場合は無視をするということです。これは、オペラントの条件付けに当てはめれば、「負の弱化」に当たるものです。

③ 止めさせたい危険な行動の場合

まずは、子どもの視線に入るよう近づき、視線を合わせ、冷静に落ち着いた声で、その行動は止めなければならない危険な行動であることを、伝えます。さらにその行動をやめるまでの時間的な猶予とその行動をやめなかった場合に子どもが失うもの、たとえば、好きなことがやれなくなるといったことを提示します。

それでもやめなかった場合、実際に提示した「失うもの」を実際に行います。これは、オペラントの条件付けに当てはめれば、「負の弱化」と「正の弱化」の組み合わせに当たるものです。

(3) ペアレント・トレーニングのポイントは「徹底」

 ペアレント・トレーニングでのポイントは、何よりも「徹底すること」です。

たとえば、一度や二度、増やしたい行動をホメるだけでは、子どもはその行動を主体的に選択するようにはならないということです。また、一貫した対応を取ることも重要。たとえば、減らしたい行動について、「ある時は無視されたけれど、ある時はしてもらえた」というようなことが起こると、効果が得られにくくなると言われています。

子どもの中で混乱が生じるからであり、何回かに1回の割合ではしてもらえるという期待を生む結果になるからでもあります。「徹底」は非常に重要です。「もう大丈夫かな」と思いたくなるのは当然でしょう。しかし、その判断は、治療の場合であれば医師にも相談しながらすべきと言えるでしょう。

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参考:
J-STAGE
学びの場が生まれるとは
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arepj/54/0/54_153/_pdf

労働安全衛生総合研究所
行動分析学との遭遇
http://www.jniosh.go.jp/publication/mail_mag/2011/36-3.html

立命館大学人間科学研究所
「障害」と行動分析学
http://www.ritsumeihuman.com/uploads/publication/ningen_02/02_011-019.pdf

Kumano’s Information Base
オペラント学習と行動療法
http://hikumano.umin.ac.jp/hosei/CBT4.pdf

最後に

 精神疾患・精神障害の治療法は多数ありますが、中でも心理面や行動面にはたらきかける治療法の基本的なモデルとされているのがオペラントの条件付けです。

精神疾患・精神障害の治療の大きな目的は、ご本人が主体的に好ましい行動を選択するようになること。この「主体的な行動の選択」を促す基本が、オペラントの条件付けであり、医療機関で行われる認知行動療法の背景的理論にもなっている他、自分たちでできるペアレント・トレーニングにも、このオペラントの条件付けの考え方が適用されています。

オペラントの条件付けを背景とする治療において重要なのは、「徹底」です。「この行動を選択したい」と自動的に思えるようになるまで、粘り強く対応することが非常に重要になるのです。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考:
厚労省
心の健康
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html

認知行動療法センター
認知行動療法とは
http://cbt.ncnp.go.jp/guidance/about

日本認知療法・認知行動療法学会
http://jact.umin.jp/manual.shtml

J-STAGE
学びの場が生まれるとは
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arepj/54/0/54_153/_pdf

労働安全衛生総合研究所
行動分析学との遭遇
http://www.jniosh.go.jp/publication/mail_mag/2011/36-3.html

立命館大学人間科学研究所
「障害」と行動分析学
http://www.ritsumeihuman.com/uploads/publication/ningen_02/02_011-019.pdf

Kumano’s Information Base
オペラント学習と行動療法
http://hikumano.umin.ac.jp/hosei/CBT4.pdf

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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