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もしかしたらこころの病気? と思ったら ~精神障害を調べるとき、もっとも大切なこと

精神障害

はじめに
「もしかしたら、(知的障害、発達障害を含む精神障害など)こころの病気ではないか?」
そう思ったときに、恐らく最初にするのは色々な情報を集めることではないでしょうか? ただ、調べ始めるとすぐわかるのですが、世の中には本当にたくさんの「こころの病気に関する情報」があります。手あたり次第情報を入手することで、かえって混乱してしまうこともあるかもしれません。不安や心配で一杯になるかもしれません。でも、そんなときだからこそ、目的に合わせて、正しい情報を入手していくことがとても大切です。

1.精神障害は親のせい、というわけではない ~ 精神障害が起きるメカニズム

精神障害(≒こころの病気)は、ひと言で言うと「脳の病気」です。遺伝、その人の気質・性格とストレスや生活環境などが組み合わさり、脳内の神経の情報を伝達する物質(神経伝達物質)のバランスが崩れることによって引き起こされると考えられています。つまり、「誰にでも起こり得る病気」であり、親のしつけや育て方の問題ではないのです。

参考:みんなで考える障害者と権利
公益社団法人日本精神保健福祉士協会
http://www.japsw.or.jp/ugoki/hokokusyo/20110219-kenri/all.pdf

2.精神障害者の数

精神障害者の数は、392万人(平成26年)。この数は、7年前と比較して70万人以上増加しています。特に、20歳から64歳で20万人以上、65歳以上では40万人以上増加していることも「誰にでも起こり得る病気」であることを表しています。

参考:平成28年度版障害者白書
内閣府 http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h28hakusho/zenbun/index-w.html

3.精神障害に関する世の中の情報

精神障害に関する情報は、大きく次のように区別することができます。

同じ精神障害に関する情報であっても、様々な視点からの情報があります。
例えば、医学の役割は「病気を特定し、治療していく」ことです。一方、福祉サービスの役割は「地域社会で(いわゆる健常者と障害者とが)共に生きていけるよう、福祉サービスの充実等、障害者の日常生活と社会生活を支援する」こと。つまり、それぞれの役割に応じた情報発信がされているということなのです。

世の中にある精神障害に関する情報は、どれか一つだけが正しい、というわけではありません。敢えて言うなら、視点によって正しさが異なるのです。ですから、「どういう立場の人が」「どんな視点で」「何の情報を発信しているのか」に注意しながら、目的(=●●したい)に合わせて情報を見極めて利用することがとても重要になります。

4.同じ「精神障害」という言葉でも違いがある!

情報を利用する際は、「言葉の定義=使い方・使われ方」にも注意が必要です。一般的に使われている言葉の意味と違う専門的な意味で使われていたり、同じ言葉でも使われる場面で意味が異なっていたりするからです。

(1)正常と異常、異常と障害の関係

異常とは、平均からある程度「外れたレベルの状態」であることを指します。「正常」という基準の範囲の外にあればすべて「異常」。決して優劣の問題ではありません。
異常の中に、障害は含まれます。異常のうち、何らかの治療や管理が必要となっている状態のことを障害と評価する、ということです。

(2)「精神障害」という言葉の大きく2つの使われ方

では、精神障害とは一体何を指すのでしょう? 実は「精神障害」という言葉には大きく2つの使われ方があります。


参考:内閣府 ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)

①使われ方1:「広い意味」での精神障害 知的障害と発達障害、「狭い意味」での精神障害をすべて含めた多彩な障害として扱われるケース。WHOの定めた疾病分類であるICD-10や米国精神医学会の定めたDSM-Ⅳに記載された精神医学上の言葉で、医療の視点で書かれている情報を中心に使われることが多い。

②使われ方2:「狭い意味」での精神障害 発達障害、知的障害、精神障害、その他の障害は、それぞれ別のものとして扱われるケース。主に行政や福祉サービスの提供上、対象を区別するために使われることが多い。

その情報が医療の視点で書かれているか、あるいは福祉サービスの視点で書かれているかに注目すると「精神障害」という言葉がどんな意味で使われているか、判別しやすくなると言えるでしょう。

5.広い意味での「精神障害」に見られる主な症状

ひと言で「精神障害」と言っても、その症状は様々です。以下のような症状が長く続いたり、生活する上で支障が出ていたり、つらくて苦しいといった場合、「精神障害」の可能性があります。ただ、症状があるからといって病気とまでは言えない場合もあるということ、そして、病気と診断されても福祉サービスの対象になるほどではない場合もあるということを、十分理解しておくことが必要です。

(1)身体面の症状

疲労・全身倦怠感 (体がだるい、重い、疲れがとれない、など)
動悸・めまい(心臓がどきどきする、息苦しい、めまいがする、など)
頭痛(頭が痛い、ずっしり重く感じる、ズキズキ痛む、など)
不眠(寝つけない、何度も目が覚める、など)
食欲不振(おいしく食べられない、何も食べたくない、など)

(2)心理面の症状

憂鬱(気持ちがしずむ、楽しいことがない、など)
不安や緊張(気持ちが落ち着かない、どきどきして心細い、など)
怒り(イライラする、怒りっぽくなる、など)
幻聴(誰もいないのに声が聞こえる、など)

(3)生活・行動面の変化

生活の乱れ(服装の乱れ、昼夜逆転、不規則な生活、など)
行動の変化(ミスが増える、ぼんやりしている、時間通りにできない、など)
自傷行為(自分を傷つける、抜毛、など)
ひきこもり(外出したくない、人に会いたくない、など)

参考:厚労省、みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

6.広い意味での「精神障害」を持つ方に対する支援

「精神障害=誰にでも起こり得ること」という理解は、まだまだ十分とは言えない状況です。その一方で、精神障害を持つ方を保護・支援するしくみは、少しずつ拡充されてきています。また、介護を含む日々の生活、住まい、保健や医療、教育、仕事、税金など、精神障害のある方が、個人としての尊厳を保てるだけの日常生活又は社会生活を送れることを目的に、支援の領域や内容も整理されてきています。

(1)精神障害のある方の生活を保護するしくみ ~ 法律

精神障害のある方の生活を守る主な法律として、以下があります。

①障害者基本法: 狭い意味での精神障害だけでなく、身体障害や知的障害も含めた障害のある方の自立及び社会参加の支援等のための施策について、基本原則をまとめた法律です。

②障害者総合支援法: 「共生社会の実現」や「可能な限り身近な地域で必要な支援を受けられる」といった基本理念を定め、障害福祉サービスを受けられる障害者の範囲を身体・知的・精神(発達障害含む)の各障害のある方から一部の難病を持つ方にも拡大、障害に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示す区分の設定、自立支援・地域生活支援といった支援内容を規定した法律です。

参考:独立行政法人 福祉医療機構 WAMNET
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/appContents/wamnet_shofuku_explain.html

③精神保健福祉法: 狭い意味での精神障害のある方の医療及び保護を行うこと、社会復帰や自立・社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うことなど、福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律です。精神障害者保健福祉手帳に関する法律でもあります。

参考:厚労省、みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/nation/law.html

(2)精神障害の方の生活を保護するしくみ ~ 手帳制度・年金制度

精神障害の生活を守る具体的なしくみとして、以下のようなものがあります。

①精神障害者保健福祉手帳: 何らかの精神疾患・障害(てんかん、発達障害などを含む)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を対象とする仕組み(認定制度)で、障害の程度により1~3級の等級があります。税金の控除・減免、手当の支給、公共料金等の割引、医療費の助成などが受けられます。

参考:厚労省、みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

②障害年金: 病気やケガで生活や仕事などが制限される場合に受け取ることができる国の公的な年金です。初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。障害の程度により1~3級の等級があります。

参考:日本年金機構
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html

7.「精神障害として診断されること」と「精神障害のある方として福祉サービスを受けること」との違い

6で示したとおり、精神障害の方を保護・支援するしくみは整備されてきています。しかし、仕組みを利用してサービスを受けるまでには、①各機関にそれぞれ申請し、②それぞれの機関による審査を経て、③各福祉サービスの提供対象であることを認定される、というステップを踏む必要があります(「それぞれ」というのがポイントです)。一つの理由は、精神障害があっても、社会生活上の支援が必要であるとは限らないから、他にも一部の福祉サービスが知的障害向けサービスと重複している、サービスを提供する機関が違い認定する基準も等級の意味も違うなどの理由があります。「(何らかの)精神障害と診断されたからと言って自動的にすべての福祉サービスが受けられるわけではない」ということに注意が必要です。

8.相談機関

このような言葉の使い方による混乱を避ける意味でも、相談することはとても大切です。「もしかしたら、(知的障害、発達障害を含む精神障害など)こころの病気ではないか?」と思ったとき、主な相談窓口は以下のような行政機関と医療機関になります。

(1)行政機関

①保健所・保健センター: こころの健康、保健、医療、福祉に関する相談、未治療、医療中断の方の受診相談、思春期問題、ひきこもり相談、アルコール・薬物依存症の家族相談など幅広い相談を行っています。
②精神保健福祉センター: 精神保健福祉全般にわたる相談を行っています。都道府県・政令指定都市ごとに1か所ずつあります。
③いのちの電話: 自殺を考えている方から電話を通して悩みを聴く窓口です。
④各市町村の窓口: 障害福祉サービスを利用したい場合、また自立支援医療(精神通院医療)の申請、精神障害者保健福祉手帳の申請の窓口です。
⑤地域活動支援センター・相談支援事業所: 人関係や仕事のことなど、様々な生活上の悩みについて相談できます。障害福祉サービスの利用のための情報提供や支援をしています

まとめ

いかがでしたか? 精神障害のある方を支援する体制や範囲などは、徐々に整理・拡充されています。一方で、まだまだ過渡期とも言えます。言葉の使い方などにバラツキが出ているのも事実です。「精神障害」という言葉ですら、使われ方に大きく2つの意味があること、使われ方次第で対象となるかならないかが変わったり、解釈が変わったりしている面があります。

このような状況の中で何より重要なのは、目的に合わせて必要な情報を手に入れることです。精神障害は、一人で向き合うような病気ではありません。治療を受けるにせよ、福祉サービスを受けるにせよ、また必要な相談をするときにも「まずはどういう意味で精神障害という言葉を使っているか」を意識すると、より早く、正確で、必要な情報を入手できるようになるでしょう。
この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

みんなで考える障害者と権利・公益社団法人日本精神保健福祉士協会
http://www.japsw.or.jp/ugoki/hokokusyo/20110219-kenri/all.pdf

内閣府・平成28年度版障害者白書
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h28hakusho/zenbun/index-w.html

内閣府 ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/h19-2/html/ua_mkj_pdf.html

厚労省・みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

独立行政法人 福祉医療機構・WAMNET
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/appContents/wamnet_shofuku_explain.html

日本年金機構
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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