精神障害者保健福祉手帳とは? ~精神障害のある方を支える福祉サービス

精神障害者保健福祉手帳
精神障害

はじめに
精神障害のある方を支える福祉サービスの1つに、精神障害者保健福祉手帳があります。この手帳を申請・取得することで、さまざまなサービスを受けることができます。

ここでは、そんな精神障害者保健福祉手帳について、制度のあらましや受けられるサービスの内容などをまとめました。



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1. 精神障害のある方を支える福祉サービス面での主な制度

「図 支援の範囲と制度」
精神障害の支援の範囲と制度
精神障害のある方に対しては、さまざまな公的支援制度があります。主な支援制度としては、以下のようなものがあります。

(1) 医療費を助成する制度

① 自立支援医療: 通院、投薬、訪問看護などの医療費の経済的負担を軽減する制度です。自立した生活を送るための支援を受けるための認定をする側面もあります。

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精神障害のある方を支える医療制度
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(2) 日常生活をおくる上での経済面の支援をする制度

① 特別障害者手当:

日常生活において常時特別な介護を必要とする20歳以上の方ご本人に、重度の障害のため必要となる精神面や物の面での負担の軽減目的として手当を支給する制度です。

② 特別児童扶養手当:

精神又は身体に障害を持たれている20歳未満の方を家庭で養育している保護者の方に、手当を支給する制度です。

③ 障害児福祉手当:

精神又は身体に重度の障害があり、日常生活において常時介護を必要とされる在宅の20歳未満の方ご本人に、手当を支給する制度です。

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精神障害のある方を支える福祉サービスと経済的支援
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精神障害のある方を支える各種の社会手当
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(3) 自立した生活を送るための支援制度

① 介護給付:

日常生活をおくる上で必要となる介護サービスを受けられるとともに、その金銭的な負担を制限(自己負担額に上限を設定、それ以上は公的に補助)する制度です。

② 訓練等給付:

日常生活をおくるために必要となる訓練や就労するために、必要となる訓練などのサービスを受けられるとともに、その金銭的な負担を制限(自己負担額に上限を設定、それ以上は公的に補助)する制度です。

③ 相談支援給付(地域移行支援・地域定着支援):

施設に入所されている方などが、退所し地域社会で生活できるよう各種相談や移行体験などを無料で受けられる制度です。支援事業者に対して給付金が支払われます。

※相談支援給付には、他にも、計画相談支援・障害児相談支援、障害者相談支援事業、居住サポート事業、成年後見制度利用支援事業といった支援があります。

(4) 精神障害があることを認定する制度:精神障害者保健福祉手帳

参考:厚労省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/index.html

参考:厚労省 みんなのメンタルヘルス総合サイト
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

2. 精神障害者保健福祉手帳とは?
(1) 精神障害者保健福祉手帳とは?

精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。精神障害のある方の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には様々な支援サービスがあります。

精神障害者保健福祉手帳は、精神保健福祉法(正式名称:「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」)の下に定められている制度です。

精神保健福祉法は、医療及び保護を行うこと、社会復帰や自立・社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うことなど、福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律です。

(2) 対象となる方

次のような精神障害により、長期にわたり日常生活や社会生活への制約がある方が対象です。

統合失調症
気分障害(うつ病・そううつ病など)
てんかん
薬物やアルコールによる急性中毒又はその依存症
高次脳機能障害
発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
ストレス関連障害 など

てんかんや発達障害のある方なども、精神障害者保健福祉手帳が交付される場合がある対象になっています。

一方で、知的障害があり、上記の精神疾患がない方については療育手帳制度があるため、手帳の対象とはなりません(知的障害のある方でも対象になる場合があるということです)。

また、手帳を受けるためには、その精神障害があると初めて診断されたときから6ヶ月以上経過していることが必要になります。

(3) 等級

精神障害者保健福祉手帳には、1級~3級までの区分があります。どの級に該当するかは、①障害の内容と②障害の程度によって基準がありますが、概ね以下のようになります。

1級:
精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの(概ね、障害年金1級に相当)

2級:
精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの(概ね、障害年金2級に相当)

3級:
精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの(概ね、障害年金3級に相当)

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精神障害のある方を支える法律 ~障害者総合支援法と支援区分
https://jlsa-net.jp/sei/syougaisyasougoushienhou/

参考:厚労省 みんなのメンタルヘルス総合サイト
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

参考:東京都保健局ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/tetuzuki/techo.files/tetyou_hanteikijyun.pdf

3. 精神障害者福祉手帳を取得するまでの流れ

「図 精神障害者福祉手帳を取得するまでの流れ」
精神障害者福祉手帳を取得するまでの流れ
精神障害者福祉手帳は、医療機関で精神障害だと診断されても自動的に取得できるものではなく、市区町村の窓口への申請が必要です。また、申請しても必ず交付されるものではありません。

① 精神障害者福祉手帳を申請するには

まず、医療機関で精神障害だと診断される必要があります。また、申請は、診断されてから6カ月以上経過している必要があります。

② 申請窓口

市区町村ごとに窓口があります。たとえば東京都の場合だと、特別区地域は保健所・保健センターなど、市町村地域は市役所・町村役場障害者福祉主管課などです。各地域で呼び名など異なりますので、お住まいの地域に電話などで問合せすれば安心できるでしょう。

③ 申請の手続きができる人

申請手続きができるのは、ご本人または保護者などの法定代理人の方、または委任状によって正式に手続きを託された任意代理人の方です。

④ 申請に必要なもの

申請に必要となるのは、以下のものです。

1) 障害者手帳申請書
2) 診断書、または、障害年金証書の写し(精神障害による障害年金を受給している場合のみ可能)
3) ご本人の写真(縦4cm×横3cm、脱帽・上半身、申請日から1年以内に撮影したもの)

また、ご本人が申請する場合は、1~3に加えて、以下のものが必要になります
4) ご本人の個人番号確認書類(マイナンバー通知カード、マイナンバーカード、マイナンバーが記載された住民票の写し、など)
5) ご本人の身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、身体障害者手帳、など)

代理人の方がご本人に代わって申請する場合、1~3に加えて、以下のものが必要です
6) 代理権の確認書類(戸籍謄本(法定代理人の場合)、委任状(任意代理人の場合)など)
7) 代理人の方の身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、身体障害者手帳、など)
8) ご本人の個人番号確認書類(マイナンバーカードの写し、マイナンバー通知カードの写し、マイナンバーが記載された住民票の写し、など)

※1)各申請窓口に記入用紙があります。(マイナンバーが必要になりますので)
※2)年金証書等の写しによる申請の場合、年金事務所又は共済組合等への障害種別と障害等級の照会に関する同意書の提出を求められる場合があります。
※3)写真の裏面に、氏名と生年月日の記入を求められる場合があります。

⑤ 申請後~交付まで

申請後、各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターにおいて審査が行われ、認められると手帳が交付されます。1~2カ月後に交付されることが多いようですが、4カ月程度かかる場合もあるようです。

⑥ 有効期間と更新手続き

手帳の有効期間は、申請された日から2年間(2年後の月末まで)です。つまり、2年ごとに更新申請の手続きが必要になります。有効期限の3カ月前から更新申請をすることができます。

その他、氏名や住所の変更、障害等級の変更、紛失や破損などの場合も申請手続きが必要になります。

4. 精神障害者福祉手帳を持つ方への福祉サービス

「図 精神障害者福祉手帳の取得で受けられるサービス」
精神障害者福祉手帳の取得で受けられるサービス
精神障害者福祉手帳を取得すると、①全国一律でのサービスと②各地域や事業者ごとのサービスを受けることができます。

① 全国一律でのサービス

・公共料金等の割引
NHK受信料の減免

・税金の控除・減免
所得税、住民税の控除
相続税の控除
自動車税・自動車取得税の軽減(1級の方のみ)

・その他
生活福祉資金の貸付
手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウント
障害者職場適応訓練の実施

② 地域・事業者によっては行われているサービス

お住まいの地域によって、サービスの内容が異なります。次のようなサービスが行われていることが多いようです。

・公共料金等の割引
鉄道・バス・タクシー等の運賃割引
携帯電話料金の割引
上下水道料金の割引
心身障害者医療費助成
公共施設の入場料等の割引

・手当の支給など
福祉手当
通所交通費の助成
軽自動車税の減免

・その他
公営住宅の優先入居

詳しくは、各市区町村窓口、各事業者にご確認ください。

参考:厚労省 みんなのメンタルヘルス総合サイト
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

参考:東京都保健局ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/tetuzuki/techo.files/tetyou_hanteikijyun.pdf

5. 精神障害者福祉手帳を持つことでデメリットはないのか?

精神障害者保健福祉手帳を所持していることを知られたくないと考える方は少なくないようです。ただ、精神障害者福祉手帳を取得したとしても、ご本人などが敢えて伝えない限り、取得しただけではそれが他人にわかることはありません。

サービスを受ける際には手帳を提示する必要がありますが、サービスを活用するかどうかはその都度ご自分で選択することができます。

ただ、申請には数千円程度の費用もかかりますし、実際に申請するために必要な書類を揃えたり、記入したりという相応の労力をかける必要もあります。

手帳を取得することによるメリットの大きさや感じ方は、人それぞれの面があります。

たとえば、頻繁に外出する方にとって交通費の割引は大きなメリットになるでしょうが、ほとんど外出しない方にとってはあまりメリットにならないなど、利用頻度や利用方法によってしまう面があります。

精神障害者保健福祉手帳の有効期間は2年間。必ず更新しなければならないというものではありません。一度申請し、利用状況を確認してみて、あまりメリットを感じないということであれば更新をしない、という方法を検討してもよいでしょう。

まとめ

いかがでしたか? 精神障害のある方を支える福祉サービスは数多くありますが、そのうち精神障害者保健福祉手帳は、精神障害のあることが公的に認定されていることを示す一つの方法です。

精神障害者保健福祉手帳を提示することで、各種の福祉サービスを受けることができます。

周囲の方に理解されないかもしれない、といった不安から取得をためらわれる方も少なくないようですが、ご本人にとって大きなメリットになるサービスを受けられる場合もあります。

少しでも興味を持たれたようなら、お住まいの地域の福祉事業窓口に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

厚労省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/index.html

厚労省 みんなのメンタルヘルス総合サイト
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

東京都保健局ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/tetuzuki/techo.files/tetyou_hanteikijyun.pdf

その他、
各道府県保健局等ホームページ
各市区町村ホームページ

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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