精神障害のある方を支える各種の社会手当

精神障害

はじめに
精神障害のある方を経済面で支援するしくみに各種の社会手当(=手当)があります。1つ1つの手当は、月額数千円程度のものからですが複数の手当の対象となる場合などは、積み上げると非常に大きな額になります。

ここではそんな手当について、障害の有無に拠らないものも含め、精神障害のある方やその保護者などの方が給付を受けられる可能性がある手当をまとめています。



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1. 手当とは?

「図-手当制度全体」
手当制度全体

(1) 国の制度か、地域の制度か? ~大きく2つに分類できる手当

社会手当(=手当)とは、社会保障の一部です。国の法律や各都道府県の条例などの法令に定められた一定の要件を満たす場合に、現金が給付されます。

このため、「日本の国民で、かつ、条件を満たせば給付されるもの」と「各地域の住民で、かつ、条件を満たした時に給付されるもの」と、大きく2つのものがあります。

後者については、支援の重点を置いている対象や実施されている他の手当施策などとの関係もあるため、地域ごとの差が大きい面があります。また、財政的な制約の影響を受けやすくなるといった側面を持つ制度でもあります。

このような制度であるため、手当の給付を受けるには、いずれの手当も各担当窓口(各市区町村の窓口)に、それぞれ申請することが必要です。「申請しない限り、たとえ条件に当てはまっていても、給付されることはないのだ」ということは、必ず覚えておきましょう。

(2) ご本人への手当か、保護者への手当か? ~「国の制度と地方の制度」以外の手当の分類の仕方

この後の解説では、国の制度と地域の制度とに分けて、それぞれ見ていきますが、数も多いため、混乱されることもあるかと思います。そのような場合に分類をする視点として、「精神障害のある方ご本人への手当」か、または、「精神障害のある方の養育者である保護者の方などへの手当」かも有効です。

いずれにしても、いくつかの整理の仕方がありそうだということを頭に入れておくと、精神障害のある方を支える手当というものの全体像をつかみやすくなるのではないでしょうか。

【関連記事】
精神障害がある方を経済面で支える障害年金制度
https://jlsa-net.jp/sei/seishin-nenkin/

参考:
厚労省ホームページ
特別児童扶養手当・特別障害者手当等
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jidou/index.html

公益財団法人東京都福祉保健財団ホームページ
障害のある方への手当一覧
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/20k_fukusu_service/teate/syougaiteate_hyo.html
障害者(児)のための手当
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/0302chiteki/service/05teate/05_01s_teate.html

2. 手当の給付を受ける上での共通点 ~申請窓口、申請に必要なもの

「図-手当 ~給付を受ける上での共通点」
手当制度全体
 手当のしくみを使って実際に給付を受けるには、必ず申請が必要です。

また、国の制度にしても、地域の制度にしても、いずれもお住まいの市区町村窓口に申請するという点は共通です。それぞれの手当で申請書の様式や申請に必要なものは異なりますが、大きくは以下の視点で「証明するものなど」が必要となります(不要となる場合もあります)。

また、原則的には「現況届」などの形で、毎年の更新が必要です。

(1) 申請書自体
(2) 所得を証明するもの
(3) 障害のある方との続柄、家族関係がわかるもの
(4) 障害があることを証明するもの
(5) 本人であることを確認できるもの
(6) 手当の振り込み先情報
(7) 印鑑
(8) マイナンバーカード

以上のように整理した上で、必要となるものを各市区町村の窓口で問い合わせると、必要なものを準備し忘れるといったことが起きにくくなるでしょう。

3. 国の制度

「図-国の制度」
国の制度
精神障害のある方に対する国の手当には、以下のようなものがあります。

(1) 障害の有無にかかわらない手当

① 児童手当

児童手当は、子どもの教育や子育てにおいては保護者の方が一番の責任を持つという考え方の下、子どもが健やかに成長できる家庭環境を整えることを支援する目的で給付される手当です。このため、精神障害のある方ご本人ではなく、その養育者の方(基本的には保護者)に給付されます。

1) 給付条件
子どもの年齢が0歳から中学校卒業までの場合が対象です。ただし、保護者の所得が960万円までという所得制限が設けられています。

2) 給付額
子どもの年齢と子どもの人数により、給付額が定められています。給付額は、毎年見直しされるのが原則ですが、ここ数年は金額に変更はありません。平成29年度の給付額は以下のとおりです。
給付額

※所得限度を超えた場合でも、当面の特例措置として一人5千円が給付されます。

② 児童扶養手当

児童扶養手当は、保護者の方の離婚などの理由によるひとり親家庭等で、その生活環境を安定できるよう支援する目的で給付される手当です。児童手当同様、条件に当てはまる養育者の方(基本的には保護者)に給付されます。

1) 給付条件
子どもの年齢が0歳~18歳までの場合で、次のいずれかに該当する子どもを養育している場合に給付されます。
・父母が婚姻を解消した子ども
・父又は母が死亡した子ども
・父又は母が一定程度の障害の状態にある子ども
・父又は母が生死不明の子ども
・父又は母が1年以上遺棄している子ども
・父又は母が裁判所からのDV保護命令を受けた子ども(新規)
・父又は母が1年以上拘禁されている子ども
・婚姻によらないで生まれた子ども
・棄児などで父母がいるかいないかが明らかでない子ども

2) 給付額
給付対象となる養育者の方(ひとり親家庭の母や父など)の、子どもの人数や所得等によって、次のように定められています。給付額は、毎年見直しされるのが原則で、平成29年度の給付額は以下のとおりです。
給付額

全部支給とは、所得が制限限度額で設定されている最低額を超えていないため、手当を満額受け取れる対象の方です。一部支給の対象の方は、所得に応じて給付額が算出されるため、給付額に幅があるということです。

このように、子どもの養育環境・条件によって給付される額が異なりますので、実際の給付額はお住まいの市区町村窓口にご確認ください。

(2) 障害のある方に限定された手当

① 障害児福祉手当

重度の障害がある20歳未満の方に対して、その障害に伴う精神的な負担・物質的な負担を軽減することを目的に給付される手当です。

1) 給付条件
在宅の20歳未満の方で、次のいずれかに該当する方に場合に給付されます。

・身体障害者手帳1級、または2級の一部
・療育手帳1度、または2度の一部
・上記と同等の障害、または、それに準じる程度の精神障害のある方(対象となるかは、医師の診断書を元に判定されます)

ただし、上記対象であっても、給付を受けるご本人、または、配偶者や養育者の方の所得が一定額を超える場合など、給付除外条件があります。くわしくは、お住まいの地域の市区町村にご確認ください。

2) 給付額
14,580円

② 特別障害者手当

著しく重度の障害のある方に対して、その重度の障害に伴う精神的な負担・物質的な負担を軽減することを目的に給付される手当です。

1) 給付条件:
在宅の20歳以上の方で、次のいずれかに該当する場合に給付されます。

・身体障害者手帳1級、または2級の方
・精神障害者保険福祉手帳1級の方
・精神障害により、物事の道理や筋道を理解する能力が不十分とされた方
・重度の知的障害があるであると、精神保健福祉センターなどで判定された方
・寝たきりで複雑な介護を受けている方
・戦傷病者手帳、原爆の被爆者手帳を受けている方の一部
・65歳以上で、市区町村長・福祉事務所長に特別障害者と同等と認定を受けている方
・介護保険において、要介護4~5の認定を受け、特別な介護が必要な方

ただし、上記対象であっても、給付を受けるご本人、または、配偶者や養育者の方の所得が一定額を超える場合など給付除外条件があります。くわしくは、お住まいの地域の市区町村にご確認ください。

2) 給付額
26,810円

③ 特別児童扶養手当

20歳未満の障害のある方を養育する保護者の方などに対して給付される手当です。

1) 給付条件
20歳未満の方で、「障害程度基準表」という基準の状態に当てはまる場合、養育者の方(基本的には保護者の方)に給付されます。ただし、障害の状況に応じて1級または2級として認定されます。対象となる障害の目安としては、
1級:療育手帳の場合A、身体障害者手帳の場合1・2級
2級:療育手帳の場合B、身体障害者手帳の場合3級・4級の一部
と言えそうです。

ただし、上記対象であっても、精神障害があるご本人、または、配偶者や養育者の方の所得が一定額を超える場合など、給付除外条件があります。くわしくは、お住まいの地域の市区町村にご確認ください。

2) 給付額
1級:51,450円
2級:34,270円

【関連記事】
身体障害のある方を支える福祉サービス~身体障害者手帳とは?
https://jlsa-net.jp/sin/shintai-tethyo/

精神障害者保健福祉手帳とは? ~精神障害のある方を支える福祉サービス
https://jlsa-net.jp/sei/seishjin-tetyou/

知的障害のある方を支える福祉サービス ~ 療育手帳制度とは?
https://jlsa-net.jp/ti/chi-fservice/

参考:
厚労省ホームページ
特別児童扶養手当・特別障害者手当等
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jidou/index.html

内閣府ホームページ
児童手当
http://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/index.html
電子政府の総合窓口 e-Gov
特別児童扶養手当等の支給に関する法律
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=339AC0000000134&openerCode=1
特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=350CO0000000207&openerCode=1
特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行規則
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=350CO0000000207&openerCode=1

障害児福祉手当及び特別障害者手当の支給に関する省令
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=350M50000100034&openerCode=1

4. お住まいの地域によって異なる制度

「図-国の制度」
国の制度
「図-地域ごとの制度 ~東京都の場合」
地域ごとの制度 ~東京都の場合

地域ごとの手当は、各地域でその有無も含め、地域ごとに異なるしくみで運用されています。ここでは東京都の場合を例にその内容を見ていきますが、お住まいの地域で同様の制度がないか、確認するための参考にしていただくとよいでしょう。

(1) 障害の有無にかかわらない手当

① 児童育成手当

保護者の方の離婚などの理由によるひとり親家庭等で、18歳までの方を養育している養育者の方(基本的には保護者)に給付される手当です。

1) 給付条件
子どもの年齢が0歳~18歳までの場合で、都内に住所があり、次のいずれかに該当する子どもを養育している場合に給付されます。なお、この手当は、障害の有無に関わらず給付されますが、障害の有無により、給付額が異なります。

・父または母が死亡した方
・父または母が重度の障害がある方(身体障害者手帳1級・2級程度)
・父母が離婚した方
・父または母が生死不明である方
・父または母に1年以上遺棄されている方
・父または母がDV 保護命令を受けている方
・父または母が法令により1年以上拘禁されている方
・婚姻によらないで生まれた方
・父母ともに不明な方

ただし、養育されている保護者の方の所得が一定額を超える場合など、給付除外条件があります。くわしくは、お住まいの地域の市区町村にご確認ください。

2) 給付額(障害がある場合)
15,500円 ※障害がない場合は13,500円

(2) 障害のある方への手当

① 重度心身障害者手当

重度の障害があることで、常時複雑な介護を必要とする方に対して、東京都の条例により給付される手当です。

1) 給付条件
東京都にお住まいで、以下のいずれかに該当する方に給付されます。

・重度の知的障害で、日常生活で常時複雑な配慮を必要とされる精神症状がある方
・重度の知的障害で、身体の障害の程度が次のいずれかに該当する方
 両眼の視力の和が〇・〇四以下の方
 両耳の聴力損失がそれぞれ九〇デシベル以上の方
 両上肢の機能に著しい障害のある方
 一上肢の機能を全廃した方
 両下肢の機能に著しい障害のある方
 体幹の機能障害により座位又は起立位を保つことが困難な方
 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される方
 前各号に掲げる程度以上の身体障害のある方
・重度の肢体不自由で、両上肢及び両下肢の機能が失われ、かつ、座っていることが困難な程度の身体障害のある方

ただし、障害のある方ご本人の所得が一定額を超える場合など、給付除外条件があります。くわしくは、お住まいの地域の市区町村にご確認ください。

2) 給付額
60,000円

3) 給付を受けるには
お住まいの各市区町村窓口に申請する点は、他の手当と同様です。ただし、申請の手順として、まず、対象となるかどうかの「判定」が行われます。この判定を受ける方法に「来所判定」か「出張判定」の2つの方法があり、その選択をするところから申請が始まるという手順となります。

② 心身障害者福祉手当

心身障害者福祉手当は、精神や身体に重度の障害がある20歳以上の方の日常生活への支援や福祉の増進をはかることを目的とした、東京都の各市区町村の手当です。ここでは練馬区を例に見ていきます。

1) 給付条件
練馬区にお住まいで、次のいずれかの障害のある方

・身体障害者手帳1・2級
・愛の手帳(東京都の療育手帳)1~3度
・脳性まひまたは進行性筋萎縮症
・区の指定する難病の方で難病医療費助成の受給者証をお持ちの方
・小児慢性特定疾病医療費助成の受給者証をお持ちの方で区の指定する難病の方

・身体障害者手帳3級
・愛の手帳4度

ただし、障害のある方ご本人の所得が一定額を超える場合など、給付除外条件があります。くわしくは、お住まいの地域の市区町村にご確認ください。

2) 給付額
身体障害者手帳3級、愛の手帳4度の方:10,000円
その他の方:15,500円

参考:
東京都福祉保健局ホームページ
東京都心身障害者福祉センター 障害者手当
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/teate/index.html

公益財団法人東京都福祉保健財団ホームページ
障害のある方への手当一覧
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/20k_fukusu_service/teate/syougaiteate_hyo.html
障害者(児)のための手当
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/0302chiteki/service/05teate/05_01s_teate.html

東京都例規集データベース
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_menu.html
東京都重度心身障害者手当条例
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/ag10107761.html
東京都心身障害者福祉手当に関する条例
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/ag10107781.html
東京都児童育成手当に関する条例
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1010744001.html

最後に

これまで見てきたように、精神障害のある方を経済面で支援する手当には、複数のものがあります。一方で、それぞれ申請が必要であるというのが原則です。

これは、手当が国の制度のものだったり、地域ごとの制度のものであったりするのが一つの理由。また、給付基準がそれぞれであったりすることも理由の一つです。

このように、なかなか複雑な面が多く、給付要件も厳密に定められているような手当ですが、その額は、積み上げると非常に大きなものになる可能性もあります。ハードルの高いと感じられるようでしたら、まずは各市区町村窓口に相談することから始めてみても良いのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
特別児童扶養手当・特別障害者手当等
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jidou/index.html

東京都福祉保健局ホームページ
東京都心身障害者福祉センター 障害者手当
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/teate/index.html

公益財団法人東京都福祉保健財団ホームページ
障害のある方への手当一覧
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/20k_fukusu_service/teate/syougaiteate_hyo.html
障害者(児)のための手当
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/0302chiteki/service/05teate/05_01s_teate.html

電子政府の総合窓口 e-Gov
特別児童扶養手当等の支給に関する法律
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=339AC0000000134&openerCode=1
特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=350CO0000000207&openerCode=1
特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行規則
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=350CO0000000207&openerCode=1

障害児福祉手当及び特別障害者手当の支給に関する省令
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=350M50000100034&openerCode=1

東京都例規集データベース
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_menu.html
東京都重度心身障害者手当条例
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/ag10107761.html
東京都心身障害者福祉手当に関する条例
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/ag10107781.html
東京都児童育成手当に関する条例
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1010744001.html

内閣府ホームページ
児童手当
http://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/index.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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