合理的配慮とは? ~障害のある方が普通に生活できる社会づくり

発達障害

はじめに
 合理的配慮とは、障害があることによって生じる困りごとの解消や軽減に向けて、社会全体で必要な対応をしていこうという考え方であり、その実際的な行動でもあると言えます。ここでは、合理的配慮とは何かといったことや、その背景となる考え方、実例などを取り上げながら、合理的配慮への向き合い方などを考えていきます。

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1. 合理的配慮とは何か?
(1) 障害者差別解消法で明示された合理的配慮

国際条約である「障害者の権利を守る条約」では、「合理的配慮」は、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」と定義されています。(出典:外務省ホームページ障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

つまり、合理的配慮とは、障害の有無によらず、すべての人の人権を平等に守れるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて生じる困難を取り除くための調整や変更のことと言い換えることができるでしょう。

このような意味を持つ合理的配慮は、日本では、2016年に施行された「障害者差別解消法」で義務づけられることになり、特に行政機関や事業者には、障害のある方に対して可能な限り合理的配慮をすることが求められることになりました。

(2) 合理的配慮がなされないことは障害のある方への差別

この背景には、障害のある方に対する差別の問題があると考えられます。同じく「障害者の権利を守る条約」で、「障害に基づく差別」とは、「障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。

障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む)を含む」とされています。(出典:外務省ホームページ障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

つまり、合理的配慮がなされないことは、障害のある方への差別だと明示されていると言えるのです。

(3) 合理的配慮とは? 

「図-合理的配慮、その重要な2つの視点」

 では、「合理的配慮」とは、具体的にはどういうことなのでしょう?

① 合理的配慮とは、「必要かつ適当な配慮」

第一に、「障害のある方にとって」、その配慮が「必要かつ適当な程度や内容」であることが重要だという点が、合理的配慮の理解にあたっては大切です。つまり、ご本人が必要としていないような配慮は「過剰」であって、合理的な配慮とは言えないということで、ご本人の状態や環境の変化に応じて、次のような視点で合理的配慮を検討し、実施することが求められているということになります。

1) 具体的にいつ、どんな場面で困っているのか。
2) その困りごとを解消するための適切な配慮は何か。

② 均衡を失うことなく、また、過度な負担でもないこと

ある特定の方に配慮を行うと他の方の生活や活動に困難が生じるほどの影響が出るなど、あまりにも大きな負担を伴う場合は、社会全体で見たときには「合理的」ではないと言えます。よって、障害のある方が何らかの配慮を求めた場合でも、それがそのまま実施されるのではなく、行政機関・事業者は、それが妥当なものかどうかの判断を行った上で実施されることになります。これが2つ目に大切なことと言えます。

なおその判断は、以下の観点を踏まえて行われることになります。
 
1) 事務・事業活動への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
2) 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
3) 費用・負担の程度
4) 事務・事業規模
5) 財政・財務状況

「過度な負担」を理由に配慮が実施されなかった場合、行政機関・事業者には配慮を求めた方にその理由を説明する義務が生じるとともに、「代案」での配慮ができないかと検討することが基本とされています。特に大きな設備投資が必要なものなどは、人によるサービスなどで代替えすることも可能な場合があるでしょう。このように、「どのような配慮が可能なのか」を常に検討することが必要ということもできるでしょう。

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参考:
内閣府ホームページ
障害者差別解消法リーフレット
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet.html

外務省ホームページ
障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

文科省ホームページ
資料3:合理的配慮について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1297380.htm

公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ホームページ
障害者差別解消法ってなに?
http://www.normanet.ne.jp/~jdf/pdf/sabetsukaisyohou2.pdf

2. 合理的配慮のあり方

「図-合理的配慮の出発点」

(1) 障害の社会モデルと個人モデル・医学モデル ~障害学で提示される障害のとらえ方

障害学とは「障害を分析の切り口として確立する学問、思想、知の運動」で、医療・社会福祉などの従来障害を扱ってきた視点とは異なる切り口から、障害や障害のある方をとらえようとするものです。この障害学の考え方に障害の「社会モデル」というものがあります。

① 旧来型のモデルである「個人モデル・医学モデル」

 旧来型のモデルは「個人モデル」あるいは「医学モデル」と呼ばれています。その考え方は、障害のある方が困難に直面するのは「その方に障害があるから」であり、その困難を克服するのは、ご本人とそのご家族の責任だというものです。

② 障害の「社会モデル」とは?

「上記の考え方には違和感がないか? <障害があるから不便>なのではなく、<障害とともに生きることを拒否する社会であるから不便>なのではないか?」そのような発想から生まれたものが、障害の「社会モデル」です。つまり、「社会モデル」とは、「社会こそが<障害・障壁>をつくっているのだから、それを取り除くのは社会の責務だ」とする考え方です。

「社会には心身や脳などに障害のある方を含めた多様な人々がいるにもかかわらず、少数者の存在やニーズを無視して社会は成立している。あらゆる場、慣習やしくみや制度、文化、情報など、どれもが多数派であるいわゆる健常者を基準にしたもので、そのような社会のあり方が障害のある方に不利を強いている」

このような考え方の下、合理的配慮は運用されるべきであると言えるでしょう。

(2) 合理的配慮、決定のプロセス ~ 「Nothing About Us Without Us」という視点から

「図-合理的配慮、決定のプロセス」

「Nothing About Us Without Us ~ 私たちを抜きに、私たちのことを決めないで」という言葉をご存知でしょうか? これは障害のある方々による「弱者として保護の対象とされ、障害のある方でない方に自分の人生を決められてしまう」ことへの否定であり、拒否と言えるでしょう。

「障害の有無を問わず、誰にでも自分の人生を選択し、歩んでいく権利がある」というのは当然のことと考えられますが、障害のある方々にとってはそうではなかったということでもあります。

このような声も踏まえ、実際に合理的配慮を行う場合でも、配慮を必要とするご本人による意思表示が重要だとされています。「配慮」という言葉だけを聞くと、「してもらうもの」、「してあげるもの」というイメージを抱きがちですが、その言葉には「調整・便宜」という意味合いが含まれています。

よって、実際に合理的配慮を検討していく場合には、障害の有無によらず、「どうしたらお互いにとって良い環境を作れるのか?」という立場に立ち、以下の点を考慮しながら進めていくことが大切になるでしょう。

① ご本人や保護者の方などから、必要とする配慮を求める、意思表示する
② 行政機関や学校や企業などの事業体が、どのような配慮が可能か検討し、ご本人と対話する
③ どんな場面でどんな配慮ができるか、お互いの合意の上で実行する
④ 実行内容の定期的な見直し・改善を行う

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参考:
内閣府ホームページ
障害者差別解消法リーフレット
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet.html

公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ホームページ
障害者差別解消法ってなに?
http://www.normanet.ne.jp/~jdf/pdf/sabetsukaisyohou2.pdf

京都大学学術情報リポジトリ KURENAI紅 ホームページ
障害学の理論的展開
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/185585/1/lefs_2_85.pdf

大阪府ホームページ
「個人モデル」と「社会モデル」
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1418/00071393/2-1_7-8.pdf

文科省ホームページ
障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見) 第1 はじめに
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1295929.htm

公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 障害保健福祉研究情報システム ホームページ
インタビュー デビッド・ワーナー氏に聞く
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/091026_seminar/david_werner.html

3. 合理的配慮の具体的な事例
(1) 合理的配慮が求められる生活の場面

障害者差別解消法では日常生活・社会生活のあらゆる場面で合理的配慮は求められており、具体的には次のような場面が上げられています。

医療・介護、年金、教育・療育、職業相談・雇用の促進、住宅の確保、公共的施設利用、情報利用、相談、経済的負担の軽減、文化的諸条件の整備、防災・防犯、消費者としての保護、選挙や司法手続き

(2) 合理的配慮の事例

 合理的な配慮の事例としては、次のようなものが考えられます。実際に見ていくとおわかりいただけると思いますが、合理的配慮とは、決してお金のかかるものや大がかりなものばかりではなく、ちょっとした気遣いにあたるようなものであったり、少しの工夫でできるものであったりする場合も多くあります。

つまり、事例などをそのまま適用することを考えるというよりは、「このような困りごとがあったときに、何があったらその困りごとは解消されるのか? あるいは、軽減されるのか?」と「考えること」が大切になると言えるでしょう。

① 生活の場面別での合理的配慮の例

1) 行政
・会場の座席などを障害の者の特性に応じて配席する
・書類記入などについては、記入方法例を示すなど、障害の特性に応じて理解しやすい方法を検討する など

2) 教育
・支援員等の教室への入室や授業・試験での記述支援、移動支援などを許可する
・入学試験において、別室受験、時間延長、読み上げ機能等の使用を許可する など

3) 雇用・就業
・業務指示・連絡について、形に残る筆談やメール等を利用する
・ご本人が負担に感じる程度に応じ、業務量などを調整する など

4) 公共交通
・券売機の利用が難しい場合など、その操作を手伝ったり、窓口で対応したりする
・停留所名・停車駅名表示のほか、肉声による音声案内をこまめに行う など

5) 医療・福祉
・施設内放送を文字化したり、電光掲示板で表示したりする
・障害のある方であることがわかりにくい患者の方について、受付票に連絡カードを添付するなどしてスタッフ間の連絡体制を工夫する など

6) 買物、飲食店など
・メニューや商品表示を大きくしたり、写真を活用して説明したりする
・ホワイトボードを用意したり、手のひらに文字を書いたりするなど、コミュニケーション上の工夫を行う など

7) 災害時
・列に並んで順番を待つことが難しい場合など、列から外れても順番を待てるようにする
・恐怖感が強いときなどには、別室などの落ち着ける場所で休めるようにする など

② 障害の種類別の視点

1) 全般
・障害の特性に応じて休憩時間を調整するといった、ルールの柔軟な運用を行う など

2) 視覚障害
・驚かせることのないよう、背後や横からではなく、正面から「何かお手伝いしましょうか?」と声をかける
・「こちら」「あちら」などの指示語ではなく「30cm右」「2歩前」というように位置関係をわかりやすく伝える
・手のひらに○、×、文字などを書いて、状況を伝える
・模型などを用いて触覚によって把握できるようにする など

3) 聴覚・言語障害
・字幕や手話などの見やすさを考慮した配席を行う
・順番を知らせるときなど、アナウンスだけでなく身振りなどによっても伝える など

4) 肢体不自由
・車いすを利用される方のために段差に携帯スロープを設置する
・ご本人の意思を十分に確認しながら書類の記入やタッチパネルの操作などを代行する など

5) 知的障害
・簡潔な文章にまとめる、文章にルビをつける
・実物、写真、絵など、視覚的にわかりやすいものを用いて説明する など

6) 精神障害
・細かく決まった時間や多人数の集団で行動することが難しいときには、時間やルールなどの柔軟な運用を行うようにする
・情緒不安定になりそうなときには、別室などの落ち着ける場所で休めるようにする など

7) 発達障害
・書籍やノートなどを用いた読み書きに困難があるときには、タブレットをはじめとしたICT機器などを利用できるようにする
・作業手順などにこだわりがあるときには、一定のルールを事前に決めておくようにする など

8) 内部障害、難病等
・継続的な通院や服薬が必要なときには、休暇や休憩などについて配慮する
・人工呼吸器などが必要なときには、それらの機器の使用について配慮する など

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参考:
厚労省ホームページ
合理的配慮指針事例集
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000093954.pdf

内閣府ホームページ
合理的配慮等具体例データ集
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/

最後に

 合理的配慮とは、障害のある方であることによって生じる困りごとの解消や軽減に向けて、社会全体で必要な対応をしていこうという考え方であり、その実際の行動のことを言い、日本では、障害者差別解消法により、義務化されたものです。この背景となる考え方に、障害学における障害の「社会モデル」があり解消や軽減、これは、「障害のある方になることによって生じる困難は、それに対応できる社会になっていないことが原因である」というものです。

つまり、障害のある方の人権を守るためには、社会が必要な対応をするべきだということだと言えます。とはいえ、それは必ずしも大がかりなものであったり、お金がかかるようなものであったりする必要があるわけではなく、ちょっとした気遣いであったり、少しの工夫でできるものであったりする場合も多くあると言えます。

また、「Nothing About Us Without Us ~ 私たちを抜きに、私たちのことを決めないで」という言葉が示す通り、障害のある方の求めに応じて行うべきことでもあります。障害の有無を問わず、その人なりの人生を豊かなものにできる社会を目指し、小さなことからでも、また、少しずつでも、そして社会を生きる一人ひとりが必要な対応をしていくことが重要だと言えるのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
内閣府ホームページ
障害者差別解消法リーフレット
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet.html

外務省ホームページ
障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

厚労省ホームページ
合理的配慮指針事例集
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000093954.pdf

文科省ホームページ
障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見) 第1 はじめに
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1295929.htm
資料3:合理的配慮について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1297380.htm
合理的配慮等具体例データ集
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/

公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ホームページ
障害者差別解消法ってなに?
http://www.normanet.ne.jp/~jdf/pdf/sabetsukaisyohou2.pdf
障害保健福祉研究情報システム ホームページ
インタビュー デビッド・ワーナー氏に聞く
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/091026_seminar/david_werner.html

京都大学学術情報リポジトリ KURENAI紅 ホームページ
障害学の理論的展開
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/185585/1/lefs_2_85.pdf

大阪府ホームページ
「個人モデル」と「社会モデル」
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1418/00071393/2-1_7-8.pdf

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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