知的障害のある方を支える福祉サービス ~ 療育手帳制度とは?

知的障害

はじめに
知的障害のある方を支える福祉サービスの1つに、療育手帳制度があります。この手帳を申請・取得することで、さまざまなサービスを受けることができます。ここでは、そんな療育手帳について、制度のあらましや受けられるサービスの内容などをまとめています。ただし、この制度は自治体ごとに設置・運用されている制度。ここで概要の理解をいただいた上で、詳細はお住まいの地域の各自治体に確認していただくことが必要でもあります。

1. 療育手帳とは?
(1) 療育手帳とは?

療育手帳とは、知的障害のある方に発行される障害者手帳です。知的障害のある方が一貫した社会福祉サービスを受けやすくすることを目的に作られた、知的障害者福祉法の下で制度化されているしくみで、各都道府県知事・政令指定都市の長が知的障害と判定した方に発行しています。平成27年度末の交付数は、総計100万人を超えています。

参考:
厚労省ホームページ
第3編 社会福祉 第3章 障害者福祉
http://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_3_3.html

(2) 自治体ごとに異なる制度

療育手帳制度は、知的障害者福祉法の下で制度化されているしくみではあります。一方で、法律として定められた制度ではなく、厚労省から各自治体への2つの通知(「療育手帳制度について(療育手帳制度要綱)」・「療育手帳制度の実施について」)に基づき、自治体ごとに作られ、運用されている制度です。このため、自治体ごとに名称や受けられるサービスなどが異なるのです。
たとえば、名称については、「療育手帳」と呼ぶ地域の他、「愛の手帳」(東京都・横浜市)、「愛護手帳」(青森県・名古屋市)のように呼ぶ地域もあります。

参考:
東京都福祉保健局ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/nichijo/a_techou.html

青森県庁ホームページ 愛護手帳について
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/ssodan/about_aigot.html

(3) 対象となる方

「図-「療育手帳」の交付対象となる方」

 療育手帳の交付対象となる方は、医学の分野における「精神遅滞」に当てはまる方と、ほぼ言い換えることができます。具体的には、以下の3つの視点があります。

1)知的機能の全般で、同年齢の人と比べて遅れや成長の停滞が明らかである方。知能検査でIQ70~75以下程度に相当する方。
2)意思伝達、自己管理、家庭生活、社会・対人技能、地域社会資源の利用、自律性、学習能力、仕事、余暇、健康、安全などの面での「適応機能」に、明らかな制限がある方。支援が必要となっている方。
3)成長期(概ね18歳未満)の時点から見られている方。

(4) 自治体ごとに設定される障害の区分とその判定基準

各自治体では、知的障害とされた方をさらに細かく分類する「区分」を、知能検査による知能指数(IQ)と日常生活がどの程度おくれるかという適応機能の視点を組合せ、設定しています。また、設定された区分ごとに、実施するサービス内容を定めています。さらに、この判定基準や判定項目は年齢によっても変わる場合もあります。

誤解を恐れずに言うなら、知的障害のある方は、
① 「IQ」
② 「日常生活でどの程度困難が生じているか」
の2つの視点での検査を受け
③ ①②の結果を受けた総合的な判断
で、各自治体で設定された区分で振り分けられる
ということです。

なお、この区分は、大きくは「A:重度」と「B:それ以外」とに区分けされるのですが、実際には、自治体ごとに2~7の区分が設定され、運用されています。具体的な例は以下のとおりです。

東京大学 READホームぺ―ジ
療育手帳について
http://www.rease.e.u-tokyo.ac.jp/read/jp/archive/statistics/statistics_criterion.html

2. 療育手帳を取得するまでの流れ

 療育手帳を取得するための大まかな流れや、そのポイントは次の通りです。ただし、療育手帳制度は、各自治体が制度化しているため、その申請窓口や必要になる書類などの詳細は各自治体に問い合わせいただく必要があります。

(1) 療育手帳を申請するには

まずは知的障害があることが条件です。既に見たとおり、IQが70~75未満であるか、また、日常生活をおくる上で何らかの不具合が発生しているかがポイントとなります。この診断は、自治体によっては、地域の支援センターなどで無料で受けられます。なお、療育手帳は、医療機関などで知的障害があると診断されたとしても、自動的に交付されるものではありません。各市町村窓口に申請しない限り交付されないという点に注意が必要です。

(2) 療育手帳の申請窓口、申請のステップ

「図-療育手帳取得の流れ」

 申請とその認定は、大まかに次のステップで進められます。

① お住まいの地域の市区町村の障害福祉担当窓口に相談する

 まずは療育手帳を申請したい旨、お住まいの地域の市区町村の障害福祉担当窓口に相談しましょう。相談することで、どんなステップで判定が進むのか、その詳細を確認できるのと同時に、その後の相談や実際の支援を受ける際、話がスムーズに進みやすくなるという面もあるでしょう。

② 知的障害の程度の判定を受けるための予約を電話で取ります。

福祉サービスを受けられる程度の知的障害があるか、また、それはどの程度かの判定を受ける必要があります。判定を受ける場所は、年齢によって異なります。

1)18歳未満の場合:児童相談所
2)18歳以上の場合:知的障害者更生相談所

③ 判定を受ける

 実際に判定を受けます。判定は、知能検査の他、面談などにより行われます。例えば東京都の場合、判定項目は知能測定値、運動、社会性、意思疎通、身体的健康、基本的生活と明示されています。判定を受ける際には、知的障害のある方ご本人と、ご本人の小さい頃の様子を説明できる保護者の方などが同行する必要があります。該当する方がいらっしゃらない場合、情報を集めた上で、福祉事務所の担当者などが立ち会う方法もあります。

判定を受ける際(また、申請をする際)に必要となる書類などには、以下のようなものがあります。詳細は、判定を受けるための予約をする際、確認してください。

・印鑑
・写真(タテ4cm × ヨコ3cm )
・手帳類(愛の手帳・身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳をすでにお持ちの場合。各制度などでの判定・認定状況などを確認するため)
・母子手帳(手元にある場合。ご本人の小さい頃の様子を確認するため)
・診療情報提供書・診断書・お薬手帳など(病気の経過や治療内容のわかるもの。ご本人の小さい頃の様子を確認するため)
・健康保険証

(3) 療育手帳の申請手続きができる人

申請できるのは、基本的には知的障害のある方ご本人、または、その保護者の方です。なお東京都の場合、児童福祉法の規定に基づく知的障害児施設又は知的障害者福祉法に基づく知的障害者援護施設に入所していれば、施設長が申請者となることもできます。その他の事情がある場合には、個別に相談しましょう。

(4) 申請後~交付まで

申請に基づき判定を受けてから、おおむね1カ月程度で手帳が郵送にて交付されます。

(5) 有効期間と更新手続き

有効期間については、特に設定されていないのが一般的です。ただし、更新判定が必要な場合があります。たとえば東京都の場合、3歳・6歳・12歳に年齢更新の判定が、18歳で更新判定と書き換えが行われます。また、県外転居などの場合は返還が必要で、引き続き療育手帳制度利用する場合は、転居先の地域自治体で、再度療育手帳の申請が必要になります。マイナンバー制度の運用拡大などで、申請が簡略化されるケースもあるようですので、転居先の市区町村窓口に問い合わせるとよいでしょう。

参考:
東京都福祉保健局ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/nichijo/a_techou.html

3. 療育手帳を持つ方への福祉サービス

「図-療育手帳を持つ方への福祉サービス全体概要」

療育手帳は、各自治体により制度化されているため、全国一律の支援サービスがあるというわけではありません。ただし、多くの地域で、以下のような支援サービスがほぼ共通で実施されています。

(1) 経済的な支援 ~ 税制上の優遇措置

療育手帳を交付されている方は、税制面での優遇を受けられます。障害の程度がAの場合は特別障害者控除が、Bの場合は障害者控除が適用されます。

① 所得税の控除

障害者控除として27万円(特別障害者は40万円)が所得金額から差し引かれます。配偶者や扶養親族に障害がある場合は、1人当たり27万円(特別障害者のときは1人当たり40万円)の障害者控除等を受けられます。

② 住民税の控除

 障害者控除として26万円(特別障害者は30万円)が控除されます。

③ 相続税の障害者控除

 相続される方が知的障害のある方の場合、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)が、障害者控除として相続税額から差し引かれます。

④ 自動車税・軽自動車税の減免、自動車取得税の減免

 療育手帳を交付されている方が使用する車について、申請により自動車税・自動車取得税の減免を受けられる場合があります。

⑤ 預貯金の非課税対象化

療育手帳を交付されている方が、350万円までの預貯金、貸付信託、公社債、公社債投資信託などで受け取る利子などについては、一定の手続を要件に非課税となります。

(2) 各種割引制度による支援

療育手帳をその場、あるいは事前に提示することで、各種割引制度の対象となり、そのサービスが受けられます。

① 公共交通機関の割引

1) JRなど、鉄道運賃の割引や減免が受けられます。
2) JALやANAなどは、「身体障害者割引運賃」が適用されます。
3) 多くのバス会社で、障害者割引運賃が設定されています。
4) タクシー料金の割引が適用される場合があります。

② 各種料金の割引

1) NHKの受信料の全額又は半額が免除されます。
2) NTTの電話番号案内利用料が無料になります。
3) 有料道路通行料金が割引になる場合があります。
4) 携帯電話各社が利用料の割引制度を設けています。

③ 各種施設利用等での割引

美術館・博物館、動物園、映画館をはじめ、多くのレジャー施設やテーマパークなどで割引制度が設けられています。

④ 駐車場料金の割引や無料化措置

多くの駐車場で無料化や割引の対応を行っています。

(3) 保育面・教

育面での支援保護者の方が療育手帳を持つ場合、ご本人が療育手帳を持つ場合の2つの場合で、受けられる支援があります。

① 保育園への入園

入園者ご本人や、保護者の方が療育手帳を持っている場合で、それぞれ入園の優先順位が高くなる場合があります。

② 特別支援学校への入学

特別支援学校への進学を希望する際、療育手帳で、障害の程度を証明することができます。

(4) 就労に向けた支援

就労面でのさまざまな支援が得られます。障害者雇用枠での就職が可能となるのもその一つです。企業は一定程度数、障害のある方を雇用する義務もあるため、就労への道が広がるという側面があります。

(5) 医療面での支援

重度の知的障害のある方の場合、医療費の一部が助成される「障害者医療費の助成制度」の対象となる場合があります。

参考:
国税庁ホームページ
障害者と税
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/html/03_2.htm

障害者控除
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1160_qa.htm

東京都主税局ホームページ
自動車税・自動車取得税の減免制度
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/info/car-genmen.html

東京都福祉保健局ホームページ
障害者、日常生活の支援・社会参加の推進
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/nichijo/index.html
医療・保険、医療助成
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/josei/index.html

JR
割引制度のご案内
https://www.jr-odekake.net/railroad/service/barrierfree/discount.html

JAL 
身体障害者割引
https://www.jal.co.jp/dom/rates/rule/r_shougaisha.html

ANA 
身体障害者割引運賃について
https://www.ana.co.jp/service-info/share/assist/discount.html

NHK
放送受信料の免除
https://pid.nhk.or.jp/jushinryo/about_5.html

DoCoMo
ハーティ割引
https://www.nttdocomo.co.jp/charge/discount/hearty/

auスマートハート割引
http://www.au.kddi.com/mobile/charge/other-discount/smile-heart/

softbankハートフレンド割引
http://www.softbank.jp/mobile/price_plan/options/heartfrend-white-plan/

八王子市ホームページ
保育施設の利用調整について
http://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/kosodate/003/001/001/p001167.html

厚労省ホームページ 
障害者雇用促進法の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html

(6) 療育手帳を持つことでデメリットはないのか?

療育手帳が交付されること自体にデメリットと呼べるものはありません。とはいえ、知的障害があることが公的に認定されること自体が、知的障害のある方ご本人・ご家族の方々の精神的な負担になる場合もあるようです。また、療育手帳を所持していることを知られたくないと考える方もいらっしゃるでしょう。
療育手帳を取得したこと自体は、ご本人などがあえて伝えない限り、それが他人にわかることはありません。各種サービスを受ける際には療育手帳を提示する必要がありますが、サービスを活用するかどうかはその都度ご自分で選択することもできます。
 また、療育手帳は、返還手続きを取ることで、返還することも可能。まずは申請、交付を受けたうえで、あまりメリットを感じないということであれば返還を検討する、という方法もあります

最後に

知的障害のある方を支える福祉サービスは複数あります。そのうち療育手帳は、「知的障害を持つことが公的に認定されている」ことを示す一つの方法ととらえることもできます。療育手帳を提示することで、各種の福祉サービスを受けることができます。取得をためらわれる方も少なくないようですが、ご本人にとって大きなメリットになるサービスを受けられる場合もあります。少しでも興味を持たれたようなら、お住まいの地域の福祉事業窓口に相談してみてもよいのではないでしょうか。なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省ホームページ
第3編 社会福祉 第3章 障害者福祉
http://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_3_3.html

東京都福祉保健局ホームページ
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/nichijo/a_techou.html

青森県庁ホームページ 愛護手帳について
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/ssodan/about_aigot.html

東京大学 READホームぺ―ジ
療育手帳について
http://www.rease.e.u-tokyo.ac.jp/read/jp/archive/statistics/statistics_criterion.html

国税庁ホームページ
障害者と税
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/html/03_2.htm

障害者控除
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1160_qa.htm

東京都主税局ホームページ
自動車税・自動車取得税の減免制度
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/info/car-genmen.html

東京都福祉保健局ホームページ
障害者、日常生活の支援・社会参加の推進
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/nichijo/index.html
医療・保険、医療助成
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/josei/index.html

JR
割引制度のご案内
https://www.jr-odekake.net/railroad/service/barrierfree/discount.html

JAL 
身体障害者割引
https://www.jal.co.jp/dom/rates/rule/r_shougaisha.html

ANA 
身体障害者割引運賃について
https://www.ana.co.jp/service-info/share/assist/discount.html

NHK
放送受信料の免除
https://pid.nhk.or.jp/jushinryo/about_5.html

DoCoMo
ハーティ割引
https://www.nttdocomo.co.jp/charge/discount/hearty/

auスマートハート割引
http://www.au.kddi.com/mobile/charge/other-discount/smile-heart/

softbankハートフレンド割引
http://www.softbank.jp/mobile/price_plan/options/heartfrend-white-plan/

厚労省ホームページ 
障害者雇用促進法の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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