パニック障害 激しい動悸などが特徴的 ~ その原因は脳機能の異常?

精神障害

はじめに
 健康診断等で問題がないのに、何でもないときに突然「死んでしまうのではないか」」と思えるほど激しい動悸や胸の苦しさを感じたことがあるとしたら、それはもしかしたらパニック障害の典型的な症状であるパニック発作かもしれません。

 ここでは発症することが最も多い精神障害のひとつとされるパニック障害について、その症状や原因、治療法などを中心にまとめています。

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1. パニック障害とは?
(1) パニック障害とは?

パニック障害とは、精神障害の一つである不安障害の一つです。

人は地震や火事など、突発的な生命の危機を前にするとパニックを起こしがちです。「心拍数が増え、血の気が引き、冷静に物事が考えられなくなる」「大声で叫びだしたいような気分に襲われる」「吐き気に襲われたり、実際に吐いてしまったりする」「じっとしていられなくなり、やみくもに走りだす」といった反応が、人がパニック状態に陥ったときの典型的な反応です。

こうした反応は体に備わった生き延びるためのプログラムなのですが、このようなパニック状態のような反応が、何でもないときに、命の危険がないのに突如訪れる、その1回1回は短時間なのに、数日を経たずにくり返されるのがパニック障害です。

(2) パニック障害の原因

「図-パニック障害の原因」

パニック障害を含む不安障害は、以前は心理的な要因が主な原因であると考えられてきました。しかし脳科学の発展に伴い、脳内の神経伝達物資系が関係する脳機能異常が主な原因だとする説が有力になってきています。いずれにしてもその原因は十分に解明されているとは言えず、脳機能などの身体的な要因、心理的な要因、さらに社会的な要因が複雑に絡み合って起きると考えられています。

① 身体的な要因(≒脳機能異常)

パニック障害に有効な治療薬として、セロトニンをコントロールする働きのあるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)があります。このことが脳機能の異常、つまり身体的な面がパニック障害の原因ではないかと考えられる大きな理由となっています。というのも、恐怖感を司る、大脳辺縁系にある扁桃体を中心とした「恐怖神経回路」は、主にセロトニン神経によって制御されているからなのです。

② 心理的要因(心因)

パニック障害の発症には心理的要因も関わっているとされています。たとえばパニック障害の中核症状の一つで、何の理由もなく突然起こる「パニック発作」は、実は以下のような心理的要因があるケースが多いと考えられています。

1) 過去に何らかのきっかけがあった
2) 発症前1年間のストレスが多い
3) 小児期に親との別離体験をもつ など

③ 社会的要因

社会的要因とは、生きる時代、住んでいる国や地域の文化・価値観などを含む環境のことを言います。時代や環境によりものごとの受け止め方や考え方は変化します。つまり社会的要因は人間が作り出しているものと言い換えることもできるわけですが、それがパニック障害を含む不安障害の原因となっている面があると考えられているのです。

(3) パニック障害の患者数

 パニック障害は、生涯に一度でもかかる方が一般人口の2~8%にも達すると言われており、うつ病などとともに最も発症することが多い精神疾患・精神障害と言えます。

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参考:
厚労省ホームページ
みんなのメンタルヘルスホームページ
パニック障害・不安障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_panic.html
パニック障害・不安障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
パニック障害
https://www.ncnp.go.jp/hospital/sd/seishin/self02.html

公益社団法人 日本精神神経学会
塩入俊樹先生に「パニック障害/パニック症」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=43

2. こんな症状が見られたら
(1) パニック障害の主な症状

「図-パニック障害の3つの症状」

① パニック発作

「パニック発作」は、以下のような激しい身体の症状を伴う発作で、非常に強い不安症状です。

1) 動悸がする、心拍数が極端に上がる
2) 汗が出て止まらない
3) 体が震える
4) 息切れする
5) 息苦しい、窒息する感じがする
6) 胸が痛い、胸苦しさがある
7) 吐き気、おなかの苦しさ
8) めまい、ふらつき
9) うずき
10) 感覚まひ、極端に冷たい感覚または逆に極端に熱い感覚

これらの身体症状は、「気が遠くなっていっていく」「死んでしまうのではないか」「自分がコントロールできない、変になるかもしれない」と感じられるほどの強い不安・恐怖と伴う発作です。そのピークは10分以内に達しますが、仮に救急車で病院へ運ばれたとしても、その症状は病院に着いたころにはほとんどおさまっており、検査などでも特に異常は見られません。しかし同様の発作が数日と経たずにくり返し起こります。

このような発作は他の不安障害・うつ病・統合失調症などにも見られる症状と言われていますが、パニック障害による「パニック発作」は、原因やきっかけなし、また、いつどこで起こるかわからない「予期しない発作であること」が特徴です。

② 予期不安という症状

 パニック障害では、パニック発作がない時でも「また発作が起こるのではないか」という不安があり、それが1ヶ月以上続くような症状を伴います。このような不安を「予期不安」と言います。また「心臓発作ではないか」などのように発作のことをあれこれ心配し続けたり、仮に口には出さなくても発作を心配して「仕事をやめる」などの行動上の変化がみられたりといったことも、「予期不安」に位置づけられます。

③ 広場恐怖

 「広場恐怖」とは、パニック発作が起きた時、助けが得られなかったり、そこから逃れられなかったりするような場所や状況を避ける症状のことを言います。

たとえば一人での外出すること・乗り物に乗ること・人混み・行列・橋の上・高速道路・美容院・病院・劇場・会議など、広場というより、行動の自由が制限されて、発作が起きたときすぐに逃げられない場所や状況に対する恐怖だと考えればわかりやすいでしょう。パニック障害のある方は、このような「広場恐怖」を伴うことが多いとされていますが、伴わない場合もあります。

広場恐怖を伴うと、日常生活や仕事に支障を来す場合が多くなります。

(2) 過換気症候群との違い

 過換気症候群とは文字通り、過度に呼吸をしてしまう状態、過呼吸の状態をくり返すことを言います。

何らかの原因で息を何回も激しく吸ったり吐いたりする過呼吸状態になると、血液中の炭酸ガス濃度が低くなります。この結果、呼吸を司る呼吸中枢神経の働きにより呼吸が抑制されるため、ご本人は呼吸困難を感じるようになります。

また何度も呼吸するため、血液がアルカリ性に傾く・血管の収縮が起きる・手足のしびれや筋肉のけいれんや収縮が起きることになり、さらに過呼吸状態が酷くなるという悪循環の回路に陥るのです。

パニック障害との違いは、パニック障害が既に見てきた3つの症状があるのに対し、過換気症候群は不意に過呼吸状態になることが継続的に起きることです。とはいえこの違いは非常に判別しにくい面があると言えます。

また仮に当初は過換気症候群だった場合でも、それを何度も経験すれば不安を感じるようになると考えられることから、パニック障害との違いはますますわかりにくいと言えます。他にも過換気症候群とパニック障害とを併発している場合もあるとする考え方や、過換気症候群とパニック障害とはほぼ同じものだとする考え方もあります。よって症状の軽減をはかる上でも、専門医の診断を受けることが大切だと言えるでしょう。

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参考:
厚労省ホームページ
パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル(治療者用) みんなのメンタルヘルスホームページ
パニック障害・不安障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_panic.html
パニック障害・不安障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html
表1 パニック障害の診断基準
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic_b.html

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
パニック障害
https://www.ncnp.go.jp/hospital/sd/seishin/self02.html

公益社団法人 日本精神神経学会
塩入俊樹先生に「パニック障害/パニック症」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=43

一般社団法人 日本呼吸器学会
過換気症候群
http://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=41

3. パニック障害と診断されたら

「図-パニック障害の治療方法」

パニック障害の治療は、薬物療法と認知行動療法の2つの治療を平行して行うことで、最も効果が高まると考えられています。

(1) 薬物療法

パニック障害ではパニック発作をなくすことが治療の一番の目標になります。これには薬物療法が有効で、主に抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と、抗不安薬のベンゾジアゼピン誘導体(BZD)が用いられます。SSRIとBZDには、それぞれに長所と短所があるため、それを補完し合いながら行う併用療法を行うのが一般的とされています。

また症状が良くなったとしても、投薬治療は継続、半年から1年程度経過してから、徐々に薬の量を減らしていくのが一般的な投薬治療方法です。症状が良くなったからと言って自己判断で服薬を中止しまうことは再発を助長する可能性すらあるようです。

(2) 認知行動療法

以下のような認知行動療法もパニック障害の治療として有効とされています。また効果が出ると薬物療法よりも再発リスクが少ないと考えられています。

① 暴露療法

広場恐怖の対象をその不安の度合いによって段階づけし、容易なものから段階を追って順に挑戦していくという方法で、広場恐怖に最も効果のある治療法と考えられています。少しずつ成功体験を積み重ねることによって不安をコントロールしていく治療法だ、と言い換えることもできるでしょう。

② 認知療法

周囲で起きたことを解釈することを認知と言います。パニック障害の場合認知に歪みがあり、ネガティブな方向に解釈してしまうクセができてしまっていると考えられています。つまり不安の予兆に対して最悪の事態を予測してしまうクセがついてしまっている状況と言い換えることができるわけです。

認知療法とはこの認知を矯正する方法です。

パニック障害に特有の予測してしまうクセを、「この不安は最悪の事態を無意識に予測して起きている。しかし、最悪の自体は起こらない。だから安心してよい。そして時間が経てばこの症状も自然に治まる」などのように、言葉にして自分に言い聞かせることによって、認知の修正(=クセの修正)をしていくことになります。

(3) 経過(予後・治りやすさ)

パニック障害は回復までに時間がかかりやすい、あるいは、慢性化しやすいと言われています。その理由の一つに、発症から治療までにすでに長い時間が経ってしまっている場合が多いことがあげられます。他にも病気に対する知識やその理解の低さから周囲のサポートを受けにくいことなども、慢性化しやすい理由の一つとして考えられます。

また、特にうつ病やアルコール・薬物依存などを併発している場合、症状が悪化、経過が長引くこともがわかっています。

このように、パニック障害は慢性化しやすい病気と言えるわけですが、問題はパニック障害の症状そのものだけではなく、パニック障害に伴う能力障害や機能障害が仕事や日常生活へ与える影響が大きい面にもあります。このため症状をなくすことを目指すだけでなく、症状をコントロールしながら仕事や日常生活を送れるようになることを目指すことも大切だとも言えます。

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参考:
厚労省ホームページ
パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113842.pdf
みんなのメンタルヘルスホームページ
パニック障害・不安障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_panic.html
パニック障害・不安障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html

公益社団法人 日本精神神経学会
塩入俊樹先生に「パニック障害/パニック症」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=43

4. パニック障害のある方を支援するにあたって大切なこと
(1) パニック障害を理解する

パニック障害はその症状の程度はともかく、「その症状について表現される状態」を多くの方が経験します。たとえば極度の緊張状態のときに心拍数が増えたり汗をかいたりすること、息苦しさを感じたりすることは、多くの方が経験されるものでしょう。また、内科的な検査を受けても異常が見つからないという特徴があります。

このため「気のせい」「気にしすぎ」「性格的なもの」などのようにみなされやすく、ご本人も、周囲の方も、病気だと気づかない場合が多くあります。よってまずはパニック障害が精神障害の一つであるということの理解が必要になると言えるでしょう。

(2) 正しい診断と適切な治療を受けさせる

もしかしたら・・・と思ったら、可能な限り早いタイミングで精神科や心療内科医の診察を受けることが大切です。パニック障害はその原因で見たように、「心の弱さ」が原因で発症するわけではありません。生命に関わるようなことが起きた時、多くの人がパニックに陥るのと同様、それと同様のことが不意に起こるのがパニック障害であり、脳機能の問題や環境などの要因が複雑に絡み合って発症するのです。

そして原因が複雑な病気だからこそ、正しい診断と適切な治療を受けることが大切とも言えます。精神障害に対する誤った見方もあり、ご本人が専門医の診察を受けること自体に抵抗し、それを拒むケースも少なくありません。ご本人を診察に向かわせるような働きかけが必要になる場合があるという意味でも、パニック障害の正しい理解は重要と言えます。

(3) 自分で不安をマネジメントする方法を身につける

不安マネジメントに有効な方法として、腹式呼吸、筋のこわばりを緩めるリラクゼーション法、ヨガ、音楽や香りなどを用いたリラックス法といったものがあります。支援される方が一緒に行うなどしても良いのではないでしょうか。ただ中には効果が疑われるようなものがあったり、腹式呼吸などは誤った方法で行うと肺呼吸となってしまい、過呼吸を助長するような面もあったりしますので、主治医に相談してから行うとより良いと言えるでしょう。

(4) 規則正しい生活と適度な運動

規則正しい生活の基本は、食事・睡眠・運動です。規則正しい生活は、体内のリズムや自律神経系の働きを整え、免疫力を向上させます。つまりバランスの取れた食事、十分で質の高い睡眠、適度な運動は、パニック障害をコントロールするうえでも有効な方法なのです。

(5) 嗜好品について

コーヒーは、過剰摂取で不安を増強させる場合があると言われています。またアルコールには不安を一時的に軽減する効果がありまが、その一方で耐性や依存を起こしやすい面があります。また、一部の抗不安薬と併用すると副作用が増強し、危険な場合もあります。いずれも、適量、ほどほどを大前提とすることが大切、ということになります。ご本人がなかなかコントロールできないような場合、買い置きしないなどの工夫やサポートが必要とも言えるでしょう。

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参考:
みんなのメンタルヘルスホームページ
パニック障害・不安障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_panic.html
パニック障害・不安障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所
第3節 心身症や情緒及び行動の障害を伴う不登校の現状と課題
https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_b/b-200/b-200_p2-11.pdf
公益社団法人 日本精神神経学会
塩入俊樹先生に「パニック障害/パニック症」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=43

最後に

 パニック障害は患う方も多い精神疾患・精神障害の一つです。パニック発作、予期不安、広場恐怖の3つをその特徴としています。

 パニック障害の原因は、心の弱さというようなものではなく、脳機能の異常であることが有力視されています。このことからも推察されるとおり、その回復には時間がかかりやすく、またその症状がまったく出なくなるわけでもないと考えられています。

 一方で、規則正しい生活をすることや、症状などをコントロールする方法を身につけることで、生活へ影響を及ぼさないようにすることは可能であると考えられてもいます。いわば「うまくつき合う方法を見つけること」がパニック障害の対策だという面がある、ということです。

 なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

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参考:
厚労省ホームページ
パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル(治療者用) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113842.pdf
みんなのメンタルヘルスホームページ
パニック障害・不安障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_panic.html
パニック障害・不安障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html
表1 パニック障害の診断基準
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic_b.html

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所
第3節 心身症や情緒及び行動の障害を伴う不登校の現状と課題
https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_b/b-200/b-200_p2-11.pdf

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
パニック障害
https://www.ncnp.go.jp/hospital/sd/seishin/self02.html

公益社団法人 日本精神神経学会
塩入俊樹先生に「パニック障害/パニック症」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=43

一般社団法人 日本呼吸器学会
過換気症候群
http://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=41

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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