双極性障害(躁うつ病)とは? ~うつ病とは異なる疾患である

精神障害

はじめに
 人は誰でも、良いことがあると晴れ晴れとした気持ちになったり、嫌なことがあると落ち込んだりと、気分の良い日と悪い日とがあるものです。双極性障害は、この気分の浮き沈みが度を越して激しく、自分ではコントロールできなくなった状態のことを言います。部分的にはうつ病と似ている点もありますが、その治療アプローチは全く異なるものでもあることから、双極性障害の正しい理解が非常に重要です。
 ここでは双極性障害について、その症状や原因、治療で大切になることなどを、うつ病との関係も交えながらまとめています。

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1. 双極性障害(躁うつ病)とは?

「図-双極性障害とは? ~ うつ病との違いと合わせて」

(1) 双極性障害とは? ~ うつ病とは異なる疾患であるということの理解から

 双極性障害とは、「躁状態」と呼ばれる気分が昂った状態と、「うつ状態」と呼ばれる気分が低下した状態が交互にくり返される精神疾患・精神障害です。「躁状態」や「うつ状態」がおさまっているときには何の症状もなく、疾患のない人と何の変りもないのが特徴です。

 「躁状態」と「うつ状態」のあらわれ方はさまざまです。突然状態が切り替わったりする場合もあれば、その間隔が数カ月だったり、数年だったりすることもあります。

以前は「躁うつ病」と呼ばれていたこともあり、うつ病の一種と誤解されがちですが、この2つは全く異なるもので、治療も大きく異なります。一般に「躁状態」のときに「治療しよう」という意識は働かない、躁状態が軽度の場合があるという面があるため、「うつ状態」のときになって診察を受けることが多いとされています。このため「躁状態があること」を見逃され、うつ病と診断されるケースもあるようです。

双極性障害とうつ病とを見分けるためには、「うつ状態」の前後に「躁状態」が見られないかが重要になるということです。 

(2) 双極性障害の2つのタイプ

「図-双極性障害の2つのタイプ」

 双極性障害には2つのタイプがあります。1つは「うつ状態」に加えて激しい「躁状態」が起こる「双極Ⅰ型障害」で、もう1つは「うつ状態」に加えて「軽躁状態」が起こる「双極Ⅱ型障害」です。つまり、「躁状態の程度の違い」で分類されるということです。このことは、「うつ病との違い」をとらえる意味でも重要な視点と言えるでしょう。

(3) 双極性障害の原因

 双極性障害の原因ははっきりとはわかっていません。一方で、他の精神疾患・精神障害と比較して、遺伝の要素が非常に強い疾患だと考えられています。

① 遺伝的な要因

 双極性障害の場合、遺伝的影響が大きいと考えられているのは、家族発生する傾向があるからです。たとえば、親が双極性障害の場合、その子も双極性障害を発症する傾向が見られるということです。ただし、その発症に関わる遺伝子が発見されているわけではありませんし、また、ご家族に双極性障害の方がいれば必ず双極性障害になるわけでもありません。

また、ご家族に双極性障害を発症された方がいないから発症しないというわけでもありません。つまり、遺伝的な要因は、双極性障害の原因の一つとは言えそうではあるもの、それが唯一の原因とは言えないということです。

② 脳の神経経路の要因

 脳の神経経路に何らかの欠陥があるのではないかとも考えられています。脳の神経経路は、人のあらゆる行動の案内図の役割を果たしますが、この神経回路のうち、不要なものを取り除く機能がうまく働いていないことが原因の一つになっているというものです。不要な神経回路があることで、脳が混乱した案内図を作り出してしまい、異常な思考や行動を引き起こすと言い換えるとわかりやすいかもしれません。

③ 環境要因

 特に発症や再発の際には、ストレスが引き金になっていることが少なくないと考えられています。人との関係の中でのストレスで言えば、肉親の死といったものだけではなく、就職・結婚・出産といった、お祝いごとととらえられるような出来事でもストレスになる場合があります。

(4) 患者数

 双極性障害の発生頻度は、欧米では双極Ⅰ型障害で1%前後、双極Ⅰ型と双極Ⅱ型を合わせると2~3%と言われています。一方で、日本では、本格的な調査が少なく、はっきりとしたことはわかっていませんが、双極Ⅰ型と双極Ⅱ型を合わせて0.7%程度ではないかと言われています。

欧米と日本とで「なぜこれだけの差があるのか」という結論は出ていません。文化的な違い、社会的な違い、遺伝的な要因などさまざま考えられるものの、日本でも、実はさらに多くの方が発症している可能性もあるということです。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
双極性障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_bipolar.html
双極性障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_bipolar.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
加藤忠史先生に「双極性障害」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=27

日本うつ病学会
双極性障害委員会
http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/sokyoku/

TEDホームページ
双極性障害とは何か? – ヘレン・M・ファレル
https://www.ted.com/talks/helen_m_farrell_what_is_bipolar_disorder/transcript?language=ja

2. こんな症状がみられたら

既に見たように、双極性障害は、躁状態とうつ状態がくり返される、あるいは、うつ状態が基本にありつつ軽躁状態が見られます。

(1) 双極性障害に見られる症状

① 躁状態

 躁状態とは、感情や意欲、思考が著しく高揚した状態のことで、陽気で開放的になったり、興奮して怒りっぽくなったりするなど、普段とは異なる状態のことを言います。自身に満ち溢れ、多弁になったりする面もあることから、一見すると、特に問題がないように見えるかもしれません。

 しかしこの状態は自制が効かない状態です。他人の意見に耳を貸さなかったり、買い物やギャンブルに大金をつぎ込むような事態を引き起こしたりするなどして、社会生活に支障を来すようになる場合があります。
 
② 軽躁状態

 軽躁状態と躁状態との違いは、周囲に迷惑をかけるほどのものではないという点です。ただし、普段と比較すると明らかに「ハイ」な状態に見えます。人が変わったように元気に見えたり、短時間の睡眠でも平気だったり、人間関係に積極的だったりというような状態です。

 軽躁状態の大きな問題は、躁状態と同様、ご本人が自分の変化を自覚できない点にあります。ご本人はほとんど困っておらず、むしろいつもより調子が良いと感じていることすらあるのです。

③ うつ状態

 うつ状態には2つの中核症状があります。その1つは、言葉では表現しきれないようなうっとうしい気分が一日中、何日にもわたって続く「抑うつ気分」。もう1つは、あらゆることに興味が持てなくなり、また、何をしても楽しいといった感情が持てなくなる「興味・喜びの喪失」です。

 2つの症状のうち、少なくとも1つの症状があり、かつ、早朝から意識がはっきりすること、異常な食欲、体重の増減、疲れやすさ、やる気のなさ、自責感などのさまざまなうつ状態の症状のうち5つ以上が、2週間以上、毎日出ている状態をうつ状態と言います。

(2) 診断基準

 双極性障害は、躁状態の時期とうつ状態の時期がともにある場合になりますが、各時期の有無を診断する基準は以下に示すとおりです。疾患の有無の診断は当然ですが、すでに見てきたように、躁状態の有無が双極性障害なのか、うつ病なのかを判断する非常に重要なポイントになります。その意味で、自覚しやすいうつ状態にのみ目を向けるのではなく、過去にさかのぼって躁状態の有無をよく確認することが重要と言えるでしょう。
 
① 躁状態の時期

 以下のような症状のうち、少なくとも1)を含む4つ、または5つ以上の症状が、1週間以上に渡って毎日続く場合、躁状態があると診断されます。

1) 気分が良すぎたり、ハイになったり、興奮したり、怒りっぽくなったりして、他人から普段のあなたとは違うと思われてしまう
2) 少ししか眠らなくても平気になる
3) 自分が偉くなったように感じる
4) いつもよりおしゃべりになる
5) 色々な考えが次々と頭に浮かぶ
6) 注意がそれやすい
7) 活動性が高まり、ひどくなると全くじっとしていられなくなる
8) 後で困ったことになるのが明らかなのに、つい自分が楽しいこと(買い物への浪費、性的無分別、ばかげた商売への投資など)に熱中してしまう

② うつ状態の時期 ~ 気をつけるべきは、うつ病と診断されないこと

 以下のような症状のうち、少なくとも1)か2)のどちらかを含む5つ以上の症状が、2週間以上に渡って毎日続く場合、うつ状態があると診断されます。

1)ほとんど一日中憂うつで、沈んだ気持ちになる
2)ほとんどのことに興味を失い、普段なら楽しくやれていたことも楽しめなくなる
3)食欲が低下(または増加)したり、体重が減少(または増加)したりする
4)寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝早く目が覚めるなどの不眠が起こるか、あるいは眠りすぎてしまうなど、睡眠の問題が起こる
5)話し方や動作が鈍くなるか、あるいはいらいらして落ち着きがなくなる
6)疲れやすいと感じ、気力が低下する
7)「自分には価値がない」と感じ、自分のことを責めてしまう
8)何かに集中したり、決断を下したりすることが難しい
9)「この世から消えてしまいたい」「死にたい」などと考える

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参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
双極性障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_bipolar.html
双極性障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_bipolar.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
加藤忠史先生に「双極性障害」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=27

日本うつ病学会
双極性障害委員会
http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/sokyoku/

TEDホームページ
双極性障害とは何か? – ヘレン・M・ファレル
https://www.ted.com/talks/helen_m_farrell_what_is_bipolar_disorder/transcript?language=ja

3. 双極性障害と診断されたら

「図-双極性障害、治療のポイント」

(1) 治療方法

 双極性障害は、「躁・うつの波をコントロールできるようになること」が治療の最大の目標です。うつ病の治療の目標が「うつ状態の消滅や軽減」を目標とするのとでは大きな違いがあることの十分な理解が必要です。
 また、双極性障害では、脳の働きを調整している神経伝達物質が異常に増えたり減ったりと、そのバランスが崩れていることがわかっています。このため、精神療法だけで治るものではないと考えられています。

① 薬物療法

 双極性障害では、気分安定薬と呼ばれる薬物が有効であることがわかっています。日本で利用される主な基本的な気分安定薬はリチウムで、躁状態とうつ状態を改善する効果、躁状態とうつ状態との発生を予防する効果などがあります。

 ただし、リチウムにはその副作用として、下痢・食欲不振・のどの渇き・多尿などの症状が特に服用初期に見られる場合がある他、手の震えが長期間に渡って出る場合があります。リチウムの血中濃度が高くなりすぎないようコントロールされますが、これが高まりすぎた(投与されすぎた)場合、意識が朦朧としたり、甲状腺機能が低下したりする場合もあります。

このように、リチウムの副作用は決して小さなものではないため、服薬をやめてしまい、結果、双極性障害から回復できない方も多いようです。薬物には副作用はつきもの。どのように副作用と折り合いをつけながら治療に臨むかという点が重要になるとも言えるでしょう。

なお、リチウムに代表される気分安定薬の他に、うつ症状を改善する抗うつ薬や睡眠薬が処方される場合がありますが、いずれもその症状が著しい場合に利用されるものととらえ、医師の指示に従って服用とその中止を行うことが大切と言えます。特に抗うつ薬は、うつを抑制した結果躁状態が激しく出る場合もあるという点で、うつ病との違いの理解も踏まえて服薬することが重要でしょう。

② 精神療法

 双極性障害の精神療法は、薬物療法の効果をさらに高めるという目的で行われるのが一般的と言えます。その大きな視点として、生活のリズムを整えること、ストレスとのつき合い方を身につけることがあります。双極性障害という疾患を知り、それを受け入れ、自らそれをコントロールするための考え方や態度を身につけるものだと考えるとわかりやすいでしょう。

 その具体的な方法としては、対人関係社会リズム療法があります。「対人関係上のストレスを軽減させるよう人間関係を良好なものにしていくこと」と「不規則な生活の妨げとなっている原因を理解し、それをコントロールする方法を知ることで規則正しい生活を送れるようにしていくこと」とを組み合わせた方法だと言えます。

(2) 経過(予後・治りやすさ)

 双極性障害は、長期に渡る再発予防が必要な疾患です。その理由は、双極性障害の「躁状態とうつ状態をくり返す」という中核症状にあります。仮にどちらかの症状が治まったとしても、もう一方の症状が出ないことには残念ながらなりません。よって、どちらかの症状が治まったときに治療をやめないことが非常に重要になると言えます。

治療をやめてしまうと再発の可能性が高く、躁・うつをくり返すことにつながります。すると治療期間も長期化し、社会的なダメージも大きくなってしまいます。

 このような悪循環に陥らないためにも、薬物治療を続けることが大切と考えられますが、躁状態でもうつ状態でもない、症状がすっかりおさまっている機関に薬を服用し続けることは決して簡単なこととは言えません。実際多くの方が、症状がおさまっているときに服薬を中止してしまい再発していることを十分理解することを第一とした上で、ご家族の方の支援も欠かせないと言えるでしょう。

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参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
双極性障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_bipolar.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
加藤忠史先生に「双極性障害」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=27
日本うつ病学会
双極性障害委員会
http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/sokyoku/

最後に

 双極性障害は、躁状態とうつ状態とをくり返す精神疾患・精神障害です。過去に「躁うつ病」と呼ばれていたような経緯があることや、その一端の症状がうつ症状であることから、うつ病の一種と誤解されている場合も多いようですが、実際には全く異なる疾患であり、その治療により目指す目標も大きく異なります。

 双極性障害の治療の大きな目標は、「躁・うつの波をコントロールできるようになること」。このため、治療の中心となる薬物療法が長期に渡ります。躁状態でもうつ状態でもない「症状が治まった期間」があることから、その期間に服薬を中止してしまい、その結果、再発してしまう場合が多い疾患でもあります。

 このような事実を正しくおさえ、確実に治療するには、ご本人の努力だけでなく、ご家族の方を中心とした周囲の人々の支援が重要であると言えるでしょう。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。ご参考までご確認ください。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
双極性障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_bipolar.html
双極性障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_bipolar.html

公益社団法人 日本精神神経学会 ホームページ
加藤忠史先生に「双極性障害」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=27

日本うつ病学会
双極性障害委員会
http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/sokyoku/

TEDホームページ
双極性障害とは何か? – ヘレン・M・ファレル

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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