パーソナリティ障害とは?

精神障害

はじめに
パーソナリティ障害とは、大きくは3つ、細かく分けると10ものタイプに分けられます。これは、「パーソナリティ」というもののとらえ方が難しい面があらからです。そのため、パーソナリティ障害は、非常に誤解を受けやすい障害の一つとなっています。

ここでは、パーソナリティ障害における「パーソナリティ」とは一体何のことなのかにも注目しながら、パーソナリティ障害とは何か、またその治療法などについてまとめています。



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1.パーソナリティ障害とは?
(1) 「パーソナリティ」という言葉の意味は多様 ~ パーソナリティの複数の意味

① パーソナリティという言葉の多義性

「パーソナリティ」と言うと、一般的には、個性・人格、性格などのとらえ方がされる場合が多いようです。しかし、実際には、多様な意味が込められた言葉であり、また、利用される場面によって、その意味が異なる面があります。

実際、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説によれば、

「パーソナリティーとは何か、という問いに答えることは大変難しい。というのは、パーソナリティーをとらえる場合の観点や理論的立場によって、パーソナリティーの概念は多種多様であり、一概にいうことができないからである。ちなみにC・S・ホールとG・リンゼイは、その著書『パーソナリティの理論』(1957)において、18個のパーソナリティー理論を検討」しているとのこと。

出典:日本大百科全書(ニッポニカ)の解説、パーソナリティー

② パーソナリティ障害に対する誤解

このように、幅広い意味で使われるパーソナリティという言葉の問題や、障害というものに対する理解の不十分さもあり、日本では、パーソナリティ障害に対する誤解が多く見られるとされています。その誤解とは、「パーソナリティそのものが病的であるとする誤解」や、「性格が悪いこととする誤解」です。

パーソナリティ障害で言う「パーソナリティ」とは、心理学的な意味のパーソナリティとも、一般的な意味の「個性」に近いパーソナリティとも性質が異なるものとされているのです。

(2) パーソナリティ障害とは?

「図-パーソナリティ障害における、<パーソナリティ>のとらえ方」
パーソナリティ障害における、<パーソナリティ>のとらえ方

① パーソナリティ障害の定義

パーソナリティ障害は、世界保健機構の精神疾患の診断基準であるICD-10や、アメリカ精神医学会の診断基準であるDSMによれば「その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験および行動の持続的パターンであり、ほかの精神障害に由来しないもの」と定義されています。

これをひと言でまとめるとすれば、「そのパーソナリティのために自ら悩むか、他人を害する」「障害」が、パーソナリティ障害であると表現できるかもしれません。

② パーソナリティ障害におけるパーソナリティとは?

パーソナリティ障害における「パーソナリティ」とは、「その方に基本的には固定した、物事のとらえ方、思考および行動のパターンを意味する」とされていますが、このことはよく、「メガネ」を使ってたとえられます。

それは、「パーソナリティとは、人が生まれたときからかけていて、はずすことのできないメガネ」であるというとらえ方です。

人は常に「パーソナリティ」という名の「自分のメガネ」を通じて物事を見ているため、ご本人にしてみれば、「自分は現実をありのままにとらえているし、そのとらえた現実に基づいて思考し行動していると思っている」わけです。

一方、それを周囲の方が見ると、「その方のメガネを通して」物事を見て、とらえ、そして、考え、行動しているように見えるわけです。

ただ、このメガネを通した見方やとらえ方、考え、行動は、パーソナリティ障害の定義で言うところの「その方の属する文化」に依存する部分があるのも事実です。だからこそ、多くの方のパーソナリティは、いわば「想定の範囲内」に位置するのです。

③ 改めてパーソナリティ障害とは?

一方で、このメガネを通したとらえ方や考え、行動が、「個性」と呼ばれるものと地続きの関係にありつつも、「想定の範囲外」である場合があること、つまり誤解を恐れずに統計的な表現を用いれば「外れ値」に当たるような場合があることを、想像することもできるでしょう。

文化の許容範囲を超え、極端な物事のとらえ方、極端な思考、極端な行動がみられ、さらにそれらが長期間に渡っていて、対人関係における広い範囲でみられる場合があるということです。このような「外れ値」に位置するところにあるのが、パーソナリティ障害というものだと考えられるわけです。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス
パーソナリティ障害
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_personality.html

公益社団法人 日本精神神経学会
林直樹先生に「パーソナリティ障害」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=41

慶応義塾大学 KOMPAS
パーソナリティ障害(人格障害)
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000076.html

コトバンク
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 パーソナリティー
https://kotobank.jp/word/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC-597969

2.パーソナリティ障害の分類

「図-パーソナリティ障害の分類」
パーソナリティ障害の分類

アメリカの研究によれば、パーソナリティ障害は人口の15%が該当するとの報告があるようですが、その症状の類似性に基づいて3つの群に分けられます。

(1) A群:奇妙で風変り

① 猜疑性パーソナリティ障害・妄想性パーソナリティ障害

他者の動機を悪意あるものとして解釈するといった「不信と疑い深さ」が特徴的なパーソナリティ障害です。根拠なしに、他者は自分を利用する、だますと決めてかかるなどして、警戒心を抱くことになります。

つまり、他者の誠実さや信頼を不当に疑うことになるため、他者との間で信頼関係や協力関係を築くことが難しくなるということです。

② シゾイドパーソナリティ障害・統合失調症質パーソナリティ障害

社会的関係を避けようとする、対人関係の場面で喜怒哀楽を表に出さない、感情の起伏が乏しいといったことが特徴的なパーソナリティ障害です。他者と親密になることを避け、また、他の人々と一緒にいることよりも一人で過ごすことを好みます。

なお、シゾイドパーソナリティ障害と軽症の自閉スペクトラム症とを区別することは、非常に難しい場合が多いとされています。

③ 統合失調型パーソナリティ障害

話のピントがずれる・話題が飛ぶといった会話や行動面の特徴、感情の動きが少ない一方で不安や緊張が強いといった特徴、マイペースで身だしなみなどに無頓着といった特徴などが見られるパーソナリティ障害です。

その症状は、「統合失調症」と非常によく似ている面があるものの、統合失調症とは異なり、はっきりとした幻覚や妄想は見られないとされています。

【関連記事】
統合失調症とは? 広い意味での精神障害
https://jlsa-net.jp/sei/togoushityou/

(2) B群:演技的・感情的で移り気

① 境界性パーソナリティ障害

対人関係、自己像、感情などが不安定で、また、衝動をうまく制御できないことを特徴とするパーソナリティ障害です。

たとえば、見捨てられることに対して敏感であったり、実際そのような場面が訪れるとなりふりかまわず避けようとしたりするような行動が見られるとされています。また、ある人を過剰に理想化した矢先に同じ人を揶揄するなど、対人関係は極端で不安定とされています。

② 自己愛性パーソナリティ障害

賞賛されたいという欲求、共感の欠如、空想や言行における誇大表現が特徴的なパーソナリティ障害です。自分の能力や業績を誇大と言えるほどの過大評価する、際限のない成功や権力への欲求、美しさに対する空想などが見られる一方で、他者に対しては傲慢な態度や尊大な態度で接する面があるとされています。

③ 反社会性パーソナリティ障害

精神病質や社会病質とも呼ばれるような、他者の権利を無視したり、侵害したりすることすること、向こう見ずで思慮に欠けた行動、暴力などの攻撃的な行動を特徴とするパーソナリティ障害です。法律的規範を破り、無責任な行動をくり返すこともあるとされています。

④ 演技性パーソナリティ障害

他者の注目や関心を集めるような派手な外見や大げさな行動が特徴のパーソナリティ障害です。自分が注目の的になっていないと楽しめない面があるため、不適切なほど性的な誘惑や挑発的な行動によって注目を集めようとする行動が見られるとされています。

(3) C群:不安で内向的

① 依存性パーソナリティ障害

他者への過度な依存を特徴とするパーソナリティ障害です。面倒をみてもらいたいという過剰な欲求があるため、依存の対象となっている他者から離れることに異常な恐怖感を抱いたり、ご本人の行動や決断への助言や指示を執拗に求めたりといった行動が見られるとされています。

② 強迫性パーソナリティ障害

一定の秩序を保つこと、融通さに欠けること、几帳面さ、完璧主義、細部へのこだわりなどが特徴的なパーソナリティ障害です。細部や順序、形式にとらわれるあまり、締め切りに間に合わないなど肝心なことを達成できないなど、柔軟さや効率が犠牲になることがしばしば見られるとされています。

③ 回避性パーソナリティ障害

他者から批判や非難を受けたり、また拒絶されたりすることを常に恐れていたり、失敗することを過度に恐れることが特徴的なパーソナリティ障害です。このため、たとえば重要な対人関係や、強い刺激をもたらす状況を回避する行動がみられがち、とされています。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス
パーソナリティ障害
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_personality.html

公益社団法人 日本精神神経学会
林直樹先生に「パーソナリティ障害」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=41

慶応義塾大学 KOMPAS
パーソナリティ障害(人格障害)
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000076.html

3.パーソナリティ障害の診断と治療

「図-パーソナリティ障害の診断 ~診断の難しい障害であるという事実」
パーソナリティ障害の診断 ~診断の難しい障害であるという事実

(1) 診断の全体像

① パーソナリティ障害、診断の条件

パーソナリティ障害は、以下を条件に診断されることになります。

以下の症状が、他の種類の精神疾患によるものではないこと
1) パーソナリティ障害に見られる認知・行動の特性である「症状」に的持続的であること
2) 広い範囲の(複数の)精神機能の減損があること
3) 広くの生活場面で症状が認められること

② 受診の動機と診断との関係

パーソナリティ障害のある方は、パーソナリティ障害そのものを動機として医療機関を受診することは稀で、実際の受診のきっかけになるのは以下のようなものとされています。

1) 抑うつ、不安、パニック発作、希死念慮、不眠といった精神症状
2) 自傷や自殺を図ろうとする、摂食障害や物質依存
3) 引きこもりや非行といった行動の異常
4) 異性関係などさまざまな対人関係におけるトラブル

このような受診のきっかけは、パーソナリティ障害と診断する際の大きな課題になっている面があると言います。つまり、そもそもの原因はパーソナリティ障害であったのに、他の精神疾患・障害が疑われることになりやすいということです。

その一方で、気分障害や不安障害では、パーソナリティ障害に似た症状が見られる場合もあり、また、それが慢性化すると、ますますパーソナリティ障害との識別しにくくなるとされています。

他にも、外傷後のストレス障害によって生じるパーソナリティの変化や、物質関連疾患に伴う行動異常もパーソナリティ障害と似ている場合があるとされています。

つまり、診断の条件のうち、「他の種類の精神疾患によって説明されないこと」との関係は、パーソナリティ障害を診断するにあたって非常に重要でありつつ、難しい面があると考えられるということです。

(2) パーソナリティ障害のタイプ診断

既に見たとおり、パーソナリティ障害には、複数のタイプがあります。よって、それぞれのタイプごとの「診断基準のセット」が用いられることになります。

そのセットを構成する診断項目を一つひとつ、ご本人に当てはまるかどうか確認し、設定されている基準を満たせば、そのタイプのパーソナリティ障害であると診断されることになります。

このため、条件を満たすタイプが複数ある場合は、複数のタイプのパーソナリティ障害であると診断されます。たとえば、反社会性パーソナリティ障害で、かつ、依存性パーソナリティ障害でもあるといったような場合もある、ということです。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス
パーソナリティ障害
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_personality.html

公益社団法人 日本精神神経学会
林直樹先生に「パーソナリティ障害」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=41

慶応義塾大学 KOMPAS
パーソナリティ障害(人格障害)
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000076.html

4.パーソナリティ障害の治療と支援
(1) 治療方法

① 精神療法

パーソナリティ障害の治療の中心は、精神療法となります。
精神療法は、「患者であるご本人と、治療者である医師やカウンセラー」とが協力して進めていくことが前提となる治療方法です。具体的には、障害への認識を深め、具体的な対処方法や、自分の思いや気持ちを安定させる方法を身につけるなどしていきます。

パーソナリティ障害は、対象となる困りごとが多岐に渡る面があるため、単一の治療アプローチだけではなく、さまざまな治療アプローチを組み合わせて行われる場合があります。

多くの場合、その効果が出るまでに一定程度の時間がかかる面もあるため、継続しつつ、効果を見つつ、で進められるのが日本では一般的とされています。なお欧米では、比較的短期間の集中的治療によって大きな成果を得ることができる精神療法プログラムが複数開発されているようです。

【関連記事】
精神疾患・精神障害の治療に用いられる認知行動療法とは?
https://jlsa-net.jp/sei/nindhi-koudouryouhou/

② 薬物療法

薬物療法は、症状の一部を緩和する効果が期待できるとされています。

ただ、薬物療法は、薬を服用することが前提の治療法。薬を飲まなくなった場合、その効果は期待できなくなる面があります。よって、薬物療法を実施される場合でも、精神療法などとの併用が基本になるとされています。

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(3) パーソナリティ障害のある方の支援にあたって大切なこと

まずは、パーソナリティ障害とは何か? の十分な理解が必要でしょう。くり返しになりますが、パーソナリティ障害とは、性格の悪さといったような問題ではなく、たとえて言うなら「かけているメガネの問題」と考えられる点を忘れないことが大切と言えます。

次に押さえておきたいのは、パーソナリティ障害の治療は、長くなることが多いとされている点です。そう考えると、特別な対応や接し方を続けるのには、限界があります。よって、特別に構えるのではなく、長期視点で続けられる支援をしていくこと、が大切になると考えられるわけです。

ただ、ご本人に過剰な反応が見られるときや、ご本人の調子の悪いときがあると考えられますので、その時々に応じた対応方法、たとえば刺激にならないようにする、支援される方の負荷が大きくなり過ぎない程度に関与するといった術は学ぶ必要も出てくるとされています。

場合によっては、共に支援してくれる方を見つけておくことも、一つの対応方法になると言えるでしょう。

いずれにしても「相手を傷つけないように、そして、同時に自分が傷つかないように」が、人間関係における一般的な原則でしょう。この視点は、パーソナリティ障害のある方に対する接し方でも同様と言えるわけです。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス
パーソナリティ障害
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_personality.html

公益社団法人 日本精神神経学会
林直樹先生に「パーソナリティ障害」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=41

慶応義塾大学 KOMPAS
パーソナリティ障害(人格障害)
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000076.html

最後に

パーソナリティ障害における「パーソナリティ」とは、「人が生まれたときからかけていて、はずすことのできないメガネ」にたとえられます。

その「メガネ」を通じた物事のとらえ方、思考、行動が、文化の許容範囲を超えていて、さらにそれらが長期間に渡り、対人関係における広い範囲でみられる障害がパーソナリティ障害とされます。少なくとも、「性格が悪い」というような形で片づけられる障害ではないということです。

パーソナリティ障害は、大きくは3つ、細かく分けると10ものタイプに分けられるため、同じパーソナリティ障害としてとらえることが難しい面があるとも考えられます。このことが、パーソナリティ障害に対する誤解が生まれる原因になっている面もあるでしょう。

パーソナリティ障害は、精神療法がその治療の中心となることもあり、長期間に渡ることが多いとされています。よって、特別に構えるのではなく、長期視点で続けられる支援をしていくことが重要ともされてます。

そして、だからこそ、パーソナリティ障害とは何か、という十分な理解が必要な障害であると言えるのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス
パーソナリティ障害
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_personality.html

公益社団法人 日本精神神経学会
林直樹先生に「パーソナリティ障害」を訊く
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=41

慶応義塾大学 KOMPAS
パーソナリティ障害(人格障害)
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000076.html

コトバンク
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 パーソナリティー
https://kotobank.jp/word/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC-597969

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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