統合失調症とは? 広い意味での精神障害

統合失調症イメージ
精神障害

はじめに
統合失調症とは、広い意味での精神障害で、実は身近なものです。統合失調症は、およそ100人に1人が患う、頻度の高い病気です。その原因は複雑で、少なくとも心の問題だけが原因ではありません。

半数程度の方は、完全に・長期的に回復もしますが、一方で、長い服薬期間や心理社会的な治療も必要です。

長い目で、上手に付き合っていくということが必要な面もあると言えるでしょう。ここでは、そんな統合失調症について、その症状や治療、統合失調症を患った方への関わり方などをまとめています。



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1.統合失調症とは?
(1) 統合失調症とは?

統合失調症は、以前は精神分裂病と呼ばれていた病気で、幻覚や妄想といった症状が特徴的な精神障害です。慢性化したり、幻覚や妄想が強くなる期間があったりしますが、初めて発症した患者のほぼ半数は、「完全に、あるいは、長期的に回復する」とされています(WHO 2001)。

よって、早期発見・早期治療、薬物療法に加え、ご本人と家族の協力の下での再発予防のための治療の継続が大切と言われています。

(2) 原因

統合失調症は、進学・就職・独立・結婚などの人生の転機が発症の契機となることが多いと言われていますが、その原因は今のところ明らかではありません。

(3) 患者数

厚労省による2008年の受診状況の調査からの推計患者数は79.5万人です。ただし、医療機関による受診していない方を含めると、さらに多くの方が統合失調症を患っていると考えられます。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

京都府精神保健福祉総合センター
心の健康のためのサービスガイド
http://www.pref.kyoto.jp/health/index.html

公益社団法人 日本精神神経学会ホームページ
統合失調症について -精神分裂病と何が変わったのか-
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=77

公益財団法人 東京都医学総合研究所ホームページ
統合失調症プロジェクト
http://www.igakuken.or.jp/schizo-dep/

2. こんな症状が見られたら
(1) 主な症状

「図-統合失調症の主な症状」
統合失調症の主な症状
統合失調症の症状は多岐に渡っていると言われています。ここでは大きく3つ視点からその症状を整理します。

① 幻覚・妄想(陽性症状)

幻覚と妄想(=陽性症状)は、統合失調症の代表的な症状です。統合失調症に見られる幻覚や妄想の特徴とは次のようなものです。

1) 幻覚
幻覚とは、実際にそこには存在しないものが感じられることです。統合失調症で最も多いのは、幻聴(幻声)です。「お前はサイテーだ」といったご本人への批判・批評、「あっちへ行け」といった命令、「今シャワーを浴びています」といった監視が代表的なものとしてあげられます。

幻聴とやり取りしている様子(空笑・独語など)が周囲の人からは見えるため、奇妙だと思われたり、その苦しさを理解してもらいにくかったといった状況に陥りがちです。

2) 妄想
妄想とは、明らかに誤った内容であるのに信じてしまい、周囲の人が間違っていると指摘しても受け入れられない状態になってしまうことです。「被害妄想」や「誇大妄想」といったものが主な症状です。

3) 幻覚・妄想の特徴
統合失調症の幻覚や妄想には、2つの特徴があります。

・内容:
大切にしていることや劣等感を抱いていることなど、ご本人の価値観や興味・関心と関連していることが多いと言われています。また、幻覚や妄想の内容では、他人が自分に対して悪い働きかけをしてくるというものが多く、人間関係がその内容の中心となっています。

・気分に及ぼす影響:
幻覚や妄想の多くは、ご本人にとっては真実であるかのように思われ、不安・恐怖を感じさせます。無視したり、放っておいたりすることが難しい面があり、幻聴や妄想に従った行動に走ってしまう場合があります。

② 生活の障害(=陰性症状)

統合失調症では、幻覚・妄想とともに、「日常生活や社会生活において適切な会話や行動や作業ができにくい」という症状が見られます。このため周囲からは「社会性がない」などのように見られることが多くなるようです。

1) 会話や行動の障害
話のピントがずれる、話題が飛ぶ、相手の話のポイントや考えがつかめない、作業のミスが多い、行動の能率が悪いといった症状があります。症状が酷くなると、会話や行動が支離滅裂であるように見える場合もあります。

2) 感情の障害
感情の動きが少ない一方で不安や緊張が強いといった症状が見られます。また、相手の気持ちに気づかない、極端な誤解をするといったことが増えます。このため、自分を理解してもらったり、周囲の人とコミュニケーションを取ったりすることが苦手になってしまいがちです。

3) 意欲の障害
何かしようとしてもゴロゴロばかりしてしまう、部屋の整理をしない、体を清潔に保とうとしないといった症状が見られます。さらに無口で部屋に閉じこもってしまうといった症状が見られる場合もあります。

③ 病識の障害

幻覚や妄想などが起きていることを、自分では認識できない状況が見られます。他の患者さんの症状については、それが病気の症状であることを認識できるので、判断能力そのものの障害ではありません。

(2) 発症時期

10代後半から30代に多く見られる病気です。10代後半から20代がピークです。男性よりも女性の発症年齢は遅めです。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

京都府精神保健福祉総合センター
心の健康のためのサービスガイド
http://www.pref.kyoto.jp/health/index.html

公益社団法人 日本精神神経学会ホームページ
統合失調症について -精神分裂病と何が変わったのか-
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=77

公益財団法人 東京都医学総合研究所ホームページ
統合失調症プロジェクト
http://www.igakuken.or.jp/schizo-dep/

3. 統合失調症と診断されたら
(1) 統合失調症の治療方法

「図-統合失調症の治療法」
統合失調症の治療法
① 治療方法

統合失調症の治療は、外来・入院いずれの場合でも、薬物療法と精神療法やリハビリテーションなどの心理社会的な治療とを組み合わせてすすめられます。相乗効果があることが明らかになっているからです。

薬物療法と心理社会的治療は車の両輪のようなものだということを理解しておくことが大切でしょう。特に、幻覚や妄想が強い時期に薬物療法は欠かせません。

② 薬物療法に用いられる薬

統合失調症の治療に用いられる薬は「抗精神病薬」です。 抗精神病薬には、大きくは次の3つの作用があります。

1)抗精神病作用:幻覚・妄想・自我障害などの陽性症状を改善する
2)鎮静催眠作用:不安・不眠・興奮・衝動性を軽減する
3)精神賦活作用:感情や意欲の障害などの陰性症状を改善する

薬物療法では、「幻覚や妄想などに無関心になる」「幻覚や妄想などが行動に影響しなくなる」といった効果や、楽になる・リラックスするといった実感を得られることが多いようです。

ただ、「抗精神病薬」には様々な種類があります。このため、ご本人に合う薬やその量を決めるには、ある程度の試行錯誤が必要となるのが一般的です。つまり、「一発でバッチリうまくいく、ということはあまりない」と考える必要があるということです。

また、幻覚や妄想など、統合失調症の症状は、抗精神病薬による治療でいったんは改善しても、その治療を継続しないと数年で60~80%の方が再発するとされています。そして、自己判断で服薬を中止しないことも非常に重要だということができます。

③ 抗精神病薬の副作用

薬というと、その副作用を気にされる方も多いでしょう。しかし、抗精神病薬は、一般的には重い副作用の少ない安全な薬とされています。というのも、病気の性質上、長期間服用を続けることを前提とした薬であるため、その配慮がされているからです。

とはいえ、薬の副作用が全くないというわけではありません。ご本人に合った薬を探すという意味でも、どんな副作用があるかを知ることは重要なことでもあるでしょう。以下は、抗精神病薬の副作用としてあげられる主なものです。

1) 抗精神病薬に限らない、「薬全般」に共通する副作用
肝臓や腎臓への副作用です。副作用が強すぎないか確認するため、血液検査や尿検査、心電図による確認などがされます。副作用が強い場合、薬の変更や服薬量の調整などが行われます。

また、薬の種類によっては高血糖になったりすることもあるため、飲み始めのころなど、検査が繰り返し必要な場合があります。

2) 抗精神病薬に特徴的な副作用
じっとしていられないといったことが起こる場合があります。このような副作用が見られる場合は、それを軽減する薬物を併用したり、薬の量を減らしたりするといった対応をとることで、症状の改善を図ることになります。

3) 眠気・だるさ・立ちくらみ・口渇・便秘など
これらの薬による随伴的な副作用は、薬物の種類や量を調整することで軽減できる場合があります。

4) 高熱・筋強剛・自律神経症状などが見られる場合は、すぐに治療が必要
薬による副作用でこれらの症状が出ることはほとんどないとされています。ただ、このような症状がある場合、速やかな治療が必要とされています。放置することなく、すぐに主治医の診察を受けてください。

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④ 心理社会的な治療 ~リハビリテーション

統合失調症の場合、その症状により家庭や社会での日常生活に問題や課題が生じると言えます。こうした課題を解決していく方法として、心理社会的な治療=リハビリテーションがあります。

具体的には、「心理教育」、認知行動療法の原理を利用した「生活技能訓練」、「作業療法」、「デイケア」などがありますが、これらのリハビリテーションは、統合失調症をお持ちの方一人ひとりのニーズや状況に合わせて実施されることになります。

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(2) 経過(予後・治りやすさ)

「図-統合失調症の経過」
統合失調症の経過
病気の経過は、各段階に分けてみとらえた方がわかりやすい面があります。一般的に用いられるのが、前兆期・急性期・回復期・安定期という分け方であり、その見方です。

① 前兆期

様々な症状が出現する時期です。精神症状として見られるものに、焦りと不安感・感覚過敏・集中困難・気力の減退などがあります。ただ、これらの症状はうつ病や不安障害の症状と似ています。

また、不眠・食欲不振・頭痛など、自律神経のバランスの崩れから生じる身体の症状が出やすいといった特徴もあります。

② 急性期

幻覚や妄想など、統合失調症に特徴的な症状が出現する時期です。幻覚や妄想といった症状は、ご本人にとっては不安・恐怖・切迫感などを強く引き起こします。この結果、睡眠や食事のリズムの乱れに伴う昼夜逆転現象といった行動面での影響が見られる場合が多くなります。

また、周囲とのコミュニケーションがうまくとれなくなるといった日常生活や対人関係の面で課題が出てきやすくなります。

③ 回復期

治療により、徐々に特有の症状が治まっていく時期です。一方で、その分疲労感や意欲の衰えを感じたり、現実的だからこその将来への不安と焦りを感じたりする時期でもあります。

この時期に周囲が治ることに焦ってしまうと、それがご本人へも伝染し、逆に症状が悪化するといったことも見られる時期と言われています。

④ 安定期

病気による症状から回復していく時期です。とはいえ、病気になる前の状態へと戻れる方がいらっしゃる一方で、急性期の症状の一部が残り、そのままの状態が続く方もいらっしゃいます。

どのレベルを人それぞれの安定というかは、さまざまな視点もありつつ、「病気とうまく付き合っていける状態が確立できた状態」と言うこともできるかもしれません。

ただ、その安定は、「見せかけ」という場合もあります。つまり、いつ再発するかわからないという状況であるかもしれないということです。何より、ご本人も周りの方も含めて「焦りは禁物」という点は、心がけておく必要がありそうです。

⑤ 予後

治療により、ある程度良好な状態にある方、つまり、「完全に・長期的に回復する方」は半数程度と言われています。つまり、再発のリスクもあるということです。また、重度の障害も、10~20%の割合では発生すると言われています。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

京都府精神保健福祉総合センター
心の健康のためのサービスガイド
http://www.pref.kyoto.jp/health/index.html

公益社団法人 日本精神神経学会ホームページ
統合失調症について -精神分裂病と何が変わったのか-
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=77

公益財団法人 東京都医学総合研究所ホームページ
統合失調症プロジェクト
http://www.igakuken.or.jp/schizo-dep/

4. 統合失調症の方を支援するにあたって
(1) 統合失調症をお持ちの方を支援にあたって大切なこと

① 統合失調症は人それぞれ

統合失調症を理解することは、残念ながら非常に難しいと言えるかもしれません。その症状が千差万別であることに加え、完全に治る人もいれば、再発を繰り返す方いるよう、治療後の状況もさまざまと言えるからです。つまり、それだけ個別性が高いとも言えます。

そこで、何より重要なのは、症状も、治療に合う薬や心理社会的な治療も、治療後の回復状況も「人それぞれであること」を、まずはしっかりと理解することでしょう。この事実を理解すること自体が、実は最も大きな支援と言えるかもしれません。

もちろん、それは簡単なことではありません。そうであっても、やはりご本人と向き合うということが最も重要である、と言えるでしょう。また、ご本人とだけではなく、治療にあたる主治医とも良い関係を築きつつ、統合失調症という病気に立ち向かうことも大切です。

「信頼関係」と言ってもなかなか難しい面もありますが、場合によってはセカンドオピニオンの意見を求めるなど、冷静に、かつ、客観的に見ることも信頼関係づくりに役立つと言えるでしょうし、また、それがよりよい治療へもつながっていくと考えられます。

② ポイントになること

1) 病気の症状を理解する
怠けているように見えたり、だらしなく見えたりすることが、実は病気の症状である場合が多くあります。このことを理解してもらえること、統合失調症を患うご本人には心強いことでしょう。

逆に、理解してもらえないことは非常に辛いこと。その意味で、病気の症状を理解することは、とても重要でしょう。

2) 治療側との橋渡し役になる
診察に同伴して家庭での様子を主治医に伝える、薬の飲み忘れがないよう促すなどは、非常に重要な治療支援です。また、どんなことが支援になるのか? など、主治医と積極的に会話し、情報交換するなど、ご本人との橋渡し役になることも大切でしょう。

3) 良いところに注目する
まずは、小さなことでもご本人の良い面を見つけ、きちんと言葉で伝えることです。たとえば、やってくれたことに「ありがとう」、できたことに「よくがんばったね」というようなことでもよいのです。

はじめは気恥ずかしい面などもあるかもしれませんし、お世辞のように思えるかもしれませんが、褒められたり、感謝されたりすることに、嫌な気持ちになる人はいません。

4) 責めない
統合失調症の原因を「育て方」と考えてしまう方もいらっしゃるようですが、育て方によって統合失調症を発症することはありません。

【関連記事】
統合失調症の方がいるご家族の困りごととその対応
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(2) 統合失調症を患う方を支える支援機関など

医療機関はもちろん、地域の保健所や精神保健福祉センターの窓口に相談することができます。また、統合失調症の方をご家族にお持ちの家族会といったものも全国にありますので、そういった場で語り合うことも、場合によっては有効でしょう。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

京都府精神保健福祉総合センター
心の健康のためのサービスガイド
http://www.pref.kyoto.jp/health/index.html

公益社団法人 日本精神神経学会ホームページ
統合失調症について -精神分裂病と何が変わったのか-
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=77

公益財団法人 東京都医学総合研究所ホームページ
統合失調症プロジェクト
http://www.igakuken.or.jp/schizo-dep/

最後に

統合失調症は、実は身近な精神障害です。その原因は複雑で、少なくとも心の問題だけが原因ではありません。また、決して保護者の方のしつけのせい、というようなものではありません。

半数程度の方は、完全に・長期的に回復もしますが、一方で、長い服薬期間や心理社会的な治療も必要です。長い目で、上手に付き合っていくということが必要な面もあると言えるでしょう。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
厚労省 みんなのメンタルヘルス ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

京都府精神保健福祉総合センター
心の健康のためのサービスガイド
http://www.pref.kyoto.jp/health/index.html

公益社団法人 日本精神神経学会ホームページ
統合失調症について -精神分裂病と何が変わったのか-
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=77

公益財団法人 東京都医学総合研究所ホームページ
統合失調症プロジェクト
http://www.igakuken.or.jp/schizo-dep/

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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