精神障害のある方の小学校就学~中学校進学までを支えるしくみ

精神障害

はじめに
精神障害のある方とその保護者のみなさんにとって、教育に関することは大きな悩みごとの一つでしょう。ここでは、小学校~中学校までの就学・進学を中心に、就学へのステップ、選択肢となる特別支援学校・特別支援学級・通級・通常学級の違いなどをまとめています。

1. 小~中までの学校選び、と、そのステップ

小学校から中学校までの教育において、精神障害のある方はどんな選択ができるか、その選択肢とその後について、まずは全体像見てみましょう。

「図-就学、4つの選択肢」

(1) 障害のある方の教育を支えるしくみ ~特別支援教育とは?

「特別支援教育」とは、障害のある方の自立や社会参加を支援するためのもの。障害のある方が能力を高める、生活や学習上の困難を改善又は克服できるよう、指導及び必要な支援を行うことを言います。平成19年4月から「特別支援教育」は、学校教育法に位置づけられ、すべての学校において障害のある方の支援を充実していくことになっています。
特別支援教育の具体的な内容として、以下のようなものがあげられます。

① 個別の指導計画・個別の教育支援計画の立案・実行と、都度の見直しを行う

一人ひとりの方の障害の程度やその変化、さまざまな面から見たときの発達の状況に応じて、学習支援や社会生活における自立支援などを計画立てて行うということです。

② 特別支援教育コーディネーターが関係者のパイプ役となる

一人ひとりの支援を実施するためには、実現できる体制も重要です。そのため、学校や担任の先生、保護者の方、医療機関などの専門機関との連携を推進する役割を持っています。必要な時に相談する相手と言うこともできます。

特別支援教育の下、何らかの支援を受けながら教育を受けている方は、40万人以上で、そのうち37万人以上が広い意味での精神障害がある方です。

参考:
文科省 ホームページ 特別支援教育の現状
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/002.htm

(2) 精神障害のある方の小学校・中学校の選択肢、対象となる方

精神障害のある方の小学校・中学校の選択肢には、以下の4つがあります。特別支援学校・特別支援学級・通級は、「特別支援教育」の考え方の下でしくみ化されています。

① 特別支援学校

対象となる方
視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱

② 特別支援学級

対象となる方
視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、言語障害、情緒障害

③ 通級

対象となる方
視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、言語障害、情緒障害、発達障害
 
④ 通常級

精神障害がある方であっても、通常級に通われている方はいらっしゃいます。文科省の調査によれば、学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(AD/HD)・高機能自閉症(アスペルガー症候群等)など、広い意味での精神障害にあたる「発達障害」がある可能性のある方は、通常級に6.5%程度いらっしゃるようです。

4つの選択肢の対象となる方は、「ゆるやかに」決まっているという状況です。例えば、広い意味で精神障害の一つである発達障害のある場合も、就学相談の結果によって、特別支援学校に入学されるケースもあります。つまり、状況や困り事など、しっかりと把握していれば、その分、選択の幅も広まり、また、その方にとって最善の就学先を選べることにつながるということです。

参考:
文科省 ホームページ 
特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm

特別支援教育の現状と課題
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/053/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/25/1358061_03_03.pdf

(3) 就学へのステップと進級・進学

「図-就学へのステップと進級・進学」「図-就学へのステップ(小学校入学までの目安)」

「小学校の選択で、その後のすべてが決まってしまう」と考えられている方がいらっしゃるようです。確かに小学校入学(就学)は、ひとつの大きな選択のタイミングです。しかし、実際には、進級時、中学校進学時など、小学校への就学以降も選択のタイミングはあります。慎重になり過ぎたり、余計な苦労をし過ぎてしまったりと、障害のあるの方もその保護者の方も、「選ぶこと」に疲れ切ってしまう場合もあるとのこと。「最善の教育を受けさせたい」という気持ちは大切ですが、「成長の過程で、それぞれの選択ができる」という面があることも意識しておくとよいでしょう。

① 就学相談

就学先の選択は、精神障害のある方ご本人、保護者、教育委員会との間で相談しながら行うことになります。この一連の過程を、就学相談と言います。障害のある方ご本人にとって、もっとも適している教育環境は何か? を検討し、準備することが目的です。この就学相談は、各自治体によって実施時期が異なるようですが、前の年の9月末を目安に、相談申し込みをすることが多いようです。

その時になって慌てないよう、実際の就学相談の前までに、お住まいの地域で情報を収集していくことも大切です。まずは、お住まいの地域の教育委員会に問い合せるか、ホームページの閲覧などから始めるのが一つの方法です。最新の情報などを得られやすいという面だけでなく、より詳しい情報を得るためにどうしたらよいかがわかるなど、以降の情報収集もしやすくなると考えられます。

② 就学先選択(小学校)

最終的に就学先が決まり、その通知がされるのは1月31日まで。最初の面談から就学先の選択・決定までの間に、専門の医師または心理士等による、知能検査や発達状態に関する検査が行われます。また、就学支援委員会の方が幼稚園や保育園での様子を見に来るなど、様々な角度から、どこに就学するのが精神障害のある方ご本人にとって良いのか検討されます。

そして、就学支援委員会での審議を経て、就学先選択の面談の場が持たれます。よって、就学先選択の面談までに、精神障害のある方ご本人の希望も踏まえ、「どこに就学するのが最も良いか」、その理由も含め、検討しておくことが大切と言えるでしょう。学校見学や体験入学の機会があれば、積極的に参加されることもおすすめです。就学後の生活を具体的にイメージしやすくなるなど、様々なメリットがあると考えられます。

③ 進級時相談・選択

就学したら、その後はずっと選択した就学先で学ばなければならない、ということではありません。精神障害のある方の発達の程度、適応の状況、学校の環境等を照らし合わせながら、転学等も含め、柔軟に対応していける体制が敷かれています。
その一つのしくみが、定期的な教育相談や個別の教育支援計画に基づく関係者による打ち合わせ、必要に応じて個別の教育支援計画を見直しの実施というものです。ご本人の様子・変化などに注意しながら、何か気になることがあれば積極的に相談することが大切になると言えるでしょう。

④ 進学先選択(中学校)

中学校への進学時に、その先の進路を意識される場合があるかもしれません。つまり、高校進学するか、高校ではどこに進学するかを頭に入れながら、中学校を選択するということです。このような考え方が出る一つの理由は、一般の高校で特別支援学級が設置されている学校が今のところはないという現実です。また、高校進学時には、入学試験での成績だけでなく、調査書での成績が考慮されるという点もあります。

東京都の調査によれば、中学校の特別支援学級を卒業した子どものうち、進学する割合は9割以上。一方で、その8割近くが特別支援学校の高等部に進学、全日制高校へは1割程度の進学となっています。どうしても全日制高校に進学したい・させたいなどの意向がある場合、相応の計画が必要になるのも事実ですし、その事実を持って中学校を選択しようという考えを持つのは、ある意味では当然とも言えます。

ただ、これはあくまで数字上の話。数字の事実だけを見て、精神障害のある方ご本人の状況を見ない、ということになっては、本末転倒。「全日制高校への進学」の先に、大学進学なども考えられているのかもしれませんが、大学進学であれば、高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)というようなルートも考えられます。やはり「誰のための教育なのか」が、最も大切にすべきことではないでしょうか。

参考:
八王子市教育センター ホームページ
http://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/kyoiku/003/003/007/p004711_d/fil/28syugakusodangaido.pdf

文科省 ホームページ 第2編 教育相談・就学先決定のモデルプロセス
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/06/13/1340247_05.pdf

独立行政法人 日本学生支援機構 ホームページ 障害学生支援イベント情報
www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/event/…/h25seminar4_data3_2.pdf

東京都 ホームページ 5 中学校特別支援学級卒業者の進路状況
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/toukei/25sotsugo/kekkatokubetsushien.pdf

2. 特別支援学校・特別支援学級・通級・通常学級の特徴、と、メリットデメリット

「図-4つの選択肢(3つの特別支援教育と通常級)と所属と通学先」

(1) 特別支援学校・特別支援学級・通級・通常級の通学の仕方の面からみる違い

特別支援教育の3つの形と一般学級への通学の仕方を整理すると、以下のようになります。
在籍するところと、主に学ぶ場所が違うと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

(2) 特別支援学校とは?

① 心身に障害のある児童・生徒が通う学校で、幼稚部・小学部・中学部・高等部があります。また障害に基づく種々の困難を改善・克服するために、「自立活動」という特別な指導領域が設けられています。

② メリット
1) 学校ごとで、受け入れ対象としている障害が異なります(例えば、知的障害と四肢不自由の方のみ、四肢不自由の方と病弱の方のみ等)。その分、専門的な支援が受けられると捉えることができます。
2) 教員は、幼・小・中・高いずれか(または複数)の教員免許の他に、特別支援学校の教員免許を持つ専門教育を受けた方です。
3) 1クラス定員は6名。現在の平均在籍数は3名。より個別の状況に対応した教育が実施されているということです。

③ デメリット
1) 通常学級の方や同世代の方と触れ合う機会が他の支援形態と比較し、少なくなる面があります。
2) 転校・転学はできますが、手続きが必要で、煩雑になりやすい面があります。

(3) 特別支援学級とは?

① 障害の種別ごとの少人数の学級で、障害のある児童一人ひとりに応じた指導を行う学級です。一部の教科の指導は、通常級で行う場合もあります。

② メリット
1) 休み時間や給食時間、学校行事など、通常級の方と触れ合う場が設けられています。
2) 特別支援学級にするか、通級にするかなど、状況に応じてフレキシブルな対応が取りやすいと言えます。
3) 1クラスの定員は8名。現在の平均在籍数は3名。障害の内容に応じたクラス組みがされています。

③ デメリット
1) すべての学校に設置されているわけではないので、場合によっては通学等にストレスがかかる場合があると言えます。
2) 通常級との行き来やコミュニケーションが、ご本人にとってストレスになる場合があると考えられます。
3) 特別支援教育の範囲での評価が中心となる面があります。例えば高校進学時などでは、進路選択の幅が絞られる場合もあると考えられます。

(4) 通級とは?

① 通常の学級(通常級)に在籍し、ほとんどの授業を通常の学級で受けながら、障害の状況に応じた特別な指導を、特別な指導の場で行うものです。

② メリット
1) 通常学級での授業が中心で、一部でご本人の障害に合わせた支援が得られます。同学年の方との関係づくりなど、多くの経験が積みやすい面があると考えられます。
2) 状況によっては特別支援学級に変わるなど、フレキシブルな対応が取りやすいと言えます。
3) 通級指導教員一人あたりの児童・生徒の人数は13人とされており、状況に応じた指導を受けやすいと言えます。

③ デメリット
1) すべての学校に、それぞれの障害に対応する通級が設置されているわけではないため、通級時は別の学校に通わねばならない場合もあります。その分、人間関係が複雑になるなど、精神的にも物理的にもストレスがかかる場合があると考えられます。
2) 通級指導範囲については、特別支援教育の範囲での評価が中心となります。

(5) 通常学級とは?

① 小学校・中学校で通常の授業を行う学級のことです。

② メリット
1) 通常級ですべての指導を受けることができます。日によって違う場所に登校する必要がないなど、生活環境が同じ、生活のリズムが同じ、などのメリットがあると考えられます。

③ デメリット
1) 最大40人規模の大人数の中で生活することになるため、生徒同士の関係も多くなるなど、その分ストレスがかかったり、負荷がかかっていることなどに気づかれにくくなったり、という面があると考えられます。
2) 平均的な指導計画に基づき授業が行われるため、状況によっては指導効果が上がりにくいといった側面があると考えられます。

文科省 ホームページ 
特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm

最後に

精神障害のある方と保護者の方にとって、就学先選びは非常に大きな決断でしょう。その決断が、精神障害のある方の今後を決める判断になると考えられることもあるかもしれません。一方で、小学校就学時点で将来がすべて決まるというわけでもありません。また、見方を変えると、精神障害のある方は、小学校就学時点から常に障害のある方のために「選べる=最善の選択は何かを、精神障害のある方ご本人の状況などを踏まえて検討することができる」ということでもあります。

その時々で最善の選択ができるようにするために情報は欠かせません。情報を得られやすくするためにも、まずは教育委員会や学校などに相談すること、相談できる相手を見つけることが大切になるのではないでしょうか。そして何より、精神障害のあるの方ご本人の強みと困り事を十分把握すること、変化の有無など含めて様子をよく見ることが重要になるのではないでしょうか。

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

プロフィール

加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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