通級指導教室とは? ~障害のある方が利用できる教育システム

発達障害

はじめに
障害のある方の就学方法としての選択肢の一つに、通級指導教室があります。通級指導教室は、学校教育法に定められている特別支援教育の下、整備されているものです。ここでは通級指導教室について、その位置づけや教育システム・指導の特徴、就学の対象となる方といったことをまとめています。

1. 通級指導教室とは?
(1) 通級指導教室とは?

 通級指導教室(以下、通級)とは、通常学級に在籍しつつ、週に何時間かある通級による指導の時間だけ通級に移動して、一人ひとりの困難や課題に合わせた支援・指導を受けるという形式の特別支援教育に基づく教育制度の一つです。

障害の種類やその程度などによって、一人ひとりの困難や課題は異なるため、必要となる個別の支援や指導の内容は変わります。このため、通級指導教室の種類もいくつかに分かれ、設置されることになっています。

結果として、在籍する学校に、その困難や課題に対応するような通級が設置されていないこともあるため、地域で定められた他校の通級に通うことになる場合も出てきます。

通級による指導は平成5年より全国で制度化されました。その後の制度改正で、情緒障害から自閉症の方が独立して規定されるとともに、学習障害(LD)、ADHDも通級による指導・支援の対象に含まれるようになりました。

また、通級による指導時間数についても弾力化されました。一つの理由として、障害のある方への教育に関する考え方の進展などにより、通常級で学ぶ障害のある方が増えたことが上げられます。

このような「基本は通常学級で学ぶ」というニーズの高まりにより、特に小・中学校では通級による支援体制の整備が進んできているということです。

(2) 通級指導教室の前提となる特別支援教育とは?

通級は、学校教育法に位置づけられた特別支援教育の下、設置されています。

特別支援教育では、障害のある幼児・児童・生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点から、対象となる方々一人ひとりの教育的ニーズを把握し、お持ちの力を高め、生活や学習上の困難を改善したり、克服したりするために、適切な指導と必要な支援を行うとされています。

(3) 特別支援学級の就学者数

ここ20年間で、通級で支援・指導を受けている児童・生徒数は増加傾向にあります。

平成27年度の文部科学省の調査によると、全国の公立の小学校のうち3693校に、中学校では645校に、通級が設置されており、また、通級による支援・指導を受けている小中学生は8万3750人で、小中学校の児童・生徒全体の0.8%にあたります。

(4) 通級指導の拡充

① 教員定数の見直し

通常学級に在籍する方のうち、障害などにより何らかの個別の支援や指導を必要とする方は増加していますが、その一方で、受け入れる学校側の体制の整備は遅れていました。

これは、通級による指導の教員が加配定数で決められていたからです。加配定数とは、特別な支援や指導を行う目的で予算に合わせて教員を配置するしくみです。予算によって教員の数が先に決まるしくみのため、通級による指導を希望しても先生の数によって利用できない場合があったということです。 

このような状況を受け、通級による指導と外国人児童・生徒などへの日本語指導については、学級数などで機械的に教職員の定数が決まる基礎定数に組み込まれることになり、今後の10年間で通級による指導を行う教員を段階的に増やすことが決まりました。

これにより、初年度となる2017年度については、通級指導の教員1人当たりの子どもの数が2016年度の16.5人から13人になり、通級による指導と外国人児童・生徒などへの日本語指導とを合わせて、教職員定数が868人に増員されました。

② 特別支援教室構想

障害のある方が、さらに適切な支援を受けられるようにすべきというニーズは拡大しています。

学習障害(LD)、ADHD、自閉症スペクトラム障害といった発達障害のほか、障害のある方は、ほとんどの学校の通常学級に在籍しているとの試算もあり、必要な支援がなされていないとも考えられているからです。

このような状況を受け、文科省は「特別支援教室(仮称)」という、さらに弾力的な指導・支援ができる制度の導入を進めようとしています。

参考:
文科省ホームページ
学校教育法等の一部を改正する法律要綱
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06072108/001.htm
特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm
特別支援教育資料(平成27年度)【第1部 集計編】
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2015/06/08/1358541_01.pdf

国立国会図書館 ホームページ
教職員定数と義務標準法の改正
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10311174_po_0945.pdf?contentNo=1

2. 通級指導教室における教育システム

「図-通級指導教室における教育システム概要」

通級による学びを選択した場合、基本的には通常学級で学習しつつ、通級で障害の状態の改善又は克服を目的とする指導・支援を受けることになります。

(1) 一人ひとりの障害の状況や特性に応じた指導・支援

通級では、一人ひとりの障害の状況に応じた具体的な目標や計画を立て、指導・支援が行われます。たとえば自立活動では、特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考にした障害による学習上・生活上の困難を改善するための指導が行われるなどの工夫がされています。

また学習上の苦手を克服する必要があると考えられる場合などは、児童・生徒の障害の状態に応じて各教科の内容を補充するための指導を行う場合もあります。

たとえば、言語障害のある方が音読を苦手とする場合などに読む練習をしたり、算数障害のある子どもが筆算しやすいようにマス目のあるプリントでかけ算を学んだりとったものがあります。

(2) 指導時間

通級による指導の時間数は、自立活動と教科指導の補充を併せて、年間35単位時間(週1単位時間)から年間280単位時間(週8単位時間)までが標準とされています。

また、学習障害(LD)やADHDの児童・生徒の指導時間数については、月1単位時間程度で指導上の効果が期待できる場合もあることから、年間10単位時間(月1単位時間)から年間280単位時間までが通級による標準指導時間です。

小・中学校では、定められた授業内容や授業時間数を学習指導要領に基づき行うことが義務づけられていますが、その一部を児童・生徒本人の障害に応じた通級による特別指導に振り替えるなどの弾力的な運用が特例として認められています。

つまり他校に設置された通級による指導も、自校で受けた指導とみなされるということです。

(3) 通級指導教室の通い方

通級に通う方が在籍するのは通常学級です。つまり、学校生活の大部分は通常学級で過ごし、通級による指導の時間のみ、通級に通うことになります。このため、通常学級の教員が担任となります。

通級は障害別に分かれているため、必ずしも在籍校に該当する通級があるわけではありません。

このため他校の通級に通うことになる場合もあり、その際は、保護者の方による送迎が必要となる場合もあります。通級の設置状況や通級への通い方などは、地域や学区によっても異なりますので、お住まいの地域の教育センターなどに問い合わせする必要があります。

参考
文科省ホームページ
特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm
交流及び共同学習ガイド
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/010/001.htm
特別支援学校学習指導要領解説
自立活動編
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/18/1278525.pdf
特別支援教育資料(平成27年度)【第1部 集計編】
http://kyouiku.oita-ed.jp/edu-c/%E5%AE%9F%E8%B7%B5%E7%B7%A8%E3%80%80%E5%85%A8%E6%96%87%E3%80%80.pdf

電子政府の総合窓口 e-Gov
学校教育法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22F03501000011.html

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 ホームページ
重点推進研究 / プロジェクト研究 / 特別研究報告書
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub-c.html
自閉症のある子どもの指導・支援
https://www.nise.go.jp/cms/resources/content/11519/20160411-132035.pdf

宮崎県教育研修センター ホームページ
みやざきの特別支援教育
https://cms.miyazaki-c.ed.jp/ssc007/htdocs/

高知県教育センター ホームページ
通級について
http://www.kochinet.ed.jp/center/tokubetsu/shintan_support_book/PDF/Q25.pdf

3. 通級指導教室を利用できる方

「図-通級指導教室を利用できる対象」

(1) 通級指導教室を利用できる方

通級を利用できるのは、以下のような障害のある方のうち、通常学級に在籍している方で、障害に応じた特別の指導を行う必要があると判断された方になります。基本的には障害種別ごとにクラスが設置されていますが、地域によっては特定の障害種別のクラスが設置されていない場合もあります。

① 視覚障害
② 聴覚障害
③ 肢体不自由
④ 言語障害
⑤ 自閉症
⑥ 情緒障害
⑦ 学習障害
⑧ ADHD(注意欠陥・多動性障害)
⑨ 病弱および身体虚弱

(2) 就学基準として明確に設定されているわけではない

通級の支援対象となる方は、通常学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度とされています。つまり、明確な基準があるとは言えない状況にあると言えます。このため、通級の対象となるかどうかは地域や学校によって異なる場合があることも否定できません。

就学先を選択する際の就学相談の場などで、ご本人の障害の状況やそれに伴う困難・課題、また、保護者の方のご意向などと合わせ、検討されることになりますので、その時までにしっかりとした準備が必要と言うことができるでしょう。

参考:
文科省ホームページ
通知「障害のある児童生徒の就学について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20020527001/t20020527001.html

4. 通級指導教室の利用の魅力と課題

これまで見てきた通級の利用について、その魅力と課題を整理すると以下のように表現できるのではないでしょうか。

「図-通級指導教室を利用する魅力と課題」

(1) 魅力的な点

① 通常学級での授業が学びの中心となっている
② 通常学級に在籍するため、同世代の多様な個性を持つ仲間とのコミュニケーションなどの経験が積める
③ ご本人の障害の状況や発達段階に応じた指導カリキュラムが組まれ、そのカリキュラムに基づき、必要な支援やフォローを受けながら学習を進めることができる

(2) 課題

① 利用基準があいまいな面がある
② 制度を利用できるか、や、学級数や受け入れ可能人数など、地域差が大きい
③ すべての学校に通級があるわけではないため、場合によっては他校に通学するなどの負担が生じる
④ 通常学級との行き来がお子さんのストレスになることもある
⑤ 高校では通級制度はまだ整えられておらず、特別支援学級も設置されていないのが現状(ただし、2018年度から高校でも通級指導を始めるよう文部科学省が準備を進めている)

最後に

通級指導教室は、障害のある方の就学方法としての選択肢の一つです。基本的には通常学級で学びながら、対象となる時間のみ、場を移して学ぶことになります。

通級指導教室は、特別支援教育の下で整備されており、特に小学校・中学校においては、多くの学校で、全国的に設置されています。一人ひとりの障害の状況や発達段階に合わせた教科指導や社会生活指導などが受けられる、通常学級の生徒とも交流しやすいといった点が大きな魅力と言えるでしょう。

就学基準があいまいな面もあるため、ご本人の状況をしっかりと把握し、保護者の方のご意向を整理することも重要です。特別支援学校や特別支援学級への就学、通常学級でのみでの学びと比較し、魅力となる点や課題にも注意しながら、就学方法として検討するとよいのではないでしょうか。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
文科省ホームページ
学校教育法等の一部を改正する法律要綱
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06072108/001.htm
特別支援教育について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm
特別支援教育資料(平成27年度)【第1部 集計編】
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2015/06/08/1358541_01.pdf

交流及び共同学習ガイド
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/010/001.htm
特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/18/1278525.pdf
通知「障害のある児童生徒の就学について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20020527001/t20020527001.html

国立国会図書館 ホームページ
教職員定数と義務標準法の改正
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10311174_po_0945.pdf?contentNo=1

電子政府 e-Gov ホームページ
学校教育法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22F03501000011.html

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 ホームページ
重点推進研究 / プロジェクト研究 / 特別研究報告書
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub-c.html
自閉症のある子どもの指導・支援
https://www.nise.go.jp/cms/resources/content/11519/20160411-132035.pdf

宮崎県教育研修センター ホームページ
みやざきの特別支援教育
https://cms.miyazaki-c.ed.jp/ssc007/htdocs/

高知県教育センター ホームページ
通級について
http://www.kochinet.ed.jp/center/tokubetsu/shintan_support_book/PDF/Q25.pdf

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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