発達障害のある方を支える法律~発達障害者支援法とその他の法律との関係

発達障害

はじめに
発達障害のある方を支えるしくみは、この10年程度の間で整備されてきました。その主となる法律として発達障害者支援法がありますが、この法律は他の法律やしくみを1本でつなぎつつ、さらに支援の範囲を広げようとするような法律です。ここでは、そのような発達障害者支援法の概要をおさえつつ、その他、発達障害のある方を支える具体的な法律や定められている内容などをまとめています。

1. 発達障害者支援法制定・改正の背景

発達障害者支援法は、発達障害のある方を総合的に支援する法律として2005年に施行され、また、2016年に改正・施行された法律です。発達障害者支援法が施行される以前、発達障害のある方への支援については、次のような問題が指摘されていました。

(1) 発達障害のある方に対する支援を目的とした法律がなく、障害のある方を支える各法律やしくみ・制度の谷間に置かれてしまい、十分な対応がなされていない
(2) 発達障害は、障害としての認識が必ずしも一般的ではなく、発見や適切な対応が遅れがち
(3) 専門家が少なく、適切な対応がとりにくい

つまり、法やしくみ・制度が整備されていないことで、発達障害のある方やその保護者の方々に、さまざまな負担があったということです。そのような中で制定・施行されたのが、発達障害者支援法です。

この法律の施行により、医療・保健・福祉・教育・労働など、各種支援やそのしくみがようやく拡充してきましたが、その一方で、乳幼児期から高齢期まで切れ目のない支援やご家族の方々などを含めたきめ細かな支援、地域の身近な場所で受けられる支援が不十分といった問題がありました。このような問題を解決し、支援を一層充実させることを目的に、2016年法改正がされました。

参考:
内閣府ホームページ
発達障害者支援法
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h29hakusho/zenbun/pdf/s2_2-1.pdf

厚労省ホームページ
発達障害者支援法の改正について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000128829.pdf

2. 発達障害者支援法の位置づけ
(1) 発達障害者支援法の位置づけ

発達障害者支援法は、以下のような趣旨で制定されています。

① 発達障害者に対する障害の定義と発達障害への理解の促進
② 発達生活全般にわたる支援の促進
③ 発達障害者支援を担当する部局相互の緊密な連携の確保・関係機関との協力体制の整備

(2) 発達障害者支援法改正のポイント

発達障害者支援法の2016年の主な改正ポイントは以下のような点です。

① 目的規定

発達障害のある方を切れ目なく支援することが特に重要であること、発達障害があっても基本的人権が担保された日常生活や社会生活を行えるようにすること、さらに、障害の有無で分け隔てられることなくお互いに尊重し合い、共生できる社会の実現を目指すことが明記されました。

② 「発達障害者」の定義

「発達障害と社会的障壁で生活に制限を受ける方」が、この法律で示される「発達障害者」と定義されました。なお、ここで言う「社会的障壁」とは、「生活を送る上で障壁となるような、社会における事物・制度・慣行・観念その他一切のもの」とされています。つまり、発達障害に対する理解不足なども含め、社会的な障壁であるとされたということです。

③ 基本理念の新設

改正前は既定のなかった基本理念が制定されました。つまり、「発達障害のある方の支援」とはどういうことかが示されたということです。ここでは、発達障害のある方の社会参加の機会が確保され、生活の場の選択の自由が確保され、地域社会で生活する上での社会的障壁をなくすことが示されています。また、発達障害のある方の支援は、「幅広く、かつ、切れ目なく行われるよう制度化されること」とされています。

④ 国・地方公共団体の責務

発達障害のある方やご家族の方に、必要に応じて専門的な支援機関への橋渡しを行うことができる相談体制を整備することが国・地方公共団体の責務とされました。

⑤ 発達障害のある方への支援施策

「図-発達障害者支援法で示されている、発達障害のある方への支援」

発達障害のある方やその家族の方への支援の領域とそこで行おうとする内容が明確にされました。具体的な支援施策とされているものに以下のものがあります。

1) 教育の支援
発達障害の有無に関わらず、教育を受けられるようにすること、そのための個別の教育支援計画・指導計画を作成すること、いじめ防止対策等の推進などがあげられています。

2) 情報の共有の促進
発達障害のある方の医療・保健・労働等の支援をするにあたって、民間も含めた関係機関が支援に必要な情報共有を図ろうとするものです。個人情報保護の視点を考慮しつつ、必要な連携は行うとされています。

3) 就労の支援
発達障害のある方が就労し、社会で活躍できるよう、ご本人への訓練だけでなく、雇用する企業等へも就労機会の提供や一人ひとりの特性に応じた雇用管理等を求めるとされています。

4) 地域での生活支援に関する支援
性別・年齢・障害の状況や生活の実態に合わせて、地域社会での生活に必要な支援を進めるとされています。

5) 権利利益の擁護
差別の解消・いじめの防止・虐待の防止などのための対策の推進や成年後見制度が広く活用されるようにするとされています。成年後見人制度とは、家庭裁判所によって選ばれた方が発達障害を含む障害のある方ご本人の利益を考えながら、ご本人を代理して必要な福祉サービスの利用の契約をしたり、ご本人が自分で契約をするときに同意を与えたり、同意を得ないでした契約を後から取り消したりすることで、ご本人を保護・支援するしくみです。

6) 司法手続における配慮
発達障害のある方が、万が一、民事・家事・行政などの事件の加害者・被害者などの当事者になってしまったとき、その手続にあたって権利を円滑に行使できるよう、一人ひとりの特性に応じたコミュニケーションの手段を確保することなど適切な配慮を行おうとするものです。

7) 発達障害のある方のご家族などの支援
発達障害のある方のご家族が、必要な相談・情報の提供・助言を受けられるよう、また、発達障害のある方のご家族同士が互いに支え合うための活動ができるよう必要な支援を行おうとするものです。

⑥ 発達障害者支援センターの適切な設置と運用

発達障害のある方が地域社会で生活していくための必要な支援を行う機関として、発達障害者支援センターがあります。この発達障害者支援センターを地域の実情を踏まえながら複数設置すること、市町村等の実施する発達障害のある方への支援を発達障害者支援センターや発達障害者地域支援マネジャーがバックアップすることなどが都道府県や指定都市といった行政機関の役割として明示されました。

⑦ 発達障害者支援地域協議会の設置

 発達障害者支援地域協議会は、次の3つの役割を担うものとされています。

1) 各都道府県内の支援体制の現状を把握し、地域における発達障害のある方の支援体制に関する課題について情報共有をすること
2) 医療、保健、福祉、教育、労働等の関係機関等の連携のより一層の緊密化を図ること
3) 支援体制に関する課題解決や関係者間の緊密な連携を図ることを含め、地域の実情に応じた体制整備を進めること

この目的を果たすため、発達障害者支援地域協議会は、都道府県及び指定都市が地域の実情に応じて設置できるとされました。

⑧ 国民に対する発達障害に関する理解の普及・啓発

個々の発達障害の特性など、発達障害に関する国民の理解を深めるため、学校・地域・家庭・職場などの様々な場を通じて、必要な広報等の啓発活動を行うことが国及び地方公共団体の役割として明示されました。

⑨ 専門家の確保・調査研究の推進

発達障害のある方一人ひとりをその特性に応じて支援できるよう、福祉・教育・医療・行政などに止まらず、司法や警察関係者なども含めた各領域で専門的知識を持つ現場の人材を育成・確保することが必要であること、また、調査研究の推進が行われるべきだとされました。

参考:
内閣府ホームページ
発達障害者支援法
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h29hakusho/zenbun/pdf/s2_2-1.pdf

厚労省ホームページ
発達障害者支援法の改正について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000128829.pdf

3. 他の法律との関係 ~ 発達障害者支援法は各法律を横串でつなぐような役割

「図-発達障害者支援法とその他の法律との関係」

 これまで見てきたように、発達障害者支援法は、「発達障害のある方を支援する領域を示し、また、その具体的な施策の方向性を規定するもの」ととらえるとわかりやすいかもしれません。というのも、この法律の中では、いつ、どこで、誰に、何を、どんな目的で、どのように具体的な支援を行うのかということまでは規定されていないからです。

そこで重要になるのは、具体的な支援を規定している他の法律との関係です。つまり、「以下のような各法律がカバーしてきた具体的な支援は、他の障害だけでなく、発達障害のある方も対象だ」ということが、発達障害者支援法が制定・改定によって明確になった面があるということです。

発達障害のある方に対する具体的な支援・サービスを規定する法律としては、以下のようなものがあります。

(1) 障害者基本法

障害のある方の自立・社会参加を目的とした支援施策などを行う上での基本的理念や国・地方公共団体など行政の役割などを明らかにしつつ、障害のある方の福祉を増進することを目的として制定された法律です。ここで、発達障害についても、その対象となることが明示されています。

(2) 障害者総合支援法

障害のある方が尊厳ある生活を営めるよう、必要な障害福祉サービスの給付や地域生活支援事業などの支援を総合的に行うことを定めた法律です。

この法律の中で位置づけられているサービスには、自立支援給付と地域生活支援事業の2種類のサービスがあります。

① 自立支援給付

発達障害を含む障害のある方が、福祉サービスを利用した際に、その費用の一部を国が負担するものです。基本的にはかかった費用の「9割」が給付対象となり、1割がサービスを利用したご本人の負担分となります。

この中で位置づけられている福祉サービスに、障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)、自立支援医療、相談支援事業、補装具の大きく4つのサービスがあります。

② 地域生活支援事業

都道府県や市区町村が主体となって実施するサービスです。このため、支援内容は、お住まいの地域によって異なります。

この中に位置づけられている福祉サービスに、外出をサポートする移動支援、日常生活用具の給付や貸与、手話通訳や要約筆記を派遣する意思疎通支援、成年後見制度支援などがあります。

(3) 児童福祉法

児童福祉を保障するための児童の権利や支援が定められた法律です。障害のある子どもに対する事業として、障害児通所支援、入所支援、支援に対する給付金に関する事業の3つが定められています。

(4) 障害者虐待防止法

障害のある方への虐待の予防と早期発見、擁護者への支援を行うための法律です。ここで擁護者とは、家庭・福祉施設・職場等で支援をされる方になります。また、虐待が見られた場合には、全国民に市区町村や都道府県に通報の義務があるとされています。

(5) 障害者優先調達推進法

障害者就労施設等が供給する物品等に対する需要を増進するための法律です。

(6) 障害者雇用促進法

発達障害を含む障害のある方の雇用を企業に促すとともに、継続して働き続けられるよう支援することを定めた法律です。法定雇用率として、一定規模以上の企業には、いずれかの障害のある方の雇用が義務づけられているとともに、就労訓練や就労継続のための支援を行うことを定めています。また、雇用した企業に対する助成金制度なども実施されています。

(7) 障害者差別解消法

障害の有無で分け隔てられることなく、互いを尊重し合いながら共生する社会の実現のため、障害を理由とする差別解消の推進を目的に制定された法律です。障害のある方の権利を守ること、社会的障壁を取り除くための配慮をすること、国民に対して障害に対する理解を深める活動をすることなどが定められています。

(8) その他(手帳制度・年金制度・手当制度)

精神障害者保健福祉手帳は、発達障害のある方が取得できる場合がある手帳です。精神障害者保健福祉手帳は、発達障害を含む精神障害のある方の自立と社会参加の促進を図るための制度で、公共料金の割引、税金の控除や減免、公共施設等の割引利用など、様々な支援策が講じられています。

障害年金は、発達障害を含む障害のある方を経済的な面で支援する制度です。相当程度の障害があると認定された場合、年金や一時金といった形で現金支給されます。

手当制度のうち、障害のある方が対象となりえるものに、障害児福祉手当、特別障害者手当、特別児童扶養手当といった国の手当と、各都道府県などがしくみ化している手当があります(たとえば東京都の場合、重度心身障害者手当、心身障害者福祉手当、児童育成手当といったものがあります)。

これらの手当は、その基準を満たせば支給の対象になり、経済的支援が受けられるようになっています。

参考:
内閣府ホームページ
発達障害者支援法
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h29hakusho/zenbun/pdf/s2_2-1.pdf

厚労省ホームページ
発達障害者支援法の改正について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000128829.pdf
みんなのメンタルヘルス ホームページ
精神障害者保健福祉手帳
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

電子政府の総合窓口 e-Gov
http://www.e-gov.go.jp/

公益財団法人 東京都福祉保健財団 
福ナビ 障害のある方への手当一覧
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/20k_fukusu_service/teate/syougaiteate_hyo.html

最後に

 発達障害のある方を支援する法律に発達障害者支援法があります。この法律が制定されたのは10年ほど前。つまり、発達障害に対する理解や支援の範囲は、まだまだ十分とは言えない状況があるということでしょう。それ以前に制定・制度化されている障害のある方を支援する法律や制度があったこともあり、発達障害者支援法は、各法律や制度をつなぐような法律という側面もあります。

発達障害のある方への支援領域は多くありますが、それぞれの支援内容について詳細を確認するには、それぞれの法律を確認することが必要になる場合もあるということです。

なお、この記事に関連するおススメのサイトは下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考:
内閣府ホームページ
発達障害者支援法
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h29hakusho/zenbun/pdf/s2_2-1.pdf

厚労省ホームページ
発達障害者支援法の改正について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000128829.pdf
みんなのメンタルヘルス ホームページ
精神障害者保健福祉手帳
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/3_06notebook.html

電子政府の総合窓口 e-Gov
http://www.e-gov.go.jp/

公益財団法人 東京都福祉保健財団 
福ナビ 障害のある方への手当一覧
http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/20k_fukusu_service/teate/syougaiteate_hyo.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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