発達障害のある方への支援内容(全体像)

発達障害

はじめに
 発達障害のある方やそのご家族の方を支援するしくみや制度は、ここ10年程度の中で整備されつつあります。ここでは、2005年に制定・2016年に改正された発達障害者支援法の下で制度化・しくみ化することが求められている支援内容を中心に、その全体像をまとめていきます。

1. 全体像 ~発達障害のある方に対する支援範囲

「図-発達障害のある方に対する支援の範囲」

発達障害のある方を支援するしくみや制度は、ここ10年程の間に整備されたものですが、今後拡充されることが見込まれています。支援の視点は複数ありますが、発達障害者支援法という法律の中で示されている各ライフステージで必要となる支援と年齢に関わらず必要となる支援という視点から、次のように整理することができます。

① 就学前

早期発見・早期の発達支援

② 就学中

教育支援とその体制整備・放課後支援・専門的発達支援

③ 就学後

就労支援・地域生活支援

④ 施設やしくみの充実

 相談・情報提供・研修、専門的医療機関の確保

⑤ 調査・研究・専門家育成

 権利の擁護や社会教育などを含む発達障害に対する認知の拡大など

⑥ その他(他の障害のある方と同程度の社会的支援が受けられるようなしくみの整備)

参考
内閣府ホームページ
発達障害者支援法
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h29hakusho/zenbun/pdf/s2_2-1.pdf

厚労省ホームページ
発達障害者支援法の改正について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000128829.pdf

2. 発達障害のある方への具体的な支援内容

次に、個別の支援内容について、その概要を見ていきます。

(1) 就学前の支援

「図-就学前の支援」

この時期での支援の中心は、発達障害があるかどうかに気づき、特性を理解しながら就学後の集団生活になじめるようにしていくことと言えるでしょう。

① 早期発見

1) 乳幼児健康診査
各市町村が行う健康検査です。このタイミングで発達障害を含む、各障害がないかなどの診査が行われます。実施されるタイミングとその対象は次のとおりです。

・1歳6か月児健康診査:満1歳6か月を超え、満2歳に達しない幼児

・3歳児健康診査:満3歳を超え、満4歳に達しない幼児

この他の時期にも健康診査や保健指導が行われることもあります。

2) 就学時健康診断
各市町村の教育委員会が行う健康診断で、翌年から学校に就学するその市町村に住んでいる子どもが対象です。このタイミングで発達障害があることが判明した場合、特別支援教育での支援を検討することになります。つまり、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室(通級)、通常学級の大きく4つの選択肢の中から、いずれの場で学ぶのが最適化を検討するということです。

② 早期の発達支援① ~ 児童発達支援での発達支援サービス

児童発達支援は、発達障害を含む障害のある未就学の子ども(発達障害を含む)を対象に、日常生活における専門的な指導訓練や集団生活への適応訓練を行う通所型の施設・サービスです。児童発達支援センターや児童発達支援事業を実施する事業所が、実際の支援サービスを提供しています。

③ 早期発達支援② ~ 保育所等訪問支援

 保育所等訪問支援は、発達障害を含む障害のある未就学の子どもや小学生が、障害がない子どもとの集団生活に適応することができるよう、一人ひとりの身体や精神の状況、置かれている環境に応じた支援を行うものです。実際の支援は訪問支援員という専門家が行います。

④ 保育面での支援

保護者の方の就労面や疾病などが原因で、十分な保育が受けられない場合があります。このような状況にある子どもの健全な心身の発達を図る施設として、市町村や社会福祉法人等が設置する保育所があります。障害のある子どもへの支援状況なども含め、利用については市町村の児童福祉の窓口などで確認できます。

(2) 就学中の支援

「図-就学中の支援」

この時期の支援の中心は、発達障害があることをその方の特性としてとらえつつ、その可能性を育てながら、その中で生じる生活上あるいは学習上の困難に対処できるよう支援をしていくことと言えるでしょう。

① 学校での教育支援 ~特別支援教育

障害のある子ども一人ひとりの教育的ニーズやその可能性を伸ばすこと、生活や学習上の困難を改善・克服することを目的に、必要となる支援を行うものが特別支援教育です。この中で、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室(通級)といったしくみが整備されています。

ほとんどの学校で相談の窓口となる特別支援教育コーディネーターが指名されていますが、特別支援教育コーディネーターが指名されていない場合は、各学校の管理職や養護教諭、学級担任などが相談の窓口となって、発達障害を含む障害のある方の教育を支援することになります。

② 放課後支援

就学期の学びは学校という場のみでされるわけではありません。また、生活・活動をする学校以外の場も必要になります。このような視点から、以下のような施設・サービスが設置されています。

1) 学童保育(放課後児童健全育成事業)
授業の終了後に学校の余裕教室・児童館などを利用して遊びや生活の場を提供し、子どもの健全な育成を図る保育事業の通称を学童保育と言います。対象となるのは、主に日中保護者が家庭にいない小学校1~3年生の児童です。

2) 放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、発達障害を含む障害のある方のうち小学生・中学生・高校生を対象に、放課後や夏休み等の長期休暇中等に生活能力向上のための訓練等を行う施設・サービスです。

(3) 就学後の支援

「図-就学後の支援」

 この時期の支援の中心は、その方々の特性を生かしながら、社会に貢献できるよう支援することと言えるでしょう。このため、就労に結びつけるような支援と社会生活をおくる場の提供などがしくみ化されています。

① 就労支援

1) 職業リハビリテーション
発達障害を含む障害のある方が、一人ひとりの特性に合わせ、適当な就業の場を得、かつ就業し続けられるよう支援するものです。以下のような各機関が、それぞれの支援を発達障害者支援センターなど、医療・福祉・教育の関係機関とも連携しつつ行っています。

・ハローワーク:職業相談・職業紹介等を行っています

・地域障害者職業センター:職業評価・職業相談・職業準備支援・職場適応援助などの専門的な職業リハビリテーションを行っています

・障害者就業・生活支援センター:就業とそれに伴う日常生活上の支援を行っています

相談は、お住まいの地域の各機関が直接受けるしくみになっています。

2) 職業能力開発
発達障害を含む障害のある方が、就労するために必要な能力を習得できるよう支援するものです。このための機関として、障害者職業能力開発校が全国に19校設置されています。特に中央校(埼玉県)・吉備校(岡山県)においては、発達障害のある方を対象とした職業訓練が本格的に実施されています。

また一般の公共職業能力開発施設においても、発達障害のある方を対象とした訓練コースが設置されていたり、お住まいの地域の企業・NPO法人・社会福祉法人・民間教育訓練機関など民間委託された機関でも必要な訓練が受けられるようになっていたりします。

対象となるのは、ハローワークに求職申込みを行っている障害のある方で、利用できる機関等は、お住まいの地域にあるハローワーク、障害者職業能力開発校などで確認することができます

② 就労移行支援・就労継続支援

就労移行支援や就労継続支援などの指定障害福祉サービス事業所において、発達障害を含む障害のある方の生産活動などの活動の機会と就労に必要な知識や能力の向上のために必要な訓練等が提供されています。

1) 就労移行支援
就労移行支援は、一般就労を希望される方に対する支援です。

2) 就労継続支援
就労継続支援には、就労継続支援(雇用型)と就労継続支援(非雇用型)の2つがあります。

・就労継続支援(雇用型)
就労継続支援(雇用型)は、就労移行支援事業所を利用したものの雇用に結びつかなかった方、特別支援学校を卒業して就職活動を行ったものの雇用に結びつかなかった方、企業就労をしていたが離職された方が対象となる支援です。

・就労継続支援(非雇用型)
就労継続支援(非雇用型)」は、企業や雇用事務所での就労経験があるものの、年齢や体力の面で雇用されることが難しくなった方、就労移行支援事業所を利用したものの企業や雇用事務所での雇用に結びつかなかった方などが対象となる支援です。

③ 地域での生活支援① ~生活の支援・生活の場の提供

各都道府県が指定する指定障害福祉サービス事業者において、社会生活への適応のための支援や活動・生活の場の提供といった支援がされています。

すべての支援サービスが、すべての市町村で行われているわけではないこと、また、一人ひとりのニーズに合わせてサービスを選ぶことになるため、市町村の福祉窓口や都道府県が指定する指定相談支援事業者などへの相談が必要となります。

1) 共同生活援助(グループホーム)・共同生活介護(ケアホーム)
日中の活動の場、住まいの場を提供しながら、生活介護や自立訓練などの日常生活上の支援や訓練を行ったり、生活等に関する相談・助言、就労先や関係機関との連絡を行ったりといった支援を行うものです。障害のある方の孤立の防止・生活への不安の軽減・共同生活による身体や精神状態の安定を保つことなどが役割でもあります。地域での少人数での生活を支援するサービスです。

2) 移動支援
文化的活動や余暇活動など、社会参加のための外出に対して、ガイドヘルパーがサポートするものです。

3) 日常生活自立支援
 福祉サービスの利用や金銭管理の援助を行うものです。

4) 短期入所
発達障害を含む障害のある方を支援する家族の方が、病気などの場合に利用できるものです。

5) 日中一時支援
 日中監護する方がいないとき、一時的に見守り等の支援を行うものです。

④ 権利擁護 ~後見人制度

発達障害がある方の社会生活をおくる上での権利保護を支援するしくみとして、成年後見制度があります。家庭裁判所によって選ばれた方が、発達障害を含む障害がある方ご本人の利益を考えながら、ご本人を代理して必要な福祉サービスの利用の契約をしたり、ご本人が自分で契約をするときに同意を与えたり、同意を得ないでした契約を後から取り消したりすることで、ご本人を保護・支援するしくみです。

(4) 社会への教育という視点

発達障害のある方への支援を考えるとき、障害のある方やその保護者の方への直接的な支援以外も必要と考えられます。つまり、障害があるとはどういうことなのかという理解が社会全体で深まれば、障害があることの困難が軽減されるだろうと考えられるということです。

このため、発達障害があるということについての正しい知識を社会全体に普及することを目的に、発達障害情報・支援センターや発達障害教育推進センターでは、ウェブサイトを通した情報発信が行われています。また、各都道府県・政令市に設置する発達障害者支援センター等でも啓発活動が行われています。

発達障害情報・支援センター:http://www.rehab.go.jp/ddis/
発達障害教育推進センター:http://icedd.nise.go.jp/
発達障害者支援センター(東京都発達障害者支援センターの場合:http://www.tosca-net.com/

参考:
独立行政法人 福祉医療機構 ホームページ
サービス一覧/サービス紹介
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/service/

発達障害情報・支援センター ホームページ
http://www.rehab.go.jp/ddis/

発達障害教育推進センター ホームページ
http://icedd.nise.go.jp/

東京都発達障害者支援センター ホームページ
http://www.tosca-net.com/

公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ホームページ
職リハ学会 中部ブロック 職業リハビリテーションとは
http://www.normanet.ne.jp/~vocreha/block/04/whats_vr.html

3. その他の支援のしくみや制度 ~発達障害者支援法には示されていない支援

発達障害者支援法では示されていないその他の支援には、以下のようなものがあります。

(1) 保健・医療に関連する制度・施策

ひきこもり対策推進事業

(2) 暮らし・環境に関連する制度・施策

消費生活の相談
生活困窮者自立支援制度
高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律

(3) 福祉・人権に関連する制度・施策

障害者手帳(療育手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳)
障害者総合支援法と支援法に基づく事業
入所施設支援
障害者虐待防止法
障害者差別解消法

(4) 仕事・雇用に関する制度・施策

発達障害者への就労支援 ~障害者トライアル雇用事業など
生活困窮者自立支援制度

(5) 教育に関する制度・施策

学校教育の施策に関わる法令、通知等
学校教育法施行令の一部改正について

参考:
発達障害情報・支援センター ホームページ
http://www.rehab.go.jp/ddis/

最後に

発達障害のある方を支援するしくみや制度は、この10年ほどの間に、各ライフステージで必要な支援として網羅的に準備されてきています。一方で、必ずしもわかりやすく体系だっているしくみや制度ばかりではありませんし、複数の法律等の下で制度化されているものもあります。

このため利用にあたっては、同じような申請を、複数行わなければならない場合もあります。支援を受けられる対象となるかどうかの認定がされることが必要だったり、利用できる場合でもその範囲に上限が設定されていたり、支援サービスがお住まいの地域では必ずしもすべて設置されていなかったりといったわかりにくい面もあります。

このため、利用にあたっては、どんな支援が必要かを十分検討の上、お住まいの地域の福祉課などの窓口に相談することが大切になると言えるでしょう。

なお、この記事に関連するおススメのサイトや書籍は下記の通りとなります。参考までご確認ください。

参考
内閣府ホームページ
発達障害者支援法
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h29hakusho/zenbun/pdf/s2_2-1.pdf

厚労省ホームページ
発達障害者支援法の改正について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000128829.pdf

独立行政法人 福祉医療機構 ホームページ
サービス一覧/サービス紹介
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/service/

発達障害情報・支援センター ホームページ
http://www.rehab.go.jp/ddis/

発達障害教育推進センター ホームページ
http://icedd.nise.go.jp/

東京都発達障害者支援センター ホームページ
http://www.tosca-net.com/

公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 ホームページ
職リハ学会 中部ブロック 職業リハビリテーションとは
http://www.normanet.ne.jp/~vocreha/block/04/whats_vr.html

金森 保智

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全国地域生活支援機構が発行する電子福祉マガジンの記者として活動。 知的読書サロンを運営。https://chitekidokusalo.jimdo.com/

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加藤 雅士

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電子福祉マガジンの編集長。一般社団法人 全国地域生活支援機構にて広報委員を担当する。現在、株式会社グリットの代表取締役会長としても活動を行っている。

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